実力至上主義の学校に数人追加したらどうなるのか。※1年生編完結   作:2100

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では、どうぞ。


ep.6

 

 

 入学してからまだ2週間足らずであるにも関わらず、クラス内では、すでに仲良しグループの概形が出来上がっていた。

 形成されたグループが顕著に表れるのは、主に放課後と、この昼食時間だ。

 大体三、四人で集まり、食堂やカフェに飯を食いに行っている。

 初めの1週間くらいは教室で食べているやつも一定数いたが、今やそれは極少数の人間だけだった。

 俺といえば、起きる・朝飯→登校→授業→昼飯→授業→帰宅→夕飯→寝る、というルーティンを形成している。4日に1度のペースで、授業と帰宅の間に食材の買い出しが入る、という例外を除けば、俺の生活はかなり機械的だ。

 徹底した節約と、藤野のレクチャーによって、俺はポイントを使う機会が生まれず、ポイントはまだまだ潤沢に残っていた。

 節約のため、部屋には生活必需品以外の一切のものがなく、軽くミニマリスト状態だ。

 やっぱり食費が浮いたのはかなりのプラスだ。校舎の食堂も寮の食堂も高くはないのだが、やっぱり無料は強い。

 今日もスーパーで無料で入手した材料で作った昨日の夕飯の使い回しの弁当を箸でつつく。今日も今日とてぼっち飯である。

 ルーティンを形成した代わりに、俺はグループを形成することができず、高校スタートからクラスでほぼぼっちの道を歩んでいる。

 クラス外に藤野という友人と、クラス内にも綾小路という話し相手がいることで、なんとか本物のぼっちという状態は回避できている。

 それに対し、綾小路はなんだか馴染んできている風だ。池や山内などと一緒にいるところを何度か見る。

 だが、俺もクラスでの友人づくりを諦めたわけではない。

 プール授業以降、俺は名前だけでなく顔も覚え、今では9割型、Dクラスの面々は把握した。

 把握したところで、俺に話しかける勇気なんてないけど。

 でも俺まだ諦めてないから。野球は九回ツーアウトからだっていうだろ?問題はそろそろコールドで試合が終わりそうだということだが。

 その一方、俺の右斜め後ろの席に1人で座っている人物、堀北鈴音は、1人でコンビニで買ったであろう昼飯を1人で食って1人で本を読んで1人で過ごしていた。1人で。ここ大事な。

 ひとまず弁当を食べ終わる。

 夕飯の残り物は量が少ないのと、俺に話し相手がおらず黙々と食べものを口に運ぶことしかしていないため、大体5分ほどで食べ終わるのが常だ。

 弁当箱を片付けながら、ふと教室の入り口付近に目を向けると、櫛田と綾小路が何事か話しているのが見える。もちろん会話の内容が聞こえてくるわけはない。

 櫛田桔梗。

 平田と双璧をなすDクラスの中心で、人気者だった。

 盛り上がっている場所には、必ずと言っていいほど櫛田がいるし、盛り上がってなくても、櫛田が来れば自然と会話が弾む。そういう雰囲気を作り出すのは相当難しい。これも一つの卓越した才能だ。

 一部男子からは「天使」なんて呼ばれているらしい。

 「学校の全員と友達になる」という一見無謀な目標も、或いは櫛田なら、と思ってしまう。それだけの人的魅力が櫛田にはある。

 だが、俺個人としてはあまり支持できない。

 ドイツの学者ヴィルヘルム・ペッファーは、「誰の友にもなろうとする人間は、誰の友でもない」という言葉を残している。

 友達1人も満足に作れていない今の俺は、友人という存在は異質で、特別なものだと捉えている。

 特別性というのは、少数だったり、機会が少なかったりするからこそ与えられるものだ。それが当たり前になってしまうなら、それはもう特別なものとは言えなくなる。

 友達ができるのが当たり前だったであろう櫛田とは、合わない考え方かもしれない。

 ……そもそもなんで俺が櫛田の信条について偉そうに語ってるんだって話だな。

 そんなことを考えていた時、堀北から声をかけられる。

 

