実力至上主義の学校に数人追加したらどうなるのか。※1年生編完結 作:2100
では、どうぞ。
ピリリリリリ……
「んん……くぁぁ……」
ベッドの上で伸びをすると、固まっていた体がほぐされてバキバキバキ、という音が鳴り響く。
ひとまず携帯からの目覚ましのメロディを止め、時刻を確認。すでに午後0時を回っている。世間ではランチタイムの時間だ。
「……こんなに寝たの久しぶりだな」
昨日床についたのが9時だったから……15時間くらい寝てるのか。どんだけ疲れてたんだよ俺は。
そんなに寝ててちゃんと問題作ってんのかゴラア、という声もあるかもしれないが、心配ご無用だ。昨日のうちに今日の分はやっておいた。これで土曜日、つまり今日は心置きなく爆睡した後に藤野と映画に行けるわけである。
映画かあ……行ったことがないわけじゃないが、行った経験は本当に数えるくらいしかない。映画より本読んでたからな。
とはいえ、決して俺は読書家ではない。その証拠にこの学校に入ってから本は2冊くらいしか読んでいない。ただ、国語の現代文という科目で見るなら、俺はかなりの数の評論や随筆を読んでいることになる。どれもこれも問題文に書かれている分だけだが。ちなみに読んだ2冊の本も、問題集に出題されていた作品で気になったものだったりする。
藤野との約束は14時から。
まだ2時間弱ある。それまでに昼飯を済ませて、数問の問題づくりをしておこう。
俺意識たっけー。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
約束の時間が迫ってきた。そろそろ部屋出た方がいいか。
集合場所は寮のロビー。今出たら3分前に着くだろう。適当な格好に着替え、学生証端末を持って部屋を出る。
適当な格好っていうのはあれだ、1学期に綾小路、櫛田、佐倉と出かた時とあんま変わらないやつだ。出かける機会が少な過ぎて外で着る服なんて2パターンくらいしかない。仕方ない。社会も悪いし俺も悪い。
ひとまず部屋を出る。
エレベーターホールには3台のエレベーターがあるのだが、その中の一番右に位置するエレベーターが下降してきていた。到着したのでそれに乗る。
「え」
「あっ……」
俺がボタンを押す前に下降してきていたということは、下の階の誰かが俺と同じようにボタンを押し、上の階にあったエレベーターが通りかかったか、上の階の誰かがエレベーターに乗ってこの階にきたか、またはその両方なんだが、ここでは2番目のパターンだ。
そしてそこに乗っていた人物。
「あはは……集合場所、エレベーターになっちゃったね」
「……そうだな」
ロビーで待ち合わせをしていたはずの藤野だった。
エレベーターでも油断はできない。下を向けば気分が悪くなる。少し上を向いたまま、エレベーター内での数秒を過ごした。
外に出ると、光量が多くなって隣を歩く藤野の姿が目に映る。
特別に着飾っているわけではない。
水色のスカートと、タックネックの黒いシャツの上に白いカーディガンを羽織っており、普段より大人しそうだが清涼感も醸し出す絶妙なコーディネートだった。
「アクセサリーとか、つけたりしないんだな」
気になったことをそのまま口にしてしまう。
だいぶ前、ポイントが支給されないとわかった直後、多クラスへの羨望の一つとして女子が「Aクラスはアクセ買いまくってる」と言っていた気がする。
「あ、うん。買ってなくて……あった方がいいかな?」
「いや、別に今のままで大丈夫だと思うぞ」
少し焦って早口でまくしたてるような言い方になってしまった。
「……ありがとね」
「は、はあ……」
変な偶然があった影響もあるだろうが、かなりペースが乱れている。
まあ1番の原因はどう考えても「二人で出かける」っていう行為自体だよな……小6くらいの俺に見せてやりたい。中2くらいの俺に見せたらちょっと殺されそうになる気がするからそっちはやらないけど。
と、そんなことを考えて気分を紛らわせながら映画館に向かう。たまにすれ違う人からの視線が痛い。まあ藤野を知っているにしても知らないにしても、この人たちの頭の中では「うわ、この女子かわいい!こんなかわいい人どんなカッコええ人と一緒にいるんやろぅわおガッカリー」っていうノ○スタイルみたいな掛け合いが行われているに違いない。
