実力至上主義の学校に数人追加したらどうなるのか。※1年生編完結   作:2100

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遅くなってしまいすみません。ちょっと展開に詰まりまして……なるべく早く投稿できるよう努力します。


ep.62

「もう少し時間がかかると思っていたが、意外に早くまとまったな」

 

 1年生全体に行き渡るようにそう言ったのは、生徒会長の南雲雅だ。

 上級生の方も、既に小グループの結成を全て終わらせたらしい。

 

「お前たち1年に提案がある。これからすぐに大グループを作らないか?」

「それは今日の8時からではないんですか?」

「夜決めるとしていたのは、小グループ結成にもっと時間がかかると踏んでいた学校側の配慮。だが全学年がこうして早く作業を終えたんだ。このまま大グループ結成までしてしまった方が時間の節約にもなるだろ?」

 

 南雲先輩が提案を口にしてから、教師の動きが慌ただしい。これは今から大グループ結成を行うのは問題ないということと、学校側は大グループ結成がこんなに早まるとは考えていなかったことを意味している。

 

「構いませんよね?堀北先輩」

「ああ。こちらとしてもその方が都合がいい」

「決まりですね。大グループの結成方法ですけど、ドラフト会議みたいに1年の代表者が俺たち上級生を指名していくってのはどうすか?」

「1年生の持つ情報量は少ない。公平性に問題があるだろう」

「それは2年も3年も同じっすよ。どうだ1年、このやり方に不満はないか?」

 

 俺たち1年には「ある」という答えが用意されていないことは理解した上で聞いているのだろう。

 

「いいえ、大丈夫です」

 

 1年を代表して的場がそう答えた。

 

「そうか。じゃあ早速始めようか」

 

 そう言うと、南雲先輩は自身の所属する小グループに戻っていった。そして上級生は16の小グループに分かりやすく別れた。

 1年の各小グループのリーダー、すなわち責任者が前へ出る。しかし集まったのは7人。

 

「あとそこのグループだけだ。代表者を1人選べ」

 

 指摘を受けたのは啓誠や清隆が所属する例の気の毒なグループだ。あのグループに率先して前に出ようとしそうな奴はいない。恐らく責任者がまだ決まってないんだろう。

 が、少しして啓誠が手をあげて前に出た。

 全員が揃って、指名を行う順番を決めるじゃんけんを行う。

 俺の所属する小グループから代表で出た柴田はサッカー部に所属している。上級生ともある程度の接点はあるだろう。

 対して俺はほぼ誰も知らない。

 こういう情報戦で遅れを取るのは圧倒的に不利だ。今まではその都度平田や櫛田に頼ればいいか、くらいに考えていたが、それは甘い考えだったかもしれない。

 じゃんけんで決まった順に、各々が上級生のグループを指名していく。注目株の1つである堀北兄の所属するグループは、じゃんけんで勝って1番手指名権を手に入れた的場のグループが指名した。生徒会長が所属するグループは、4番手指名である啓誠のグループが指名。2番手指名の平田や3番手指名の金田が生徒会長のグループを選ばなかったということは、生徒会長以外のメンツが微妙だということだろうか。

 柴田が指名したグループのメンバーは1人も知らないのでなんとも言えない。が、最後から2番目の指名順だったので、あまり期待を大きく持ちすぎない方がいい。

 

「悪い悪い、じゃんけん負けちゃってさ」

「仕方ないって」

 

 柴田の判断に文句をつける者はいないだろう。

 

「堀北先輩。偶然にも別々の大グループになったことですし、一つ勝負をしませんか」

 

 そんな矢先、南雲生徒会長がそんな事を言った。

 3年生からは呆れを含んだため息が漏れる。

 

「南雲、これで何度目だ。いい加減にしろ」

 

 確かこの人は……藤巻、とかいう名前だったか。体育祭の時、紅組の総指揮を執っていた人だ。体躯はかなり大きく、体育会系の生徒だと思われる。

 藤巻先輩の言葉から考えるに、生徒会長は今までにも堀北先輩に幾度となくこのような挑発を吹っかけてきたのだろう。それは先ほどの3年生のため息からも伺える。

 

「何か問題があるでしょうか?藤巻先輩。個人間での宣戦布告は、特段禁止されているわけでもないでしょう」

「今回は1年も含んだ大規模な試験だ。何よりこれは基本的なモラルの問題だ。書かれていなくてもやっていいことと悪いことがある」

「俺はそうは思いませんけどね。ルールを最大限活用するのもこの学校の醍醐味の一つのはずです」

「生徒会長になったからといって好き放題できるわけではない」

 

