実力至上主義の学校に数人追加したらどうなるのか。※1年生編完結   作:2100

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課題が終わらねえ。でも書きます。後悔はしてない。
では、どうぞ。


ep.50

 翌日の放課後。

 俺の後ろでは綾小路が立ち上がり、幸村に声をかけに行っていた。多分三宅と長谷部の勉強会の話だろう。早速今日かららしい。

 他方、俺も今日の1部の方の勉強会に同行することになっている。Bクラスとの合同での勉強会の話が一之瀬にオッケーされたため、言い出しっぺの俺はいくべきだろうとの判断だ。まあ言われなくても元から行くつもりだった。そのために合同勉強会なんて提案したんだしな。

 

「それにしても、あなたから合同での勉強を提案するなんて、おかしなこともあるものね」

 

 勉強会の場所である図書館に移動中、隣を歩く堀北が訝しそうに聞いてくる。

 

「退学者を出したくない。これだけで理由にならないか」

「普通ならなるかもしれないわね。でも、今までのあなたの行動を見ていれば不審がるのが自然よ」

「まあ、そうかもな……」

 

 そうこうしているうち、図書館に到着した。

 ホームルーム終了後すぐに来たためか、席はまだ空いている。

 図書館には、入口側が1年生の縄張り、という暗黙のルールがあるらしい。それに従い、全員が椅子に腰掛けた。

 と、同時に堀北に声がかかる。

 

「堀北さん」

 

 明るい表情で堀北に向き合うのは、Bクラスのリーダー的存在で、俺が勉強会を提案した人物、一之瀬帆波だ。

 Bクラスの数人にも声をかけたらしく、一之瀬含めて9名いた。クラスの参加率は4分の1ってところか。

 

「ごめんなさい、こちらの勝手な要求で」

「ううん、こっちこそ、誘ってくれてありがとう。速野くんも」

「ん、ああ」

 

 普通にお礼を言われただけだが、どうも堀北は釈然としていない様子だ。

 

「本当に助かるよー。協力して頑張ろうね。ばんばん頼っちゃっていいんだよね?」

「……お手柔らかにな」

 

 一之瀬の少しおどけたような視線に、俺は静かに頷いた。

 まあ、今日は自分の勉強だけで問題作成そのものをするつもりはない。教えられる余裕もできるだろう。俺に質問する奴がいれば、の話だが。俺、堀北、一之瀬の中で質問の優先順位は一之瀬>堀北>>>>>>>>>俺みたいな感じだろうからな。……あれ、誰も俺に聞かないんじゃね?

 と、目から発汗しそうな悲しい想像はここまでにして、俺は鞄から問題集と紙の束を取り出す。俺は紙の束の方を取って一之瀬に手渡した。

 

「これ、みんなで共有してくれ」

「え?これって……速野くんが作った問題?」

「一応」

 

 そう答えるが、一之瀬は少し申し訳なさそうな表情をしている。

 

「いいの?」

「ああ」

 

 合同の勉強会が実現したらBクラスに解いてもらうつもりで作った問題だ。

 

「どれくらい解けるかデータ取りたくてな。各科目2問ずつくらいだから、できればいま30分くらいで解いてくれないか」

「オッケー。じゃあみんな、お願い」

 

 渡した紙の束を、一之瀬がBクラスの参加メンバーに配って行く。全員に行き渡ると、一之瀬も含めて解き始めた。

 一応Dクラスにも数人に配ったが、そっちにはいま解くことは求めなかった。Bクラスには今このタイミングでしか解説できないからな。

 正確に言うと本当に俺が作ったかといえばちょっと違うが……

 と、そんなことを考えていると、堀北が耳元に顔を近づけて来た。心の中でうおぅ!と叫んでしまったが、当の本人は至って真剣そうだ。

 

「……あなた、一之瀬さんに合同勉強会を依頼したとき、私の提案ということにしたわよね?」

「……なんでそうなる?」

「一之瀬さんのお礼の言い方、明らかに変だったわよ。最初に私のところに来て、あなたには付け足すようにしかお礼を言わなかったのは、提案者が私だとあなたが伝えたという理由以外に考えられない」

