遊戯王OCG’s─変態デュエリスト「古霊 真由美」の1日─ 作:レモンの人
「暇ね〜……」
いつものように喫茶店のアルバイトをしていた私だったが、全くと言っていいほどお客さんが来なかった。仕方ないので新しい料理を残った素材で研究していた時、店に1人のお客さんがやって来た。髪は琥珀色のショートヘア、胸には私によく似た大きさのデカメロンをぶら下げ、スポーティな軽装を纏った女の子……私はその子に見覚えがあった。
「(……アカン)」
「やっと見つけた…………お姉ちゃん」
実の妹と感動(怒り)の再会を果たした。
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「他のお客さんが来るまでしっかり話しなさい」
コーヒーが置かれ、私は妹の正面の席に座った。絶縁状を叩きつけて出て行った後、唯一残された妹…「玲花」は恐らく両親の期待を一身に背負って生きてきたのだろう。私が辛いからと逃げ出した事を怨んでいるのも無理はない。
「高校生活はどうなの?」
「……聞いてどうするの?」
「いや……何にもないけど、会話ってそんな所から始めるでしょ普通」
先程からピリピリとした空気が私にプレッシャーを与えている。一瞬怯んだが、それでも物怖じせずに私は続けた。
「私は確かに逃げたわ。ダメだった時に諦めずに立ち上がれなかった……」
「…別に逃げた事に怒ってないよ」
「……」
「まぁ、お姉ちゃんはバカだから無理だろうな〜とは思ってたけど」
「うっ…」
そういうのを怒るって言うんだよ!?心の中でツッコミを入れつつ、私は怒りを抑え込んだ。元はといえば優秀な妹に比較されて私への当たりが強くなったのもあると思うんですけど!
「寧ろボクの方が聞きたいよ。お姉ちゃん、今何してんの?バイトして…どうせ何もしないままカードゲームに逃げて彼氏も無くダラダラ生きてるんでしょ?」
「……カードゲームは私の生命線です〜。それにもう婚約者もいます〜」
「ウソ、こんなヲタクで性格も暗い喪女に彼氏なんて出来ないと思うんだけど」
「お昼食べに来たよ真由美さ〜ん……あれ?誰この子?」
救世主キター!このタイミングで翔太君が来てくれた。しかも遊斗君とセバスティアンさんまで来ている。これで勝つる!
「紹介するわ。婚約者の翔太君よ」
「ど、どうも」
「…………ショタを侍らすとか変t」
「合法ショタだバカヤロー!」
本当に来た婚約者に妹の声色が変わった。しかもチラチラと翔太君の顔を見ている。気に入ったのかそれとも……?
「……なんだこの子?」
「すみません、私の妹です」
「妹さん!?マジかよ紹介して!古霊さん似の美人じゃねーか!」
遊斗君が早速食い付き、セバスティアンさんがタイミングよく出した椅子に座って妹にナンパを仕掛けていた。凄まじい勢いに流石の妹もタジタジになっていた。結局のところ、立場の弱い相手に粋がってただけみたいね……なんか可哀想。
「オレと付き合わねぇか?オレなら君を幸せに出来るぜ」
「……え、遠慮します」
「じゃあ、友達からスタートだな。名前なんて言うの?」
「ぼ、ボクの名前は玲花ですけど……」
「ボクっ娘!?珍しいねぇ〜、ん?よく見ると結構体引き締まってるじゃん!スポーツとかやってんの?」
矢継ぎ早に質問され、とうとう涙目で私に助けを求め始めた。やれやれとわざとらしくポーズした私は遊斗君に顔を向けると、遊斗君がウインクして離れてくれた。事情を察して彼なりのやり方で助けてくれたらしい。感謝しないと。
「この人達、誰なの?」
「まー…カードゲームで知り合った友人ってとこかな?」
「……っ」
顔を少し歪める妹に私は薄々何かを感じ始めていた。もしかして、優秀な玲花でもあの両親は容赦なく過剰な要求をしたのかもしれない。
「───るい」
「?」
「ずるいずるいずるいずるい!!!お姉ちゃんは勝手だ!勉強が出来ないからって家から簡単に出て私に全部押し付けといて自分はのうのうと彼氏作って遊び呆けて友達もいる?ボクは毎日勉強漬けで友達もいなくなったしショッピングに誘われても行けない!分かる?お姉ちゃんにボクの苦しみが分かる?……なんとか言ってよ!!!」
ついに泣き出してしまった玲花……でも、貴女は人の事言えないよ?
