実力至上主義の学校に数人追加したらどうなるのか。※1年生編完結 作:2100
では、どうぞ。
ep.30
無人島における特別試験が終了し、丸3日ほどが経過した。
高度育成高等学校一学年一行は、贅沢すぎる豪華客船の上で贅沢すぎるバカンスを贅沢に満喫していた。なんかこうして同じ形容詞を並べていると、「無駄に洗練された無駄のない無駄な動き」ってフレーズを思い浮かべてしまう。このセリフ考えたやつ天才だと思うんだよね。
俺はある奴に呼び出され、最上階のデッキへと向かっていた。そこは正午あたりだとめちゃくちゃ混んでいるが、夜、特に9時を過ぎてからはほとんど人通りがなくなる場所だ。Aクラスとのポイントの取引場所に選んだのは間違っていなかっただろう。堀北にはバレちゃったけど。
エレベーターを降りると、そこには眩しい光景が。みんな楽しんでいるようで何よりです。
「あ、速野くん、ここだよ」
俺の視界の右隅に入って来たイケメン、平田が俺の名前を呼ぶ。俺もそれに反応し、席に向かった。綾小路もいる。
俺を呼び出したのは平田だ。昼飯を一緒に食べないかと言われて、少し迷ったが、ちょうど腹も減ってたので承諾した。
夏休み前は平田の連絡先なんて知らなかったが、無人島試験が終わった翌日、これからもクラスのためによろしくとか言われて、その時に連絡先を交換した。これ、俺がリーダーの情報売ったって分かったらどんな反応されるんだろう。
にしても、この組み合わせはちょっと歪だ。俺と綾小路が一緒にいるのはまだ分からんでもないとしても、それに平田が加わるとこうも不自然さが増すのか。
サンドイッチやポテトフライなどの軽食のイメージ画像が掲載されているメニュー表に目を落としていると、平田がゆっくりと口を開いた。
「実は……2人にちょっと相談があるんだ」
やはり、ただ昼飯を食べるだけではなかったか。綾小路も納得したような表情を浮かべる。まあ、何か明確な目的がなければ、こんな変な組み合わせで食事なんて平田も提案しないだろう。
「僕と堀北さんの橋渡し役を2人に頼みたいんだ。この先、Dクラスが力を合わせて上に上がるためには、堀北さんの存在は不可欠だと思う」
平田の言うことはもっともだ。そして堀北に関することであれば、俺と綾小路以上に可能性が高いやつはいないだろう。Aクラスを目指す協力関係という名目で、一応ではあるが平田よりも親しくさせてもらっている。
「でも、俺や速野が橋渡ししてうまくいくような話なら、苦労はないんじゃないか。堀北はそういうのを嫌うタイプだしな」
綾小路の言う通りだ。こいつは以前、櫛田と堀北を近づけるために櫛田に協力し、堀北の反感を買っている。
「それは分かってるつもりだ。だから、2人には僕の考えを2人なりに変換して、それを堀北さんに伝えて欲しいんだ。僕の名前は伏せた上でね」
つまり、親しくなるための橋渡し役ではなく、伝書鳩になってほしいということだ。
うーん、堀北に意見する俺たちか……怪しさマックスだ。勘ぐられるのが関の山だな。
「普段俺らは堀北に意見してるわけじゃないから、突然主張しだしたら疑われると思うぞ」
「でも、もうこれしか考えが浮かばないんだ。今の段階で、僕個人が何をしても堀北さんを説得できる自信はない」
今の平田は少し冷静さを欠いているように映るのは俺だけだろうか。今の段階で無理なら、次の段階を待とうとするのが平田の考え方だと思っていたが。
無人島でも、平田は冷静さを失った場面があった。綾小路がマニュアルに放火し、伊吹が抜け出したのを見て俺がそれを追いかける直前。明らかに様子がおかしかった。
クラスのリーダーで、誰とでも仲良くでき、何でもそつなくこなしてしまう、「不良品」と罵られるDクラスにいるにはどう考えても不釣り合いな生徒。
あれは、平田がDクラス配属となった理由の一端と見ていいのだろうか。
「いまそれをするのは早計だと思うぞ」
綾小路も俺と同意見のようだ。
「……そうだね。少し焦りすぎていたかもしれない。方法をしっかり考えないとね」
そうそう、その感じだ。いつもの平田が戻ってきた。
少し安心していた時、ポケットの中の端末が二度、小さく振動した。メールが来たことを告げる合図だ。2人は話を続けているが、俺はそこから集中を外して画面を見る。
振動の正体は佐倉からの連絡だった。今から4階で会えないか、と書かれている。
平田に次いで、佐倉もか。俺実は人気者説が一瞬浮上するが、俺の脳内選択肢が全力で否定する。ひどい。
平田の相談事はもう終わったようだし、もういいだろう。俺は承諾の返事を出し、注文したサンドイッチを持って立ち上がった。
