実力至上主義の学校に数人追加したらどうなるのか。※1年生編完結   作:2100

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どうも。書き溜めが尽き、現在即興で物語を作っている、誤字報告機能の使い方をついさっき知ったハーメルンど素人投稿者2100です。
では、どうぞ。


ep.18

 そしてやってきた俺&櫛田の罪滅ぼしの日。俺の提案で綾小路も加わって、家電量販店に佐倉のデジカメの修理をお願いしに行く。奇しくもそこは、おととい藤野と一緒に立ち寄った場所と同じだ。

 部屋を出ると、ちょうどエレベーターが降りてきている。待つ必要がないのはラッキーだな。

 それに乗り込もうとした時、中には既に乗客がいることに気がついた。

 メガネをかけ、マスクをつけ、長めの髪を後ろで二つにまとめて猫背の女子……あ、佐倉だこれ。

 

「お、お、おはよう速野くん……」

「……おはよう」

 

 現在時刻は昼前なのでおはようが適切かどうかは分からないが、挨拶されたら返さないわけにもいかないので、ひとまず返答しておくことにした。

 

「……どうしてもっていうならいいんだが、マスクは外した方がいいと思うぞ。櫛田や綾小路も分からないだろうし……」

 

 俺もこの場が人混みだったら、佐倉を佐倉だとは認識できなかったかもしれない。

 

「あ、そ、そうだよね、不審者っぽい、かな……」

「別に不審者ってわけじゃ……それにちょっと逆効果な気がする」

 

 佐倉は目立ちたくない→顔を見せない、というような発想に至ってしまったようで、佐倉だと分からないようにするには適しているが、むしろ人の目につきそうだった。本末転倒というやつだな。

 

「そ、そうですよ、ね……」

 

 言いながらゆっくりとマスクを外す。これで一応いつもの佐倉だ。後の2人も認識できるだろう。

 違う部分といえば、服装か。

 そういや、多分綾小路も櫛田も普段着で来るよな。この学校に入ってから、同級生の私服姿を目にするのは初めてだ。もちろん、俺も私服で外に出るのは初めて。制服を除けば、寝巻き以外着たことない。休みの日は一日中起きたままの格好なんてザラだったからな。

 まともな私服は持ってないが、どうせ綾小路も似たようなもんだろうと踏んで特に気にしなかった。

 集合場所付近に到着し、近くのベンチに2人で腰掛ける。

 

「2人は……」

「……まだみたいだな」

 

 少なくとも櫛田はその場にいれば目立つ存在だ。見逃しているということはないだろう。

 少し時間が出来てしまったが……どちらからも話せない。だから言っただろう、コミュ障同士はこんな感じだと……てかよくよく考えてみると、今日集まる4人のコミュ力極端すぎるだろ。櫛田はコミュ力異常だし、一番まともに近いのは綾小路かな。

 

「あ、あの、速野くんっ」

「……な、なんでございましょう」

「えと、今日は来てくれてありがとうございます……」

「ああ……いや、カメラ壊れちまったのは俺のせいでもあるしな。本当は俺から言い出せれば良かったんだが……」

 

 チキンなのでそれは出来なかった、と心の中で付け加えておく。

 

「そ、その、速野くん、連絡先交換、しない……?」

「……いいのか?」

「う、うん、その、速野くんたちの役に立つかもしれないから……」

「?ああ、分かった……」

 

 実際はよく分かっていないが、嫌ではなかったので拒否はしなかった。役に立つかもって……まあ、確かに俺としちゃ渡りに船だが……まさか。

 と、ある考えに及んだところで声をかけられた。

 

「あ、いたいた。佐倉さんと速野くん」

 

 隣のベンチのあたりに、綾小路と櫛田が立っている。

 櫛田の私服はナチュラルな感じだが、本人が持つよさを存分に引き立てるものだった。綾小路は、予想通り俺と同じで特筆すべき点のない格好をしている。

 取り敢えず人数も揃ったので、4人で家電量販店に移動を始めた。

 店内に入ると、昨日と全く同じ光景が目の前に広がる。

 

「確か、修理受付はあそこの方にあった気がする」

 