数分歩いて、映画館のあるケヤキモールに到着。
映画館の場所へ行くと、さまざまな映画が宣伝されていた。名前だけ知っているものもあれば、聞いたことすらない作品まで。
何を見るか決めていない状態で映画館に来る人は多くないだろう。事実、殆どの人は迷うことなくチケット購入の手続きに入っている。
「何みよっか?」
「あー……」
あちらこちらに表示されている広告を見ても、どれもこれも知らないタイトルばっかり。決めようにも決められない。
「お前は全部知ってるのか」
「全部は知らないけど、大体はわかるよ」
「ならお前が決めてくれるか。映画には疎くてな」
餅は餅屋というし、ここは藤野に決めてもらった方がいいだろう。
「いいよ。えっと……」
近くにあった、「ご自由にお取りください」と書いてあるパンフレットを手に取り、何が見たいかを考える藤野。
どうやら決まったらしく、パンフレットの真ん中あたりを指差して俺に見せてきた。必然的に身体が近づく。近いっすほんと。ライフ削りに来るのやめてね。変な汗かいちゃうから。
「これなんてどうかな?」
藤野が見せて来たのは、何やら受けの構えを取った俳優が前面に押し出されている作品。下のコマには2人が蹴りあっている描写もある。これは……アクション映画か?14時45分から上映開始と書かれている。
藤野が何を選ぶか予想していたわけじゃないが、意外といえば意外だ。
「わかった。じゃあそれ観るか……」
「うん。あと10分くらいは時間ありそうだから、何か買おうかな?」
「そうだな」
流石に映画館に来たのが初めてということはない。回数が異常に少ないのは間違いないが、映画観賞の最中にはポップコーンを頬張るという文化があるのは知っている。落としたりこぼしたりしても掃除が楽で、噛むときにも音が出ず隣の客に迷惑がかからない。ほんとよく考えたものだと思う。
俺はポップコーンとコーラを、藤野はキャラメルポップコーンのSサイズを購入し、映画館の暗い上映室へ足を踏み入れた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「面白かったね」
「そうだな」
映画はあまり見たことなかったが案外いける。最後らへんは文字通りスクリーンに噛り付いていた。うまく見せようと演出はしているんだろうが、それもこれも登場人物の俳優が超人的な運動能力を持っていなければ成り立たない。
アクション一つ一つを見ていて内容はイマイチ頭に入っていないが、それを補って有り余るインパクトはあった。概ね満足と言えるだろう。
ちなみにアニメとかでよくある「映画に一緒に来てた女友達が腕に抱きついて来た!」とかそういうイベントは発生しなかった。アクション映画だしそりゃそうだろうな。
「実は私もアクション映画ってあんまり見たことなかったんだよねー。映画館で見るのもいいかも」
「あれ、そうなのか」
てっきりアクション映画観慣れてるから選んだものと思ってたんだが……
「だって速野くん、ホラー映画とか観たかった?」
「……いや、アクションでよかった」
これは意外すぎるぞ……まさかのホラー映画好きとは。
俺はホラー系は苦手というわけではないが、観終わったあと疲れそうなのでアクション映画がちょうど良かった。なるほど、ここまで考えてたのか藤野は。帽子被ってないが脱帽だ。
ポップコーンの容器を側に設置されていたゴミ箱に入れ、覚えている範囲で互いに感想を言い合いながら映画館を出た。
あのシーン一番すごかったとか、突然でかい音出てびっくりしたとか。
ただ、俺があそこ絶対スタントマンだったと言うと微妙な顔をされてしまった。まあスタントマンだったのは特別重要でもないシーンだったので文句はないけど。問題は俺の話題づくり力の無さだ。他にもっと語るべきことあると思うんだけど思いつかないんだよなあ。
時刻は17時10分。日はだいぶ傾いていて、あと1時間もすれば完全に暗闇だろう。
だが、次の用事を達するために施設からは出ない。
もし今帰ったら、俺は今日の夕飯にありつけないのだ。
