実力至上主義の学校に数人追加したらどうなるのか。※1年生編完結   作:2100

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では、どうぞ。


ep.21

 俺と佐倉は、並んで教室に向かって歩いていた。

 

「恥ずかしいところ、見せちゃったな……でも、ちょっとスッキリしたかも」

「そりゃよかった」

「速野くんは、その、あんまり泣いたりしなさそうだね」

「……まあそうだな。大泣きしたのは確か、5、6年前だったか」

 

 玉ねぎのせいではない、本当に心から悲しくて泣いたのはそれが最後だと思う。

 

「……今日は、ありがとう。勇気出して良かったって思ってる」

「そうか」

「うん。本当に」

 

 喜ばしいことだ。佐倉は今日、勇気を出すことによって得られるものを知った。俺が上から目線で言えることじゃないが、それは一つ、佐倉の成長につながったんじゃないだろうか。

 それ以後お互い無言で教室に戻ると、そこには先に戻っていた堀北と、綾小路、Bクラスの一之瀬と神崎がいた。

 

「おっ、速野くんおつかれ様ー」

「あ、ああ、どうも……」

 

 ふと後ろを見ると、佐倉はもうすでにいなくなったしまった。まあ、この空間は佐倉にはちょっと厳しいか……

 

「今、堀北さんから説明を受けてたの」

「説明?話し合いのか?」

「それも含めて、ね」

 

 そして、一之瀬が話を始める。

 明日の四時までに、具体的にどうするのか。どのような方法で解決させるのか。

 そしてそれは、俺の……いや、今俺と目が合って視線を交錯させている似非事なかれ主義の思い描いたものと寸分違わないものだった。

 

「なるほどな……でも、いいのかBクラスは。特に一之瀬、お前の流儀ってものには沿わないものだと思うが」

「それは先ほど確認したわ。協力してもらえることになった」

「……」

 

 この2人……一体何を考えてるんだ……?

 よく分からない。こんなことをして何になるのか。

 だが、取り敢えずやるべきことはやっておくことにした。

 

「一之瀬、俺からお前に20000ポイント譲渡する。買うときの足しにしてくれ」

「え?でも」

「大丈夫だ。それに、Dクラス的に言えば出せるのはこれが限界だからな」

 

 それに、これはある意味返済だ。もらったものを返しているだけ。

 

「……そっか。じゃあ、受け取っておくことにするよ」

 

 そこで、一之瀬は自分の端末を取り出す。

 俺もそうしようと、ポケットに手を突っ込む。

 

「……あれ?」

「どうしたの?」

「いや、その、端末がどっかに……話し合いが終わるまではあったと思うんだが……」

「ええ!?」

「悪い綾小路、お前の端末貸してくれ。確か連絡先交換したら位置情報わかるよな。少し長くなると思うが頼めるか」

「別にいいぞ」

「助かる。悪い一之瀬。これは明日にしてくれないか?」

「ううん、ポイントはもういいよ。その代わり、速野くんにも貸し一つだからね?」

 

 それは天使の微笑みか、それとも悪魔か。

 いや、どっちでもいい。一之瀬は一之瀬だ。

 

「わかった」

 

 そう言って俺は、パスワードロックが解除された綾小路の端末で自分の端末の位置を確認した。動いている。

 ……よかった。

 その次に俺は、綾小路の着信履歴を開いた。その一番上にあるのは、俺の名前。

 通話終了時刻は、ちょうど話し合いが終わったタイミングだった。審議に参加していたもう1人の人物、その答えだ。聴く専だが。

 俺はそれに、電話をかけた。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 その夜。端末を取り戻し、ベッドの上でゴロゴローゴロゴロー、あーあ、早くポイント入ってこないかな、みたいなギャグを1人でかましていた時、一本の電話が入った。

 画面には、佐倉愛理の文字。

 俺は通話を開始した。

 

「もしもし」

『は、速野くん……いま、大丈夫、かな』

「ああ。なんだ」

 

 どうしたと言うのだろう。明日は佐倉は証言台には立たない。だから極度に緊張する必要もないのだが、どうも様子が変だ。

 

『あ、あのね?私、その……っ』

 

 返答はせず、黙って次の言葉を待つ。

 しかし、10秒、20秒経っても、俺が待っていた言葉は出ない。

 

