時系列は特に考えていません。
いつか、どこかのタイミングで起こった馬鹿話の一つです。
「ちょっとフラストレーション溜まってるのでコキュートスと闘ってきます」
「またなんか言い出したぞコイツ。……え、待ってください本気なんですかちょっと、誰かデミウルゴス呼んで来い!」
大体こんなノリですので。
「オオオオオオオォッッ!!!」
「ハアアアアアアァッッ!!!」
―――剣戟一閃、初手は共に愚直なまでの袈裟切りが衝突する。
一瞬の空白、コキュートスの空いた腕に握られたメイスががら空きの左横腹を薙ぎ払わんとするも、力を抜いて鍔競り合いからわざと弾かれた逃れたジブリールは押し出される力を利用して後方へと飛ぶ事で回避する。
とん、と軽やかに着地するやいなや白翼を迫りくるコキュートスに向けて羽撃かせ〈
ジブリールへと駆けつつも振るわれた断頭牙を引き戻し構えるが、その時には正面に見据えていた筈の姿は消失していた。六つの瞳がギョロリと周囲を索敵するも見当たらず、背後に気配を感じる訳でもない。即ち―――
―――上ッ!
コキュートスが全ての武器を頭上でクロスさせ防御態勢をとるとほぼ同時に、上空からの大剣の振り下ろしが炸裂する。その衝撃でコキュートスの足元はクレーターの様に凹み、鳴り響いた剣音は
あとコンマ数秒反応が遅れていればその刃は間違いなくコキュートスの外皮鎧に決して軽くない傷を残していただろう。火花を散らしながらぶつかり合う武具を挟んで、ジブリールの狂乱の笑みとコキュートスの沈着な眼差しが交錯する。
膠着が長く続く筈も無く、交差させた武器が一斉に解き放たれ、大剣ごとジブリールは上空にへとカチ上げられる。翼持つ天使にとって開けた空は庭の様な物、すぐさま体勢を整えて再び突貫しようとするも……
「流レヲ作ラセテ戴キマス。〈
コキュートスの背後に忿怒相を浮かべた不動明王が空のジブリールを迎え撃つように出現する。片手に握り締められた利剣がゆっくりと振り被られ―――
「〈俱利伽羅剣〉」
コキュートスの宣告と共に、三毒を打ち破る智恵の利剣が放たれる。敵のカルマ値が低いほどその破壊力を増す特性上、底辺値の-500であるジブリールがまともに喰らえばそれだけで重傷は免れないだろう。
それ程のものを容赦なく放ったのは、偏にこの程度は彼女にとって前座にしかならないと信じ切っているからだった。かつてユグドラシルにて悪鬼羅刹の如く恐れられたアインズ・ウール・ゴウン。そこに君臨する偉大なる41人の一人が自分の一撃で倒れる訳が無いという、本人が聞けば真っ向から否定するような信仰に裏打ちされた斬撃は果たして。
「〈
不動明王が一撃はしかし、ジブリールを包み込む翡翠色の封印術式によって完全に防がれた。時間、空間を断絶することで一切の攻撃を封殺する『霊壊術式』が一つ、ユグドラシルとは異なる理論の大魔術。
本来は
「ゴ謙遜ヲ。多少ハダメージヲ与エラレルト考エテイマシタガ、マサカ無傷デ耐エラレルトハ」
「うーん、信頼が重い。私だって斬られれば痛いし最悪死ぬんですけどねえ……」
〈
対して、コキュートスは〈
「でもまあ、少しは期待に応えるとしましょう―――かッ!」
轟ッ、と風を断ち切る撃音を響かせて大剣がコキュートスにへと投擲される。身体を大きく捻り槍投げの様にして投げられたその鉄塊は、凄まじい速度でコキュートスに迫り―――
「重ねて―――〈
その上に螺旋状に回転する水の槍がコキュートスを襲う。大剣は装備に備わった飛び道具への耐性に加え、ハルバードを振るうことで弾き飛ばすことが出来たが、それが隙となり二発目の魔法攻撃を防ぐことは叶わなかった。直撃こそ辛うじて避けたものの、肩の外皮鎧は一部が削れ罅も入る程のダメージを負い、地に片膝を突く結果に終わる。
久方ぶりの苦痛に軋むような微かな呻き声が上がり、それによってコキュートスの闘志が今まで以上に燃え盛る。
なんだこの醜態は。相手が例え至高の御方であったとしても、そう易々と倒されても良いのか。このようなザマでは武人建御雷様の名を穢してしまうぞ。
立て
立て
立つのだコキュートス!
お前は何だ、誰に創造され、どう在れと定められた!!
