実力至上主義の学校に数人追加したらどうなるのか。※1年生編完結   作:2100

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オリキャラが登場します。



2019/12/10、大幅に改稿しました。
大まかな流れは変わっていませんが、会話の順序や細かい表現などが元々とは異なります。一度お読みいただいた方も、ぜひもう一度お読みください。


ep.2

 

 

 ごみを片付けた後は、その場で綾小路と別れ、寮の部屋で昼食をとった。

 綾小路は近くにあったベンチに座り、熱湯3分を4分もオーバーして伸び始めたカップ麺を食べていた。お気の毒さま。

ただ、「10分ど〇兵衛」なんて言葉があるように、伸びたとしても———いや、伸びた方がおいしくなるタイプのカップ麺も中にはある。

 綾小路の買ったカップ麺がそのタイプかどうかは知らないが。

 昼食を食べたあとは、まだ買えていない生活必需品を買いに行くことにした。

 着替えるのは面倒だったので、制服のままだ。

 向かったのはホームセンター。そこでシャンプー等のバスグッズ、指定のゴミ袋、歯磨き粉、洗剤など、細々としたものを購入した。しめて約3,000ポイント。まあ必要な支出だろう。

昼飯と合わせて、端末の残高には96,761pptと表示されていた。このpptとは“プライベートポイント”の略称だそうだ。

 掃除機やドライヤー、電子レンジなど、基本的な家電は寮に備え付けのものがある。調理器具もフライパン、まな板、包丁、さじ等は用意されていた。食器も最低限はそろっており、材料を買えばすぐに調理ができる状況だ。

 電気代、および水道光熱費はかからないことになっている。そのためポイントを節約したければ自炊するのが得策だが、10万ものポイントが支給された今、そんな億劫なことをする生徒はいないだろう。

 買い出しから帰ってくると、時刻は16時を少し過ぎていた。

 本格的にやることがなくなったので、俺は勉強を始めた。

 真面目か!と突っ込みたくなるかもしれない。ただ、自分で言うのもなんだが本当に真面目なんだから仕方がない。

 中学時代は、この学校を受けることが決まるころまで、勉強以外にやっていたことと言えばバスケットボールくらいだ。

 もちろん、それも部活でやっていたわけじゃない。俺の数少ない趣味みたいなもんだ。

 そんな感じで過ごしているうちに、早くも夕飯の時間帯になったので、外に出る。

 どこで食べるか。コンビニでもいいが、昼とは違うところで食べたい。

 となると、学食か。

 確か、ラストオーダーは夜七時半までだったはず。いまが6時半過ぎだから、焦らなくても間に合うだろう。

 学食は校舎内にあるので、寮からの道のりは通学路と同じものになる。

 

「明日から、この道を通って学校に通うのか……」

 

 寮からそのまま校舎に向かうのはこれが初めてのことだった。

 所要時間は大体7,8分ってところか。

 それで学食に到着した。

 学食は空いていたが、十人ほどが食事をとっている。新入生かどうかの判別はつかないが、大半はこの時間まで学校に残っていた生徒だろう。

 早速メニュー表を見て、何を注文するかを品定めする。

 

「……?」

 

 その時、俺の目に飛び込んできたもの。

 それは昼間のコンビニと同じ「無料」の二文字。

 

「またか……」

 

 日用品だけじゃなく、食事にも……

 その無料のメニューは「山菜定食」と名付けられている。写真が載っているが、見るからに貧相で、はっきりいって美味しくなさそうだった。

 

「……いや、やめとこう」

 

 興味本位で注文してみようかと思ったが、寸前で踏みとどまる。

 夕飯はしっかりと普通のものを食べたい、という欲求が好奇心を上回った。

 とはいえ、山菜定食も当然気になる。そっちは不味いこと覚悟で明日の昼にでも食べるとしようか。

 結局、450ポイントの生姜焼き定食を選択。

 お膳を受け取り、会計を済ませて適当なテーブル席につく。

 飯に口をつける前にウォーターサーバーから水を入れてこようと思い、椅子を引いて席を立ち上がろうとした。

 そのとき。

 