「そういえば速野くん、買い物あるんだよね。ついでに私も一緒に買い物していい?」
「ん、ああ、まあいいけど」
映画に行く日程を決めた時に買い物に行く予定があったと言ったのを覚えていたのだろう。まあ、いつも放課後にやってたことだ。最近はペーパーシャッフルテスト関連ででやることが多く、一緒に行ってはいなかったが。
自動ドアが開いて店内に入ると、やはりちょうどいい温度に調節されていた。
利用するのはいつもの無料コーナー。半年も続けてればそこにもう特別性はない。この学校に入ってから、逆の意味で金銭感覚がおかしくなってる気がする。
「なあ、普通に売られてるここの商品買ったことあるか?」
なんとなく気になったことを聞いてみる。
「うん、一応。ここ見つける前は普通に買ってたから。見つける前って言っても1回くらいだけどね」
「ふーん……」
「やっぱり普通のコーナーの方が品揃えいいし、美味しいことは美味しいよ」
まあそうだろうな。無料コーナーと差別化されてないと普通のコーナーの商品なんて売れるわけがない。みんな無料がいいわけで。だが、我慢さえできれば俺のように食費ゼロすら実現可能だ。
さて、頭を切り替えて今日の夕飯の献立を考えよう。
考えている間に、藤野はテキパキと必要な材料をカゴに入れて行く。
まあ、いつもの通りだ。俺はその場の気分でメニューを決めるが、藤野は事前に何を作るか、何を買うかを全て決めておく。
「……カレーでいいか」
ふとカレーのパッケージが目に入り、それで即決。そして4日後までのメニューをパッと決めた。まずはカレーに必要な材料を入れて、そのあとに今後数日間必要になるであろう材料を適当に入れて行く。どうせ無料だし。
俺が入れ終わる頃には、藤野が入れ終わって3、4分ほど経過していた。
「悪い、待たせた」
「ううん、大丈夫」
共にレジへ向かう。
並んでいないので時間はかからない。サッと会計は終わり、袋に詰めて外に出た。
「ちょっと肌寒いね。ジャンパー着ようっと」
今が10月下旬であることを忘れてはいけない。
カーディガンがあるとはいえ、藤野の格好はこの肌寒さに適しているとは言えない。バッグの中からジャンパーを取り出して羽織り、防寒を図っている。
「速野くんは寒くない?」
「少し。まあ寮まで我慢すればいいだろ」
実は寒さを我慢することには慣れている。分かって欲しいのは決して寒さが得意というわけではないということだ。
それに少しだけ肌寒い程度だ。余裕で我慢できる。ただ、出かけるときは防寒着も持って行った方がいいだろうな。そもそも今日以外出かける予定なんてないんだけどさ。
「楽しかったね」
「……まあ、そうな」
映画を観て、買い物をする。やったことはそれだけだが、こうも楽しめるものか。
「また今度、週末に一緒に出かけない?」
「……予定が合えば。テストが終わるまでは絶対無理だが」
「うんっ」
にこっと笑って頷く藤野。
そんな会話をしていると、気づけばエレベーター内での別れ際だった。
「じゃあ、また学校で」
「ああ。じゃあな」
それだけ言うと、ドアが閉まり、エレベーターが上昇して行く。
それを見てから、俺は自室に戻りすぐに夕飯の支度を始めた。
明日からまたちゃんと問題作らないとな……。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
藤野と映画を観に行った日から数日が経過したある日の放課後。
俺は幸村から答案を受け取るためにケヤキモールのカフェに向かっていた。
堀北からはさっき受け取った。難易度はどうだったか聞くと、採点してみれば分かると言われたので、そうさせてもらうことにする。
カフェに入ると、幸村たちの集団はすぐに目に入った。
なぜなら、そこには異様な存在感を放つCクラスの支配者、龍園がいたからだ。近づくにつれ、会話も聞こえるようになる。
「一体なんなんだ龍園。俺たちは忙しいんだ。用があるなら手短に済ませてくれ」
「別に用なんざねえよ。今日は挨拶だけだからな。だがお前たちに伝えとくぜ。近いうちにまた会おうってな」
「どう言う意味だ」
三宅が聞き返すが、それを全く意に介さず、龍園は取り巻きを連れて俺の横を通り過ぎた。