 

 やっぱりさっき釈然としない表情をしてたのはこれが原因か……鋭い。先に了承を得ておくべきだったか。

 ただ、一之瀬には聞こえないように声を小さくした配慮には感謝しないといけないな。

 

「……勝手に名前使ったのは悪いと思ってるが、この形の方が不自然じゃないだろ。その方が受け入れられやすいと思ったんだ」

 

 そう弁明するが、堀北の疑惑の視線はおさまらない。

 

「……どうにも怪しいわね。何か企んでいるの?」

「俺が何を企むんだよ……さっきの理由で納得できないか?あと、ここで話すのは得策じゃないと思うぞ」

 

 これを言われては、ここでは堀北も引き下がるしかない。俺が何か企んでいると堀北が踏んでいるなら、話を聞くにしても秘密裏に行う方がいいと判断するはずだ。

 

「……そうね」

 

 なんとか話を終結させられた。

 だが、これはその場しのぎの一手。あとで追及されまくるだろうが、俺はさっきの理由で押し通すつもりだ。一応筋は通ってるからな。

 

 指定した30分が経過して、Bクラスの生徒が解くのを終えた。俺はそれを見て解答を手渡す。すると、口々に「あ、そういうことねー」や「なるほどー」などの小さい声が聞こえてきた。作問者はこういう声を聴くと嬉しいだろうなあと他人事のように思う。

 俺が渡した問題は、難易度の高いものが揃っていた。アホみたいな超難問でもないが、簡単に解ける問題でもない。今回の期末テストのボーダーより少し高いレベルか。

 

「いやー、結構難しかったねー」

「私半分取れてないよ……」

「俺もだ」

 

 まあ、期末テストの勉強は始まったばかりだし、今はそれくらいでもあまり問題はないだろう。

 

 たまにくる質問に答え、俺自身もちゃんと勉強し、そこそこ有意義な時間を過ごして本日の勉強会は終了した。

 勉強会そのものは終わったが、全員が全員帰るわけじゃない。残って勉強する者もいる。

 堀北も残る組のようで、教科書類を片付ける様子はない。

 

「今日は2部にも出るのか、堀北」

「ええ、一応」

「そうか」

 

 じゃあな、とだけ言い残して、俺は図書館を立ち去った。

 学校にまだ用があったため、寮とは逆の方向に歩き出す。

 その途中、綾小路とすれ違った。向こうから声をかけられる。

 

「速野。どうしたんだ?」

 

 すでに時刻は午後6時を回っている。そんな時間に学校へ逆走していくやつを不思議に思うのは当然だろう。

 

「ちょっと忘れ物をな」

「そうなのか」

 

 静かに頷いておく。

 一応、今日の勉強会の様子も聞いておこう。

 

「そういえば、どうだったんだ。幸村の勉強会」

 

 聞くと、その様子を思い出すようにして答えた。

 

「いや、今日は特に動きはなかった。中間テストの2人の解答から方法を練って、次から本格的に始めるらしい」

「ふーん……」

 

 幸村は多分、2人の成績の偏り具合と、その偏り方が異常に似ていることにちょっと驚いただろう。俺もほんとに驚いたもん。

 

「うまくいきそうか?」

「どうかな。今はまだなんとも言えない。ただ、投げ出すほどではないと思う」

 

 2人とも勉強に取り組む姿勢はある。その点は池や山内よりやりやすいだろう。そういえばあの2人さっき参加してなかったけど、2部に参加すんのかね。

 これ以上確認したいこともないので、さっさと用事をすませるとするか。

 

「じゃあ、俺はこれで」

「ああ。明日な」

 

 他愛ない会話が終わり、俺は目的地である学校の校舎へと足を進めた。

 

 

 しっかし、仕事が多いな、今回は。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「だー終わったー!」

「静かに。大きな声を出すなと言ったはずよ。それから、明日もあることを忘れないで」

 

 次の日の勉強会。池、山内、佐藤の赤点候補、そして意外にも綾小路が参戦していた。

 

「い、いいだろ少しくらい喜んだって。お疲れっ!」

 