「……佐倉。お前が何を言いたいのかは分からない。でも前から言ってるように……無理はするな。勇気と蛮勇は別のものだからな」

『……』

「……いや、俺がどうこう言えることじゃないな。ただ、俺はお前に無理をして欲しくない。それだけは言っとく。何をしても、佐倉は佐倉の自由だからな。俺は応援するよ」

『速野くん……ありがとう。私、頑張ってみる』

「?あ、ああ……」

『本当にありがとう、速野くん。ばいばい』

 

 そう言って、電話は切れてしまった。

 結局佐倉の言いたいことは聞けなかった。

 分かったことは一つ。

 佐倉はいま、現状を変えようとして無理をしている。それだけだった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 翌日のホームルーム終了後。俺は昨日の佐倉の電話について考えていた。

 結局何がしたかったのか。佐倉は何を頑張ると言ったのか。

 なんのために、そんな無理をしようとしているのか。

 ふと席を見ると、綾小路も佐倉もそこにはいなかった。綾小路は恐らく事件現場だろうが、佐倉はどこに行ったのか。

 位置情報を確認しても、綾小路も佐倉もそれぞれ別の場所にいる。

 てか、佐倉はこれどこに向かってるんだ?

 

「速野くん、そろそろ時間よ」

 

 そこに、堀北と須藤の二人組が来た。

 

「あ、ああ……」

 

 少し不安になりながらも、俺はその2人についていく。

 その時、佐倉の位置がストップしていることに気がついた。

 

「……」

 

 その場所に何があったのか。頭に叩き込んでいる地図と照らし合わせて佐倉の位置を予測する。

 ……いや、これちょっと、ていうかかなりまずい。

 俺は無意識のうちにその場を駆け出した。

 

「お、おい速野!?」

 

 須藤の声が聞こえるが、悪い、今は無理だ。

 下手すれば一刻を争う事態になる。靴は履き替えず、上履きのまま、俺は佐倉の位置情報が示す場所へと走った。

 

「あれ、速野くん!?」

 

 途中、同じ方向に走っていく一之瀬と綾小路に合流した。そっか、綾小路も佐倉と連絡先交換してたな。

 俺と同じような嫌な予感がしたんだろう。

 位置情報が差していたのは、家電量販店の搬入口の近く。そしてそこにいたのは……

 

「もう、こんなことはやめてください!」

「どうしてそんなことを言うんだい?僕は君が本当に本当に大切で、大好きなんだよ?雑誌で一目見たときからね。ここで会った時には運命を感じたんだ」

 

 佐倉。そして、あのカウンターの店員だった。

 

「や、やめて!やめてください!なんでこんなこと!どうして私の部屋を知ってるんですか!?」

 

 佐倉がカバンから取り出したのは、無数の紙の束。それは先日、俺が佐倉の部屋で見たものとおなじもののようだった。

 

「当たり前さ、僕らは心で繋がっているんだ」

「もう嫌!迷惑なんです!!」

 

 そう叫んだ佐倉は、それを地面に叩きつけた。

 

「そんな、ど、どうしてこんなことを……君を想って書いたのに!」

「い、いや、来ないでっ……」

 

 店員は佐倉に近づく。そして、腕を掴んでシャッターに押し付けた。

 

「今から、僕が本当の愛を教えてあげるよ。そうすれば君もきっと……メー」

 

ガンッ

 

 店員が何かを言い出そうとした時、俺の脚が近くにあった金属製のものにぶつかってしまった。

 

「だ、誰かいるのか!?」

 

 俺は謝罪の念を込め、綾小路と一之瀬に視線を送った。

 すると、綾小路は一之瀬の腕を引いて出て行った。

 

「あーあ、見られちゃったっすねおっさん。エライことしてんなあ」

「へっ!?」

 

 佐倉も俺も、聞いたことのない綾小路の口調に唖然としてしまった。

 その先は俺にも聞き取れなかったが、とりあえず店員が追い詰められているということだけは理解した。

 取り敢えず、あんなヤンキーカップルの真似みたいなことをやれる綾小路と一之瀬を尊敬する。

 

「ひっ!?ご、ごめんなさいもうしません!!」

 

 店員がこちらに向かって走ってくる。

 

「……」

 

