天翼の淑女と不死者の王   作:ヤクサノイカヅチ

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オーバーロードⅡなんてやるからついつい書いちまったぜ……
ちょっといつもより短いですが、何も言わんといてください。

今度は本当に2~3月頃だからね?割とマジで忙しいからね?

では、どうぞ。


終わるセカイと至高の残滓

 「え、これって……!」

 

 「おお、若い嬢ちゃん。いい目をしておるの、それはワールドアイテムの―――」

 

 「これ、くださいな。料金はこれで足りますの?」

 

 「ああ、十分すぎるくらいだ。ところで、残り数時間のこの世界で何を成すのかね?どうせ消えてなくなるというのに。」

 

 「『たとえ明日、世界が滅亡しようとも今日私はリンゴの木を植える。』、それ自体に価値は無くともその意味は確かにあるのだと、私はそう思いますので」

 

 「……そうかい。じゃあな、儂もそろそろ店をたたむとしよう。」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「はぁ……、『どこかでお会いしましょう』ねぇ。一体何処で、何時なら会えるんだろうな……」

 

 モモンガの双肩は諦観の念をありありと表していた。結局、モモンガは今さっきこのギルドから去って行った漆黒の粘体生物(ヘロヘロ)に引き留めの言葉を伝えることは無かった。

 

 結局のところ、彼らには彼らの道があり、その先が自分の道の行き先とは違う方向だったのだろう。

 寂寥感と虚無感にモモンガが打ちひしがれているその時に。

 

 「―――モモンガさんモモンガさんモォモンガさぁん!!!」

 

 「うわぁ何ですか人が黄昏ている最中に!?」

 

 円卓の間に一発の弾丸が躍り込む。彼女―――とは言っても、その中身は彼と表現すべきだが―――はこのギルド最後の二人の片割れ、『最凶の天使』『ナザリックの斬首人』『最大ダメージ量更新者』『天使狩りの天使』『処刑人』『あの黒いのなんなの』等、数多くの異名を与えられた天使種プレイヤー。

 

 プレイヤー名『ジブリール』。一世紀程前に出版されていたとあるライトノベルのキャラクターを再現した、所謂『変態に技術を与えた結果がこれだよ!』を地で行く()である。

 

 「そんなことよりちょっと第六階層に来てくださいな!時間も押していますし早く早く!!さあさあ、ハリーハリーハリー!!!」

 

 「分かりました分かりましたからああもう急かすのをやめてくださいって……」

 

 椅子に腰かけていたモモンガをジブリールは無理矢理に立たせ円卓の間の出入り口にへと押し出していく。細身の腕は外見とは異なる尋常ではない力を発揮し、モモンガの巨体はそれに逆らうことも出来ずになすがままにされている。

 

 モモンガが十指に嵌めている指輪のうちの一つ、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンの効力が発揮される。

 それはモモンガを即座に第六階層の大森林、その円形闘技場へと転移させた。

 

 モモンガが軽く空を見上げると、そこには変わらぬ何時もの星空があり―――

 

 「な、なんじゃあれはーーー!!?」

 

 

 

 

 

 

 ―――それは、モンスターというにはあまりにも大きすぎた。

 大きく

 分厚く

 重く

 そして大雑把すぎた。

 それはまさに島だった。

 

 

 

 

 

 

 第六階層の上空約100m付近に浮遊する、圧倒的なまでの巨体を持つ岩で出来た鯨。

 それがモモンガの平静を悉く奪い去っていた。

 

 「どうです、凄いでしょう。むふーむふー」

 

 驚愕を隠せないモモンガの隣にはいつの間にかジブリールが並んでいた。

 表情は変化しないものの、僅かに聞こえてくる鼻息は荒く、胸を張って腰の翼をパタパタとまでさせて興奮している。

 その首元には今までに見たことの無い、虹色に輝く宝玉の填められた首飾りが鎮座していた。

 

 「い、一体あれはどうしたんです!?NPCレベルなんてとっくの昔に使い切ってますし、あんなものワールドアイテムでもない限りは……まさか」

 

 「そうです、その通りに御座いますとも!これなるはワールドアイテム『百獣孕む女神の母胎(ポトニア・テローン)』にて作成した超々巨大モンスター!その名も『アヴァント・ヘイム』!!通称アヴちゃんです」

 