 言いながら櫛田が指さしたのは、店の一番奥。いまここからは直接見えないが、その方向であってたはずだ。

 前に俺と櫛田。後ろに綾小路と佐倉が付いて来る形だ。

 

「速野くん、前にここ来たことあるの?」

「……なんで?」

「カウンターまでの行き方知ってるっぽいからさ」

「あー、そういうことか。実は一昨日ここに来たんだ」

 

 その言葉に、後ろの佐倉がビクッと反応する。あ、そっか、佐倉も同じ日に来てたんだったな。

 

「そうだったんだ。何か買った?」

「何も。イヤホン見ただけだ」

「そっか。じゃあ、もし今月ポイントが入ったら奮発して買っちゃうのもいいかもね」

「……まあ、そうだな」

 

 櫛田との会話は楽だ。基本櫛田は話題が尽きないので、飛んで来た質問に答えるだけで会話が成立する。

 

「着いた。ここだね、修理受け付けてくれるところ」

「あ……」

 

 カウンターに到着したが、佐倉の表情には嫌悪の色がある。

 見てみると、カウンターを担当していたのは昨日と同じ男性店員だった。

 

「あれ?どうしたの佐倉さん」

「あ、え、えと、その……」

 

 佐倉の嫌悪の先が男性店員だと目星をつけているのは佐倉を除いて俺だけらしく、櫛田もなぜ佐倉が立ち止まったのか分かっていない様子だった。

 ……俺が苦手としているのは、同級生や知り合いなど、ある程度親しみを持たなければならない場面での会話だ。そういうものがなく、例えば今のように店員とのある種機械的なやりとりならいける。普通櫛田が適任だが、俺でも行けるだろう。

 

「佐倉」

「え?えと……」

 

 名前を呼び、ジェスチャーで出て来いと伝える。それに着いて櫛田も来た。

 

「すみません。こちらの店で彼女が購入した品物が、どうも不具合を起こしているようで。修理についてお伺いしたいんですが」

「はい。購入したものは?」

「デジカメ、なんですけど」

 

 今度は櫛田が答えた。

 そこからは、俺の役割はほとんどないに等しいものだった。基本的には櫛田が対応し、佐倉はデジカメについての質問にだけ答える。

 話を聞くと、落下した時に中の部品の一部が壊れ、正常に作動しなくなっているとのこと。保証期間中だったため、無料での修理が可能ということらしかった。

 もういいか、と判断して、俺はそこを離れて綾小路と合流する。

 

「どうするんだ。下見するんならこれはいい機会だと思うんだが」

「お前、もしかしてそのために櫛田に俺を推したのか?」

「その側面もあるが、肩身が狭そうだってのは本当のことだぞ」

「……まあ、どっちにしても俺は別に何も狙ってないからな?」

「お前がそう言っても、俺はもうそうは思ってない。あの場で監視カメラの話を出したのは、俺や堀北にその方法を思いつかせるためだったんだろ?」

「違う、って言ったら信じるのか?」

「いや」

「じゃあ何言っても無駄だ」

 

 あくまでも、か。

 

「じゃあ、なんで堀北に帰ろうと誘われた時、俺も誘ったんだ?」

「お前と同じような理由だ。肩身が狭かった」

「お前堀北と帰るのは珍しくなかっただろ……」

「気分だよ。てか、櫛田たち大丈夫か」

 

 綾小路は少し強引に話題を変えてきたが、今の会話でよりはっきりした。俺はこいつの手に落ちかかっていたこと。昨夜の綾小路へのメールで、すでにほとんど手のひらの上に乗っかってしまったかもしれないこと。そして、堀北にも俺と同じ可能性があるということも。

 と言っても、まだ可能性の話だ。本人が主張する通り、単なる思いつきでの発言や偶然が重なっただけかもしれない。

 それに手のひらの上と言っても、まだ完全に乗っかったわけじゃない。綾小路は恐らく、俺に生徒会長と対決したのを見られていることを知らない。その他にも、綾小路に知られていない部分はたくさんある。

誰かの思い通りというのは、もちろんいい気分はしない。だが、決定的に対立しない限りは俺はその流れに逆らわないことにした。

 基本的に綾小路の存在がプラスになることは確実だろうからな。

 

