実力至上主義の学校に数人追加したらどうなるのか。※1年生編完結   作:2100

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ほんと遅くなってすみません……新学期が始まるとこれより遅いペースになるかもしれません。どうかお許しを。
新刊の発売日、出ましたね。4月25日。ツイッターで見たので定かではないですが。
新刊出るまではオリジナル書き続けますので、よろしくお願いします。


ep.58

 坂柳との奇妙な対談から1日が経過した。

 今日は12月24日。

 イヴだ。

 今日も特に予定はない……

 はずだったのだが。

 朝7時過ぎ。俺は上着の上にコートを重ね、外に出た。

 玄関のドアを開けた瞬間、凍てつくような寒さが体に刺さる。

 

「寒いなやっぱり……」

 

 太陽の恩恵を受けきっていないこの時間では、このぐらいの寒さは当然か。

 それに昨夜は雪も降っていた。結構積もっている。

 エレベータを利用して1階に降り、寮の外へ。

 そんな時、俺と並行して同じ方向に歩く者の姿があった。

 向こうも俺に気づいたらしく、こちらに声をかけてくる。

 

「速野。久しぶりだな」

「……どうも」

 

 元生徒会長、堀北学。

 話すのは夏休みのあの時以来か。

 

「ちゃんと行くようだな」

「……行くって、別にただの散歩ですけど」

 

 俺がいま向かっている行き先とその目的はあまり外に漏らしたくない。

 

「誤魔化さなくて構わん。綾小路に頼んでお前を呼び出したのは俺だ」

「……そういうことっすか」

 

 いつからこんなパイプ作ってたんだ綾小路は。

 それはそうと、この「密会」にこの人が加わるとなると、話題は必然と定まってくる。予想からは少し外れていた。

 俺も元会長も言葉を交わすことなく、あらかじめ決められていた集合場所に向かう。

 しかしそこには予想外の人物が居座っていた。

 

「……まさかこいつらか?俺に会わせたいっつーのは」

 

 Cクラスのリーダー、いや、元リーダー、龍園翔。

 あの噂とこの傷を見ると……隣にいる綾小路にはこっぴどくやられたらしいな。

 

「生徒会長とは随分仲がいいらしいな。鈴音にも役に立つことがあったか」

 

 綾小路の場合、元会長が堀北に制裁加えようとしていた場面が会長との初対面だろう。

 どういう巡り合わせかは分からないが……恐らく、一年の中で誰よりも早く元会長に遭遇してるのって俺なんだよな。あのハンカチなくしかけた事件。懐かしい。

 

「お前もいんのか。場違いだと思うがな」

「本当か龍園。俺は少なくともお前と同等以上だと見ている」

 

 俺を見下すような言い方をする龍園だが、なぜか元会長にフォローされた。

 どちらの実力が上か。そんなことにはあまり興味が湧かない。いや、もちろん上ならばそれに越したことはないのだが、いざ相対した時、より強い方が勝つとは限らない。勝負は時の運とはよく言ったもので、勝つか負けるかが決定づけられるのは地力以外の要素であることも少なくない。

 

「まあいい。龍園も協力者、という前提のもと話を進めさせてもらう」

「待て、誰が協力者だと?」

「少なくとも敵ではないことは保証する」

 

 まあそれだけでマシだろう。龍園に目をつけられると色々と面倒だ。敵でないということなら邪魔はしてこないはず。

 

「綾小路。以前の交換条件は覚えているな」

「ああ。南雲雅を止める手伝いだろう」

「南雲?新任の生徒会長か」

「そうだ。そいつのやり方が気に入らないらしい」

 

 そして元会長は、南雲派になびかないであろう者を生徒会に入れようとしていた。その誘いを受けたのが俺と、恐らく綾小路だったってところか。

 

「2年はすでに南雲に支配されてるから、協力してもらうなら1年しかいないわけだ。一つ教えてくれよ堀北。いつからこいつらに目をつけていた」

「綾小路の場合は入学してすぐだ。速野は入学から一月が経った頃だったか。そっちはだいぶ時間がかかったようだがな」

 

