実力至上主義の学校に数人追加したらどうなるのか。※1年生編完結   作:2100

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少し短めっす。

では、どうぞ。


ep.39

 柴田や神崎などのBクラス男子メンバーも参加が決まり、全員でバレーをやろうという話になっていた。堀北は始め乗り気ではなかったが、一之瀬からのわかりやすい挑発に乗っかり参加が決定した次第である。この性格は苦労しそうだな。自他共に。

 ちなみに、負けた方は勝った方に昼飯を奢るという賭け付きだ。

 

「えっと、じゃあ私は抜けた方がいいかな?」

 

 チーム分けはDクラスとBクラス。必然的に、藤野はどのチームにもあぶれてしまう。

 

「藤野さんは私たちがもらっていい?人数もちょうどになるしさ」

「ああ、それでいいぜ」

 

 この試合ではDクラスの圧倒的主役になるであろう須藤が同意し、これで7対7となった。ちなみに佐倉は抜けている。

 

「あなたが使えるかどうか、試させてもらうわよ須藤くん」

「おう。よく見とけ鈴音」

 

 自信満々に答える須藤。

 試合前のその言葉通り、須藤の活躍は目覚ましい。

 

「おっしゃ任せろ!」

 

 水中からこんなところまで跳べるのか?というほどのジャンプ。そこから全身の力を腕に伝えて振り抜くと、ボールは勢いよく水面に叩きつけられた。

 

「っしゃ!」

 

 そのアタックをBクラスチームは誰も止められず、再びこちらの得点になる。試合開始時から、この場は須藤の独壇場と化していた。歓声をあげる人はいないものの、先ほどの南雲という上級生並みのアタックだ。

 

「凄いね今の球!」

「へっ、まあ落ち込む必要はねーぜ。女に俺のアタックは返せねえよ」

「おっ、それは女性蔑視かな?こっちだって負けないんだからね!」

 

 須藤の言葉にも楽しそうに返す一之瀬。得点は7対3とDクラスがリードしていた。

 次のサーブは山内。放たれたボールを神崎が打ち上げる。

 

「よし、俺にくれ一之瀬!狙い目を見つけた!」

「オッケー!」

 

 理想的な位置にトスが上がり、スパイクを打ったのは柴田だった。

 須藤ほどのスピードも勢いもないが、運動神経の良さを伺わせるアタック。そのボールは綾小路めがけて迫っていった。

 

「取れよ綾小路!」

 

 そんな須藤の声に呼応するかのように綾小路は動き出す。伸ばした腕にボールが当たるが、明後日の方向に飛んでいってしまった。

 

「うげ……」

「いえーい!」

 

 その様子を見て、一之瀬たちはハイタッチを交わした。

 

「なんだよ今のヘナチョコレシーブは!?」

「悪い……まあ、どんな形で取った1点も結局は1点ってことだな」

「ふざけんなよコラ。あれくらいせめて上にあげろよ」

 

 そう言われる綾小路だが、できないものはどうしようもない、と言いたげな表情をしていた。

 次にBクラス側、藤野のサーブだ。

 高く上がったボールは、細い腕によって振り下ろされたとは思えない鋭い軌道で俺の正面に向かってきた。

 

「っと」

 

 オーバーかアンダーかで迷ったが、今立っている位置の顔の目の前だったので、一歩前に出てオーバーでレシーブしてボールを上げた。比較的上手く行ったんじゃないだろうか。

 

「堀北」

「ええ」

 

 言われなくても分かっている、という動きで綺麗にトスを上げる。

 

「おらっ!!」

 

 大きな声の気合と共に腕が振り下ろされ、ボールは敵陣の水面にワンバウンド。こちらの得点だ。

 

「あちゃー、取られちゃったか」

「藤野さんサーブ速いね。もしかして経験者?」

「うん。小学校5年生くらいからやってたよ。中1で辞めちゃってからはやってないけどね」

 