 視線をカウンターに戻すと、どうやらあの男性店員が櫛田を軽くナンパしているらしかった。綾小路はこれを見て大丈夫かと言ったんだな。

 いい加減先に話を進めたいと思ったのか、櫛田は話題をカメラの件に戻した。

 残りの作業は、用紙に必要事項を記入するだけらしい。

 しかし、佐倉はそれをためらった。

 

「佐倉さん?」

 

 櫛田が疑問を投げかけるが、佐倉が動く気配はない。

 すると、隣にいた綾小路が2人の元に駆け寄り、佐倉からペンを受け取った。

 

「修理が終わったら、連絡は俺の方にしてください」

「え?で、でも、このカメラは……」

「購入者と使用者が異なっていても問題ないはずですし、保証に必要な事項は既に達成されているはずです。法的に問題はどこにもないと思いますが。かかれる連絡先が彼女でないといけない理由がありますか?」

 

 店員が答える前に、綾小路は記入を終えていた。

 

「い、いえ、大丈夫です……」

 

 救世主綾小路のファインプレーによって、必要なことは全て終えた。修理には2週間ほどかかるらしいが、まあ、その点は佐倉は我慢だな。

 

「ちょっとすごい店員さんだったね……焦っちゃったよ」

「ちょ、ちょっと気持ち悪い……かも」

「き、気持ち悪いまではいかないけど……綾小路くんはどう思う?」

「まあ、少し近づき難いではあるかもな」

「速野くんは?」

「ん、ああ。まあ、そんな感じだな」

「それじゃ分かんないよ……」

 

 不満そうな顔を見せる櫛田。

 

「佐倉、もしかして1人で行く勇気が出ないって、あの店員が?」

 

 俺がそう問うと、佐倉は小さく頷いた。

 

「偶然見かけたんだが、一昨日もここ来てたよな。その時か?」

「その時も、だけど……カメラを買いに行った時に、声をかけられて……」

 

 やっぱりそういうことだったか。概ね予想通りだ。

 

「じゃあ、それで綾小路くんが書いたの?」

「ああ。住所とか電話番号とか、色々書く必要があったみたいだからな」

「あ、ありがとう綾小路くん……凄く助かったよ……」

「別に気にしなくていい。修理が終わったって連絡が来たら、佐倉にも連絡するから」

「う、うん」

 

 その後は主に櫛田と佐倉の会話のキャッチボールが行われていた。俺はその中に入ることができない。

 そんな時、綾小路がこんな質問をした。

 

「佐倉って、景色専門なのか?例えば、人を撮ったりとかは?」

「え、ええっ?」

 

 多分綾小路は自覚なく聞いたんだろうが、そこは隠れた地雷だ。多分俺しか知らないと思うが、人も何も、佐倉が撮っているのは自分自身なのだから。

 

「……ひ、秘密」

 

 そう言いながら、その秘密を知ってしまっている俺の方を見る佐倉。

 否定しないのかよ……まあ、嘘はつきたくなかったってところか。

 

「そうだ。ついでで悪いんだけどさ、ちょっと店内見て回ってもいいか?」

「何か買いたいものでもあるの?」

「ちょっとな。3人は適当にぶらぶらしてくれていいし」

「私も行くよ。ね?」

「う、うん、付き合ってもらったし、時間もまだあるから」

 

 櫛田、佐倉は綾小路について行くらしい。櫛田は俺にも「行くよね?」的な視線を向けてくるが、俺はそれに答える。

 

「悪い、俺ちょっと抜けていいか?」

「え、速野くんも何か見たいもの?」

「たいしたことじゃない。店員に気になることがあるんで、それについて少しな。2人は綾小路と一緒にいてくれ」

「うん、わかった」

 

 正直怪しさマックスだろうが、櫛田は特に追求してこなかった。俺はその場を離れ、元来た道を引き返した。

 

