実力至上主義の学校に数人追加したらどうなるのか。※1年生編完結   作:2100

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では、どうぞ。


ep.54

 綾小路は軽井沢という武器を手に入れ、堀北は須藤という仲間を手に入れた。

 じゃあ、俺はどうだ。

 藤野?いや違う。協力関係にあるが、先に挙げた二つの例とはベクトルが異なる。

 クラス内で動く場合、2人のように武器があれば相当有利に働く。

 

 となればやはり、手に入れるしかないだろう。

 

 自分の武器を。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「?どうしたの速野くん?」

「……ん、いや、少し考え事をな」

 

 少し表情に出てしまっていたのか、俺の顔を隣の藤野が覗き込むようにして見てきた。

 冬も本格的に迫ってきており、冷え込みはますます強さを増す。

 俺は先週末に買ったコートを早速着て登下校を行なっていた。購入したのはベージュのモッズコート。何着か試着して、一番違和感のないものを買った。

 藤野が尾行に気づいた日から8日が経過した。

 8日が経ったということは、今日は藤野と買い物に行く日でもある。それもつつがなく終わり、今は帰り道だ。

 相変わらず尾行は続いているが、なんかもう慣れてしまった。藤野も尾行を経験するのは3回目ということもあって気にしてはいないらしく、そのことを話題に出そうともしない。

 と、そんな時、俺の携帯が一件のメールを受信した。

 

「ん……」

 

 俺は少し立ち止まって携帯を見る。

 

「メール?」

「ああ」

 

 大したことのないメールだ。これに関して気にする必要はない。端末の画面を消してポケットに入れなおし、歩き出す。

 

「そういえば、もうすぐクリスマスか……」

 

 通り過ぎた木にライトアップ用のLEDライトが見えたので、思わず呟く。

 

「そう、だね……。ライトアップとか綺麗そうだよね」

 

 藤野にもさっきのLEDライトは見えていたらしい。

 この学校は一応、こういう季節感のあることもするのだ。5月には屋根より高い鯉のぼりがあったし、ハロウィンの時期なんかだとくり抜かれたかぼちゃがあったりした。多分生徒の精神衛生に配慮してのことだろう。環境が良すぎるので忘れがちだが、ここの生徒は自らが望んで入学したとはいえ、学校の敷地内に閉じ込められてる状態なわけだしな。

 因みに俺にクリスマスの予定が入っているはずもなく、何度目かわからないホームアローン(家で1人)を経験するだろう。

 つまり問題は家で何をするかに移って行くわけだが、何しようかな。ホーム・アローン(映画)でも見よっかな。前に観たのは確か小4くらいだったか、めっちゃ笑った記憶がある。あれ確かトランフ○大統領出てるんだよな。

 

「はぁ〜っ……」

 

 そんなことを考えていると、隣で手のひらに息を吹きかけ、擦り合わせている藤野が目に入った。

 

「寒いねー……最近起きるの辛くって」

「布団から出られないのか」

「うん」

 

 分かる。寝ている間に自らの体温で温められた布団は、この時期だとかなり気持ちいい。そんな中目覚ましがなったりすると軽く絶望すら感じるわけだが、まさか遅刻するわけにも行かないので目覚ましを駆使して毎朝頑張っている。俺の場合昼飯も用意する必要があるので、早い時間に目覚ましをセットしている。その代わり休日はグースカ寝るけど。

 その目覚ましも端末の機能だ。音量最大にしてセットしてるが、寮の部屋は防音性が高いので壁ドンを食らうことはない。というか壁ドンしても音聞こえないだろうな。因みにこれが「壁ドン」の正しい使い方だったりする。今広まっている※ただしイケメンに限る的な意味での「壁ドン」は新しく作られた用法だ。

 

「……あれ?」

「ん、どうした」

「……さっきまでついてきてた人、いなくなってる……」

 

 まだ寮までの道のりは半分まで行っていない。その状況で尾行が途切れるのは、普通に考えるとおかしな話だ。

 

「……よく分からんけど、いなくなったのに越したことはないんじゃないか」

 

 アイドルか何かでもない限り、知らない誰かに追いかけられたいという人はいないだろう(アイドルでも多くはないと思うが)。いないならいないでその方がいいに決まっている。

 