「あなた、それ弁当手作りでしょう。自炊なんてできたの?」

「ん、まあ少しはな」

「意外ね。……それはいいとして、さっきから随分と一生懸命あちらを見つめているようだけれど、やめたほうがいいわよ。変人……いえ、変態かしら」

「おい、勘違いを生むようなこと言うな」

「舐めるように櫛田さんを見ていたでしょう。目の前に犯罪者予備軍がいるなんて耐えられないわ」

「櫛田じゃなくて綾小路と櫛田のやりとりを見てたんだ。観察だ観察」

「だからそれが悪趣味だと言っているのよ。まあ、これから変態と呼ばれたいならずっとそうしてなさい」

「なんかもう俺が悪かったよ……」

 

 俺が謝ると、この件に関しては興味が失せたのか、堀北は再び本に目を落としていた。

 

 こいつの物言い、もうちょっとどうにかなんないの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホームルームが終わり、放課後を迎える。

 今日は少し用事があり、早めに帰り支度を済ませていた。

 校舎を出て向かう先は、スーパーの無料コーナー。今日は買い出しの日である。

 品揃えが悪い棚から商品を見繕い、カゴに入れる。

 ちなみにスーパーの無料コーナーにも、コンビニでのものと同様使用の制限はかけられていて、利用していいのは3日に1回に買い物カゴ1個分まで、となっていた。コンビニに比べるとかなり制限が甘い気もするが、遠慮なく利用させてもらっている。

 

 買い物が終わり、他に寄るところもないので帰宅することにした。

 時々、今から娯楽施設に遊びに行くであろう集団とすれ違う。1人でここを歩いてるのは俺だけという事実が重くのしかかり、めちゃくちゃ居づらい。ほんとここら辺リア充ばっかだよな……

 寮に向かってさらに足を進めている時だった。

 

「……堀北?」

 

 女子に大人気のカフェパレットから、堀北が出てくるのが目に映った。

 向こうも俺に気がついたらしく、声をかけてくる。

 

「……今度は偶然、のようね」

「は? どういうことだ?」

「いえ、何でもないわ」

 

 こいつも今から帰るらしく、進む道は一緒なので、自然と一緒に歩く展開になる。

 

「お前あそこに1人で行ったのか? さすがだな」

 

 カフェパレットは、友達同士の女子生徒の団体客がほとんどだ。そこに1人で行く勇気はすごいと思う。そんなにあそこのメニューが気になっていたのだろうか。

 と思ったが、どうやらそうでもないらしい。

 

「少し不愉快な出来事があったのよ。あなたがあの時教室にいたら、起こらなかったかもしれないわね」

「……俺のせい?」

「そうは言ってないわ」

 

 いやいや今明らかにそういうニュアンスだっただろ。

 とりあえず話を聞いてみると、ああ、確かにこいつが不機嫌にもなるわ、という内容だった。

 なんでも、櫛田が堀北と仲良くなるために、綾小路や他のクラスメイトを使ってシチュエーションのセッティングを頼んだらしい。

 その話を加味した上で、質問してみる。

 

「まあお前が不愉快になるのも分からんこともないが……そもそもの話をしていいか。何でそこまで櫛田を毛嫌いする?」

「言ったでしょう。私は1人が好きだと。それに一度、櫛田さんにはもう誘わないでとはっきり言っているのよ。それを根回ししてまでやろうとした櫛田さんにも不快感を感じるし、綾小路くんにも思うところはあるわ」

 

 ただ単に1人を邪魔されたから、ってことか。

 でもなあ……まあ、本人がそう言ってるならそういうことでいいか。

 

「この話はもう終わりでいいかしら」

「ああ。別に」

 

 堀北としてもあまり好ましい話題ではなかったんだろう。俺もおとなしく従うことにする。

 話題切り替えの皮切りに、堀北が話を始める。

 