 しかし、俺がいるとは気づかず、行ってしまった。

 まあいいか。俺的にはその方が好都合だ。

 もう遅いが、俺も出て行った。

 

「は、速野くん、も……」

 

 綾小路に肩を支えてもらっている佐倉は、俺の方を見て驚きの表情を見せる。

 

「あ、ああ……綾小路と同じような経緯でな」

 

 結局佐倉を助けたのは綾小路だったが。

 

「ねえねえ、さっきの人なんなの?ていうか、さっきアイドルって……」

「……」

 

 一之瀬が綾小路に向かって言っていることから、綾小路が口を滑らせたものだとわかる。綾小路も知ってたのか。

 俺は一度佐倉と目線を交わす。すると、佐倉もうなづいた。

 

「この佐倉は、実はアイドルなんだ。雫、って名前でな」

「え、アイドル!?凄い凄い、じゃあ有名人だね!握手、握手お願いしますっ!」

 

 無邪気にはしゃぎながら握手を求める一之瀬。

 

「綾小路、お前いつから?」

「ついちょっと前だ。悪い、クラスでも何人か気づいてる」

「もしかしたら、これで良かったのかも……自分を偽り続けるのって、大変だから」

 

 佐倉は少し微笑みながらそう言った。

 

「俺がどうこう言えるわけじゃないんだがな……佐倉、無理はするなって何回も言ったはずなんだけど?」

「あはは、うん、そうだね……怖、かったな」

「うわ、凄く可愛い。メガネでこんなに印象変わるんだ……」

 

 一之瀬は携帯で雫のことを検索しているらしい。一之瀬のいう通り、ここまで違うとは誰も予測がつかなかっただろう。

 だが、ファンだったあの店員にはそれは通じず、あんなことに発展してしまったということか……

 

「明日からメガネ外して髪型も変えたら、どうなるかな?」

「ああ、いいんじゃないか。Dクラス前がすし詰め状態になると思うけど」

 

 突然の美少女の出現に、学校中が大パニックになるだろう。Dクラス内は多分、3日ほど授業に集中できないんじゃないだろうか。

 

「てか速野、いいのか。そろそろ審議始まるぞ」

「え?……あ」

 

 そうだ、俺参加するんだった……

 

「悪い、またな」

「うん、また今度ねー」

 

 一之瀬はそう言って大きく俺に手を振る。

 佐倉の方も、遠慮がちに小さく手を振ってくれた。

 綾小路の方は、相変わらず何を考えているかわからん不気味な目で俺を見ていた。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「はあ、はあ、はあ……」

「……あなた何をしているの?」

「いや、まあ、その……色々とな……」

 

 体力が本当になくなってきてる……これは、この夏休みは体動かさないとまずいな。

 俺は遅れてすみませんと言いながら、席についた。

 

「遅刻は本来許されるべきことではないが、まあいいだろう。この話し合いはすでに終了した」

「……え?」

「Cクラス側が訴えを取り下げたのよ。良かったわね、遅刻の責任を問われなくて」

「あ、ああ、そうだったか……でもなんでだ?」

「さあ、知らないわ。私たちにとっては渡りに船だったから受け入れたけれど」

 

 茶番に近いこの会話を打ち切り、俺は生徒会長の方を向く。堀北と須藤、茶柱先生は退室していった。

 会長は話を続ける。

 

「遅刻の責任がなくなったわけではない。本来全員均等に負担させるはずだった今回の話し合いの諸経費、お前に全体の7割の負担を命じる」

「いくらですか?」

「安心しろ。21000ポイントだ。お前なら余裕で払えるだろう?」

 

 以前、会長から60000ポイントをぶん取ったことのある俺にだから言えること、だな。

 

「分かりました。払います」

 

 速やかに支払いを済ませる。その時、一瞬だけ会長の目に俺の端末の画面が映った。

 それを見た会長は驚きの表情を見せる。俺が見た中で一番、会長の真顔が崩れた瞬間だった。

 

「ふっ、なるほど、お前はどうやら隅に置けない奴のようだな」

「は?何を言ってるんですか?」

「橘、生徒会にはまだ空いている役職がいくつかあったな」

「え?は、はい、書記や会計などは空いていますが……何故?」

 

 橘書記が戸惑う中、会長は驚きの一言を発した。

 