 何やら言い争っているようだが、正直あまり興味がわかない。

 冬休み中のあの時、俺が綾小路と同じように「南雲をなんとかしてほしい」という堀北先輩の頼みを聞いていたら話は別だが、俺はそれには関与しないと決めた。たとえこの2人が争ったとしても俺は傍観していてなんの問題もない。

 それに、もしこの争いに俺の属する大グループが巻き込まれて最下位になったとしても、1年Cクラスから参加しているのは俺だけだ。そんなにダメージは大きくない。

 ここまで俺に影響がないとなると、いよいよ聞くのが冗長なだけのやり取りだ。

 

「どちらのグループが高い平均点を取れるか、そしてスキーのタイムが上か、の勝負だな?ならば受けても構わない。だが、他のものを巻き込むのはやめろ。俺のグループだけでなく、他のグループも含めてだ」

「分かりました。どうやら勝負を望んでるのは俺だけのようですし、それぐらいの譲歩はしましょう。結果によるペナルティもいらないですよね?あくまでもお互いのプライドをかけた戦いということで」

 

 と、南雲生徒会長の挑発はこんな具合に落ち着いた。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 宿泊部屋割りは小グループごとに設定されていた。

 指定された部屋に入ると、20畳ほどの広さに5つの2段ベッドが設置されていた。部屋自体が広いためスペースに余裕はある。

 校舎同様少し古めの感じだ。

 

「ベッドの位置はどうするか。みんな希望あるか?」

「いや、特には。俺は余ったところでいい」

「俺も」

「じゃあ俺奥の上段使っていいか?」

 

 こんな感じでスムーズに決まっていく。俺は手前から2番目の下段のベッドを使うことになった。

 決まったベッドの周辺に各々荷物を置き、ひと段落したタイミングで、柴田がみんなに声をかけた。

 

「昼食時間まで余裕あるし、自己紹介でもしようぜ。俺は柴田。みんな知ってると思うけどこのグループの責任者だ。よろしくな」

「じゃあ次は俺が。里中だ。よろしく」

「太田だ。よろしく」

 

 俺も乗り遅れないように……

 

「あー、速野だ。よろしく」

 

 まあ、どうも俺は自分が思ってる以上に有名人らしいので知ってるとは思うけど。

 ただこういった場面での自己紹介には、自分の名前を知ってもらうこと以外にも、「俺はあなたに対して取り敢えず表面上はオープンな感情です」ということを相手に示す意味もある。そういう意味で俺が入学初日に自己紹介に参加していない俺は高校生活のクラウチングスタートで完全に失敗しているわけだが、それにしてはよくやってる方だと自分では思う。中学時代とは比べ物にならない。

 

 全員一通り自己紹介が終わると、柴田がある提案をした。

 

「グループ内交流も兼ねて一緒に昼飯食べないか?」

 

 それを聞いて、少し考え込む様子を見せるのはA、Dクラスの6人だ。

 昼食時間を使った情報交換を妨げようとしているんじゃないか、とか考えてるんだろう。多分違うと思うけどなあ。柴田の提案によって今日の昼食時間は情報交換を妨げられても、今日の夕飯以降もそうすることは絶対にできない。

 だからそういうことを心配して参加を渋る必要はないのだが。

 

「悪い、先約があるんだ」

 

 俺のように先約がある場合は別だ。

 例のAクラスの3人を観察しなくてもいいのかという声も出るかもしれないが、その点は全く問題ない。

 他にもDクラスの2人が俺と同じ理由で不参加を表明。結局昼飯は7人で行くことに決まった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 昼食の時間。今後はこの時間と夕食時間、それにスキー演習の時間のみ、男女間での交流が可能だ。こうして並べてみる分には女子との交流時間は思ったより長そうに見えるが、単純にそういう話でもないと俺は思っている。

 まず食事時間だが、これは明らかに男女間で交流し、情報共有させることが学校側の目的だろう。

 対して、スキーの時間は男女の交流が自由とはなっているものの……男女でレベルに差がほとんど出ない未経験者層を男女ひとまとめにして指導する、という目的の方が強く、情報交換は学校側もあまり想定していないんじゃないかと個人的には思っている。勿論、スキーがある程度できて余裕のある人は情報交換するのもアリだが、多くの人はなんとか滑りを習得しようとするのに手一杯のはずだ。

 