「一つあなたに聞きたいことがあるわ」

「何だよ」

「この学校の制度について。この学校が国主導であっても、私たちは一介の高校生にすぎない。そんな人間に10万なんて大金を持たせることに、あなたは意味があると思う?」

 

 ポイントについて、堀北も前から疑問に思っていたようだ。

 

「さあな。自己管理能力の向上を促すとか、そこらへんじゃないのか?」

「だったらこんな大金を積む必要はないはずよ。それだとむしろ金銭感覚がおかしくなって、余計に自己管理能力は下がるんじゃないかしら」

「確かになあ……それに、校内のいたるところに無料のものが置いてあるのも、俺としては気になる」

「同感ね。頑張ればゼロポイントでも生活ができそうだもの」

 

 思い浮かべると、それも可能な気がしてきた。現に俺の食費はゼロだ。

 

「それに、授業中にしゃべっていても寝ていても、誰も何も注意さえしない。甘すぎるんじゃないかしら」

「放任主義、ってわけではなさそうだな」

 

 もし今のDクラスの状況が全学年全クラスに共通するものだったら、この学校は学校として成り立っていないし、宣伝できるような成果もあげられているはずがない。

 

「俺らがまだ経験していないだけで、生徒の気を引き締めることにつながる何かがある、ってことか」

「そう考えた方が自然でしょうね。授業を受けていて分かるけれど、教師のレベルが高いことに間違いはないから」

「何人か有名な人もいるみたいだったな」

 

 敷地内の本屋で参考書や問題集を見ていた時、監修や編集の人名欄に、ここの教師の名前をちらほら見かけた。

 堀北の言うように授業のレベルも中々のものだ。

 まあ、Dクラスの奴らほとんど聞いてないけどな。まだ先の話ではあるが、テスト期間になってどれだけ苦労することやら……

 

「まあ、ここでうだうだ考えてても答えは出ないんだし、もうちょっと様子を見るしかないだろ」

「……そうね。手遅れになっていなければいいけれど」

「……そうだな」

 

 この学校には、まだ何か俺らが知らないような裏がある気がしてならない。

 少なくとも、このまま全てが終わるとは思えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 で、その高いレベルの授業を受けている最中も、やはりクラス内では堂々と談笑している奴らが多数見受けられる。

 そいつらのおかげもあって、俺は授業に集中することがほとんどなかった。

 まあ授業のレベルが高いとはいうものの、内容自体が難しいわけではないから、俺も集中して聞く気は起きないんだけどな。

 授業開始のベルが鳴ってもガヤガヤしている教室に、茶柱先生が入ってくる。

 

「おーい、お前ら静かにしろ。今日は少し真面目に授業を受けてもらうぞ」

「どういうことですか佐枝ちゃんせんせー?」

 

 今の受け答えからすると、真面目に授業受けていないことは自覚しているらしいな。ならそれ直せよ。

 

「月末だからな。小テストを受けてもらう」

「げ、マジで?」

「安心しろ、これはあくまで今後の参考資料にするだけだ。成績表には何ら影響はない」

 

 成績表には、か。つまりそれ以外のどこかしらには影響が出る、ってことか?

 前々から思ってたんだが、どうしてこの人はいつもいつも勘ぐりたくなるような言い方をしてくるんだろうか。

 テスト用紙が手元に来て、早速解き始める。

 一科目4問ずつの全20問。全ての問題に目を通してみるが、大体一瞬で答えの求め方が分かるものばかりだった。

 そんな、ほとんどの問題が拍子抜けするほど簡単だった中。

 

「……」

 

 ラスト3問に関しては桁違いの難易度だった。

 英語、化学、数学。

 英語の問題は、言っていることは単純なのに単語、文法のレベルが高すぎる。

 化学に関してもかなりの暗記量と計算力が必要だ。

 数学も計算が複雑な上に、そもそもこれは範囲でいうと高校1年のものじゃない。

 この三問に関しては、問題文の意味を読み解けるやつがどれだけいるかすら怪しいな……

 そもそも、この問題を出した意図がわからない。差をつける問題として出題したにしても、これでは正答率が低すぎて逆に差がつかないだろう。

 