「速野、生徒会に入らないか?」

「……はい?」

「か、会長!?それは……」

「不満か?」

「い、いえ、会長の仰ることなら……」

 

 いきなりの申し出。俺は少し困惑してしまったが、努めて冷静に答える。

 

「俺はDクラスだし、この学校をよくしていく自信も覚悟もなく、汚点を残すだけなんで遠慮させていただきます」

「こ、断るんですか!?会長の申し出を」

「理由は今言った通りです。……それに、生徒会に誘うべき人材は俺じゃないでしょう。もっと身近にいるじゃないですか、俺よりよっぽど優秀な奴が」

 

 例えば一之瀬、藤野にも務まると思う。それから……

 

「そうか。だが、この話は覚えておけ。気が変わったら生徒会室に来い。待っている」

「評価していただいたことには感謝しますが、今回の件を解決したのは俺じゃないですよ。お間違えのないよう。では、失礼します」

 

 出ていく俺を、会長と橘書記は無言で見ていた。

 生徒会室のドアを閉めて初めに目に入ったのは、須藤がバッグを持って走り去っていく姿だった。

 そして次に、茶柱先生と堀北。

 

「速野、こっちに来い」

「はい?」

「来いと言ったんだ。早くしろ」

「あ、はい……」

 

 強い口調でそう言われ、少し小走りで2人に近づく。

 それを確認して、茶柱先生は話を始めた。

 

「さて、お前らに問おう。何をした?」

「何を、とは?」

「とぼけるな。あいつらが何もなく訴えを取り下げるわけがないだろう」

「ではご想像にお任せします」

「なるほど、秘密というわけか」

 

 追求されて困るのは俺らだからな。いうわけにもいかない。

 まあ、あの3人がまた訴えを起こしてくるはずはない。それだけは確信できた。

 

「なら、少し質問を変えよう。この作戦を考えたのは誰だ?」

「……何故そんなことを気にするんですか?」

「この会議に参加していなかった綾小路が少し気になってな。そして速野、お前の言動にも気になる部分が多々あった」

「……俺のですか?」

「ああ。昨日、お前が突然始めた1人語り。あれは何が目的だった?」

「そんな目的がある風に取られていたとは心外でした……ただの妄言ですよ。まあ、堀北に勝負を投げて欲しくなかったんで、初めは少し挑発的な言い方をしましたが」

「勝負を投げて欲しくなかった?つまり、お前はこうなることを予想していたというわけか」

「さあ、それもご想像にお任せしましょう」

「ふふ、お前らは本当に面白い生徒だな。では堀北、以前問うたことを改めて問おう。速野のことをどう思う?」

 

 茶柱先生は以前、これと同じ質問を堀北にした。確か須藤の英語の試験の点数の件で、俺が交渉しに行った時だ。

 てか、本人いる前なんですけど?

 

「速野くんは……かなり優秀かと。試験の成績だけではないことは分かりました」

「らしいぞ速野。よかったな」

「何が言いたいんですか……」

 

 茶柱先生が本当に聞きたいことは、それではないはずだ。

 

「もう一つ聞く。綾小路のことはどう思う?」

「彼は……未知数です。ですが、少なからず思うところもあります。彼が実力を隠しているのは明らかです。何故そんなことをしているのかは理解不能ですが」

「実力を隠している、か」

 

 先生は何故かそこだけをリピートした。

 

「速野、お前はAクラスに上がる気があるか?」

「聞いてどうするんですか?」

「いいから答えろ」

「そうですね……堀北がAに行きたいっていうなら、クラスの一員として手助けはします。特権は欲しいですし」

「私はお前自身のことを聞いているんだ」

 

 どうやら、今の答えでは納得いただけなかったらしい。

 

「俺自身としては、Aクラスに強いこだわりは持っていません。ですが、クラスポイントを増やすことにメリットは感じています。その結果としてDクラスが上に上がるなら、それは喜ばしいことじゃないですか」

 

 これは間違いない俺の本音だ。茶柱先生もこれ以上は追求してこないだろう。

 

「そうか、ならいい。お前らに一つ、アドバイスをしておこう。Aクラスに上がりたいのなら、綾小路清隆という人間を今のうちによく理解しておけ」

「どういうことですか?」

「お前らにはもう、Dクラスには欠点を持った生徒が集まる場所であることは説明したな。ならば、綾小路の欠点はなんだと思う?」

「欠点……」

 