 綾小路はたしか入試で全科目50点を取って目をつけられたんだったか。目立ちたくないならそんなことするなよ、と思うのだが、今ならなんでこいつがそんなことをしたのか、それが分かる気がしないでもない。

 

「クク、俺は過程を楽しむタイプなんだよ」

「にしては随分と派手にやられたものだな」

「はっ、ここで試してやってもいいぜ?」

「遠慮しておこう。そんなことに興味はない」

「ま、そうだろうな」

 

 それで納得したかに見えた龍園だが、俺は龍園が足で雪を蹴り上げる動作をした瞬間に左に避け、なんとか回避。

 その雪で元会長の視界が奪われた瞬間、龍園は右のフックを腹に叩き込もうとする。

 しかしそれを完璧にガードした元会長。落ち着いて後方に下がり、二撃、三撃に備える。

 

「賢いだけのガリ勉野郎かと思えば、なかなかやるじゃねえか」

「遠慮する、と言ったんだがな」

「不服ならいつでも仕掛けてこいよ。それとも、後輩相手には反撃できないってか?」

 

 誰彼構わず挑発していく龍園。綾小路に徹底的にやられた後もそれは変わっていないらしい。

 

「頼もしい仲間を得たようだな、綾小路」

「オレもいまそう思ってるところだ」

「まあいいさ。それなりに出来る奴だってことは認めてやんよ。堀北『先輩』」

 

 この龍園の挑発は一生治らないかもしれないな……

 そろそろこの空気にも飽きてきたので、俺も口を開く。

 

「あの、そろそろ話を前に進めませんか」

 

 この中で堀北先輩に敬語を使っているのは俺だけだが、だからといって今更タメ口なんて聞く気にならない。

 

「そうだな」

 

 先輩は一度俺の方を見て頷いてから、本題に移る。

 

「綾小路にやってもらいたいことは学校の秩序を守り、維持すること。そのための手段は問わない。生徒会長の座から引きずり下ろす、あるいは、行動を自粛させる。なんでも好きな方法でやればいい。3学期になれば、南雲の権力はより強大なものになっていくだろう」

「そんなに権力が強くなるのか。具体的にはどれほどだ?」

「もちろん全てを操る力はない。だが、お前たちも知っているだろうが、学校内で起こった問題は生徒会が対応にあたる」

 

 これは恐らく1学期の終わりに起こった須藤の暴力事件のことを言っているんだろう。古い記憶ではない。

 

「そしてもう一つ。生徒会には、下級生の特別試験の一部を考案、決定する権利も与えられている。お前たちは今年、無人島でサバイバルを行ったが、あれは過去の生徒会の案を参考にしたものだ」

「そうだったんですか」

 

 それは知らなかった。特別試験のアイデア出しか。

 以前の星之宮先生の口調から考えると、無人島を使った特別試験は星之宮先生や茶柱先生の代にも行われたと思われる。その時の試験を参考にしたんだろうか。もちろん同じ内容ではないんだろうが……恐らくそこに茶柱先生のクラスは参加できなかった、ということか。

 話の時間軸を現在に戻そう。

 堀北先輩が危惧しているのは、新しい会長が今までの特別試験とは違ったものを作り出すこと。

 南雲先輩は、特別試験を使って何かをする可能性がある。実質的に自分の支持者獲得のための特別試験、というものが行われるかもしれない。

 

「クソつまらねえ学園生活を楽しくしようとしてやってんだろ?歓迎してやれよ」

「それが正しい方法であればな。だがこれまで南雲は多くの退学者を出す手法を用いてきた。今年の2学年の退学者は17人、そのうち、少なくとも半数以上に南雲の関与があった」

 

 17人か……かなりの人数だ。それだけの人数が退学してれば、いずれ南雲先輩に逆らう人物は消える。

 