その瞬間目があった気がしたのは気のせいだろうか。
今来たばかりの俺はあまり状況がつかめていないが、はじめから店内にいた人たちは一件落着と捉えているらしく、次第に喫茶店らしい活気を取り戻していった。
その一方、俺の目的地である幸村たちのいるテーブルには、まだ一人Dクラスでない人物が残っている。
「ねえ、なんなのあんた。そこにいられると邪魔なんだけど」
長谷部がイライラしたような口調で責めるように言う。
「少しお待ちくださいね」
そして、俺はこの人物を知っている。
夏休みのバカンスで何かと関わりがあったCクラスの女子、椎名ひよりだ。
椎名はその場を立ち上がり、自分のバッグは置いて歩いて行く。どうやらコーヒーを入れているようだ。
「何あれ」
「さあ。知りたくもないな」
と、そこで幸村が俺の姿に気づき、目を向けてくる。
「速野。答案だよな?」
「ああ。回収しに来た」
「え、なにそれ」
情報量が少なく抽象的な会話に長谷部が突っ込んでくる。
「ただ、この話はちょっと後にした方が良さそうだな」
「ああ」
問題作成にも関わってくる事なので、椎名がいるこの場でのやり取りは得策とはいえない。
「あいつ誰か知ってるか?」
「Cクラスの椎名ひより。それ以上はなにも」
三宅の質問に端的に答える。
そこにコーヒーカップを持った椎名が戻ってきた。
「こちらでよければどうぞ」
「は?なんでくれるわけ」
「警戒なさらずとも、先ほどのことは見ていました。龍園くんが悪いのは一目瞭然です。これはCクラスとしてのお詫びと思ってください。砂糖の量は勝手ながら調節させていただきました」
「調節って……あれ美味しい」
「砂糖がかなり沈殿して残っていたので、そこから逆算しました」
「逆算って、そんなことできる!?」
「案外できますよ。こう見えて洞察力に優れてるんです」
自分で言うか、とは思うが、もし今の逆算というのが事実なら相当なものだな。
「これは……勉強をなさっているんですね」
「はあ、なんかペース崩れるなあ、この子……」
ペースが乱される感じは何度も経験したのでよく分かる。
「確か速野さん、ですね。お久しぶりです」
「……どうも」
かくいう俺も乱されてるんだけどね。
「もしかして私、スパイと思われてますか」
「そりゃそうだろ」
「そのようなことはしません。普段龍園くんとは距離を置いていますし」
「Cクラスの今までの行動を知ってて、信用する奴はいないと思うぞ」
俺は無人島試験でも椎名と龍園が何か話しているのを見ている。警戒するのは当然だ。
「そーそ。それにさっきは親しげに名前呼ばれてたじゃない?」
「無理を言って同行させてもらったんです。Dクラスに興味をもちまして。なんでも、Dクラスには正体を隠した策士がいるとか。無人島や船の上、体育祭でも大活躍だったそうです。ご存知ありません?」
龍園が探しているやつのことか。なら多分目の前の綾小路だと思うが、長谷部たちはそれを知るよしもない。
「知らないな。堀北じゃないか?」
「私も堀北さんしか浮かばないけど」
「違うそうです。ちなみに綾小路さんはよく堀北さんと一緒にいらっしゃるそうですね」
「席が隣だからな。他のやつよりは一緒にいる時間は長いかもしれない。最近はそうでもないが」
綾小路含めて誰一人嘘をついていない。椎名は現時点でこの事実を認める他ないだろう。
「なるほど、あくまでみなさんはそういう評価をされてるんですね」
「策士か何か知らないが、俺たちの邪魔をするのはやめろ」
いい加減勉強会に戻りたかった幸村が椎名に強く言う。
「そうですね……私のせいで勉強、できてないですもんね」
「申し訳ないがその通りだ。よく分からない話がしたいならテストが終わってからにしてくれ」
早々に話を片付ける幸村。
「本当にごめんなさい。また期末テストが終わったらお話ししましょう。それからでも遅くないですし」
大人しく帰ることを決めたらしい椎名が、カバンを取って席を立つ。
「コーヒーありがと。ご馳走さま」
「いえいえ、お気になさらず。さようなら」
全く、どこで誰に会うか分かったものではない。壁に耳あり障子に目あり、とは少し違うか。