ゴツン

「あっ!」

「え」

バシャッ~

 

 ……うっそだろおい。

 立ち上がろうとした瞬間、後ろを歩いていた生徒に引いた椅子が直撃。

 そしてその生徒が、持っていたお膳を落とした。

 結果、俺は頭から味噌汁をぶっかけられることになってしまった。

 頭皮に広がる生暖かい感覚。

 ブレザーにも味噌汁がしみこんでいく。

 

「あ、ご、ごめんなさい! いま拭きます!」

 

 ぶつかってしまった生徒は女子生徒で、焦った様子でハンカチを取り出している。

 

「え、ああいや、大丈夫なんで……」

「で、でも拭かないと……」

 

 遠慮したが、その女子はすでに俺のブレザーにハンカチを当てていた。

 さすがにここまでされて無理やり拒否するわけにもいかない。素直に拭かれることにする。

 そして、そろそろいいか、というところで声をかける。

 

「あの……もう大丈夫ですよ。いきなり椅子引いてすいません」

「い、いえ、私の方こそ味噌汁かけちゃって……本当に……」

 

 お互いに平謝り。

 まあ双方不注意だったし、それを自覚している。これ以上の問題はなさそうだ。

 ただ、謝ってばかりでは先に進まない。

 

「あの、床も汚れてるし、そっち片付けませんか」

 

 床には、米やおかずなど、彼女が注文したとみられるメニューが散乱していた。

 

「そ、そうですね」

 

 しゃがみこんで、床を片付ける。

 なんか、数時間前にも似たようなことした気がするんだけどなあ。

 今日はたぶん厄日だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「水、どうぞ」

 

 二つ持ってきたコップのうち、一つをその女子の前に置く。

 

「あ、ありがとうございます」

「いえ……」

 

 その女子はそれを受け取り、ごくごくと飲み始める。

 白く細い喉がかすかに動く様子が目に入り、視線を固定されてしまった。

 襟足が長めの銀髪のショートボブで、色白。身長は平均的だ。目はくりくりとしていて大きく、かなりレベルの高い美少女だろう。

 あと、胸がめっちゃでかい。

 

「あの、学年、教えてくれませんか?」

 

 コップの4分の1ほどを飲んだその女子が聞いてくる。

 

「1年……ですけど」

「あ、そうだったんだ。私と同じ。よかったあ」

 

 そう言って安心した表情を見せる。

 うーん、個人的にはあんまり安心はしないな。例によって、俺は同級生とのコミュニケーションが苦手だ。

 とりあえず頑張ってはみるが。

 

「私、Aクラスの藤野麗那。よろしくね」

 

 明るく自己紹介をされた。

 俺と違って、相当コミュ力が高いらしいというのがすぐに分かる。

 

「あ、ああ。Dの速野知幸だ。よろしく」

「うん」

 

 頷いて、俺に笑顔を向けてくる藤野。

 ああ、男女問わず人気者なんだろうな、こいつ。

 いいことではないとは思っていても、やっぱり人って見た目で判断してしまうものだ。見てくれと雰囲気がいいやつってずるい。

 にしても、どうすっかなあこの雰囲気。

 普通に腹減ってるし、早く生姜焼きを食べたいんだが……なんかこう、食べづらい。

 恐らく、俺が藤野の夕飯を台無しにしたことへの罪悪感に端を発したものだ。

 なら……しかたないな。

 

「……藤野、これ食っていいぞ」

「え?」

「俺の不注意でお前の夕飯おじゃんにしちまったし……まだ手は付けてないから大丈夫だ」

「そ、そんな、悪いよ……それに、速野くんはどうするの?」

「山菜定食でも食べればいいだろ」

 