「生徒会長の座についた今、その影響は1年生や3年生にも及ぶだろう。年度が変われば、新しい1年生にも飛び火する」

「合理的じゃねえか南雲は。無能な奴らが退学していくんだろ?」

「ルールを破った者を除き、誰1人欠けることなく卒業まで導いていくことが理想の教育者というものだろう」

「だったら堀北元会長様は、今まで1人の退学者も出してねえってのか?」

「あくまで理想の話だ。だが少なくともお前たち1年生からは退学者が出ていない。理想を追い求めるのも悪いことではない」

「だとよ。お前らはどう思ってんだ、その理想とやらをよ」

「理解はできるが、少なくともこの3人が追求するものではないな」

「クク、その通りだ」

 

 龍園や綾小路の言っている通りだ。だがこの2人と全く同じ考えという訳ではない。

 俺としては……そうだな。チェスより将棋、と言ったところか。

 

 1人の退学者も出さず、卒業まで導く。今その理想を追い求めそうな者は、俺が知っている限り一之瀬くらいのものだ。

 ……だが、一之瀬は南雲派なんだよなあ。不思議なことに。

 そんな時、やおら龍園が立ち上がる。

 

「俺はここで帰らせてもらうぜ。なかなか面白え話だったが、これ以上は時間の無駄だ。じゃあな」

 

 生徒会のゴタゴタに興味はない、か。まあ南雲体制になったとしても、龍園が下に落ちることはないだろうしな。

 

「おい、これからずっと1人でいるつもりか?」

 

 去っていく龍園の背中に、綾小路が尋ねる。

 

「ほっとけ。俺にはこれの方が元々性に合ってんだよ」

 

 龍園は立ち止まることなく、そう答え、寮の方へ消えていった。

 

「綾小路。俺と堀北先輩が来る前に、龍園と何か話したのか」

「少しな」

 

 やっぱりか。内容は聞いても答えてくれないのはわかっているのでこれ以上は聞かないが。

 

「お前がこの話を龍園に聞かせたのは、あいつを仲間に引き入れるためか?」

「無きにしも非ずだが……オレが1年生の争いには興味を持っていないことを分からせる目的の方が大きい」

 

 なるほど……まあ、納得できない理由ではないな。

 

「お前はどうする速野。これから話す内容を知る人間はできる限り少なくしたい。呼び出しておいて悪いが、興味がないなら立ち去ってもらう」

 

 鋭い目線で俺を見る堀北先輩。

 そりゃそうだよな。協力しないけど話は聞くなんて虫のいいことが通じるとは思っていない。

 

 正直どちらでも良かった。

 協力することにもしないことにも、同価値のメリットとデメリットがある。少し考えて、俺は結論を出す。

 

「じゃあ、帰らせてもらいます。綾小路からすれば俺は邪魔なんじゃないですかね」

「そんなことはないが」

「だが誰かと協力なんて柄じゃないだろ、お前は」

 

 堀北先輩と綾小路がこういう風に話せるのは、お互いの実力が五分五分だからこそで、それ故に協力関係も成り立つ。

 そう考えた時、綾小路が自分と同等の実力だとは思っていないであろう俺と無理に足並みを揃えるより、1人でやらせてやった方が効率的かつ合理的だ。

 

「それじゃあ」

「いいのか」

「ああ」

 

 龍園が立ち去った足跡をなぞるようにして、俺も寮に戻る。

 これを機に生徒会とパイプを作ることもできるかもしれない。だが今はそれより優先度の高いことがある。

 

 3学期は俺にとって、結構キツい時期になるかもしれないな。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 日付が変わるまであと2時間ほどという時刻だった。

 今日はクリスマスイヴなわけだが……朝、綾小路たちと接触した以外はこれといって特別なことはしていない。あれから寮に戻った後、朝食と昼食を足して2で割った感じの時間帯にご飯を食べ、少し買い物に出て、暇だったので軽く勉強して、それで俺のクリスマスイヴは終わった。

 来年は映画を観に行くのもいいかもしれないな。

 

 夕飯を食べ終わったあと、ちょっとした作業を終え、さて寝るか、というところ。

 部屋のインターホンが鳴った。

 

「……誰だこんな時間に」

 

 心当たりはあるが……まさか。

 

「はい」

 

 玄関に向かい、返事とともにドアから外を覗く。

 

「こ、こんばんはっ……」

「……佐倉?」

 