 なるほどそういうわけか。言われてみれば確かに、今までの動きも経験者を感じさせるものだった。一之瀬や堀北も素人とは思えないほどのレベルだが、纏っている雰囲気みたいなものが藤野の方が一枚上手という印象を受ける。

 順番が巡り、俺のサーブの番になった。

 俺にはスピードのあるサーブを打てる藤野のような技術もなければ、須藤のようなパワーもない。それ以外の面で工夫するほかなかった。

 相手は、前衛に一之瀬と柴田、後衛に藤野と神崎の2人を置き、なるだけ隙がないようにしていた。

 俺は藤野と神崎の間の、申し訳ないがBクラス側の中では一番動きが鈍いと判断した女子生徒にめがけてサーブを放った。

 スピードのない、「文字通り」フラフラとしたサーブ。取るのは簡単そうだったが、その女子はしっかりと捉えることができず、腕に当たったボールはプールサイドへ転がって行ってしまった。

 

「あ、あれ?」

「ドンマイ千尋ちゃん!今のは仕方ないよ」

 

 一之瀬はミスした生徒にも優しく声をかける。うちの須藤とは大違いだ。といっても、別に須藤を否定するわけじゃないが。

 俺の元にボールが返ってきて、再びサーブを放つ。次も同じ位置を狙った。さっきよりスピードは出ていたが、やはり遅い。千尋と呼ばれたその女子はオーバーでレシーブをする構えを見せる。

 しかしボールは思ったより手前で落下し始め、オーバーではレシーブできない。しかし今から構えを変えることもできず、オーバーの構えのまま前のめりになってボールを前に押し出す形になってしまった。

 ボールはネットにかかり、そのまま落ちる。再びこちらの得点だ。

 

「やったねっ」

 

 隣にいた櫛田が手を差し出してくる。ハイタッチを求められているとわかり、ゆっくりと伸ばした俺の手が櫛田の手に触れた。

 さらに、前にいた堀北にも声をかけられる。

 

「あなた、経験者、ではないわよね?」

「ああ」

「じゃあ1球目の無回転サーブや、今の高速回転のサーブは勘でやったということ?」

「まあ、テレビで見たのを思い出して見よう見まねでな」

 

 無回転サーブはボールの軌道がゆらゆら揺れ、レシーブが難しくなる。文字通りのフラフラサーブだ。

 2球目は打つ瞬間に手首を巻いてドライブ回転をかけ、ボールを落下しやすくした。それで2球ともあの女子はボールを上げられなかったのだ。

 

「パワーがないから、スピードのあるサーブは打てなくてな。これくらいしか工夫をこらす点がなかったんだ」

「……そう。では、3球目はどんな工夫をこらすのか、楽しみにしておくわ」

「素人に期待すんなよ……」

 

 思いつくだけはすでにやってしまった。ネットのギリギリに当てて落とすという作戦も考えはしたが、そんな技絶対無理だと断念した。

 結果、1球目の無回転サーブを打つことにする。しかし打つコースをミスし、ボールは藤野のところへと飛んでいった。

 

「えいっ」

 

 綺麗に上がるボール。それを柴田がトスした。そして最後、一之瀬も藤野も跳んだことで、どちらが打つか判断がつかない。そして跳んだ瞬間、2人の胸に実った柔らかいバレーボールに目を奪われている池と山内と綾小路。俺?俺はボールに集中してたんで(すっとぼけ)。

 結果的に一之瀬がスパイクし、球は堀北の元へ。堀北はそれを難なく拾い、俺がトスを上げる。そして須藤が跳躍し、強くスパイクを放ってこちらの得点だ。

 

「っしゃ!ナイスだぜ」

 

 須藤からお褒めの言葉を賜った。だが、褒めた気持ちの割合的には俺1に対し堀北99くらいだろう。下手すりゃもっと。いや、むしろ俺褒められてない説がある。

 そのままの流れでサーブを打つが、ボールは狙いとは大きく外れ、一之瀬の正面へ行ってしまった。

 

「あ、やべ」

 