「―――ォ」
「―――ォオオ」
「―――ォオオオオオオオオオォッッ!!!!!」
第六階層の全域に響き渡る大咆哮と共に、コキュートスが立ち上がる。物理的な影響を及ぼすほどの衝撃波が地表の小石や土埃を吹き飛ばし、その四腕を広げた威容はまさしく鬼神の如し。
それを見た全ての存在が、コキュートスがいつもより数段巨大であるように錯覚した。
我が身は、一振りの刃。
武人武御雷に創造されし、ナザリックの剣。
刮目せよ、凍河の蟲将が此処に真なる剣を示す。
空中に佇んで様子を窺っていたジブリールは歓喜の笑みに耐え切れず……と言うより、そもそも耐えることをせずに牙を剥いて笑う。より強大となった敵を真っ向から歓迎し、それを打ち破ることこそを至上の悦楽とする。それこそが彼女であるが故に。
その狂戦士とも言うべきジブリールに向かってコキュートスは大地を蹴り上げ前進する。蒼い風となって疾走する最中、即時に武器を交換するスキルを使用してブロードソードと取り換えたのは―――
―――刃渡りにして六尺(約180cm)超、三界の悉くを両断せしめる大業物。
嘗てコキュートスの創造主が振るい、今彼に受け継がれしその刀の銘は―――
「斬神刀皇ッ!!」
「これは、うかうかしていられませんね……〈
警戒を高めたジブリールは自身に身体能力強化系統のバフを複数種類掛け、コキュートスの出方を見るためか空中に漂ったままで新たにアイテムボックスから取り出した大剣を構える。完全に後の手、それに全く武術武道のぶの字すら浮かんでこないような構えだが、その守りを抜くのは容易くなどない。
「〈一点集中〉〈四方八方〉ッ!」
だがしかし、今この瞬間においてはその防御も紙同然でしかない。武器を使用した戦闘においてはナザリックでも随一を誇るコキュートスが、神器級というワールドアイテムを除いては最上級の刀を持ち、数多の斬撃を広範囲に渡って放つ〈四方八方〉を複数対象を取る武器戦闘スキルに作用し一点に収束させる〈一点集中〉と併用して放つはまさに斬撃の牢獄。
前後左右上下の全方向から鈍色の刃嵐が天使の肉体を斬り刻まんと襲い掛かる。
「あ、マズ―――〈暴獣の乱撃〉ッッ!」
スキルの宣告と同時に、ジブリールの四肢が半ば程まで漆黒に染まり仄かに光る紅の脈茎が張り巡らされる。それは握られている大剣にまで侵食し全体が同じようにして覆われた。その状態で自身を空中で回転させつつ、四肢を獣が暴れるかのようにして乱雑かつ無造作に振り回して剣刃を迎撃する。
斬撃が黒い四肢に衝突するだけで獣に食い破られる様に砕け散るが、如何に暴れたとしても全方位からの攻撃を全て捌き切ることは出来ない。前方の殆どは薙ぎ払った大剣が楯となり防がれたが、防御の足りていない後方では幾つかの斬撃がジブリールの柔肌と翼を斬り裂いた。
ダメージに耐え切れずジブリールは大剣を支えにして地に足を付け荒い息を吐く。背中の斬痕からは少なくない量の鮮血が滴り落ち、地面に真っ赤な水溜まりを作り出す。翼も辛うじて切断はされていないものの、何ヶ所かが圧し曲がり痛々しい血の色に濡れている。
「ハァ……ハァ……〈
ジブリールの詠唱した治癒魔法によって、負ったダメージが回復する。足元に展開された魔法陣の輝きと共に裂傷が逆再生の様に癒えていくが、完全な回復ではなく少なくないダメージが残っている。とは言え、翼の負傷は殆どが消えてなくなり問題なく飛行出来るようになった。
だが、回復の隙は決して小さいものではなかった。ジブリールへと駆けるコキュートスを妨害するものは無く、最早その距離は詰められ刀の間合いにまで達しようとしている。
そして、今から大剣を構える動作を挟むだけの余裕も存在しない。ジブリールは全くの無防備な状態でコキュートスを迎え撃たねばならず、無論の事だがそのような抵抗は無駄でしかない。
ジブリールの眼前にまで到達したコキュートスはメイスを投げ捨て、空いた手と既に握っていた手の二つで火の構え―――いわゆる上段の構え。刀を振り下ろすただそれだけの攻撃のみに限定すれば最速を誇る。―――を取る。
直撃すれば間違いなく死に至るソレを見たシモベ達は制止の声を掛けようとし、実際コキュートスを止めようと動きかけた者も居たが行動に移すのが余りにも遅すぎた。
斬神刀皇が無情にも振り下ろされる。その斬撃は凄まじい衝撃波を生み、周囲は巻き上がる土埃が覆い隠して与り知れず。
更に斬撃は
観戦していたシモベ達とモモンガが固唾を飲んで見守り、一部のシモベは殺気交じりの視線を土煙へと向ける中遂にその時は訪れる。
不意に、何かに切り裂かれるようにして土煙が吹き飛ばされる。そこに立っていたのは―――
「引き分け、ですね」
「ソノヨウデスナ、ジブリール様」