「そうなんだけど……ちょっと不気味かな、って」

 

 まあ不気味さは否めないな。

 

「……まあ、大丈夫だろ。通学路には監視カメラも多いしな」

「うん……」

 

 大丈夫だ。藤野に何か被害が及ぶことは絶対にない。龍園がそんなことをしても何一つ得はないだろう。

 

 これからのことを少し考えながら、冬の通学路を進んでいった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 先日、奇妙な事件が起こった。

 龍園が突如としてDクラスに訪れ、高円寺を呼び出して黒幕かどうかを確かめるという事件。

 一見事件性はないように見えるが、色々あったのだ。例えば。龍園が高円寺の手鏡を破壊したり。高円寺の手鏡はお役御免となってしまった。本人は気にする様子もなかったけどな。

 にしても、高円寺のワードセンスは謎だ。

 龍園はドラゴンボーイと名付けられていた。坂柳はそれを気に入ったらしく、2回ほどその呼び方で龍園を呼んだ。1回目で龍園が「次呼んだら殺すぜ」と言い、2回目に呼んだ瞬間に龍園が蹴りを加えようとしたのだ。その時は坂柳に同行していた橋本が間に入って坂柳を守ったので大事には至らなかったが、橋本は吹き飛ばされていた。これが事件その2だ。

 堀北はあの場の雰囲気について行けていなかった。まあ、龍園に坂柳に高円寺という、1年の中でもトップクラスにクセが強いメンバーが集まってたからな。堀北も割とクセが強い方だとは思うが、あの3人ほどでは無い。

 龍園も、まさか高円寺が黒幕なんて本気で思ったりはしていないだろう。ただ無いとも言い切れない可能性を潰しにいったか、あるいは別の目的があったと考えるのが自然だ。一応その時は現場にいたが、いまいちよくは分からなかった。

 ただ、龍園は最後に「黒幕は大分絞れた」と言っていた。

 その絞れた中に誰が入っているか、俺には知る由もない。龍園はしっかりと正解にたどり着けているのだろうか。

 

 まあ、そこに行き着く前にちゃんと手順を踏んでもらわなきゃ困るけどな。

 

 と、いうわけで今日のお勤めは終了し、帰り道だ。

 多くの人々の望みを無視するかのように、寒さは加速していく。コートのポケットに手を入れ、中に忍ばせているカイロを握りながら歩いていた。

 閉塞的な環境のためあまり実感が湧かないが、ここは東京だ。1月や2月になれば氷点下を下回ることも予想される。そうなると、今までより引きこもり願望が増すこと間違いなし。先が思いやられるな……

 そんなことを考えながらも、しっかりと目的地に向かって足を進めていく。

 だが、その目的地は部屋ではない。

 一刻も早く家に帰りたいが、今日はそれよりも大事な用事が今から数分後に控えているのだ。

 俺が向かうのは、以前俺を尾行している奴と遭遇した場所と同じ。

 通学路から外れた路地にある行き止まり。

 一歩一歩踏み出すごとに、空気の温度が下がっていく気がする。しかし進むのはやめない。そのまま右へ左へ曲がって自ら行き止まりへ。

 そして、まだ姿を見せない俺を尾行していた人物「たち」に向かって声をかける。

 

「……さっきからなんなんだ。なんでついてくる」

 

 その声に呼応するようにして、尾行者たちが曲がり角の方から姿を見せる。

 1人、2人……そして4人目が出て来たところで、その流れは止まった。

 そのうちのリーダー格が、いつも通り不気味な笑みを浮かべて言う。

 

「いつまでしらばっくれていられるか、楽しみだぜ」

「しらばっくれる?今あるのはお前らが俺をストーキングしていたという事実だけだろ」

 

 龍園、石崎、伊吹、そして山田アルベルト。全員がCクラスの武闘派だ。

 俺をずっと尾行していた小宮は、ここには来ていないらしい。

 

「このまま誤魔化しあいを続けるのも一興だがな、お互い疲れるだけだぜ」

「俺が何を誤魔化すって?」

 

 高円寺の時とは明らかに雰囲気が違う。強い威圧を感じる。

 

「言うつもりはないようだな。なら望み通り、俺の方から言ってやるよ。鈴音の裏で動いてたのはお前なんだろ、速野」

 