 そう言って、池と山内はそそくさと図書館を出て行った。勉強会終了直後に残らずに出ていくのは大体勉強が苦手な人だから困ったものである。

 まあ、仕方ないことかもしれない。苦手なものを嫌な顔せずできる人は限られている。仕事なんかでもそうだろう。ノルマを達成したらさっさと帰るはずだ。……多分。俺未成年だから知らんけど。

 

「Dクラスって元気あるよねー。ちょっと分けて欲しいよ」

「悪い方向にね。落ち着きのあるBクラスが羨ましいわ」

 

 他人の芝生は青いというのはよく言ったもので、無い物ねだりの性は誰もが持っているものなのだろう。

 

「じゃあみんな、さようなら。また明日ね」

「ええ、さようなら」

 

 櫛田も、友達数人と一緒に図書館を出て行った。

 今のところ動きはなし、か。だが、どのタイミングで攻めてくるかはわからない。

 

「俺も戻る。じゃあな」

「ええ。しっかりと問題を作っておいて」

「はいはい」

「じゃあね速野くん」

「……ああ」

 

 手を振ってくる一之瀬には軽く会釈して、俺は図書室を出た。

 前方には、先程退室した櫛田の友人の背中が見える。まあ、あんまり時間経ってないしな。

 しかし、俺はあることに気づいた。

 肝心の櫛田があの中にいない。

 

「……?」

 

 あいつ1人だけ寄り道したのか、と思っていると、曲がり角のところに櫛田を見つけた。

 

「あ、速野くん」

 

 俺が声をかけるより先に、櫛田が俺の名前を呼ぶ。

 

「もう帰るの?」

「ああ。お前は帰ったんじゃないのか」

「うん、ちょっとね」

 

 ちょっと、か……

 

「そうか。じゃあ」

 

 櫛田から目線を外し、歩き出す。

 しかしその瞬間、虫の知らせが俺の足を止めた。

 

「げ……」

 

 そして俺はゆっくりと回れ右。寮ではなく図書館の方にUターンした。

 

「どうしたの?」

「いや、その……使ってた参考書一式と筆箱を置き忘れてしまってな……」

「え?あはは、速野くんって意外にドジなんだね」

「割とこういうの多いぞ俺は」

 

 最近良くなってたと思ってたんだけどなあ……まだまだ注意が足りないらしい。

 

「じゃあ、またすれ違うかもだね」

「……たしかにそうだな……まあ、とりあえず行ってくる」

「うん」

 

 そう言い残して、歩き出す。図書室への道すがら、今日来ていた一之瀬以外のBクラスの生徒とすれ違った。

 この時は特に気にせず、俺は図書館に入った。

 最初に目に入ったのは、手前に立ち尽くしている堀北でも綾小路でも、まだ勉強に勤しんでいる他の生徒でもない。

 いつになく重い雰囲気を持って立っている一之瀬だった。それを見て俺まで立ち尽くしてしまう。

 しかし、少し経つと一之瀬が帰り支度を始めたのが見えた。

 当然、入り口付近に立っている俺とすれ違うことになる。

 

「じゃあね速野くん」

「……ああ」

 

 一之瀬が立ち去ったあとも、彼女が見せた一面の影響でその場には妙な空気が漂っている。

 う、うわー、超入りづれえ……

 

「……」

 

 しかし参考書類を放置するわけにもいかず、意を決してさっき座っていた机に向かった。

 

「何をしてるの?」

 

 当然といえば当然だが、堀北に声をかけられる。

 

「あー……忘れ物をだな……」

 

 予想通り参考書と筆箱が机にあったので、それを取ってカバンに入れる。

 

「はあ……くれぐれもテストで今みたいなミスはしないようにして」

「分かってるよ……ところで、一之瀬と何の話してたんだ。様子変だったが」

 

 一応ダメ元で聞いてみることにした。

 

「あなたは聞いても聞かなくても良かった話よ」

 

 やはり説明する気はなさそうだ。まあ、堀北の中で俺の信頼度は低そうだからな。

 

「なあ、櫛田への対応はどうするつもりだ。前は考えがあるような言い方をしてたが」

 