 

 俺はこの問題をどう捉えたらいいのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一抹の疑問が残る小テストの後、午後の授業を消化して放課後となった。

 俺が帰り支度を進めていると、いつもと違う人影が俺に近づいているのに気がついて、その方向に振り向く。

 

「速野。話がある」

 

 突然俺に話しかけてきたのは、池と山内。いつも一緒にいる須藤は不在だった。須藤はバスケ部に所属しているので、部活にでも行ったんだろう。

 

「何の用だ急に」

 

 仲がいいわけでもなければ、ましてや友達なわけでもないが、一応話したことがないわけじゃないので、普通に受け答えする。

 

「お前……まさか誰かと付き合ってるんじゃないだろうな」

「……は?」

 

 藪から棒、或いは寝耳に水。一瞬言っている意味が分からなかった。

 

「あるクラスメイトからの証言だ!お前が放課後、俺らが知らない美少女と仲よさそうにスーパーに入って行ったのを見たんだってよ!」

「さあ、白状しろこの裏切り者!」

「裏切り者って……」

 

 何だその根も葉もなければ日光も水も土もないような噂は。そのくせ情報源の秘匿だけはしっかりしてる。

 ただ、思い当たる節はある。その美少女とやらは藤野のことだろう。

 

「はあ……馬鹿かお前ら。少し考えてみろ。俺だぞ?」

 

 人差し指で自分を指しながら言う。

 

「な、なぜかすげえ説得力だ……」

 

 ……いかん、証拠として出したのは俺自身なのに、証拠能力認定されると悲しくなってくる……

 

「ってことは、お前を見たってのは宮本の勘違いってことか?」

 

 おいちょっと、個人名出てるぞ。最初は隠してたのに。

 

「いや、それは多分本当だ」

「やっぱ裏切り者じゃねえか!」

「だから俺が何を裏切るんだよ……」

「俺らに抜け駆けして彼女を作った罪だよ!」

「だから彼女じゃないって言っただろ。ただの友達だ。人の話はちゃんと聞けよ」

 

 てか彼女作ったら罪になるのか。なら俺は安心だな。

 

「……お前他クラスに友達いたのか?」

「なあ俺帰っていい?」

 

 疑問を持たれるのは当然なんだが、改めて言われると急速に悲しくなる。そのうえなんで俺がこいつらにこんなこと言われなきゃいけないんだ。

 

「悪い悪い。でもただの友達と2人で出かけるのか?」

「やっぱ怪しいぜ」

 

 池が疑問を投げ、山内がそれに乗っかる。厄介なコンビネーションだ。

 

「そんなこと言われても……本人から直接、友達だって言われたしな」

 

 しかも思いっきり。

 これで引き下がってくれるかと思ったが、この2人の回答は衝撃的だった。

 

「お前……まさか告ったのか?」

「ちょっと待て、なんでそうなる」

「違うのか? 告って、友達だって言われて玉砕したパターンかと……」

「……」

 

 どこからそのシナリオが入ってきたんだろう……こんなに想像力豊かだとは思っていなかった。

 俺はもう心底呆れているが、最後のまとめとして2人に言う。

 

「とにかく、だ。俺に彼女ができるなんてあり得ないから、安心していいぞ」

「本当だな!? 信じるぞ?」

「ああ、信じろ信じろ」

 

 いい加減この面倒なやりとりから解放されたい一心で、乱暴に話題を終わらせる。

 

「本当だな? 言ったからな!? 俺のこの耳にお前の声は残ってるからな!?」

 

 池が、俺から遠ざかりながらデカイ声で言っている。

 俺はあまり大声を出したくないので、軽く手をあげるだけにしておく。それを見て納得したのか、2人とも教室を出てどこかに行ってしまった。

 やっとこの理不尽な質問攻めが終わったか……

 

 

 ……それにしても、俺と藤野って外歩いてると付き合ってるように見えるのか?マジで?




よう実のssが段々増えて行ってますね。埋もれないよう頑張ります。
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