 それを聞いた瞬間、俺は心の中で安心し、同時に感心した。

 やはり龍園もキレ者だと。

 

「……何を言いだすかと思えば、お前が必死に探してる奴のことか」

「ああそうさ。逃げようったってそうは行かないぜ」

 

 俺の運動能力が特別いいわけでないことも知っているようだ。戦闘で俺に勝ち目はないことをわかった上で言っているらしい。

 ここからの話の持って行き方を間違えるわけには行かない。

 

「……なら、答えあわせでもするか?今まで俺が何をしてきたか、それだけ自信を持って言い切ってるなら、当然理解してるんだろ」

「ククク、M気質が強いらしいな。しっかり虐めてやるから安心しろよ」

 

 自分がやったことを暴かれるので、確かに捉えようによってはマゾヒストかもしれない。だが、誤解はきちんと解かなければ。

 

「俺はMじゃない。推理小説なんかでよくあるんじゃないか。俺を犯人にしたきゃ証拠を出せってやつだ」

「クク、望みとあらばな」

 

 こう言う言い回しがこいつは好きだろう。あえてそう言ってやる。

 龍園の表情は変わらず、不気味な笑みを浮かべたままだ。

 そして、ゆっくりと口が開かれる。

 

「真鍋たちを使って軽井沢を虐めさせ、それをネタにまずは真鍋たちに俺らCクラスを裏切らせた。そして虐められた過去を必死で隠していた軽井沢を脅して、お前の支配下に置き、利用した。どうだ、これで満足か?」

 

 綾小路が軽井沢を支配下に置いていたことには想像が及んでいたが、まさか軽井沢が過去に虐められていた過去を持ってるなんてな……頭の片隅にもなかった新事実だ。

 Cクラスの真鍋について俺は何も知らないが、軽井沢が綾小路に降った時期から推測すると、真鍋たちが綾小路によって利用されたのも夏休みの無人島試験終了後の船の上での出来事だろう。

 だが、これで綾小路が今まで何をして来たか、その全体像が薄っすらと見えてきた。

 

「……ああ、満足だ」

 

 俺は嘘をつかず、素直にそう答えた。本当に満足した。これで十分だと。

 しかし、その瞬間、龍園が笑い出した。

 

「クク、クハハハハ!なるほどなるほど、やっぱりそうかよ!おもしれえ奴だなあお前もよ!」

「ど、どうしたんですか龍園さん……」

 

 突然の龍園の豹変ぶりに、そばにいる石崎が思わずそう言う。

 しかし聞き入れる様子は全くない。龍園は今自分だけの世界にいるようだ。

 

「やっぱそう来なくちゃなあ。Xを見つけた瞬間がこんなつまらねえ訳あるかよ!こいつはXじゃねえ、黒幕は別にいるってことさ!」

「別に……?何言ってんの龍園。さっきこいつは認めたんじゃ……」

「話を聞いてなかったのか?こいつは答えあわせをするとは言ったが、自分が黒幕だとは一言も言ってねえんだよ!」

 

 まさに龍園の言う通り。もちろん俺は黒幕なんかじゃない。

 

「じゃ、じゃあ、こいつは一体……」

「本人に聞いてみようじゃねえかよ。どうだ速野、この茶番はXの指示か?」

 

 俺は何も答えない。

 無反応でも、龍園は勝手に話始めてくれるだろう。その予想通り、龍園が続きを話し始める。

 

「んなわけねえよなあ。Xなら、俺が何を言った時にどう答えるかまで細かく指定するはずだ。お前のその受け答えがXの指示だとしたらあまりにも無造作が過ぎる」

 

 確かに、あいつならそこまでするだろうな。

 

「じゃあ何なのよこいつは?私たちはまんまと騙されたってわけ?」

「舐めてんじゃねえよ伊吹。これは想定外じゃねえ。Xへ向けての最終ステップさ。本命の計画は別にある」

 

 恐らく強がりなんかではない。本当にそうなのだろう。

 こいつは初めから本気で俺のことを黒幕だとは思っていなかった。高円寺よりも強い威圧を感じたのは、高円寺よりは俺の方が確率が高いから。俺を本命だと思っているなら、もっとちゃんとした「舞台」を整えるはずだ。

