実力至上主義の学校に数人追加したらどうなるのか。※1年生編完結 作:2100
そして迎えた、試験当日の朝。
長いようで短く、それでいてやはり長かった混合合宿も、今日で最終日となる。
今日は朝食づくりはあったものの、座禅はない。また掃除も免除される。朝食時間の30分後、大グループごとに軽く試験の説明があり、それが終わればすぐに試験開始となっていた。
「いよいよだな」
「やることはやったんだ。頑張って、一つでも高い順位を取ろうぜ」
「ああ。でも、なんか緊張するな……」
日下がそうつぶやいた通り、朝食会場には緊張感が漂っていた。
もしこの試験で最下位を取り、尚且つ平均点を割るようなことがあれば、自分は退学してしまう……そしてもしかしたら、自分が道連れにされてしまうかもしれない……そんな不安にさいなまれているのは、きっと1人や2人じゃないだろう。
ただ、俺の所属するこのグループに関して言えば、そのような不安は少ないといっていい。
俺たちはどこのグループよりも平和に、順調に合宿の日程をこなしてきた。その自信があるからだ。
もちろん俺にも緊張はある。しかし、これはどちらかと言えば適度な、心地の良い緊張感だ。
「昨日みんなで復習もしたし、大丈夫だって。な?」
「ああ、その通りだ」
今まで俺たちは、女子との交流が認められる昼食、夕食の時間にグループで集まって食べるということはしなかったが、昨日の夜だけは一緒に食べ、その後消灯時間まで試験の復習をした。
この施設に向かうバスの中で「道徳、精神鍛錬、規律、主体性の試験を最終日に行う」と説明は受けたものの、具体的な試験の内容はこの後の説明会まで発表されない。
ただ、座禅とスピーチは間違いなく試験に入る。そして道徳の授業も、おそらくは試験科目に入っているだろう。
この予測のもと、俺たちは「座禅」「スピーチ」「道徳の授業内容」の3つに絞って復習を行った。
成果は上々。俺自身も改めて内容を完璧に把握できたし、有意義な時間だったといえる。
あとは試験本番で結果を出すだけだ。
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朝食を済ませた俺たちは、部屋に戻って歯を磨き、指定された教室へ移動した。
すでに大グループの2年生は着席している。俺たちはその後ろに座った。
それから2分ほど後には3年生も到着し、それとほぼ同時に教師も教室に入ってきて、試験の説明が始まる。
「ではこれより、混合合宿最終日、試験内容の説明を始める。試験は学年ごとに分かれて行うものとする。大グループごとではないから、まずはそこを注意するように」
この試験中、大グループが関わっていたことと言えば、初日の大グループ作成のときと、朝食づくりの担当を決めたときくらいだ。
最終結果の順位には影響を与えるものの、大グループはかなり緩やかなくくりだったらしい。
「次に、具体的な試験科目を発表する。科目は3つ。『座禅』『スピーチ』『筆記試験』だ。筆記試験では、合宿中に行われた道徳の授業の内容が問われる。また、学年ごとに試験の順番が異なる。頭に叩き込んでおけ。1年生は座禅、筆記試験、スピーチの順番だ。2年生はスピーチ、座禅、筆記試験、3年生は筆記試験、スピーチ、座禅となっている。試験会場だが、座禅は全員共通で道場で行う。そのほかは大グループごとに分かれていて、筆記試験はこの教室、スピーチは1つ下の105教室だ。それぞれの会場で注意はされると思うが、会場を間違えないように気を付けることだ」
試験科目は予想がドンピシャで当たったな。
試験会場はメモに取って、忘れないようにしておく。
「最後に、スキーの最終タイム計測について少し説明を行う。3科目の試験終了は午前10時30分を予定しているが、2年生は11時30分からタイム計測を行うことになっている。その間、1年生と3年生は自由時間だ。13時から昼食時間とし、その後14時15分から1年生の、15時からは3年生のタイム計測だ。こちらに関しては放送による連絡もするが、頭の片隅に入れておくといいだろう」
ほう、そうなると2年生は大変だな。試験終了後、息つく暇もなくスキーとは。
そして俺たち1年は昼食の直後か。
計測の前に、軽く体操などをして体をあっためておいた方がいいな。
「質問はないな。では、諸君らの健闘を祈る」
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座禅の試験開始前、俺はトイレに来ていた。
実を言うと、説明会の途中から催してはいた。我慢しようかとも考えたが、かなりの集中力が必要な座禅にまでこの便意を持ち込むのは、さすがに危険すぎると判断した。急いで用を足し、試験会場へと向かう。
その道すがら、俺は偶然啓誠のグループに出くわした。
「知幸か。どうしたんだ一人で」
「ちょっとトイレにな」
啓誠の後ろにいるグループのメンバーを見て、俺は違和感を感じた。
以前掃除時間に見たときと、グループの雰囲気が全然違う。
あの時は完全にバラバラで、ガタガタだった。しかし今は、一つのグループとしてまとまりを持っているように見える(高円寺は除く)。
それに啓誠の雰囲気も若干和らいだように思える。
そして特に変化が大きいのは石崎だ。
常にグループから1歩2歩離れて動いていた石崎だが、今は輪の中に入っている。それに表情も、試験に向けての緊張感は見られるが、以前見たときにあった不機嫌さは感じられない。
どうやら、空中分解せずに持ちこたえたらしい。
いや、それどころか結束力は並みのグループより上のようにも見える(もちろん高円寺は除く)。
清隆が何かしたのか?