 試すのは明日の昼、と思っていたが、まあいいや。それに、案外美味しいかもしれないし。

 そうして再び注文カウンターへ行こうとしたのだが。

 

「ちょ、ちょっと待ってってば。そんなことできないよ」

「俺はいいから。気にせず食えよ」

「私がダメなの」

「ダメなの、って言われてもな……」

「うーん……あ、そうだ。じゃあ半分こしようよ」

「……はあ?」

 

 突然わけの分からない提案をしてきた藤野。

 

「意味が分からん」

「そのままの意味だよ。お肉は2枚ずつ食べて、ご飯もサラダも半分ずつ。それから生姜焼き定食は450ポイントだから、その半分の225ポイントを私が速野くんに譲渡する。これでお互いすっきりするでしょ?」

「味噌汁はどうすんだよ」

「えっと……それは、まあ感覚で」

 

 そこだけ適当かよ……やっぱ現実的じゃないだろ。

 

「俺のことは気にせず食えって」

「気にするよ……今回のことは、私にも責任あるし……」

 

 申し訳なさそうにつぶやく。

 ……ここまで主張するなら、ちょっと面倒だがもう仕方がない。

 

「ああもう、分かったから。それじゃ先に食ってくれ。俺が残り食うから。ポイントはあとで払ってくれ」

 

 藤野はそれで納得したのか、頷いて俺に笑顔を向ける。

 こうして藤野の表情を見ると……うん、すごい美少女だなって思います。

 俺の前にあったお膳を、藤野の前に寄せる。

 

「ありがとう。いただきます」

 

 言うが早いか、藤野は豚肉、キャベツ、米を一緒につかんで口へ運ぶ。

 

「んー、おいしい」

 

 その後も、次々と食材を頬張っていく。

 ほんと美味そうに食べるなあ……作った人がこれ見たら喜ぶだろうな。

 余計に腹減ってきた。

 いい食べっぷりを見せる藤野は、5分と経たないうちにノルマである半分を完食してしまった。

 

「ごちそうさま。これ美味しいよー」

 

 テーブルの上にあるティッシュで口を拭きながら、生姜焼き定食の感想を述べた。

 次は速野くんだよ、と言いながら、お膳をこちら側に寄せてきた。

 ……なんか、すごい視線注がれてる気がする。

 

「……もう半分食うか?」

「えっ?あ、ううん、そんなつもりじゃないよ」

 

 どうやら無意識だったらしい。

 

「そうか。それじゃ……いただきます」

 

 豚肉のいい味が出ていて、サラダの食感とマッチしている。そしてそれを白米がうまく中和している感じだ。

 注文してから時間が経っているので、少し冷めているのが残念だが、それでも美味い。藤野のさっきの食べっぷりにも合点がいく。

 にしても……藤野は本当に半分ジャストを残している。

 肉が2枚だったのはもちろん、サラダも半分。米に関しては真ん中でぶった切られたような感じだった。味噌汁も、この残量は恐らく半分くらいだろう。

 めっちゃ律儀だ。

 

「ふう……美味かった」

 

 俺もすぐに完食してしまう。

 

「美味しいよね。こんど友達も誘ってこようっと」

「……もう友達ができたのか?」

「うん。数人だけどね」

「ふーん……なんで今日は誘わなかったんだ?」

「今日初めて会って、さっき一回遊んだばっかりだしね。今日のところはこれくらいがちょうどいいと思うよ」

 

 遊びに行ったのか……その時点で、俺の思う「ちょうどいい」の範囲は大きく超えている。

放課後はごみを拾って勉強してた俺には、理解のできない世界だ。

感服していると、突然藤野が思いがけない提案をしてきた。

 

「ねえ速野くん」

「ん?」

「連絡先交換しようよ。せっかくだしさ」

「……」

 

 おお……これは感動してもいいんだよな?