「すみません」

「あ、何でしょうか……」

「いえ、大したことじゃないんです。さっきの子、可愛いですよね。もしかして知り合いですか?あ、まさか彼氏さんとか?」

「え、えーと……」

「答えてくださいよ。彼女、結構人気あるんですよ?それに遠目から見てましたけど、あなたと彼女、なかなかお似合いだと思うんですよね。ほら、彼女も目が合って恥ずかしそうにしてましたし」

「や、やっぱりそうかなあ」

「……」

 

 まさかここまでとは……

 

「聞かせてくださいよ。馴れ初め話、みたいな?」

「そ、そうだなあ。彼女と会ったのは確か、2年前だったかなあ。本当に可愛くて、雫ちゃん、ブログもやってて、僕がコメントすると返事が返って来たんだ。どうしてか、返事はしてくれなくなったけどねえ」

「ブログ?え、雫?」

「君は知らないんだねえ。雫ちゃんはアイドルなんだ。雑誌で一目見た時から運命を感じた。あの日、ここで再会した時は、僕は神様は本当にいるんだなあって思ったよ。そのことはブログにもコメントした」

 

 すぐに携帯でアイドル、雫と画像検索すると、映っていたのはメガネを取った佐倉の面影を持っている美少女だった。

 通常検索にすると、店員が言っていたブログも出て来た。

 そのページに飛ぶと、この雫というアイドルが自分で撮ったであろう写真がアップされている。写真的にグラビアアイドルらしいな。

 店員の言っていたコメントを見てみる。

 基本的に応援のメッセージが寄せられているが、その中で一際不気味なコメントがあった。

 その内容は、「運命を感じるよ」「目があったの、気づいた?」「神様は本当にいるんだなあ」などなど、店員の言っている言葉とほぼ一致していることから、この店員のものであるということは間違いなさそうだ。

 ふーん、なるほどな……

 

「すごいですねそれは。応援しますよ。では、そろそろ時間なんでこれで失礼します」

 

 そう言って、櫛田たちがいるであろう場所へ向かう。

 去り際、その店員は俺の手元を見て心底驚いたという表情を見せた。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 俺がその場所に向かう前に、すでに綾小路の用は済んでいたらしく、3人とすれ違った。

 

「もう終わってたのか」

「うん。速野くんも終わった?」

「ああ」

 

 思いがけない収穫がいくつもあった。正直、いま佐倉をどんな目で見ていいか分からない。

 そして今佐倉と目があった瞬間、今までとは違う雰囲気を佐倉から感じた。

 ……ああ、そうか。

 多分気づいたんだ。俺が知ってしまったということに。

 おそらく、俺が店員と佐倉について、いや、グラドルの雫について話したことも、多分看破された。根拠はない。だが、分かる。佐倉もその経験上、微細な変化であっても敏感に察知したんだ。

 なら、佐倉の俺への信頼は崩れ去ったかもな。

 店を出て歩き、最初に集合した場所に戻って来た。

 

「あ、あの、今日は本当にありがとうございました……凄く助かりました」

「大丈夫だ。これくらいなら、またいつでも協力する」

「うん。私たちにできることなら何でも相談して?でも佐倉さん、できればなんだけど、普通に話してくれないかな?同級生に敬語って、なんかちょっと変な感じしちゃってさ」

 

 確かに、佐倉の口調は丁寧だが、櫛田にとっては普通に話してくれた方が嬉しいだろう。

 

「は、速野くんもそう思う……?」

「え?」

 

 突然、意見を佐倉から求められる。少し驚いてしまったが、思っていることを返答することにした。

 

「そうだな……まあ、普通に話した方が親しくなった感じがしていいと思うぞ」

「そ、そっか。そう、だよね……分かった。やってみるね」

「あ、でも無理はしなくていいからねっ」

「だ、大丈夫。私も、その……」

 

 ごにょごにょ、と語尾の方は聞こえなかったが、佐倉の表情からはわずかながら明るさが見て取れた。

 櫛田もそれ以上はグイグイ行かなかった。なるほど。誰とでも仲良くできる、とは、誰とも適切な距離感を見出すことができる、ということか。

 なら、堀北の時は意図的に無理に近づいていたのか、それはよく分からなかった。

 

「じゃあ、また明日学校で」

 