まあいずれにせよ、何とかなったならそれは喜ばしいことだ。
試験前に、不安要素が1つなくなった。
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座禅の会場である道場の前には、1年生男子総勢80名が集まっていた。
各グループの責任者が点呼を取り、教師に報告していく。
全員がそろったのを確認して、教師が説明を始めた。
「ではこれより、1年生男子の座禅の試験を行う。採点基準は大きく分けて2つ。道場に入ってからの作法、動作、そして座禅の姿勢だ。名前を呼ばれた者から道場に入り、指示に従って座禅を開始しろ。Aクラス、葛城康平。Cクラス、池寛治。Dクラス、石崎大地。Bクラス、……」
次々に名前が呼ばれていく。
今までの座禅とは環境が違うな。
これまでは大グループごとに行われ、どこに座るかも自分で決めることができた。しかし、この本番ではどこに座るか、だれが隣に来るかは、どのタイミングで自分の名前が呼ばれるかにかかってくる。
小グループごとに固まってやるものだと思っていた生徒たちには、少し動揺が見られた。
「Cクラス、速野知幸」
俺の名前が呼ばれたので、作法に従って道場に入る。
道場内には、採点に公平を期すためなのか、数台のカメラが設置されていた。声には出さないが少し驚いた。
しかし、驚きだの童謡だのの雑念は座禅を乱れさせる。
ただでさえ俺は結跏趺坐を習得できていない。これはもう体の構造上仕方のないものと考えるしかない。だが、そこからさらに姿勢まで乱れたりしたら大減点だ。
確か座禅をするとは、頭を真っ白にすることではなく、イメージをすることだと言ってたな……
じゃあ、スキーのイメトレでもするか。
「では、始め」
そこから約15分間、カメラの微々たる機械音すらも鮮明に聞こえるような、静寂の時間が流れた。
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続いては筆記試験。
道徳の授業内容を問うとのことだったが、そこまで難しい問題は出題されていない。
しっかりと復習した者ならば、少なくとも9割は堅い。恐らく満点も続出するだろう。
凡ミスがないか隅々までチェックし、しっかりと満点を取っておく。
そして最後が自己紹介スピーチ。
少し緊張して数か所詰まりかけたが、声はしっかり張ったし、内容も大丈夫のはず。まあ、及第点だな。
「ふぃー、終わったー……」
「お疲れ」
「おう。どうだった?」
「わかんねえけど、失敗はしなかったぜ」
「俺も多分大丈夫だ」
試験終了後の自由時間。部屋に戻った俺たちのグループは、互いにねぎらいの言葉をかけあいながら、ストーブの近くに集まって暖を取りつつ、のんびりまったり過ごしていた。
「あとはスキーだけか」
「そうだな。頑張ろうぜ」
「ああ」
俺はできるだけ体力を温存しておくために、ストーブを離れてベッドで横になった。
もちろん寝落ちすることのないよう、注意しながら。
少し藤閉じつつ、藤野から言われたことについて考える。
里中、宮平、太田の特性の把握。
まあ正直言って、この数日間でわかることなんて限られてる。
しかも今回、この3人は何かを企んで動いているわけじゃないからな。
里中はリーダーシップがあるわけじゃないが、物腰が柔らかく、だれとでも仲良くやれるタイプだろう。あと単純に顔面偏差値が高い。
宮平は、タイプ的には柴田と似ていて、割と積極的に話しかけていく傾向がある。相手の性格によって合う合わないは分かれそうだ。クラスカースト的には賑やかなグループに属しているタイプだな。
そしてこの里中と宮平の二人は、たまに俺に含みを持たせた目線を向けていた。俺には気づかれないようにしていたみたいだが。
恐らく、藤野の味方に付いている他クラスの生徒が俺だということに感づいているからだろう。
それに対し、残りの太田にはその気配が全くなかった。
太田はグループの輪には加わっているものの、物静かで口数が少なく、寡黙なタイプだ。ただしコミュニケーション能力は低くない。
まあ、俺の3人に対する評価はこんなもんだ。
もし藤野がこれ以上の分析を俺に期待していたとしたら、それは俺を過大評価し過ぎってことだな。