 俺の心当たりとは違う人物の来訪だ。

 ひとまずドアを開ける。

 

「……どうしたんだ急に」

「あ、あの、その……何回か電話したんだけど、電源が切れてる、って……」

「……悪い、充電切らしてた」

 

 今日一日端末を充電することを失念していたせいで、今は起動すら出来ず、端末はベッドの上で電源プラグにつながれて充電中だ。少し悪いことしたな。

 

「それで、どうしたんだ」

 

 改めて要件を尋ねる。

 

「え、えと、その……これっ」

 

 少し恥ずかしそうに、ラッピングされた巾着型の小袋を手渡してきた。

 

「これは……」

「その、クリスマスプレゼント……最近速野くんと話せてなかったから……め、迷惑、だったかな?」

「いや、ありがとう。開けていいか」

「う、うんっ」

 

 許可を得て、縛られているリボンを外して中身を確認する。

 

「これは……」

「く、クッキー、焼いたの。速野くん、何が欲しいかわからなかったから……」

 

 種類はプレーンのクッキーと焦げ茶色のチョコクッキー。どちらも3つずつ入っていた。

 俺はプレーンのクッキーを1つ、手にとって口に入れる。

 サクサクといういい食感とともに広がる甘み。店で売られている製品のクッキーとも違ってオリジナリティのある味だ。

 いや、美味いぞこれは。

 

「美味い」

「ほ、ほんと?」

「ああ。本当に」

 

 確か佐倉も弁当自炊組だったか。グラドル+料理得意ってすごいシナジー効果。

 

「……そうだ。ちょっと待っ」

 

 言いかけて、止まる。

 わざわざプレゼント渡しに来てくれた相手にこんな仕打ちはないだろう。

 

「いや、寒いし中に入ってドア閉めて待っててくれないか?」

「え?う、うん……」

 

 突然の俺の申し出に戸惑っている様子の佐倉。

 俺はキッチンからあるものを取り出し、再び玄関に戻る。

 

「……お返しになるかは分からないが、食ってくれるか」

 

 俺が持っていたのは、普段おかずを入れるのに使う皿……の上に乗せられたクッキーだ。

 

「えっ……い、いいの?」

「ああ」

 

 佐倉はゆっくりとクッキーを手に取り、口に入れる。

 作ったものを他人に食べてもらう瞬間って、緊張するんだな……さっき俺がクッキー食べてる間、不安そうな表情をしていた佐倉の気持ちがわかった。

 こちらにもサクサクという咀嚼音が聞こえてくる。佐倉は一つを食べ終え、俺に目を向けて言った。

 

「……美味しい」

 

 普段は見せないようなぱあっとした笑顔でそう言ってくれた。

 

「……そうか?ならよかった」

「すごいよ速野くん。料理、得意なんだ」

「得意というか、そうせざるを得なかったからな……」

 

 両親が海外出張で一人暮らしだった、とかそういうわけでもない。

 ただ、飯にありつくためには自分で作らないといけなかった。

 あまりいい記憶じゃないが、その境遇のお陰で料理が出来るようになったのも事実だ。

 

「あ、あの、速野くん……」

「……ん、なんだ」

「そ、その、ちょっと話したいことが、あるんだけど……」

 

 話したいこと?

 なんだ。よくわからないが、聞くだけ聞いてみるか。

 

「……分かった。取り敢えず上がるか?」

 

 クリスマスイヴに女子を部屋にあげるのは少し抵抗があるが、一応聞いてみる。

 

「い、いいの?」

「立ち話も変だろ。まあここで話したいんだったら無理に上がれとは言わないが……」

「じゃ、じゃあ……お邪魔します」

 

 俺の申し出に応じ、佐倉が靴を脱いで部屋に上がる。

 そういえば……誰かを部屋に入れたの、実はこれが初めてだな。しかも女子とか。

 出来るだけ意識しないようにしながら、腰を下ろした佐倉に話しかける。

 

「それで、話っていうのは」

「あ、うん、えっと……」

 

 佐倉の表情にはまだ迷いが見える。

 だが、意を決したように俺に言う。

 