 この2人は以前それについて話し合ったらしい。これは俺も話聞かなきゃいけないパターンか。

 

「色々なことを考えたわ。もしこの学校に私がいなければ、彼女はどうなっていたか。きっと誰からも信頼される、欠点のない生徒のまま卒業を迎えていたでしょうね。もちろん、私に責任はないわ。こればかりは不運としか言いようがないもの。でも私は彼女の未来を一つ摘み取ってしまった。そういう意味で、彼女は特別なのよ」

 

 櫛田へに対処法、か。正直、根本的な解決法はさっぱり思いつかない。

 

「一つ提案があるんだが、いいか」

 

 そう前置きした綾小路の提案は、一之瀬に間に入ってもらい、解決を図るというものだった。

 

「1対1で話して説得しようとしても現実的に無理だ。誰かに間に立ってもらおうとしてもDクラスじゃ成立しない」

「そうね。でもそれは一之瀬さんでも同じことよ。確かに、全ての生徒の中で一番可能性が高いのは一之瀬さんかもしれない。けれどこれは私と櫛田さんの問題なのよ」

 

 根本を言えばそうかもしれないが、櫛田がクラスを裏切っている以上それほど問題は小さくない気がする。

 何はともあれ、忘れ物を取るという元々の目的を達した俺はその場を離れることにした。

 

「俺は戻る。今からお前がやることに俺はいるべきじゃないだろ」

 

 根拠はない。だが察した。

 櫛田が待っている人物は堀北なのだろうと。

 

 俺の言葉に対する返事は聞こえなかったが、気にせずに図書館を出た。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 珍しく俺が空気を読み、図書館を出た後。寮を目指してまっすぐ歩く。

 その時、後ろから突然肩を叩かれた。

 

「ん……?」

「今から帰り?」

 

 振り向いて目に入ったのは藤野の姿。小さく手をひらひらと振っている。

 

「ああ、そうだが。お前は?」

「教室に残って問題づくりの手伝い。よかったら一緒に帰ろう?」

「……いいけど」

 

 藤野の誘いを承諾し、一緒に歩き出す。藤野に合わせるため、さっきより歩幅は小さく、スピードは遅い。

 日の入り直前の空はオレンジと水色が混ざり、まだ冬ではないとはいえ肌寒さを感じる。

 

「順調?」

 

 寮への道のりも半分を超えたかというところで、藤野が突然そんなことを問いかけてきた。

 

「……」

 

 即答できない質問だ。一瞬黙り込んでしまう。

 

「……まあ、なんとかな。お前はどうなんだ」

「私もまあまあかなあ。お互い頑張らないとね」

「そうだな」

 

 Bクラスと合同で勉強して、その後にAクラスの生徒の検討を祈るなんて変な話ではあるが、こと藤野に限ってはそういう意識は少し薄い。

 ……藤野には渡しておくか。

 俺は歩きながら、バッグの中から紙を取り出す。

 

「なあ、これ解いてみてくれ」

「?これって速野くんの?」

「期末テストの問題の候補だ」

「え、いいの?こんなの……」

 

 藤野も一之瀬と同じように遠慮した態度を取る。

 

「ああ。お前がどれくらい解けるか参考にさせてくれ」

「……うん、分かった。解いたら渡しに行くね」

「頼む」

 

 藤野は問題を受け取って自分のカバンの中に入れた。

 あとは誰に渡すべきか……いや、これくらいでいいか。あまり増えても面倒くさい。それに、これ以上協力してくれそうな成績優秀者も思いつかない。平田あたりは喜んで受けてくれそうだが、幸村や堀北に比べると学力に不足点がある。

 そんなことを考えていたとき、突然でっかい欠伸が出た。

 

「ふああ〜ぁ………」

 

 そりゃもう特大。涙が溢れてきたので袖で拭う。

 

「睡眠不足?」

「ああ、ちょっとな……」

 