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そしていよいよやってきた、スキーの最終タイム計測。
当然ながら、生徒たちの表情から緊張感は抜けていない。「いよいよだなー」とか、「緊張するぜ……」などの話し声があちらこちらから聞こえてくる。
これが終われば、あとは結果発表を残すのみ。正真正銘最後の最後だ。
ちなみにだが、タイム計測は男女別のコースで同時に行われるため、女子はここから200mほど遠方で待機している。
「ではこれより、1年生の最後のタイム計測を行う。喜ばしいことに、全学年、男女ともに全員が昨日までに『基礎コース』を抜け、この計測に参加することが叶った」
おお、やっぱり全員『基礎コース』を卒業できたか。
やはりプロの講師の力はとんでもないってことだな。十日足らずで素人全員を滑れるようにするなんて。
……となると、松下も参加してるのか。
ここで無理して、怪我が悪化しなければいいが……
「ルールは各自把握していると思うので、説明しなおすことはしない。準備体操も事前に済ませるよう指示していたはずだ。なので早速計測に入る。全員小グループごとに、滑走順になって並べ」
そう指示が飛ぶと、各グループごとに集まり始め、やがて8つの列が完成する。
俺たちの隣には啓誠のグループが並んでおり、俺の横には、滑走順が同じである高円寺がいた。
相変わらず何を考えているかわからない、されど自信に満ちた薄笑いを浮かべている。
あと間近で見ると体感するが、こいつマジでデカいな。
身長もさることながら、レンタルのスキー用ウェアの上からでも、ボコボコとした筋肉が浮き出ているのがわかる。
筋骨隆々といえば須藤もそうだが、高円寺のは須藤とは質が違う。
須藤のはスポーツマンの筋肉。大して高円寺のは、スポーツマンというよりもボディビルダーのそれに近い気がする。もちろん、高円寺の運動神経は須藤をはるかに上回るんだろうけど。
……なんで俺は須藤と高円寺の肉体について頭を回してるんだ。疲れてんのか?疲れてんだろうな。
「では、スターターは前に出て、この赤いライン上に並ぶように」
先頭に並んだ8人の生徒が、指示の通りに整列する。その中には見知った顔も何人か確認できた。
よく見ると、赤いラインは直線ではなく、少しカーブしていた。
恐らく、インコースを中心とした円周の一部だろう。
こうすることによって、スターター全員のインコースまでの距離は等しくなり、道具をつけ、インコースにたどり着くのが一番早かった人がインコースを取ることができる。
位置により不公平が生まれないルールだ。
「では、私がこの赤い旗を下げたらスタートしろ」
今までよりいっそう強い緊張が全員に走る。
「いくぞ……スタート!」
コールと同時に一斉にガチャガチャと鳴る音。スターターが道具をつけ、コースへと駆ける。
「よっしゃ1位スタート!」
「くそ、5位か!頑張れ!」
生徒たちが整列している場所には、様々な声援が飛び交う。
他クラスの生徒を応援するなんて、この学校ではたぶん初めての経験なんじゃないだろうか。
まあでも、応援するのは当たり前か。
「報酬がかかってるしな……」
もちろん、すべてがポイントのためとは言わない。
チームワークというか、仲間意識のようなものが、この十日足らずの合宿のうちに芽生えていることも否定はしない。だが、もしこの合宿がなんの報酬もない、文字通り「タダ」の合宿だったら、他クラスのメンバー間でこのようなチームワークも生まれなかっただろう。
この学校の性質上、わざわざ他クラスと力を合わせる義理はないからな。
「お、順位一つ上がってるぞ!」
「よし、このままいけぇ!」
このような声援を送っていても、日付が変わればまた敵同士となる存在だ。
中途半端に芽生えた仲間意識が、この先変な方向に作用しないといいんだがな。
スタートから20分と少しが経過したころ、各チーム5番滑走者がスタートしていく。
始め4位スタートだった俺たちだが、順位を落とし、現在7位だ。
「……そろそろか」
少し体を温めるために、手首足首を動かしたりする。
……いや、正確には緊張を紛らわすため、だな。
6番滑走者が全員スタートしたのを見計らって、俺も待機スペースへと移動する。
なんの偶然か、ここでも隣になったのは高円寺だった。
運がいいのか悪いのか……いやよくはないか。