 スムーズな流れで、Bクラスチームはアタッカーへとボールをつなぐ。

 スパイクされたボールは、綾小路の方へ向かっていった。

 その動きはさっきとは見違えるほどスムーズ。しかし、レシーブすると同時に不恰好に足を滑らせ、プールの中に転んでしまった。

 

 やるな、綾小路。

 

「うわ、下手くそだなー綾小路」

「下手でもなんでも上がりゃオッケーだ!行くぜ!」

 

 そして、須藤の体から再び凄まじい勢いのスパイクが放たれた。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「あっちゃー、負けちゃったか。完敗だよ」

 

 プールから上がった一之瀬が悔しそうに言う。

 

「まあ、須藤の一人勝ちみたいなもんだけどな」

「そうね。ほとんど彼1人の得点だし」

 

 俺の言葉に続き、素直に須藤を褒める堀北。須藤の存在はDクラスにとって大きい。堀北は今、そのことを実感しているだろう。

 

「じゃあ約束通り、だね。お昼ご飯にしよっか」

 

 一之瀬の提案で、全員でぞろぞろと売店へ向かう。

 

 さて、今日のバレーで一之瀬の中のDクラスメンバーのプロファイルはどうなっただろうか。

 特に綾小路。レシーブした時にこけたあのプレーは、一之瀬から観察されている視線に気づいたからだ。あのプレーが怪しまれてなければいいんだが、あの動きは俺から見ても不自然だった。一之瀬の綾小路への警戒度のギアは一段階上がったと見ていいだろう。

 

 まあ、取り敢えず今は飯だ。俺は食欲が強い方ではないが、好きなものを食っていいというし、遠慮なくそうさせてもらうことにしよう。

 量も値段も気にせず、適当に食いたいと思ったやつを2、3品ピックアップし、商品を受け取って空いている席に座った。

 

「悪いな。ご馳走さま」

「賭けの結果だからねー。遠慮しないで食べてね」

「ポイントはお前が全負担するつもりか?」

「うん。言い出しっぺだし」

「ふーん……」

 

 一之瀬が昼飯の負担をする人数は、佐倉や彼女自身の分も加えて9人分。1万近い出費になりそうだが、これは一之瀬にとって必要経費ってことなんだろうか。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「楽しかったねっ」

「そうだな」

 

 男女更衣室の分かれ目、俺と櫛田のそんな会話を最後に、互いに自分の更衣室へと入っていった。

 

「……?」

 

 中に入るが、例の3人、特に池と山内の様子が落ち着かない。

 

「なんかソワソワしてないか、お前ら」

「え、え!?いや、そんなことないぞ!?な、なあ?」

「お、おう!」

 

 怪しさマックスだ。こいつらは嘘のつき方を知らないんだろうか。

 

「……ならいいか」

 

 気にはなるものの、気にするだけ無駄だろう。

 スパッと着替え、水着をビニール袋に突っ込んでバッグに入れた後何か忘れ物がないかチェックする。

 

「……ゴーグル……くそ」

 

 チェックしておいてよかった。

 濡れないために靴下を脱ぎ、プールサイドに移動したその時。

 

「ははははは!」

 

 プールの中で戯れている軽井沢と綾小路の姿を発見した。すでに閉館時間を迎えており、中にいる2人は監視員に当然咎められる。

 

「何やってんだ……ていうか、なんだよあの組み合わせは」

 

 軽井沢恵。Dクラスの女子のリーダー格で、俺が知る限り、綾小路と関わり出したのは船上試験から。もちろん以前からという可能性も排除はできないが。

 どちらにせよ、ちょっと想像しにくい絵だった。

 俺は一旦更衣室に戻り、綾小路の帰還を待つ。池たちの姿はすでに消えていた。まあ当然か。

 2分ほど経って、綾小路が戻ってくる気配を察し、歩き出す。

 

「……あれ、どうしたんだ速野」

「中にゴーグル忘れてきたから取ってくる」

 

 それだけ言って、俺は再びプールサイドへと足を踏み入れた。

 塩素による殺菌が行われているプールで、独特の匂いがある。さっきバレーをしたところからほど近い場所に俺のゴーグルは放置されていた。

 

