九州男児は剣を振る   作:数多 命

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二話

「――――決闘ですわッ!!」

 

入学二日目。

どうしてこうなったと、明は頭を抱えたい気分だった。

事の発端は些細なことだ。

本日も授業を始めようとした千冬がふと、再来週にあるクラス代表戦についての話をして。

そこからクラス長を決めようということになった。

自薦他薦問わないと千冬が言った所、珍しい男性操縦者である一夏や、それに加えて年上である明に票が集中。

どちらもISに関しては素人で、試合なんて以ての外という思いだったため。

どうしたもんかと困っていたところで名乗りを上げたのが、『セシリア・オルコット』だった。

イギリスの代表候補生であり、入学試験も学年主席という実力を持つ彼女は。

このごろの女性によく見られる、『女尊男卑』寄りの考えを持っていた。

そこに加えて、代表候補にまで上り詰めた『自信』があったのだろう。

男の上、素人同然である一夏達が選出されるのが、我慢ならなかったらしい。

主席の座を勝ち取るほどの実力を持っているのだから、気持ちは分からないでもないが。

いかんせん言い方がよくなかった。

結局セシリアの物言いにカチンときた一夏が応戦し、売り言葉に買い言葉の応酬が勃発。

徐々にヒートアップする中で、セシリアが冒頭の発言をしたのである。

 

「おう!四の五の言うより話が早いッ!」

 

完全に頭に来ている一夏は、拳を手に打ちつけながら『是』を答えた。

が、周りの反応は微妙なもので、

 

「えぇー、織斑くん止めといたほうがいいよ」

「そうだよ、負けちゃうよ」

 

心からだったり、侮っていたり。

それでも共通しているのは、『戦わない方がいい』ということだった。

セシリアほどではないにしても、男が女に勝てると思っている者は少ないらしい。

少し前までISは女性の独壇場だっただけに、そういった風潮があるのも仕方が無いかもしれない。

 

「――――じゃあ、総当たり戦をすればいい」

 

この状況を見かねた明は、ここで折衷案を提示する。

 

「俺とオルコットと織斑、三人の試合を実際に見て、改めてクラスの皆が投票する」

「なるほど、こいつらの決着も着くし、クラス代表も決められる。そういうことだな?」

 

千冬の確認に、明はまたこっくり頷いた。

クラスを見渡してみれば、それがいいと頷きあったり、案を出した明に向け親指を立てていたり。

手ごたえはかなりいい。

 

「実力を見るということは、ハンデはいらないということですの?」

「勝敗抜きに評価してもらうのだし、いらんやろ」

 

セシリアのちょっと煽るような言い方が、実際に矛先を向けられると、何となくむっときたので。

明も同じように、やや煽るような口調で返した。

効果は覿面だったらしく、セシリアはぐ、と押し黙った。

 

「話は纏まったな?では、一週間後にクラス代表決定戦を執り行う!出場する各員は、念入りに準備するように!」

 

手を叩いた千冬の一声で、騒ぎは一段落。

時間が迫っているからと、授業が再開される。

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

「聞きましたよ、織斑先生。クラス代表決定戦するんですって?」

 

IS学園、職員室。

事務仕事のため席に着いた千冬に、同期の教師(年上)が話しかけてくる。

 

「男がISに触れることに、抵抗を感じる生徒がいまして。彼らを御し切れなかった私の落ち度です」

「でも、そういうぶつかり合いって、学生らしくていいと思います」

 

『私も覚えがありますもん』と、彼女はどこか面白そうに笑った。

 

「とはいえ、相手は代表候補生でしょう?織斑くんと鐘子くん、大丈夫でしょうか?」

 

そしてすぐに、素人同然の男子二人を心配して、眉をひそめた。

公正に知識を与える立場とは言え、それでもやや女尊男卑よりな思想のある職員達。

この女性はその中でも珍しい、千冬と同じように男性を軽視しないタイプだったので。

男兄弟がいる千冬としては、比較的話しやすい人でもあった。

 

「愚弟には期待したいところですが、中学はバイトに明け暮れていたので何とも・・・・土壇場には強いのですけど」

 

中学時代の一夏は、『千冬姉を手助けしたい』と、それまで続けていた剣道から離れ。

友人の家が営む定食屋で、手伝いをしていた。

とはいえ、その時の千冬は既に十分な稼ぎを得ていたので。

もらってきたお駄賃は、彼の小遣いとして好きに使うように告げていたが。

実姉としては、その献身さが嬉しかったのを覚えている。

 

「じゃあ、鐘子くんは?」

「鐘子の方は一夏以上に知らないので、現時点では・・・・ですが」

 

ここで言葉を区切った千冬は、何やら考えてから。

 

「話は変わりますが、『鍋島大成』という方はご存知ですか?」

「聞いたことあります。確か、あの『島津』の関係者だとか。実力もそれ相応らしいですね」

「ええ」

 

ISが国力とほぼイコールな時代。

影響を与えそうな大きな組織や有力者を覚えておくことも、IS学園の教師に求められる。

そして、いざこざが起きた場合の知識として活用するのだ。

すらすら答えた同期に頷いて、千冬は続ける。

 

「実は、日本代表になったばかりの頃、彼と試合をしたことがありまして」

「そうなんですか!?」

 

試合自体が非公式だったからか、一般には知らされていなかったらしい。

まあ、女性の力を知らしめるだなんて呆れた理由の元で行われた試合なので、その方がいいかも知れないが。

予想通りとは言え、ぎょっとした彼女。

千冬は苦笑いを返した。

 

「で、結果は?」

「完敗でした」

 

嘘偽り無く答えれば、同期はもちろん。

聞き耳を立てていたほかの職員達も驚愕している。

『そんな』だの『男が?』だの、小声で漏らしていた。

 

「最初から最後まで、まるで指導を受けている感覚で」

「遊ばれていたんですか?」

「別に、こちらを蔑む様子はありませんでしたが、少なくとも試合とは思われていなかったでしょうね」

「そんなに強い相手だったんですね・・・・」

「ええ」

 

同期に頷きながら、当時を思い出す千冬。

『これだけ及ばぬのなら、ベルリンで弟を誘拐されて当然だ』と、納得した記憶も一緒に。

 

「それで話は戻りますが、鐘子はその孫なんだそうです」

「鐘子くんが?」

「ええ、鍋島氏が母方の祖父らしく、必然と幼少の頃から指導を受けていたと」

「な、なるほど・・・・」

 

IS抜きとは言え、何かと規格外扱いされがちな千冬を圧倒した人物。

その指導を受けた青年がいると言われれば、確かにある程度は期待してしまうと。

同期の女性は納得した様子だった。

 

「とはいえ、そういう話を聞いているだけで、実際のところはどうなのか、私には判断がつきません」

「なるほど、結局は一週間後を乞うご期待ってことなんですね」

「そうなります」

 

会話は一段落。

いい加減職務に戻ろうと千冬が促したことで、この話題は終わった。




今回分のストックはここまでです。
新たになった拙作を、どうぞお見守り下さるよう、お願い申し上げます。
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