マスター、この特異点は良くない。実に良くない。
ひとつ前の特異点の方が面白かった。そうは思わないか?
ひとつ前の特異点はエルサレムに召喚された
十字軍の一員としてイスラム勢力との
特に、ヘクトールとアキレウスが武器を捨てて殴り合って勝敗を決めたのは、視界を塞ぐ涙が心底鬱陶しく感じた程だった。
「こいよ、ヘクトール。武器なんて棄ててかかってこい」
そのアキレウスの言葉に武器の
結局、その後、武器も何もかも捨てて殴り合う結末までの流れはまさしく新たな歴史の一ページだった。
ああ、もし此処で戦争を取り上げて自分勝手に国でも作って主張するサーヴァントが召喚されていたらと思うとゾッとしたね。
やはり、戦争と言うのは良い。
人の極みにある英雄たちが殺し合う。人材の豪快な無駄遣いだ。故にロマンがある。
マスター、私はね、戦争が好きなのではない。戦争という歴史が大好きなのだ。
一騎当千の英雄たちが殺し合う様も良い。
有象無象ながら様々な事情を抱えた
そのサブストーリーとして周辺で略奪が起きたという証拠だって感慨深い。
マスター、私はね、人と人との戦争を素晴らしいものだと感じている。
発端が神の意志であったとしてもだ。
だがね、今ここで行われていることは違う。
女神の産んだ化け物と人との戦争だ。
いや、これを私は『戦争』とは呼びたくない。
戦争はもっと美しくて残酷で醜くて感情に溢れたものだ。
これは、―――そうだね、おとぎ話さ。
人外の跋扈するおとぎ話。
あいにく私は歴史学者でね、童話作家でも神学家でも無い訳だ。
だからこんな醜い物語はすぐに終わらせるに限る。
そうしたら、お風呂にでも入ろうじゃないか。
無論、裸で。
何、気にする事は無い。
例え黄金律の身体でなくとも、自分の身体に自身を持って良い。
豊満だろうが絶壁だろうがそのような事はどうでも良い。
始まりの人間の様な姿で羞恥心を棄ててお湯に浸るのだ。それで全てが全うされる。
それでも恥ずかしいなら不透明な入浴剤も許そう。それで良いだろう?
ん、どうした英雄諸君。
――マスターへのセクハラだと?
私の原子回帰の願望を理解できないとは、私は悲しい。
敬意を払う英雄諸君にそう思われてしまっては私は悲しいと言わざるを得ない。
――何、羞恥心こそが女性の良さだと?
それは君の嗜好だろう。
女性として羞恥心が必要な前に、生物として羞恥心は必要ないのだ。
生物である事と、女性である事のどちらが最初に来る前提かもう一度考えて欲しいものだ。
――欲情しないかだと?
失礼な。浴場で欲情するなどという寒いギャグで湯を冷やす真似などするものか。
むしろ、湯の温度をHOTにしたいと願うのだ、私と言う人間はな。
―一緒に入りたいだと?
良いとも。 ん? ただしマスターと貴方だけで、か?
どうせなら誰もが一堂に区別なく入れるのが理想なのだがね。
――バスタオルは欲しいだと?
それを反対したいが、最初からそれが難しいというのなら仕方ない。
だが、それは理想にはまだ遠いものなのだ。
――エドワード氏、それは置いていくが良い。
私はカメラも何もない完全な全裸を望んでいる。
そこに自然と人体以外の異物がある事を私は許容しない。
まあ、アレだろう?
諸君らも何だかんだ言って、お風呂はそんなに嫌いじゃない。
そしてマスターの事も嫌いじゃない。
ならば、私の意見に同意してくれないか?
…そうか、それとこれとは話が別、か。