互いの首元に刃を添え、向かい合うジブリールとコキュートスだった。
ジブリールは斬神刀皇が振り下ろされるその瞬間、〈
「二人とも実に見事だった。これからも研鑽に努め更なる高みを目指して欲しい!そして、この闘いを見ていたシモベ達にも期待している。あ、ジブリールさんは後で話があります。逃げるなよ?」
最後にモモンガが〆の挨拶を行い、今回の模擬戦は終幕となったのである。尚、その後―――
「なあジブリールさん確かに今回は貴方の要望を叶えるべく例え死亡しても即座に身代わりとなって代わりに破壊されるアイテムをコキュートスと貴方に持たせていたとはいえあそこまでダメージを負うような闘い方をするとはどういうことだそもそも実際の戦闘であんなやりかたをしていたら命がいくつあっても足りないでしょうがここはもうゲームの世界ではなく現実なんですからもう少し危機感というものを抱くようにしてください本当に死んだらどうするんですかそもそも一度死んだあと蘇生したとしてもそれが本当のジブリールさんである保証はどこにも存在しないんですよ分かってますか分かってませんよね分かってないからあんなことしたんですからねちゃんと話聞いてますかまったく貴方は昔から勝手に行動した結果死にかけたり罠だと分かって突撃して死にかけたりるし★ふぁーさんと一緒になってふざけて死にかけたりと余計なことに首を突っ込んで碌な目にあった試しがないんですよ少しは自重することを考えてくださいそれに天使種の貴方には飛行能力が備わっているというのに何で上空に陣取って攻めないんですか空から魔法なりスキルなりで戦っていれば少なくともそこまで怪我をすることはなかったですよね前々から思ってましたけど安全策ってものをもっと重要視すべきですよ私は大抵の状態異常は無効化出来ますけど生身のジブリールさんにそんなスキルは無いんですから慎重すぎるくらいが丁度いいというのにおい私の目を見て話を聞きなさいこっちを見てさあ早く目を逸らすなこれはジブリールさんへのおしおきを兼ねているんですからねまだまだ終わりませんよこの際貴方への鬱憤もついでに晴らさせてもらいますから足を崩そうとするなよ正座は罰の一環なんだから維持しなきゃ罰にならないだろ足がしびれてきたかなるほどそういった痛覚も感じられるという訳だまた一つ勉強になったなああそうだ話を戻しましょうどうしてもっとバフを掛けなかったんですかバフに過剰なんて言葉は無いんですよむしろバフこそが本体ですよ私だってPvPのときにしこたまバフを掛けられればどれ程良いかとユグドラシルで何回考えた事かそれに魔法攻撃のときに必ず一拍子程度つまりますよねそういうの良くないと思いますよ下手に残してると隙になりますし高レベル同士の戦闘だとそういった小さなものほど―――」
「コキュートス貴方はなんということをしたのか分かっているのですか至高の御方の一人であるジブリール様を殺しかけたのですよ百歩いや億歩譲ってジブリール様に傷を付けたまでは全力で戦いたいというジブリール様の願いを考慮して許さないことも無くも無いですがいくら事前に致死ダメージを受けたときそれを転写して代わりに破壊される超レアアイテムをアインズ様より賜っていたとはいえあのような戦闘は目に余りますそもそもナザリックのシモベが最後に残って下さった至高の御方に刃を向けるという行為自体が不敬極まりないのです例えそれが至高の御方に命令されたことであってもです最早我々ナザリックには御二人しか残っていないのですその二人の命を傷つけかねない行為などあってはなりません我々が死んでも防ぐべき特一級の緊急事態だというのにそれをナザリックのシモベたるコキュートス貴方が行うなどこれがどれ程の不敬か理解しているのですかいくら武人であるといえども限度というものがあるでしょう反省しているのですかコキュートスこの説教はまだまだ始まったばかりなのですからね貴方が真に至高の御方への対応を理解するまで終わることは―――」
ナザリックの王座の間にて、若干二名が
くう疲。
真面目に戦闘シーン書いてみましたけど、どうですかね。
やっぱ表現が少し薄いかな……もっと上手く表現できるようになりたいです。
ちょくちょくアイテムボックスから武器を取り出すってやってますが、コンソールを出して行う必要がある為戦闘中だとかなりの隙になります。だから武器換装のスキル然り、課金アイテムの木の棒然りがあるわけですね。
ちなみに、ガチでジブリールとコキュートスが戦うと3:7でコキュートスが有利です。
ジブリールはカルマ値が-500で、五大明王コンボがぶっささりするからです。今回は始動を〈久遠第四加護〉で強引に潰してうやむやに出来ましたが、一発でもまともに喰らうとかなり辛いんじゃないでしょうか。
では、また次回。