 ひとまず受け取ったトレーを持って適当に目についた空席に座る。1人だがまあいいだろう。いつものことだ。そもそも柴田の提案を蹴ったのは俺だしな。

 まあ、俺の「先約」は誰かと昼食を食べることじゃないんだけど。

 

「知幸、向かいの席いいか?」

 

 1人で食う意志を固めていたところに現れたのは、綾小路清隆だ。

 

「いいけど。あと綾小路グループのメンバーといないときは普通に苗字呼びでいいぞ」

「いやいい」

「……あ、そう」

 

 じゃいいや。俺もちゃんと清隆と呼ぶことにしよう。

 

 というわけで相席したものの、お互いに口数が多い方ではないので特に会話もなく静かに食べ進める。

 このまま無言でも苦痛ではないが、素直に気になっていることを質問することにした。

 

「ただ食べる相手がいなかったから俺のとこにきたのか?」

「ああ」

「啓誠は?同じグループだろ」

「校舎内を歩いて回ってたら昼食時間になったんだ」

 

 別行動だったのか。

 

「お前のグループ、Cクラスからはお前1人だけだよな」

「そうだけど、それに関しては全く問題なしだ」

 

 俺は自クラスとの結びつきが強くない。Cクラスが集まった平田のグループにいても、俺の居心地は今とあまり変化ないだろう。

 

「お前のグループは問題があまりなさそうで羨ましい」

「まあな。逆にそっちは悲惨そうだ」

「ずいぶんはっきり言うな……事実だが。ただ、オレより啓誠の方が心配だ。紆余曲折あって、結局啓誠が責任者になったんだ」

「あー……」

 

 それはもうドンマイとしか言いようがない。恐らく啓誠も渋々リーダーを引き受けたんだろうが、いまそれを悔いているのが眼に浮かぶ。

 

「はうううぅぅ………」

 

 俺も清隆も、そんな気の抜けたような声がした方向に自然と目がいく。

 机に突っ伏している姿勢からみると、声の主は一之瀬らしかった。

 

「お疲れ一之瀬さん」

 

 そこに話しかけてきたのは、俺の友人である藤野だ。そこから2人はこちらに気づくことなくおしゃべりを始めた。仲よさそうで何より。

 

「藤野はお前の友人だったか」

「ああ」

 

 こいつと藤野との接点は、夏休みに一緒にプールに遊びにいった時だ。恐らくその一度だけ。それに接点とはいっても、その時にこの2人が話した様子はなかったから、今でもお互いに存在を認識している程度の関係だろう。

 

 そんなこんなで食べ進めているうちに食器も全て空になり、俺は椅子を引いて立ち上がった。

 

「じゃあ、俺も校舎内見て回ろうかな」

「ああ、じゃあな」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 昼食時間から小一時間ほどが経ち、俺はグループの部屋に戻ってきた。

 初日はスキー演習もなく、夕食時間までは自由が認められている。ただし食堂は利用禁止。つまりこの時間を使っての男女の交流は認められていない。

 他にも2人ほどグループのメンバーが部屋におり、読書をしたりして適当に時間を潰している。他のメンバーはどこか他の小グループの部屋にでも遊びに行ってるんだろう。

 俺は備え付けの丸椅子に座り、バスで配られた混合合宿の資料を眺めることにした。バスの中では車酔いしないことを優先していたため読み込みが不十分だ。

 開いたページには、スキー演習について口頭での説明よりもう少し詳しい情報が載っていた。

 スキー用具を借りる場所、スキー演習場までの行き方、道具の使い方に関する簡易的な説明などなど、把握しておかないとまずい情報も多い。

 

「なんで報酬発表しないんだか……」

 

 一応その理由の予測はつけているが、3、4割ほどの自信しかない。俺はその可能性に賭けるが、クラス全員がそうする必要はない。リスクが高すぎる。

 

 スキーの項目のページを読み終え、次に合宿の方の説明に目を通す。

 朝の起床時間と就寝時間、風呂の時間、点呼を取るタイミング。起床直後の各グループの掃除場所など。責任者はこれを全て頭に入れておいた方がよさそうだ。

 そして俺にとっての1番の収穫はこれだった。

 

「朝食は大グループ分を毎朝自分達で作る、か……」

 

 これこそ口頭で説明しておくべきじゃねえのって疑問は置いとくとして、だ。そういうのもあるのか。それに分担などは自分たちで決める必要があるらしい。

 

「大グループ作成を8時からと設定してたのは、これを話し合う目的もあってのことなのかもな……」

 