 

「だがお前も中々やり手らしいな。こりゃ掘り出しもんだぜ。Xの前にいきのいい前菜と行こうじゃねえか」

 

 龍園の中で俺は金魚のフンから前菜までには格上げされたらしい。光栄と言っていいのか分からないが、素直に受け取っておこうか。

 

「俺は元々少し怪しんでたんだ。Dクラスの黒幕は2人いるんじゃねえかとな。全ての動きがX1人のものだと考えるとどうもしっくり来ねえ。俺とXは考え方が似ている。だが、俺とは相容れない行動がいくつかあったのさ」

 

 要するに勘ということか。だが実際当たっているのでバカにはできない。

 

「例えば体育祭の直後、メールは俺だけじゃなく、俺の横にいた櫛田にも送られてきた。俺なら一つ証拠を用意できたら、わざわざ自分の足で出向いてまでもう一つの証拠なんざ作らねえ。この時点で俺は、Xが予想外に慎重なヤツなのか、黒幕はもう1人いるかのどちらかだと考えたのさ」

「俺の前で櫛田のことを言ってもいいのか?」

「お前なら当然把握してんだろ」

 

 もちろん把握している。

 櫛田のことを龍園から聞いたと櫛田本人にバラし、龍園との協力関係を強制終了させる手もある。しかし、正直櫛田が龍園に勝てるとは思えない。この作戦はボツだ。

 ……そろそろこの対応の仕方も面倒になってきたな。折角この会話も録音して何かに利用してやろうかとも考えたが、龍園は気にしている様子はない。どころか、俺が録音していることも見越した上で話しているんだろう。これ以上続けてももはや意味はない。

 もう俺の目的は果たせた。あとは退散の方向に持っていくか。

 

「で、そのもう1人が俺だと」

「そうさ。お前のことを尾行してた小宮からお前に怪しい動きがあるってのも聞いたが、俺は自分しか信じない。最後は俺の独断で今日のことを決めたのさ。どうやらそれは間違いじゃなかったらしい。こんな面白えヤツを見つけたんだからな」

 

 そう言うと、龍園はいっそうその口角を釣り上げ、俺に近づいてくる。

 

「お前の目的を言い当ててやる。Xと軽井沢の関係を知ること、だろ?感謝しな、わざわざ言ってやったんだからな!」

 

 やはりそれか。

 龍園はクラスを暴力で支配したと聞いていた。だから今日、ここでそれが使われることも予想の範疇ではあったが……そっちは得意分野じゃないんだけどなあ……

 俺の顔に向かって高速で振るわれる龍園の腕を、俺はすっと避けた。二発目三発目を喰らわないように距離を取る。

 しかし、ここは行き止まり。加えて伊吹、石崎、アルベルトが俺の進行方向を塞いでいる。四方八方敵だらけ。1ミリたりとも俺に勝ち目はない。絶体絶命の大ピンチ。

 だが、別に勝つ必要はないのだ。負けなければそれでいい。

 

「お前の運動神経は高くないと思ってたんだが、中々いい動きじゃねえか。ここに監視の目はない。沢山楽しもうぜ」

「それはやめた方がいいんじゃないかな」

 

 まるで救世主のように、その声はここにいる5人に降りかかった。

 

「あ?」

 

 イラついた様子で、龍園が声の方向に振り返る。

 

「あなたたちの行為、これ以上続けるなら今撮影してる映像を学校側に提出することになるよ。ただでさえDクラスに追い越されそうなのに、そんなことしてる場合なのかな?」

「んだと!?」

「黙ってろよ石崎。……俺が今楽しんでんだ。外野が邪魔してんじゃねえよ」

 

 その救世主の言葉に激昂する石崎を止め、そう言い返す龍園。

 

「外野じゃないよ。速野くんは私の大切な友達だから。龍園くんたちが速野くんに続いて狭い路地に入って行ったって聞いたからまさかと思って来てみたけど……」

 

 右手に携帯を持ち、龍園にも臆することなく話す少女。

 

 そう、Aクラス、藤野麗那だ。

 

