主人公
千歳→千歳
千代田→千代田
千歳
主人公→お姉さん
千代田→千代田
千代田
主人公→お姉
千歳→千歳お姉
自分で言うのもなんだけど、私は平凡な大学生だ。異質な所と言えば、両親がいない所だけど、それ以外は成績も運動神経も平均だと言える自信がある。
そんな平凡だった私の日常に、イレギュラーが発生した。
「ただいまー……」
バイトから帰宅してアパートの中に入ると、中で「あはは」と楽しそうな声が聞こえた。
「………ただいま」
「あら、お帰りなさい」
「おかえりー」
陽気な声が帰って来た。中にいる二人は元艦娘の「千歳」と「千代田」。なんかよく分からないけど、近代化改修されてこの家に引き取って欲しくて来たらしい。
軍からそれなりの退職金はいただいたらしく、二人はすぐに就職してくれたので家計に問題はないけど、別の問題が出ている。
「………ちょっと、もう夜なんだから静かに飲んでよ」
「それは申し訳ありません、お姉さん」
「良いじゃんー、飲んでる時くらい楽しくしたってー」
「それで怒られるのは私なんだから!」
「だめよ、千代田。住まわせてもらってるのだから、私達はお姉さんの指示に従いましょう」
「むー……千歳お姉がそう言うなら……」
一応、名義上は私の義妹という事なので、私が姉になっている。……けど、二人ともガンガンお酒飲んでるし、普通に就職してるし、私より背高いし、私より胸大きいし………えっ、私どのツラ下げて二人の姉なんてやってんの?
い、いやいやいや、落ち着いて私。大丈夫、私がこの家に一番長く住んでるんだから、私が姉でも問題ないハズ……。とにかく、ナメられたら終いだ。長女としてビシバシいこう!
「とにかく!夜にお酒を飲むときは静かに飲んで!それと、空き缶とかはちゃんとゴミ箱に入れておいてよね!」
「…………」
早速、ビシバシと指示をすると、千代田が私の事をジッと睨んで来た。
な、何よ……?と、視線で訴えると、ジト目のまま言った。
「………私達がこの家に来た時、部屋の中がジュースやカップ麺のゴミの山で、それを誰が片付けたと思ってるの?」
「はうっ⁉︎」
て、的確な反撃を………‼︎
「い、今それは関係ないじゃんかー!」
「いや、お隣さんとかから苦情来てたよ。ベランダに出ると隣がなんか臭いって」
「う、嘘………⁉︎」
「それに、今の今までインスタント食品生活だったのを、誰の料理のお陰で手料理生活になれたか分かってる?」
「い、いやそれは………!」
「それから、千歳お姉の料理を最初に食べた時『わ、私だって出来ますから!』って意気込んで、食品で火山の模型を作ったのは誰?」
「…………」
「千代田、その辺にしてあげなさい。お姉さん、涙目よ」
千歳が私と千代田の間に入ってくれた。その事が嬉しくて、尚更私の涙腺は緩み、千歳の胸に飛び付いた。
「うえええん!千歳ー!千代田がいじめるー!」
「はいはい、大丈夫ですよ」
ギュッと抱き締め返してくれる千歳。この人の胸の大きさがなんかもう悔しかったが、それが気にならないほど、溢れ出んばかりの母性に包み込まれて行くのを感じた。なんだこの人は、母親なの?
千歳大好きの千代田にドヤ顔してやろうと思って、チラッと千代田を見たら、呆れ顔を浮かべて私と千歳を見ていた。
「………どっちが妹だか分からないね」
ほっとけ。
「あ、そうだ」
千歳が何かを思い出したように軽く手を叩いた。
「ご夕食食べますか?準備出来ていますが」
「食べる!」
「じゃ、少しごめんなさいね。今、机に運びますから」
「手伝うよっ!」
「いえ、大丈夫です。片付ける手間が増えそうですので」
「あー!別に零さないよ!」
「や、ほんと良いからジッとしてて。千歳お姉、私が手伝うよ」
「ありがとう、千代田」
「二人とも酷くない⁉︎」
わ、私ってどんな扱いされてるんだろう………。涙目になりながら、運ばれて来る料理を眺めた。
ー
食事が終わり、お風呂に入って就寝時間。私の部屋は風呂とトイレと居間以外の部屋はない。台所は居間に付いているくらい狭い部屋だ。
布団を敷くスペースもちゃぶ台を片付けて布団を二枚敷くしかない。つまり、二枚の布団に三人で寝るしかないのだ。
で、今日は私が真ん中で寝る事になった。夏は真ん中の人は中々眠れないので、じゃんけんで負けた人が真ん中になっている。
だが、私には別の問題が発生していた。
「…………」
「さて、寝ましょうか」
「うん。明日、お姉は何限だったっけ?」
「……………」
「お姉?」
千代田の声が私の耳に入って来なかった。だって、二人に挟まれると、なんか、こう………。
「すごいよ!」
「いきなり何⁉︎」
「二人とも上向いて寝なよ!なんで私の方を見て寝るの⁉︎」
そう言った通り、二人は私を挟むように私の方を向いて横になっていた。
すると、千代田が少し困った顔で答えた。
「んー、それがさぁ、大きいと上向いて寝れないんだよねー」
「ちょっ、千代田……!」
「? 大きいって、何が?」
「何って、胸だよ。重くて中々寝付けな………あっ」
「………貴様今何つった?」
こいつ……胸が大きいの分かってて私の方に向けて寝てやがったのか………‼︎
「当て付けかお前らぁあーーー‼︎」
「っ⁉︎ ち、ちょっと!いきなり揉まないでよ⁉︎」
「少しは寄越せよその脂肪をよー‼︎」
「ひゃっ……!やめっ………!」
「お、落ち着いてお姉さん……!もう夜遅いしお隣さんから苦情が……!」
ぐっ……!そ、それは困る………!お隣さんすごい怖いし………!
「………うー!見てろよー!将来的には絶対私の方が大きくなってやるんだから!」
「いや、もう成長期過ぎてるし無理なんじゃ……」
「黙れ千代田!」
いつか……!いつか大きくしてやるからな………‼︎私はそう胸に秘めて、とりあえず下を向いて眠ることにした。なるべく二人の胸が視界に入らないように枕に顔を埋めた。
すると、両隣から手が伸びて来て、私の頭を撫でた。
「………もう、不貞腐れないでよ。お姉」
「そうですよ。胸の事でムキになるのは、お姉さんの悪い癖です」
「………うー、だって、だって………」
「大丈夫です。女性の価値は、胸ではありませんから」
「………………」
ほろりと涙が目尻に浮かんだ。この人は……本物の女神か!そうだそうだ、女の価値は胸じゃない、中身だ!
そう心で復唱しながら、とりあえず上を向いて眠る事にした。