 昨日は夜11時くらいまで堀北とチャットで問題について話し合い、その後2時まで問題を作っていた。最近寝るのが1時か2時なのが当たり前になりつつある。授業中に寝たら堀北に殺害されてしまうので頑張って起き、睡眠時間がガリガリ削られていたのは確かだ。休み時間にちょっとずつ寝ろと言う人もいるかもしれないが、授業終了3分前に急激に意識が覚醒し始める謎現象に見舞われてそれもかなっていない。

 俺はあまり夜更かしをしたことがないのでそのせいもあるだろう。寝転がることさえできれば基本的に寝られない場所はないんだけどな。

 

「勉強疲れかな?」

「多分そんな感じだ。問題づくりもしてるしな……」

「あー、Dクラスは当然速野くんが作るよね……」

 

 気の毒そうな表情の藤野の隣でもう一発小さめの欠伸をかます。

 

「ちょっとは息抜きした方がいいと思うよ。体調崩したら元も子もないから」

「それはそうなんだけどな……この休日はちょっと寝るか……」

 

 今思いつく息抜きといったら寝ること以外に思いつかない。バスケは1人でも楽しいが疲れるので逆効果だ。

 

「寝る、のもいいと思うけどさ……」

「ん……?」

 

 少し歯切れの悪い言い方の藤野。首肯で言葉の続きを催促する。

 

「その、土曜日か日曜日、ぐっすり寝られたあとでいいからさ……どこか遊びに行かない?」

 

 意表を突かれ、感じていた眠気がサーっと引いていくのが分かった。

 

「遊び、って……どこに」

「ど、どこかは、分かんないけど……例えば、ほら。カラオケとか」

「やめた方がいい。俺歌える歌ほぼないし、あってもお前知らないと思う」

 

 もっといえば藤野が歌う歌も知らない可能性が高い。音楽とか普段聞かないしな……というか2人でカラオケって……歌詞飛ぶわ絶対。

 

「うーん……じゃあ映画、とか?」

「映画か……」

 

 カラオケや普通の遊びと違って体力使わない。チョイスとしては悪くない。

 

「いいかもしれないな……ってもういく前提?」

「あ、もちろん速野くんが嫌ならもうこれ以上は何も言えないけど……」

 

 自分の心に聞いてみても、嫌という返事は全くない。というか、そんなこと言われたら断れなくなっちゃうじゃないですか……。

 

「……いや、ではない。分かった。じゃあ映画行くか」

「う、うんっ。無理してない、よね?」

「してどうすんだよ。一応俺個人としては息抜き目的なんだから」

 

 大前提を忘れてはいけない。それを聞いて少し安心したのか、藤野の表情が和らぐ。

 

「土曜日と日曜日、どっちがいい?」

「あー……土曜日で。元々出かけようとは思ってたからな」

「え……もしかして予定あったの?」

 

 うーん、ちょっと言い方間違えたか。

 

「違う違う。約束とかじゃなくて、土曜日に食材切れるから買い出しに行く予定だったんだ。それもついでにできると思っただけだ」

「あー、よかったあ。無理させちゃったのかと……」

「だからそんなことしないって」

 

 先約があればよほどのことがない限りそっちを優先させる。後からできた予定でキャンセルされるとか悲しすぎるからな。俺の優先順位どんだけ低いんだよ。……まあ、誘うやついないからその悲しささえも想像することしかできないんだけど。

 

「じゃあ、土曜日に映画でいいんだろ」

「うん。詳しいことはあとでね」

「ああ」

 

 ちょうどひと段落したところで、寮のエレベーターが俺の階に到着した。

 

「じゃあね」

「ああ。また」

 

 軽く挨拶をすませると、スーッと静かな音を立ててエレベーターのドアが閉まる。

 自分の部屋に向かって歩きながら、努めて心を落ち着けた考えた。

 

 人前だったため変にテンションを上げることは避けるように頑張ったが……週末に誰かと2人で出かけるなんて、実は人生で初めてのことを経験するんじゃないのか、これ。

 

 ……今週末ってなんの映画やってんだろう。




櫛田は主人公が裏切りに勘付いていることを知らない設定なので、あの場に主人公はいるべきではないなと判断しました。櫛田が許すとも思えませんでしたし。

気になったことがあれば、小さなことでもどんどん質問してください。お待ちしております。
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