「悪い、ちょっと用事ができた。先に戻る」
「うん。来てくれてありがとう。また今度一緒に食べよう」
そう言って手を振ってくる平田に、俺も手を上げて答えた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
場所は変わって4階。ここは女子の客室がある階だ。深夜0時から朝6時までを除き、特段男子の立ち入りは禁止されていない。
「はあああああ…………………はあー………」
「佐倉?」
「うやぁぁっ!?は、速野くん……」
深いため息をついていた佐倉に声をかけたが、かなり驚かれてしまった。てか、驚かせないように佐倉に声をかける方法ってあんの?こいつ毎回驚いてる気がする。
「どうしたんだ?」
「あ、ううん、その、ちょっと緊張してただけで……」
この呼び出しに緊張する要素はないだろ、と思ったが、俺が異性を呼び出す場面を考えてみると、佐倉の緊張の意味も少しわかる気がする。
例えば俺が櫛田を呼び出す場合、うっかり恋に落とされそうにならないかなーという男子高校生的な意味で緊張するし、堀北を呼び出す場合は、うっかり地獄に落とされそうにならないかなーという戦慄の意味で緊張する。
ただ、佐倉を呼び出す場合は緊張しそうになかった。俺以上に佐倉が緊張するであろうことが分かっているからか。
「で、どうしたんだ急に?」
「その、実は……ルームメイトのことで悩んでて」
「……というと、仲良くできない、ってことか?」
「どう、なのかな……仲良くしたいって気持ちも、1人がいいって気持ちも両方あって……その、もう分かんなくて……速野くんなら、何かアドバイスしてくれるんじゃないか、って思って……ご、ごめんね、迷惑、だよね……」
「いや、別に迷惑ではないが……」
ただ、この相談なら会う必要はない気がする。緊張であんなため息までついて待ち合わせするくらいなら、普通にメールで相談という選択もありなんじゃないだろうか。
まあ、佐倉には佐倉なりの考えがあるんだろう。
「ルームメイトは誰なんだ?」
「えっと、篠原さん、市原さん、前園さん、だよ」
「おお……」
また随分と個性的なメンバーが集まったもんだな。3人とも、佐倉とはとてもじゃないが相容れない性格だ。
「……ただ、俺も別にルームメイトとはうまくいってるわけじゃないからな」
沖谷と三宅はたまーに会話してるが、2人とも俺との会話はほぼゼロだ。まあ、所詮は余り物ってことだろう。
「……頼ってくれたとこ悪いが、俺も誰かにアドバイスできる次元じゃないな」
「そ、そっか……ご、ごめんね、勝手に頼ったりして……速野くんも忙しいのにね」
「いや、超絶暇だぞ」
そう答えた時、廊下にキーンという高い音が鳴り響いた。
入学時点で説明があった、学校側からの一斉送信メールだ。
「な、なんだろう……」
「さあ……」
メールを見ようとしたとき、アナウンスが入る。
『ただいま、全生徒に一斉メールを送信しました。記載されている内容の指示に従ってください。受信できていない生徒は、近くのスタッフに申し出てください。重要事項ですので、確認漏れのないようお願いします。繰り返します……』
なるほど……ついに仕掛けてきたということか。
メールにはこう書かれてあった。
『間もなく特別試験が開始されます。各自以下の文章の指示に従い、行動してください。本日19時20分までに、202号室に集合してください。10分以上遅刻した場合、ペナルティを科す場合があります。所要時間は20分ほどですので、お手洗いなどを済ませ、端末はマナーモードか電源をオフにしてお越しください』
また特別試験か。どのような内容なのかは予測不能だ。前回のように、ポイント変動の大きい試験か。
「速野くんは、なんて書いてあったの?」
「ん、ああ」
説明するのも面倒なので、直接端末を手渡す。それと交換するようにして佐倉の端末を受け取った。
内容はほぼ一緒だった。
同じ文面で、集合時間と集合場所が違う。佐倉は18時40分までに203号室に来いとのことだ。
「なんで時間と場所だけ違うんだろう……?」
「分からないが、いい予感はしないな……」
と、そこでチャットを受け取る。堀北からだ。
『今、メールが届いた?』
『ああ。指定時間はいつだ?どうも個々人で違ってるらしいんだが』
『私は19時20分よ。そっちは?』
『同じだ。偶然か?』
『そのようね。綾小路くんは18時らしいわ。とりあえず、行ってみるしかないわね』
『そうだな。話はそれからだ』
そう返信したきり、堀北からの返事は返ってこなかった。