「よかったよかった」

 

 声量はかなり小さかったはずだが、広いプール施設では響く。

 用は済んだので、そろそろ帰宅だ。そう思ってスタスタと歩いている最中、ゴミ箱を発見した。

 何となく中が気になり、覗き込む。そこには売店で売られていたたこ焼きやら焼き鳥やらが入っていたと思われる使い捨てトレイが入っていた。

 そしてその上から、折れ曲がったプラスチックのようなものを発見した。そこにあるのには少々不釣り合いなものの存在に目を引かれる。

 

「……ん?」

 

 少し汚いが、それを拾い上げた。

 

「SDカード?…………あ」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「一之瀬、アイス下から溶けてってるぞ」

「え?うわほんとだっ!!」

 

 プール施設を出て、コンビニに立ち寄った俺たちは全員アイスやかき氷を購入して思い思いに食べていた。

 コンビニを利用するなんていつ以来だろう。入学初日に立ち寄った覚えはあるが、それ以降はない気がした。

 意外だったのは、アイスを食ってる時の綾小路の周りにすごい幸せそうな空気が漂っていたことだ。まるで初めて食べるかのような顔。まさかこの世に生を受けて15、6年ほど、一度もアイスを食べたことがないなんてあり得るんだろうか。

 少し気は引けたが、そんな綾小路に声をかける。

 

「ちょっといいか」

「どうしたんだ?」

 

 和気藹々とアイスを食っている集団から10メートルほど距離を取ったところで足を止める。

 

「単刀直入に聞くぞ。あの3人、池と山内と須藤はこの遊び中に何したんだ」

 

 回りくどく聞いても、こいつの前ではあまり意味をなさない。

 

「オレに聞かれても困る。本人達に聞いたらどうだ」

「答えてくれるわけないだろ……」

 

 それが分からないこいつではないはずだ。やっぱり何かを知っている。

 

「……まあ、いいか。あいつらが何をやらかしたかは知らないが、問題はないんだろ」

「何が問題なのかは知らないが、ただふつうにプールを楽しんだだけだ」

「ならいいんだ」

 

 こいつが軽井沢を使って何かをしたのは分かっている。なら、こいつの中では既に問題は解決済だということだ。

 

 あの3人の不自然な様子。そして綾小路が握りつぶしたと思われるSDカード。これらの条件から俺が予測するのは、池たち3人は女子更衣室の盗撮を試みていた、ということだ。

 どんな手段で、かは知らない。それを綾小路は知っていて、どうやったかは知らないが軽井沢と結んでそれを阻止したってことだ。

 つまり俺の予想が正しければ、俺のポケットの中のハンカチに包まれている握り潰されたカードには、女子更衣室の様子が映ったデータが入ってるってことだ。

 

「……アホか」

 

 俺は持っていたアイスの袋に粉々のカードを入れ、そのままコンビニのゴミ箱に捨てた。俺の予想が当たっているにしろそうでないにしろ、こんなのいつまでも持ち歩いているわけにもいかない。そもそもあんな形状になったらデータなんて残ってないだろうし。残っていても見るつもりはない。

 

「?速野くんどこ行ってたの?」

「ちょっとそこで内輪話をな」

 

 不思議そうな表情を浮かべる藤野にそう答え、この15人の大所帯は寮へと足を進めていった。




4.5巻終了でございます。断水のくだりと占い師のくだりは省いたので、かなり短くなりました。
誰からの拒否反応もありませんでした(号泣。みんな反応してぇ!)ので、前話の予告通りにしようと思います。

藤野のスリーサイズ(作者の願望てんこ盛り)…94(G)/58/87



ここで一つ謝罪を。
まだ5巻の研究が終わっておらず、構成を練り切ることが叶っていません。投稿開始が遅れることが予想されますが、ちゃんとやりますので、皆さま、応援よろしくお願いいたします。

では、いつもの言葉で終わりにしましょう。

感想、評価お待ちしております。
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