 初めて携帯を買い与えられて、今年で7年目。いままで家族の連絡先しか入っていなかった俺の携帯に、ついに赤の他人の連絡先が……!

 

「まあ、俺のでいいなら構わないが」

「ほんと? やった。クラスメイト以外では初めてだよー。速野くんは誰かと交換した?」

「いや……見ての通りだ」

 

 端末で連絡先一覧のページを開き、ほぼまっさらな画面を見せる。

 

「あはは……変なこと聞いちゃったかな。ごめんね」

「……」

 

 ……え、入学初日に誰とも連絡先交換してないのって、別に普通のことじゃないのか?みんな数人と交換してるもんなの?

 でも確かに、綾小路と交換しようと思えばできた場面はあった。

 みんなああいう場面で交換するのが普通で、逆に俺と綾小路が変だってことか。

 

「はい、連絡先入れ終わったよ、ありがと」

「あ、ああ、こっちこそ」

 

 藤野に渡していた携帯を受け取ると、画面には「藤野麗那」の文字があった。

 

「取り敢えず出るか」

「うん、そだね」

 

 食器を片付け、学食を出る。

 俺の中ではこの時点で藤野とは別れたものだと思っていたので、何も言わずに、寮とは違う方向へ歩きだす。

 しかし藤野の中では違ったらしく、「ちょっと待って」と呼び止められた。

 

「もしかして、クリーニングに行くの?」

「ん、ああ。さっき調べたら、平日は8時までやってるらしい。今のうちに出しに行こうと思ってな」

 

 学校から支給されたブレザーは2枚あるので、1枚クリーニングに出しても問題はない。

 

「じゃあな」

「あ、ちょ、待ってって。なんですぐ行っちゃおうとするの……?」

「いや……ここで解散じゃないのか?」

「私も一緒に行くよ」

「……なんで?」

 

 クリーニング屋に服の所有者本人以外が行ってもなんの意味もないことだ。

 

「さっきも言ったけどさ、この件は私にも責任があるから……せめてこれくらいは、ね? もちろん、クリーニング代も半分出すよ」

「……まあ止めないけど、面白くはないと思うぞ?」

「面白さは関係ないよ」

 

 さっきの食べ方といい、ほんと律儀な性格してるな、藤野は。

 ただ、全員とこんな接し方をしているとは思えない。

 この接し方を「いちいち細かい」とか「面倒くさい性格」などと思う人もいるだろう。

 藤野は恐らく、この短時間で俺の性質を自分なりに分析して、それに適した接し方をしている。

 だとしたら、恐ろしい人間観察力の持ち主だ。

 

「クリーニング屋さんって、どこにあるの?」

「ショッピングモールの一角のはずだ……ん?」

「ど、どうしたの急に……?」

 

 急に立ち止まった俺に驚いている藤野。

 

「……いや、あの自販機」

「え? 普通の自動販売機じゃない?」

「左上のミネラルウォーター……0ポイントって書かれてるよな」

「あ、ほんとだ……無料、ってことだね」

 

 また無料か。

 

「この学校、やけに無料のものが多くないか」

「あ、確かにそうかも。さっきの山菜定食もだし、遊びに行ったショッピングモールにも、ちょこちょこ無料の商品があったよ」

「ショッピングモールにも……?」

 

 本当にいたるところに無料のモノがあるんだな。

 さすがにかなり引っかかる。

 学食も無料、水も無料。となると極端な話、食費をゼロに抑えることも理論上可能だ。

 学校側は、たとえ生徒のポイントがゼロの状態でも、ある程度生活できるようにしているってことだ。

 おかしくね?俺たち10万も貰ってるのに。

 これが月5,000pptや10,000pptしか支給されないなら話は別だが……

 ……ん?