「大晦日、なんだけど……みんなで遊ばない?」

「……」

 

 本当に急だったので、一瞬黙ってしまう。

 ちょっと分からないことが多すぎる。一つずつ聴いていこう。

 

「……みんな、とは?」

「波瑠加ちゃんと、啓誠くんと、明人くん、清隆くん、それから私。実は明日も遊ぶ予定だったんだけど……清隆くんが都合つかなくって。その埋め合わせ、みたいな感じなの。どう、かな……?」

「……啓誠って誰だ」

「あっ、そっか。速野くんは聞いたことない、よね……幸村くんだよ。そう呼んでほしいって」

「ふーん……」

 

 まあ多分色々事情があるんだろう。

 にしても、この友人グループには名前で呼びあうという決まりでもあるんだろうか。以前綾小路も三宅のことを明人って言ってたような気がするが……

 いや、今はそのことはいい。

 

「でも……そこ、俺が参加したらしらけるんじゃないか?」

 

 1番の問題はそこだ。俺がいることによってグループに及ぼしてしまう影響。

 佐倉が誘ってくれたとしても、俺は素直に頷けない。

 

「そ、そんなことないよ!……みんなたまに、速野くんもグループに入ればよかったのに、って言ってて、なんでって聞いたらこのグループが作られたのって速野くんがきっかけって聞いて……」

 

 佐倉が身を乗り出して主張する。

 ……まあ、たしかにそういう一面はあるが。

 

「でも、それは今のお前たちには関係ないだろ」

「で、でも、速野くんもいた方が私は、楽しいと、思う、んだけど……」

 

 自信がなくなってきてしまったのか、言葉尻が弱くなっていく。

 

「あー……」

 

 いや、別に嫌なわけじゃないのだ。むしろその誘いは嬉しい。

 ただ俺は、あのグループは他の友人グループより排他的な性質を持っていると思っている。そもそもがあまり他者と深い関わりを持たない人たちが集まってできたグループなのだから、そうなるのも自然だ。

 俺がそこに参加することがいい結末を産むのかどうか、判断がつかない。最悪の場合、ニューイヤームードぶち壊しなんてこともありうるのだから。

 

「みんなも、速野くんが来たいって言ったら歓迎する、って言ってたから……その、どう、かな?」

「……」

 

 ……俺は歓迎されてるのか。

 

「……マジで?」

「本当、だよ」

 

 こくりと頷く佐倉。

 そりゃ……困った。

 断る理由がなくなってしまった。

 

 いや、そもそも断る理由なんて初めから存在していなかった。

 なかったものを、わざわざ俺自身が作り出しただけ。

 

 ここまでくると、俺の返事は定まっていた。

 

「……分かった」

 

 そう言った瞬間、佐倉の表情が固まる。

 

「ほ、ほんとに……?」

「……俺が行って迷惑じゃないなら、ご一緒させてもらっていいか」

「も、もちろんっ!やったっ」

 

 胸の前で小さくガッツポーズを作る佐倉。

 

「本当にいいんだな?」

「もちろんっ」

「……そうか」

 

 佐倉はきっと純粋な厚意で俺を誘ってくれているのだろう。

 ここ最近、神経をすり減らす出来事が多かった。龍園や櫛田、堀北先輩との接触、坂柳との対談。

 厚意に無警戒にもたれかかってみるのもいいかもしれない。

 

 

 細かい時間や場所などは佐倉を通じて知らせてもらう約束を取り付けた。

 

「それじゃあ……楽しみ、だね。大晦日」

「……そうだな。じゃあ、おやすみ」

「うん。おやすみなさい」

 

 バタン、と玄関のドアが閉まり、佐倉は自室へと戻っていった。

 

 誰かと遊びに行く、か。

 それなりの人数で遊びに行くのは、夏休みのプール解放以来のことだ。あれだって元は藤野と2人の予定だったしな。

 

 今年の大晦日も、どうせいつもと同じような1日になるんだろうと思っていたが……せっかくの機会だ。楽しむほかないだろう。




だんだん速野がリア充になってる……

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