「……まぁ、言い返すようだけど。貴女にそれを言う権利は無いわ」
「!」
「私が苦しい時に、一度として助けてくれた?私を庇ったり…私に勉強教えたり…そうやって助けてくれたんなら私は責められて当然よ?恩を仇で返した愚かな女になってしまうもの」
「……」
「でも、貴女は私が苦しい時に何をしてた?両親と一緒に私を詰ったでしょ?勉強を聞きに行っても『バカに何度教えようと分からない』と言って拒んで毎日友達と遊びに行ってたよね?……あの家に居場所を失った原因の一端が自分にもあるっていうの分かってる?」
「っ……」
「言いたい事はそれだけ?」
私も悪い女だわ……立場が変わっただけで強気になる辺りは私も妹と同類って事ね。
「……っ」
「もしホントにズルイって思うんならあんな家出て行けば?」
「そんな軽く……!」
「はっきり言うけど、あの家に居たって貴女はやりたい事何も出来なくてただ苦しいだけの生活しか送れないわ。本当にズルイって思うなら私みたいに自活しなさい……まぁ、私は不器用でバカだから働く場所も無くて最終的にマスターの世話になってるけど、玲花ならもっと上手く立ち回れると思うんだけど」
あんな実家、息苦しいだけで何の得もない。頭が良い=いい生活が出来ると勘違いしたバカ親が自分が頭悪い癖に無駄に高い目標を立てて子供に対して虐待まがいの教育をする……普通に考えてイカれている。
「……」
「もっと色んな世界を見てみなさい。自分のやりたい事……実はまだ見つかってないんじゃない?」
「お姉ちゃんは?」
「私?私は……見つからなかったけど、こうして大好きなカードゲームに囲まれて、翔太君と家族一緒にワイワイ騒ぎながら楽しい時間を過ごさせてもらっているわ。もちろん、あんまりお金も貯まらないし一時はボロマンションに暮らしてたくらい生活も厳しかったけど…」
「……そっか」
勢いを無くした玲花は、コーヒーを飲み干すと持っていたカバンを手に席を立った。
「お姉ちゃん……あの時、ごめんなさい」
「…私もあの時逃げたのは悪かったわ」
トボトボと出て行く背中を眺めて、私も席を立った。
「せっかくだし、家でご飯食べて帰りなさい。ご飯…………どうせあの家の事だから貧相なんでしょ?」
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「ただいま〜」
「ただいま帰りました〜」
「お、お邪魔します……」
「お帰り〜♪ご飯にする?お風呂にする?それとも──って、見ない顔ね?」
「私の妹です。1日だけ泊めていただけないでしょうか?」
「いいわよ。ご飯作り過ぎちゃったからちょうどよかったわ。ただ…布団が足りないから私は陽介さんと一緒の布団ね♪」
「(父さん……、夜中年中発情期の母さんと一緒の布団で大丈夫かなぁ)」
いつものようにテンションメーターが振り切れてる義母さんに招かれ、私はブーツを脱いで並べた。
「おばあちゃんの形見…まだ使ってたんだ」
「なんだかんだでね。さ、あがって」
「「いただきまーす!」」
「い、いただきます」
今日のメニューはご飯・筑前煮・味噌汁・例のごとく鰐大根が用意されていた。作り過ぎたのは果たして筑前煮なのか鰐大根なのか……
「美味しいです!このお肉は何を──」
「サメよ」
「サメですか!なるほど…………サメ!?」
ほらやっぱり同じ反応した。
「サメは栄養価が高いしちゃんと味付けしたら臭みも無いわ。それに鮮度が高ければ刺身でも臭くないの」
「…………初めて知りました。サメは体内にアンモニアを貯めているので臭くてフカヒレにしか使われないんだと勘違いしてました…」
「勉強もあんまり役に立たないでしょ?」
「……そうだね、お姉ちゃん」
ここでようやく、玲花が笑顔になってくれた。
「遠慮せずもっと食べなさい!調子に乗って鍋2個分作っちゃったんだから!」
「いや、どうすればそうなるんだ」
義父さんのツッコミは誰にも聞かれぬまま消えていった……。
「真由美、僕は違う場所で寝るよ」
「気は遣わないでください。その……お姉ちゃんと彼氏さんの話、もっと聞きたいし」
布団を並べて翔太君を真ん中に挟むようにして布団に入った私と玲花は改めて互いに顔を向けた。喫茶店で言いたい事を言って気が晴れたのか、トゲが抜けている。
「それにしても見ないうちに胸デカくなったわね〜…私に負けず劣らずのサイズじゃない?」
「そういう遺伝なのかも」
しょうもない話を皮切りに私と翔太君は玲花から質問攻めにされた。馴れ初めの話…今の生活の話…互いにどう思っているのか等、それに私達は笑顔で答えた。途中、玲花が疲れて眠ってしまい、私も明日は仕事が無いので翔太君とデュエルしようと決め、翔太君に抱きつくようにして眠った。
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『お世話になりました』
荷物を抱えた玲花は、私が起きる間も無くさっさと起きてこの書き置きを残して出て行った。寂しい気もするが、止める権利も無いので私は書き置きを捨てた。
「おはよ〜、あれ?玲花さんは?」
「帰ったわ」
「……そっか」
今日は休日。翔太君とのデュエルを楽しみにしながら私は台所へ向かった……。
古霊 玲花
年齢:18歳
性別:女
身長:170cm
体重:60kg
3サイズ:96・56・87
血液型:A型
星座:射手座
髪色:琥珀
髪型:ショートヘア
職業:学生
服装:ビキニ(トップ)+Gジャン・ホットパンツ・スニーカー
スポーティな雰囲気を持つ女子高生。姉が家出したせいで両親から厳しい仕打ちを受けて姉を恨んでいたが、今回和解した。中学時代にバレーボールをしていた経験から体は引き締まっている。また、ボクっ娘で本来の性格は活発だが親の仕打ちの影響で陰キャラに片足突っ込んでいる。
因みに遊斗曰く、「見た目こそ古霊さんそっくりだけど、中身に惹かれない」らしい。