 

「確か……」

「どうしたの速野くん?」

 

 よくよく思い出してみると……Sシステムの説明のとき、茶柱先生は「毎月100,000ppt」とは一言も言ってなかったような……

 藤野にも意見を聞いてみよう。

 

「……ちょっと聞いていいか?」

「全然いいよ。なに?」

「俺たち、今月10万もらってるけど……今後、支給額が減るって、あり得る話だと思うか?」

 

 聞くと、藤野は思案顔になる。

 午前中の教師からの説明を思い出しているんだろう。

 

「そんな説明は受けてないけど……でも確かに、『毎月10万』とは一言も言ってなかったかも……」

 

 どうやら藤野のクラスでも同じのようだ。

 

「……節約、した方がよさそうだな」

「うん……私もちょっと不安になってきた」

 

 仮に支給ポイントが変動するとしても、学校側がこんな不親切な説明の仕方をするとは考えにくい。

 ただ、可能性が捨てきれない以上、最初の1カ月間は様子見で節約を心掛けた方がよさそうだ。

 せっかくあちらこちらに無料の商品があるんだ。利用しない手はない。

 自炊は落ち着いてから、なんてさっきまでは考えてたが、明後日からでも始めよう。

 

「……取り敢えず行ったほうがいいな。時間に余裕があるわけじゃない」

「あ、そうだね。8時までだっけ」

 

 立ち話をしている間に、時刻は7時40分を回っていた。

 時間に遅れるとまずい。味噌汁がかかったブレザーを1日部屋に置かなければならなくなってしまう。

 少し歩くスピードを速め、クリーニング店への道のりを急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「思ったより安く済んだね」

「……ああ、確かに」

 

 1000ポイントくらいは覚悟してたが、意外にも600ポイント弱で引き受けてもらうことができた。割り勘で一人当たり約300ポイントの支払いだ。

 仕方がないこととはいえ、これは防げた出費だよなあ……

 店員のおばちゃんに「入学初日にここに来る新入生なんて初めてよー」と困り顔で言われたときは、まあそりゃそうだろうな、と思いつつ、苦笑いするしかなかった。

 

「ショッピングモール、まだ結構人いたね」

「そうだな」

「私たちと同じ新入生かな?」

「新入生もいただろうな」

 

 中には俺のクラスメイトもいたかもしれないが、まだ顔も名前も覚えていないので認識はしていない。

 紙袋を2つも3つも持って上機嫌に歩いていた女子生徒は、多分新入生だ。早速服か何かを買ったんだろう。あの様子だと、10万なんて1カ月でぱっと使い切ってしまいそうだ。

 さっきは男子の姿は見なかったが、ゲーム機なんかにポイントを使う人は少なくないだろうな。

 節約するなら、欲は大敵だ。俺がゲームにも服にも全く興味を持ってなくてよかった。

 道中、こんな感じで会話を少しはさみながら、10分ほど歩いて寮に到着した。

 寮の規定上、男子は下の階、女子は上の階ということになっているため、俺の方がエレベーターを先に降りることになる。

 

「今日はほんと、ごめんね」

「お互い様だ。こっちこそ悪いな、こんな時間まで」

「ううん、全然。次からは気を付けないとね」

「ああ。もう二度とこんなことはごめんだ」

「あはは……」

 

 いや、冗談抜きでもうこりごりだ。クリーニング代かかるし、あと今まであんまり気にしてこなかったが、まだ髪の毛が味噌汁で若干湿ってるんだよな。

 明日、学校に行ったら髪の毛からほんのり味噌汁の香りが……なんてことがあっては困る。

 今日買ってきた新品のシャンプーで入念に洗おう。

 

「あ、5階ついたよ」

 

 そうこうしているうちに、エレベーターが俺の降りる5階で停止する。

 

「じゃあな」

「うん、またね。あ、今夜連絡するね」

「ああ。……え?」

 

 俺の疑問の声が藤野に届く前に、エレベーターのドアは完全に閉まり、上昇していってしまった。

 

 いや、今夜連絡するって……社交辞令だよな、さすがに。

 

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