 さっき話し合う時間を取らなかったのは昼食時間が近づいてたから、ってところか。

 資料に載っているとはいえ、読み込んでいない生徒はこれを把握できていないはず。学校側から後ほど周知があるだろう。

 ただ、一応あとで事前に柴田に報告しておくことにした。朝食作りに関して、少し試したいこともあるしな。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 朝食作りについて柴田に報告後、それならすぐに上級生達に言ったほうがいいということになり、柴田の先輩がいてすぐに声を掛けやすかった2年生を引き連れて3年生の部屋に向かっている。1年生からは柴田、俺、その他Dクラスから2人の計4人、2年生からは3人が出てきている。

 余談だが、柴田は大グループ決めのとき、1巡目にこの2年生のグループを指名していた。先輩がいたから指名しやすかった、というのもあるかもしれない。

 

「ここだな」

「そうですね」

 

 柴田が代表して部屋をノックする。

 

「なんだ。お前は確か、同じ大グループの一年生か」

「はい。柴田です。先輩方に少しお話があるのですが、少し時間をもらってもよろしいでしょうか」

 

 普段はかなりフレンドリーな口調の柴田だが、先輩に対する口上は丁寧だ。

 

「2年生もいるようだな。分かった。入っていいぞ」

「失礼します」

 

 柴田に続いてその他の生徒も軽く頭を下げつつ入室。椅子がないので床に適当に座れと言われ、俺は柴田の隣に陣取った。

 部屋の作りはざっと見たところ俺たちとほぼ同じだ。部屋には6人の3年生。残り2、3人は違う部屋にいるんだろう。

 

 恐らくこれから俺が話を引っ張っていくことになる。出来るだけ機嫌を損ねないようにしないとな。

 

「で、何の話だ」

「あ、それは速野から」

 

 柴田から俺へバトンが回される。

 少し体勢を整えてから、全体に聞こえるように説明を始める。

 

「1年の速野です。すでに知っている人もいるかもしれませんが、明日から最終日までの9日間、朝食は大グループごとに自分たちで作らなければならないそうです」

 

 それを聞いてマニュアルを確認する人が多くいる。すでに知っていたのは5、6人ってところか。まあそんなもんかな。

 

「どうやらそうみたいだな」

「はい。把握していない人も多そうなので学校側から周知があるかと思われますが、念のための報告とともに、一足先に朝食作りの分担の話し合いを進めてしまおうということでここに来ました」

「なるほど、賢明な判断だ。いまは4人が別の部屋に行っていてこの場にいないが、そいつらにはあとで俺の口から伝えておこう」

「お願いします」

「ああ。で、あとは分担の話し合いだったな。朝食を作るのが9日間なら、学年別の小グループで3日分ずつ分担するのがセオリーだろう。恐らく学校側もそれを想定しているんじゃないかと俺は思っている」

「俺も同じです」

 

 3年のグループの責任者と思われる生徒の説明にみんな納得する。

 

「速野、だったな。お前はどう思う」

 

 この場の司会者的立ち位置にいる俺にも意見を求めてくる先輩。

 

「それに異存はありません。ですが……」

「なんだ。言いたいことがあるならはっきり言うことだ」

「……では。一つ提案があります。まずその前に一つ質問したいのですが、いまこの場にいる3年生の先輩方の中で、普段から料理に慣れ、週に3回以上自炊する方、料理が得意な方はどれくらいいますか」

 

 俺がそう言うと、6人中2人が手を挙げた。責任者の先輩は手を挙げていない。

 

「2人ですか。分かりました。今この場にいる柴田以外の1年生と2年生の先輩は、みんな私が同じ質問をして手を挙げてくださった方達です。私の提案というのは、私を含め、料理が習慣化しているこの計8人で、9日間毎日の朝食を作るというものです」

「……ほう」

 

 餅は餅屋。適材適所。

 料理に慣れている者が朝食作りを担当すれば少なくとも不味いものはできないだろうし、慣れない者が担当するよりグループ全体の負担も少ないはずだ。

 

「だが、それでは不公平が生まれることになる。朝食作りをする者は、必然他の者より早く起きる必要がある。それに朝食後は休む暇なく次の課題が待っている」

「おっしゃる通りです。なのでそれを解消するため、『朝食を作らない者は作る者に後日プライベートポイントを支払う』という条件をつけさせてほしいのです。口約束では確実性がありませんから、教師の立会いのもとで確約するものとします」

「……なるほどな」

 

 プライベートポイントという単語に何人かが分かりやすい反応を見せた。ポイントに困窮する下位クラスの生徒だろう。

 