また、面倒なことが始まりそうだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
指定された時間に部屋に向かい、ノックして返事をもらってから入る。
まず、正面には茶柱先生が座っていた。
そして椅子が3つ並べられ、そのうち2つの席はすでに埋まっている。
1人は堀北。2人目は南という男子生徒だ。堀北とは同室だったか。軽く会釈する。
空いている残りの1つの椅子に座ろうとすると、そこに一枚の紙が置かれてあるのに気がついた。
「悪いが、その紙はこちらに持ってきてくれ。ただし、裏返すことは許さない。後でほぼ同じ内容のプリントを配る」
『ほぼ』同じ内容か。どこかに相違点があるということだ。
だが、少なくともこの面には何も書かれていない。
紙を持っていく途中、裏返しはせず、光を当てて裏面から透ける文字で内容を見ようとしたが、鏡文字を一瞬で理解できるほどの目は持ち合わせていない。だが、その左下には注意していなければ分からないほど小さく、アルファベットの大文字でS、小文字でcと書かれているのが見えた。
なんだこれ、と思って一瞬立ち止まるが、茶柱先生の早く渡せという声で、大人しく渡さざるを得なくなる。
紙を手渡し、席に戻った。
「まだ指定時間までに1分ほど余裕があるが、全員揃ったので試験の説明を始める。今回の特別試験では、1年全員を13のグループに分け、そのグループ内で試験を行う。試験内容はシンキングだ。今の段階での質問は一切受け付けないので、まずはしっかり説明を聞くように」
13とはまた不吉な数字だ。なんで12で分けなかったんだ?その方がキリがいいし、干支になぞらえたりすることもできただろうに。まあ質問は受け付けないというし、「なんで12グループじゃないんですか?」と聞いてもまともに答えてはくれないだろう。
「社会人に求められる基本的なスキルは、アクション、シンキング、チームワークの3つに大別される。無人島試験ではチームワークに比重が置かれた内容だったが、今回はシンキング。つまり考え抜く力が必要になる」
そう説明する茶柱先生だが、内容も明らかになっていないのに外側から説明されても謎だらけだ。
「ここまでで何か質問はあるか?」
「どうして少人数での説明なんですか?試験の内容からクラス単位というのは無理でも、グループ単位で説明を受けた方が手っ取り早いと思いますが」
堀北が質問を飛ばす。
「今回の試験では、各クラス3から4人を抽出してグループを作るためだ。事前に説明していなければ、混乱をきたす恐れがあるだろう」
「え、違うクラスとグループ組むんですか?」
先生の言葉に、反射的に南が質問する。
「そうだ。それに関してはこれより説明する。まず、お前ら3人が同じ組になることは決定事項だ。そして、お前らはグループI。ここにグループIの全員のリストがある。持ち出しと撮影は禁じるが、メモは取っても構わない」
その言葉で、堀北は素早くメモ帳を取り出す。お前それ携帯してんのか……
茶柱先生から、ハガキほどのサイズの紙を受け取る。
Aクラス…神室真澄 里中拓人 和田琴美
Bクラス…浅田真美 佐藤ゆかり 葉山隼輝
Cクラス…石崎大地 椎名ひより 山田アルベルト
Dクラス…速野知幸 堀北鈴音 南節也
各クラス3人ずつ、合計12名だ。13グループに分かれていることから、妥当な人数だと言える。恐らく、12名グループが10個、13名グループが3個あるんだろう。これで159名。バカンスに参加していない1人を除いた一学年の総人数となる。
表示順は、各クラス毎に、苗字の頭文字順か。ふりがなはふられておらず、1人読み方が分からんのがある。
「先生、Bクラスの葉山ってやつの名前、なんていうんですか?」
「それに関してはいずれ分かることだ。試験期間は明日から、1日の完全自由時間を挟んで4日間とする。その間、お前らは午後1時と午後8時から1時間、指定された場所でグループ内でのディスカッションを行ってもらう。ただし、初顔合わせの際に自己紹介と連絡先交換が義務付けられている。連絡先に関しては、プロフィール設定の全てを記載しろ。そしてグループのメンバーの連絡先は試験終了のアナウンスが流れるまで削除することを認めていない。これらを守らなかった生徒にはペナルティを科す」
自己紹介に関してはまだ納得できるが、連絡先交換の強制は理解に至らない。
「個人情報を開示しろ、ということですか?」