 あいつの欠点。意識したことがなかった。

 

「彼は事なかれ主義です」

「ほう、それは普段の綾小路の行動から察したのか?」

「いえ、彼が自分で言っていましたから……」

 

 初めは自信がありそうだった堀北だが、語尾は声が小さくなって行った。

 

「速野、お前はどうだ?」

「俺は……あいつの事なかれ主義という言葉に違和感を持ってました。以前の中間テストも、あいつは何故かあそこに現れましたし。それに以前、綾小路は先生に呼び出されてましたよね。なんのことを話していたか知りませんが、本当に事なかれ主義なら呼び出されるようなことはしないでしょう。色々不審な点が多すぎます。なんで、あいつのDクラスに落ちるような欠点は分かりません」

「ほう、お前はそう考えたか。なら堀北、お前は既に綾小路の術中にはまっているようなものだ」

 

 その言葉に、俺は内心少し驚いてしまった。まるで、この作戦の全てを知っているかのような口ぶりだ。

 

「どういうことですか?」

「何故あいつが入試の点数を全て50点に揃えるような真似をしたと思う。何故、なんだかんだでお前らの手助けをしていると思う?」

「それは……」

 

 入試の点数を全て50点に揃えた……?

 そんなことが可能なのか。思い返してみれば、小テストのあいつの点数も50点だったはず……

 俺にもできない、狙って点数を固定するなんて。満点を取るよりもよほど難しいことだ。

 

「これは私個人の見解だが、Dクラスで最も不良品たる生徒は綾小路だ。そしてその次に速野、お前だ。性能が高い製品ほど扱いが難しい。それを間違えれば、あっけなくクラスは崩壊するだろう」

「……」

 

 俺泣いていいかな……とかそんなことを考えるが、ふざけている場合じゃないなこれは。

 

「お前らは綾小路という人間を知れ。やつが何を目的とし、その行動軸はなんなのか。そこには必ず一つの答えがある」

 

 そう言い残し、茶柱先生はその場を立ち去った。

 残されたのは俺と堀北。

 

「じゃあ、俺も帰る」

「待って」

 

 堀北は俺の手首を掴み、それを止めた。

 

「なんだ」

「あなた……私に何をしたの?」

「それは想像に任せる、と言っていいのか?」

「答えなさい。今回私は、間違いなくあなたに動かされていたわ。あなたは何がしたいの?」

 

 堀北は今回のことをそう理解しているらしい。

 

「……本当にそう思ってるのか?俺がお前を操ったと?そんなこと俺にできるっていうのか?」

「茶柱先生も言っていたあの時の1人語り……キーワードを私に気づかせるためのものだったのでしょう。今の特別棟の状況じゃ不可能、というのは、その現状を変えてしまえばいい、ということ。写真ではなく動画なら、と言ったのは、監視カメラを私の頭の中に連想させるためのもの。違う?」

「じゃあ堀北、そもそもを思い出してみろよ。最初に監視カメラの存在を揶揄した人物。そして特別棟に行った人物、行かされた人物を」

 

 監視カメラが教室にあり、もしも存在すれば明確な証拠になる、と最初に口にしたのは綾小路だ。

 

「……まさか」

「まあ、俺もお前も同じってことだよ。じゃあ、今度こそ俺は帰るからな」

 

 また明日、と堀北に言って、俺は移動した。

 

 俺が不良品、か。

 まあ、確かにそうかも知れないな。

 もしかしたらもっと楽に解決する方法を取れたかもしれないのに、俺はそれを誰にも言わず、Dクラスのためではなく自分のために使った。

 堀北が綾小路の手のひらに乗せられることもよしとした。

 

 だが『  』、それはお前もなんじゃないか?

 いや、周りの状況も違ったし、そうとも言えないか。

 俺はこの場にいない人物を思い浮かべ、呼びかけた。

 

 この学校には、目的がわからない奴が多すぎる。




これで原作二巻分本編は終了となります。主人公が何をしたのか、それは後々明かされますのでご期待ください。
次回は原作三巻分突入!の前に、夏休み突入とバカンスの間のオリジナルエピソードを書きたいと思います。
では、次回もお楽しみに。
感想、評価お待ちしております。


どうでもいいんですが、このep.23の合計文字数は7777です。
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