「もしお前の提案に乗るとして、いくら支払えばいい」

「それは作る側でコンセンサスを取る必要があるかと。それにポイントが関わってくる話ですから、この場にいない人にも話しを通す必要はあると思います」

「ポイントの話はここにくる前にしてなかったのか」

「ポイントに釣られて料理をほとんどしたことがない人が手を挙げてしまった場合、この提案の意味が薄れますから」

 

 この提案の魅力は大きく分けて2つ。1つは作る側がポイントを受け取れること。もう1つは、作らない側の睡眠時間が少し延び、料理がそこそこ上手い人の、少なくとも不味くない朝食にありつけること。

 料理経験のない者が、ポイントに目が眩んで「自分は料理に慣れている」と虚偽申告した場合、2つ目の魅力が大きく削られてしまう。

 

「確かに、お前の話はこの場にいる人間のみならず、全員が納得しなければ成立しない。全員が集まったタイミングで話し合いを持ち、お前たちの部屋に報告しに行く。もし同意が得られなかった場合は、最初に言ったセオリー通り各学年が3日分ずつ分担する、ということで構わないな?」

「オッケーです」

 

 こちらは俺ではなく柴田が返事をする。その隣で俺も頷いた。

 

「では、ひとまず解散にしようか」

「はい。ありがとうございます」

 

 その言葉に促され、ゾロゾロと1、2年生が部屋を出た。

 柴田は俺以外の1年生を先に部屋に返し、俺とともに2年生を見送る。

 

「協力ありがとうございました」

「いいさ。下級生に提案されてるってんで少し違和感はあったが、俺もCクラスでポイントには毎月困ってるからな。いい提案だと思うぞ」

「ありがとうございます」

 

 柴田の部活の先輩からお褒めの言葉をいただく。

 

「じゃ、明日以降もよろしく頼むぜ、颯、速野」

「こちらこそっすよ先輩」

「お願いします」

 

「すげーじゃん速野。上級生相手に物怖じせず喋れるなんて。しかも初対面なんだろ?」

「いや、その言い方は正しくないかもしれない。俺の場合は相手が上級生で初対面だからこそ、だな」

「?どういうことだ?」

「俺は会話ができないわけじゃなくて、距離感を図るのが苦手なんだ。その点同級生は色んな関係性があって複雑だからコミュニケーションを取りづらい。でも歳が違って、しかも初対面だったら、思いっきり他人行儀に接していればいい」

 

 要するに気楽に接することができるのだ。

 距離感を図るまでもなく圧倒的な他人と、同様に圧倒的な身内的存在とは人並みのコミュニケーションを取ることができる。そのどちらにも当てはまらない微妙な立ち位置の人間、主に同級生にはコミュ障を遺憾なく発揮する。俺が友達をあまり作ることができない原因はこれだろう。

 

「はぇー、そんな考え方もあるんだな」

「いや、そんなたいそうなもんじゃないが……」

 

 考えというより性質だ。

 この学校で人とコミュニケーションを取れないことの不便さ、不利さを思い知ってから、自分なりに自分を分析していた。そして出た結論がこれだ。

 だから同級生同士での結びつきである小グループ単位で行動せざるを得ないこの試験、俺には不向きな分野であることは間違いなさそうだ。

 

 

 

 結果として俺の案は採用された。ポイントは、作らない側12人が1人あたり8000ポイント出し、それを作る側が8等分して12000ポイントずつ分け合うという形に決まった。

 この内容は念書に書いて教師の承認ももらい、後で支払いをばっくれるなんてことはできないようにした。

 

 一食あたりの値段はかなり割高だが、それでも払うってことはみんなよっぽど料理が苦手なのか、早起きするのが嫌なのか。

 逆に作る側が12000ポイントでも受け入れたのは、ポイントに困ってる人が多いからなんだろう。

 自炊する生徒が下位クラスに多い傾向はあるだろうな。この学校は水道料金、光熱費を考慮しなくていいから、自炊すればかなりポイントを抑えることができる。

 食堂で唯一の無料メニュー、山菜定食が好きで毎日食ってるって言うなら話は別だが。




原作の動き見てるとどうも櫛田が退学するのが既定路線らしく、ちょっと困ってるんですよねぇ……
この作品は、原作の道筋をほとんど変えずにちょこちょこオリジナル要素を出していく、みたいな感じでやってるんですが、そろそろそれでは筋が通る話が作れなくなってきているかもしれません。
櫛田の進退、藤野と坂柳の戦い。大きく分けてこの2つは原作をかなり逸脱しなければ書けないような気がします。

頑張ります。
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