「その辺の詳しいルールはこの紙に書かれている。そしてこの紙には、この試験の結果に関する重要事項も記載されている。この紙に関しても撮影、持ち出しを禁止する。メモを取るか、頭で理解して覚えろ」
「試験結果、ですか?」
「この特別試験の結果は、4通りしか存在しない。どのような方法を取っても、この4通りの結果になるように設計されている」
茶柱先生から紙を受け取り、読み込んでいく。
夏季グループ別特別試験説明
本試験では、グループ毎に割り当てられた優待者を基点とした課題となる。定められた方法で学校に回答することで、4つの結果のうち必ず1つを得る。
・試験開始当日午後8時に、一斉メールを送信する。『優待者』に選出された者には、同時にその事実を伝達する。
・1日に2度、所定の場所においてグループ内で話し合いを行うこと。ただし、指定されたこと以外の話し合いの内容に関しては、全て生徒に委ねるものとする。
・回答時間は試験終了後、午後9時半から午後10時までの間のみ、優待者が誰であったかの回答を受け付ける。また、回答は1人一回までとする。回答は、自身の端末で学校側に送信することでのみ可能である。
・『優待者』には回答権が存在しない。
・自身が配属されたグループ以外への回答は全て無効とする。
・試験の最終結果については、試験終了当日の午後11時に全生徒へメールで伝える。
基本ルールはこんな感じ。そして禁止事項として、連絡先交換をした者への迷惑行為などが書かれている。
そして、結果の一部が掲載されていた。
結果1…優待者、及び優待者の所属するクラスと同じクラスのメンバーを除くグループ全員が回答時間内に回答し、全員が正解していた場合、グループ全員に50万ポイント、優待者は100万ポイントを得る。優待者の所属するクラスと同じクラスのメンバーも、同様のポイントを得る。
結果2…優待者、及び優待者の所属するクラスと同じクラスのメンバーを除くグループ全員が回答時間内に回答した中で、1人でも不正解、または未回答者がいた場合、優待者のみ50万ポイントを得る。
これは……試験と言えるのか?まだ残り2つの結果が明かされていない段階だが、これだけではどのグループも結果1を目指すに決まっている。
それにこの優待者は、言葉通りかなり優遇されている。選ばれた時点で50万ポイント以上を得ることが確定的だ。羨ましすぎる。クラスを売って手に入れた30万ポイントはなんだったんだ……
「残りの2つの結果はなんですか」
「まずはここまでのルールを理解できたか?そうでないと先に進めない」
「問題ありません」
「南、お前はどうだ」
「……なんとか大丈夫です」
俺はこの南という生徒と接点を持ったことはないが、俺と堀北が孤独型ということもあってかなり居づらいだろう。さっきから体が縮こまっているのがわかる。
「この試験の肝は1つ、優待者を当てることだ。優待者は原則として各グループに1人存在する。例えば速野、お前が優待者に選ばれた場合、グループIの答えは『速野』ということになる。グループ全員がそれを回答時間内にメールに記載して送信すれば、結果1が成立するということだ」
原則として、か。この学校の場合、その原則に当てはまらない例外が最重要だったりするから注意が必要だ。
「ここからが残り2つの結果の説明だ。優待者をより早く暴き出すことで、結果の3つ目と4つ目が現れる。紙をめくれ」
指示を受け、3人とも裏面を見る。
結果3…グループ内の何者かが、試験終了を待たずに回答し、正解していた場合、正解者には50万ポイント、正解者の所属クラスには50ポイントのクラスポイントを与え、優待者を当てられたクラスは50ポイントのペナルティを受ける。なお、この時点でグループ内の試験は終了とする。また、優待者と同じクラスに所属するメンバーの回答は無効とする。
結果4…グループ内の何者かが、試験終了を待たずに回答し、不正解だった場合、回答者の所属するクラスは50クラスポイントのペナルティを受け、優待者には50万ポイント、優待者の所属するクラスには50クラスポイントを与える。なお、この時点でグループ内の試験は終了とする。また、優待者と同じクラスに所属するメンバーの回答は無効とする。
……なるほど、そういう仕組みか。裏切り者のルール。しかもクラスポイントにも関わってくる。となれば、優待者の情報を共有するわけにもいかず、見破られてもいけない。この2つの結果の存在だけで、試験の様相はがらっと変わった。
その次に、匿名性についての説明が行われた。優待者が誰であるか、回答者が誰であるかは学校側は一切明かさず、個人的なプライベートポイントの支払いについても、仮IDの発行も可能ということで匿名性に配慮。