 そろそろいい時間だと思っていた頃、櫛田が解散を切り出す。

 俺も綾小路もそれに同意を示したが、佐倉はその場を動かなかった。

 

「あ、あのっ!」

 

 その声に振り向くと、佐倉は真っ直ぐに俺たちの目を見ていた。すぐに逸らしてしまったが、今まで聞いた佐倉の声で一番大きかったかもしれない。

 

「その、今日のお礼って言ったら、少し違うけど……」

 

 そう前置きし、今度ははっきりと言った。

 

「須藤くんのことっ……何か、協力できるかもしれない……」

 

 自ら名乗り出るという想定外の佐倉の行動。3人ともお互いの目を見合わせた。

 

「それって、佐倉さんが須藤くんの喧嘩を見てた、ってこと?」

「うん、本当に偶然……信じて、もらえないかもしれないけど……」

「そんなことない。でも、無理はしなくていいんだよ?私たち、恩を着せるために今日来たわけじゃないし……」

 

 機会があれば、とは思っていたが、俺もそんな恩着せがましいことをするつもりはなかった。

 しかし、佐倉はそれを否定する。

 

「ううん、無理なんてしてない……それに言わないと、後悔する、と思うから……須藤くんを傷つけたいわけじゃなかったの。でも、名乗り出ると目立っちゃうし、ずっと、勇気が出なくて……」

 

 目撃者として名乗り出るには、それだけのリスクがあった。佐倉はあくまでそれを警戒しただけ。誰も佐倉を責めることはできないだろう。

 

「ありがとう佐倉さん。きっといい方向につながるよっ」

 

 そう言って櫛田は笑顔で佐倉に接した。

 果たして、佐倉が見たものとは。

 この争いはどうなるのか。

 そして……

 

 考え事をしながら、俺もその場を立ち去ろうとした時、服の裾を引っ張られる感覚があり、立ち止まった。

もちろん、それは佐倉だ。

 何が言いたいかは、だいたい分かっている。だが、それを俺から言うわけにもいかない。

 意地が悪いことは自覚した上で、どうした、と佐倉に聞いた。

 

「……知られちゃった、かな……」

「……佐倉も分かったんだな……」

 

 もちろん、目撃者のことじゃない。

 

「……うん。その、今まで隠してて……」

「いや、それで正解だよ。ただ……もちろん、誰かに言うつもりはないけど、気づかれてもおかしくない、かもな。目撃者として名乗り出ちまったから……本当によかったのか?もしまだ迷ってるなら……」

「ううん、もう迷ってないよ。その、こういうの、覚悟を決めた、って言うのかな?」

「……そうかもしれないな」

 

 その言葉を聞き、迷っているなら、なんて質問したことを少し後悔してしまった。

 

「……佐倉」

「な、なに……?」

「……無理に、とは言わない。一回、メガネを取ってくれないか?」

「……うん。いいよ」

 

 ダメ元だったが、了承してくれた。

 佐倉はゆっくりとメガネを取る。そして、マスクも何もつけていない佐倉の素顔を見た。

 

「……」

 

 まさに、別人だった。いや、雰囲気も変わっている。それは普段の佐倉というより、カウンターで見た写真から感じた、人気アイドルのものだった。

 

「……も、もういい?」

「あ、ああ、悪い」

 

 気づけば、何もかも元に戻っていた。

 少し佐倉に翻弄された気がして、悔しい気持ちになる。

 

「……やっぱり、佐倉は佐倉だな」

「えっ……」

「まあ、無理するなってことだよ。色々と」

「……うん、ありがとう」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 それから約3時間後、同じ場所。

 そこにいたのは、1人の男子高校生と、サラリーマンのような形をした1人の男性だった。

 

「……ちゃんと来たんですね。騙されるとは思わなかったんですか?」

「ま、まさか、騙したのか!?」

「いいえ。あの時、カウンターで俺の手元の携帯に表示した通り、連絡先、教えますよ。切ないですもんね」

「あ、ああ……」

 

 その男性は安心したようにそう呟き、それに対して、その男子高校生は……

 

 誰にも見せたことのないような、温度のない営業スマイルのようなものを顔に貼り付けていた。




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