「おいおい、女に頼るのかよお前は。情けねえな」

「頼るも何も、偶然来たって言ってただろ。お前は高円寺に同じようなことしてるから噂になるのも当然だ。何にせよ、お前が今ここで俺に暴力を振り続けることに意味はない。もし続けるなら、まだ本命が残っていながら仕留めることも出来ず、お前は停学処分を受けて自分の楽しみを遠ざけることになるだろうな」

 

 龍園は自らの楽しみを邪魔されるのを嫌う。

 この言い回しなら恐らく諦めるだろう。龍園にとっての至高は俺ではなく、あくまでX(綾小路)なのだから。

 

「クク、やっぱり今日来たのは正解だったぜ。お陰でしっかりと舞台を整えられそうだ。お前がXと繋がってんならそいつに言っとけ。首を洗って待ってろってな」

「生憎だが俺は繋がりを持ってない」

 

 少なくともいま、俺がこのことを綾小路に伝えるメリットは何もない。というよりデメリットしかない。

 

「まだ物足りねえが、楽しみはまだまだこれからだ。Xを潰し、Dクラスを葬ってやるよ」

 

 捨て台詞に、そう力強く宣言してみせる龍園。

 アルベルトと伊吹は無言で、石崎は舌打ちをしながらその場を立ち去っていった。

 

「ね、ねえ、大丈夫なの?」

 

 藤野が心配そうに聞いてくる。

 しかし、俺が心配することじゃない。

 

「大丈夫だろ」

 

 龍園は黒幕探しに関して、自分から仕掛けているつもりになっているかもしれない。

 そもそもそれが間違いなのだ。

 さっき龍園から、X(綾小路)が軽井沢を利用して真鍋たちを裏切らせていたことを聞いて確信に変わった。綾小路は真鍋たちが龍園に裏切りを隠し通せないことも、いずれ龍園が軽井沢にたどり着くことも前提で動いていた。

 そして恐らく、龍園がどんな方法を使って自分をおびき出してくるか、どのような形で決着をつけようとしてくるか。それも全て計算に入れ、その上で戦うつもりなんだろう。

 おびき出す方法に関しては予測しかねるが、どのように決着をつけようとするかくらいは簡単に予想がつく。

 さっきと同じ、振り切れた暴力だ。

 相手の土俵で戦って龍園の心を折り、龍園との戦いを完全に終結させる。恐らくここまでが、真鍋たちを裏切らせた時点から描いていた綾小路のシナリオだろう。

 全く末恐ろしい。利用できるもの全てを利用し尽くし、最後に勝つのはあいつ自身だ。俺の予想が当たっているなら言うに及ばず、当たっていなかったのなら、これよりもっと深いシナリオが用意されているということだ。ちょっとそれは怖くて考えたくない。

 俺の方は暴力で勝てないから藤野に頼っていると言うのに。龍園の言う通り情けないのかもな。実力差は歴然か。

 

「もう……ちょっと怖かったよ。相対してみるとちょっとすごい雰囲気あるね、龍園くん」

「まあ……そうかもな」

 

 理解はできる。存在感がとにかく濃い。藤野のいう雰囲気というのは恐らく、喧嘩慣れしているとか、そういった意味だと思うが、あれで頭の回転も半端ではないのだから驚かされる。

 

「やっぱり、Dクラスの策士は他にいるんだね」

 

 藤野が来たのは、当たり前だが偶然ではない。

 もし暴力沙汰に発展しそうな場合、俺が藤野に向けて空メールを送信し、現場に来た藤野がそれを止めるという手筈になっていた。そしてその協力を得るために事情を少しだけ明かした。

 龍園の言っているDクラスの策士は本当に存在すること。そして俺はその動きを探るために行動したということ。

 

「そうだ。近々決着するんじゃないか」

「え、そうなの?」

「いつになるかは龍園が仕掛けるタイミング次第ではあるが、そう長引くこともないと思うぞ」

 

 本命のプランがあるって言ってたしな。

 

 まあ、結末は恐らく……あいつが負けるとは思えないな。

 

 龍園との対決もそろそろ最終段階に入った。

 俺の方も、そろそろシメに取り掛からせてもらうとするか。

 

 ポケットから端末を取り出し、手打ちでメールアドレスを入力して一通のメールを送り、再びポケットの中にしまった。




出来るだけ臨場感出そうとしたんですが……難しすぎて。こんな文章でも楽しんでいただければ幸いです。

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