にしても長谷部ってさっきまで椎名のこと邪険に扱ってなかったっけ。コーヒー一杯で人の怒りって静まるんだな。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ふむ……こんなもんか」
堀北主催の勉強会の会場に戻った俺は、空いていた堀北の隣に座って幸村と堀北の答案を採点していた。
以前二人に渡した、俺自作の問題。幸村は7割弱、堀北は7割強を獲得していた。
「21問中16問正解。今やったらもうちょい点数上がるだろうな」
「そう」
反応うっす。いや別に濃い反応を期待してたわけじゃないんだが、もうちょっと自分の点数に興味持ってもいいと思うわけですよ。
と、普段ならそんな感じのことを思っていただろう。だが、今日の場合はまあそれもそうか、と感じた。
堀北は黙々と数学の問題を解いている。それもかなり高いレベルの問題だ。まさに鬼気迫るといった感じの集中力を見せている。
今までの堀北の取り組みが不真面目だったわけでは決してない。むしろ今までもよくやっていたと思うが、今のこの取り組みようはそれとは比較にならないレベルだ。
まあ、今は思いっきり集中させた方がいいだろう。クラスの平均点上昇にも繋がる。
堀北がそんな様子なので、必然的に教える役の比重は俺に重くなる。いつも堀北に質問していた奴も、今日に限っては俺のところに聞きに来ていた。いま変な質問したら殺されそうだしな。それよりは俺に聞いた方がマシということだろう。
「ふう……」
隣の堀北の方からため息が聞こえてくる。キリのいいところで休憩を挟むのだろう。
「あなた、何か私に話しかけなかった?」
「……」
いやお前どんだけ集中してたの。
「なんでもない、気のせいだろ。それよりお前の点数。21問中16問だったぞ」
俺なりの気遣いというやつだ。改めて点数を伝える。
「そう……あまりいい点数ではないわね。幸村くんはどうだったかしら」
「21問中15問。同じくらいだ」
「正直に言ってかなり難しかったわ。けれど改善の余地はありそうね。またお願いするわ」
「分かった」
俺も俺で勉強を進めているので、これより高い難易度の問題を作ることはできるはずだ。
そういえばこれは藤野にも渡してたな。あとで連絡しておくか。
藤野と堀北の学力は……多分堀北の方が少し上だと思う。幸村といい勝負くらいか。恐らく藤野も7割ほど取ってくるだろう。
この問題に関しては、作った時点での俺の本気だ。自分の実力を過信するわけではないが、今の時点でこれなら期末テスト本番は安心だろう。堀北や幸村なら、本来ペアの合計で越えるべき赤点ボーダーのほとんどを1人分の点数でクリアしてくれるはずだ。
「そう、明日、テストへ向けて最後の話し合いをしたいと思っているわ。やることを済ませた後に参加してくれるかしら」
「話し合いか……分かった」
俺は参加しておくべきだろう。
「綾小路くんには私から話を通しておくわ。あなたは幸村くんに声をかけてくれる?」
「幸村なら、綾小路にそのまま頼んだ方がいいと思うぞ」
綾小路はここ最近でかなりの時間を幸村と共有している。連絡先を交換している、なんてこともあるかもしれない。つまり決して俺がめんどくさいとか億劫だとかそういうわけではない。ここ重要な。
「問題づくりはどうなっているかしら」
「ほぼ終わってる。期間には間に合うだろ」
ちなみにいうと俺だけが作っているわけではない。これまでにも何回か話し合いが行われ、その時に堀北と幸村にも作って欲しいと頼んだ。ちゃんとしたレベルのものを作ってくれたので大丈夫だろう。
今のところ、テストに向けてのDクラスの取り組みは順調だ。もし今回Cクラスに勝つことができればクラスが昇格できるところまで来ている。堀北の気合がすごいのもそのためなのかもしれない。
ひとまず採点は終わったので、俺は自分のテスト勉強を進めるべくテキストを開く。堀北は再び数学の勉強へ身を投じていた。
デート回で1話作れればよかったんですが……ちょっと無理でした。
主人公は読書家ではないので椎名はヒロインから外れています。
皆様のおかげでついに評価バーが赤になりました。ありがとうございます。これからも引き続きこの作品をよろしくお願いします。