 アヴァント・ヘイム。

 それがこの島の冠する名称。ジブリールしか知らない事だが、上から見ることが出来るのなら背中部分に生えるようにして存在している都市群を目にするだろう。なにせこの島、幻想種(ファンタズマ)という独立した一つの世界は天翼種が空中都市にしているという設定で作成されたのだから。

 ……当然、このユグドラシルでは只の一NPCに過ぎないのだが。

 

 「……ま、まあ。別に今日で最後なんですし、多少の事なら俺だって目を瞑りますよ。それでも事前に連絡位は欲しかったんですけれど」

 

 内心で浅く溜息をつく。この突拍子も無く唐突にやらかす彼女の癖は最後の最後まで直らなかったなあと、モモンガは脳裏によぎる懐かしい記憶に思いを馳せようとして―――

 

 ―――視界の片隅に設置されたタイマーに表示される現在の時刻が、ユグドラシル終了の十分前であることを認識した。

 いかん、ゆっくりしている時間すら今の自分たちには無いのだとモモンガは再認識した。常に時間を確認するという悲しき社畜の性のせいでもある。

 

 「ジブリールさん!もう時間が本当に無いんですけどどうしますか!?俺はこれから玉座の間に行こうと思うんですけど」

 

 「私は最古図書館(アッシュールバニパル)で過ごさせてもらいます。やはり最後まで未知を追い求めることがこの『ジブリール』であると思うので」

 

 モモンガの問いにジブリールはそう答えた。女性の声だったそれは、最後の一言だけは男性の声に変わって、いや戻っていた。

 ジブリールであろうとする男の素の声。それはこの世界では禁忌の様なモノであり、余程の事が無ければ使わない声だとモモンガは知っていた。

 

 「モモンガさん、ありがとうございました。貴方に出会えて本当に良かったと、心から感謝しています」

 

 「……いえ、俺もジブリールさんと一緒にこのゲームを出来て良かったと思っています」

 

 第十階層、ナザリックの最下層にして心臓部に二人は転移する。モモンガが向かう先である玉座の間へは、たとえリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンであっても直接転移することは出来ない。故にその一歩手前にの地点にやってきたのだった。

 

 二人の間に会話は無かった。しかしその静寂は決して心苦しいものでは無く、共に苦労を、喜びを分かち合ってきた者達の一種の共感がそこにあった。

 

 ユグドラシルは、ナザリックは、アインズ・ウール・ゴウンは。

 名残惜しくも、後数分の時をもってゲームの終了という終焉を迎える―――

 

 

 

 

 ―――その筈だった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ナザリック地下大墳墓、その最深層たる第十階層に位置する最古図書館(アッシュールバニパル)

 私を筆頭に古今東西の魔導書に古書や禁書を見境なく蒐集した結果、この図書室そのものが一種のダンジョンなのではないかと言えるほどの規模になってしまった。

 ここの小部屋の中の一つ、私専用の読書室に足を踏み入れた。当然、そこら辺の本棚から何冊か本を持ち寄ってきている。

 

 天井にある小さな照明を点け、背もたれのある一人用の椅子に腰かけてゆっくりと背を預ける。

 椅子の横にある机に備え付けられているコーヒーメーカーにマグカップを置くと、温かなコーヒーで満たされていく。嗅覚も味覚もユグドラシルでは存在しないが、まあ雰囲気作りの為でしかないから気にはしない。

 

 さて、本を開いて読み進めていこう―――としたのだが、無情にも視界の隅の時計はサーバー停止の刻限の30秒前を指し示していた。

 

 「ああ、遂に終わってしまうというのか……」

 

 23:59:36、37、38……

 

 溜息を一つ、明日も仕事が待っている。そう考えてしまうと胸が重くなった。

 自然と口がそれに合わせて数えだしていた。

 

 23:59:44、45、46……

 

 瞼を落とす。

 

 23:59:57、58、59……

 

 意識がブラックアウトするその瞬間を惜しみながら―――

 

 

 0:00:00……01、02、03

 

 ―――そして、アインズ・ウール・ゴウンは世界樹(ユグドラシル)から零れ落ちた。

 

 




アヴァント・ヘイムは一応予定してました。
特に物語上の意味は無いに等しいのですけどね。

今回で何とかユグドラシル終了のお知らせです。
結構無理矢理かつ飛ばしたので雑。
実は転移時にアルトシュの干渉を受けるなんて構想もあったのですが、それやると多分バッドエンド行きになるような気がしたので『無かったことにした』。

……キリが良いし完結にしちゃダメ?
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