そして、優待者は全クラスに有利不利が生じないように公平な調整になっているとのことだった。公平な調整とはちょっと意味のわからない日本語だが、それよりも気になることがある。
「先生、先ほど優待者はグループ内に1人と聞きましたが、それでは1クラスだけ優待者が4人いるクラスが出来ませんか。公平性に著しく支障をきたすと思いますが」
堀北がしっかり代弁してくれた。茶柱先生は少しうなづいてから、こう答えた。
「先ほど言っただろう。『原則』1人だと。つまり、優待者が1人だけでないグループが存在するということだ」
その説明で、俺らの頭には一気にハテナマークが大量生産された。
「それについては今から説明する。まずは先ほどまでに配った紙を全てこちらに返却しろ。新たに紙を一枚配布する」
紙を返し、新たに一枚受け取る。
そこには、驚愕の事実が記載されていた。
「そこにも書いてあることだが、口頭でも説明しておこう。お前らが振り分けられる13のグループのうち、1つだけ性質の異なる『特殊グループ』が存在する。そのグループには、優待者が各クラス1人ずつ割り当てられている。そしてそこには3つの結果が存在する」
結果1…特殊グループにおいて、自身のクラスの優待者以外の全てのクラスの優待者を全員が正解した場合、優待者は100万ポイント、グループのメンバーは50万ポイントを得る。
結果2…特殊グループにおいて、1人でも不正解、または未回答者がいた場合、回答されなかった、或いは外された優待者のみが50万ポイントを得る。
結果3…特殊グループにおいて、試験終了を待たずに回答した者がいた場合、その回答者は正解、不正解の数によってポイントを得る。例えば、優待者と思われる人物を2人回答して1人が正解だった場合、正解が1つで50万ポイント、不正解が1つでマイナス50万ポイント、合計で0ポイントとなり、この回答者のポイント変動は無し。1人回答してそれが正解だった場合、回答者は50万ポイントを得る。また、得るポイントが0以下の場合はポイント変動はないものとする。また、回答者のクラスのクラスポイントも、1人正解ごとに50ポイントプラス、1人不正解ごとに50ポイントマイナスを受けるものとし、クラスポイントに関してはマイナスの値も適用する。この結果で、回答者に回答されなかった、或いは外された優待者は50万ポイントを得る。逆に正解された優待者のクラスはマイナス50ポイントのペナルティを受ける。このグループは他のグループと異なり、グループ内合計で優待者だと思う人間を3人分回答しない限り通知せず、試験は続行する。
そしてその紙の表面には、先ほどと同じように、アルファベットが2つ書かれていた。説明文と比較すると、少し印刷が濃い気もする。さっき裏面からも字が見えたのはこのためか。
そこには、小文字のq、大文字のOという文字があった。
「また、特殊グループがどのグループにあたるかは学校側は一切説明しない。必要があれば自分たちで調べることだ」
「え、えっと?つまりどゆこと?」
南は複雑すぎるルールに戸惑っている。堀北の方はすでに理解したようだ。
この特殊グループがどのグループかを見つけ出すこと自体は簡単だ。単純な話、クラス間で情報を交換して、優待者が被ったグループ、それが特殊グループだ。
だが、それは同時に大きすぎるリスクを伴う。誰もそんなことはしないはずだ。つまり、特殊グループを見つけるのも、優待者を見つけるのも恐ろしく難易度が高い課題ということになる。
「これでこの特別試験の説明は全て終了だ」
「先生、最後に1つよろしいでしょうか。この右下に小さく書かれているアルファベットに、何か意味はあるのでしょうか」
「ああ、それは印刷時に設定された紙の記号のようなものだ」
あっさりと答えたが、恐らくこの文字列に関するこれ以上の答えは望めない。堀北もそれを察してか、これ以上は追求しなかった。
部屋を退室した直後、俺と堀北は南から質問攻めにあった。
この小説における船上特別試験では、原作と大きく異なる点を意図的に作っています。現時点での違いは、堀北のグループ移動、そして干支ではなく単にアルファベットで分け、グループが1つ増えていること、特殊グループとルールが存在すること、同じグループ内での連絡先交換が義務付けられていることです。かなりルールがややこしくなってますので、質問があれば遠慮なくどうぞ。
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