まあせっかくなので、一つ気になることを質問してみた。
「高円寺、一つ聞いていいか」
「何かな?スマートボーイ」
……いや、我慢しろ。突っ込むな。この変なあだ名に突っ込んだら負けだ。
「どうしてスキーは手を抜かないんだ?」
こいつは本当に気まぐれで動く。
水泳の初授業のとき、こいつは本気で泳いでいた。
しかし体育祭では「体調不良」といって全競技に不参加だった。
そしてこの合宿のスキーは本気。
「君ならば、答えは言わずともわかっていると思うのだがねえ。当然、ただの気まぐれさ。だが、ウィンタースポーツに興じる私は美しいだろう?」
「……まあ、そうかもしれないな」
美しいかはともかくとして、すごいのは間違いない。
まあ、結局気まぐれで動くってことだ、こいつは。聞くだけ無駄だったな。
「では、私からも一つ質問して構わないだろうか」
「……なんだよ」
こいつは自分に絶対の自信を持っているから、疑問を持ったとしても、勝手に答えを出して自己完結して終わりだと思っていたが。
そんな俺ののんきな考えを粉砕する言葉を、高円寺は投げかけてきた。
「君は、スキーの経験者だろう?」
……。
「……それは変だな。俺は最初、『基礎コース』でやってたんはずなんだけど?」
「残念ながら、君がどのような言葉を弄しようとも、私がそう思った以上、それが事実であることは揺るぎない」
……質問とか言いながら、これじゃ尋問じゃないかよ。いや、そもそも問いにすらなってない。
「それに、私だけじゃないさ。講師としてきているプロフェッショナルの方々の中にも、君が経験者であることに勘づいていた人物は1人や2人じゃないだろうねえ」
「……俺は今までも本気だったぞ?」
「私の目は誤魔化せないさ。君は必死で道化を演じてたようだが、滑りのリズム、オーラ、あれはビギナーのものではない。君は本気でやっていたというが、それは『本気で初心者のフリをしていた』ということだろう?」
はあ……参ったな。
「だが、今更このことを暴露されたところで、君にとっては痛くもかゆくもないのだろう?君は今から、文字通り『本気で』滑るのだからね。君は私に感謝こそすれ、恨む筋合いはないということさ」
おお……そこまでお見通しか。
さすが、船上試験で優待者を見破った観察眼、洞察力は化け物級だな。
感謝しろってのは、もっと早いタイミングで暴露することもできたんだぞってことか。
「俺が醜いか?」
「ふふ。安心したまえ。そんなことはないさ。いまこのように君に質問をしているのも、単なる私の気まぐれ。気を悪くしないでくれたまえ。そもそも私は君に対して『醜い』と思うほどの興味を抱いていない。それに、君のように欲望に忠実な人間は嫌いじゃないよ」
「……ああ、そりゃどうも」
「そろそろ私の出番のようだ。では健闘を祈るよ、スマートボーイ」
「ああ……そっちこそ頑張ってくれ」
そんな俺の言葉を、高円寺は右から左に聞き流しただろう。
「……はあ」
ものすごいスピードでスタートする高円寺を、俺は恨めしそうに見つめた。
なんか、ペース乱されちまったな。「気まぐれ」で高円寺に質問なんてするもんじゃなかった。
ただ、おかげ様で緊張は解けた。
「速野、頼む!」
先ほどと順位は変わらず、7位できた日下が俺の手に触れる。それと同時に俺は思いっきりストックで雪を蹴って、猛スピードでスタートした。
直後に、俺の数秒前に緩いスタートを切った1人を追い抜き、まずは6位。そして50mほど進んだところでもう1人を追い抜いて、順位を5位に上げた。
「は!?」
追い抜かれた生徒が驚愕の声を上げるが、そんなこと気にしてはいられない。
とにかく加速だ。
さらに風向を読み、できるだけ空気抵抗が小さくなるように姿勢を維持する。
そしてストックを思いっきり振りぬいてスピードを生み出し、前の滑走者を追い抜いていく。現在4位。
まさか、この学校に入ってスキーをやることになるなんてな。想像もしてなかった。
小学4年生のときまで、俺はスキーのクラブに入っていた。
そして中学3年生の時に、スキー場の近くに引っ越したから、もう一回スキーを始めた。
だから、こうして本気でスキーをやるのは10か月ぶりくらいだ。
スピードに乗って、次々と走者を追い抜いていくこの感じ。
まるで体育祭のときの清隆だ。
といっても、俺とそれ以外の間に、体育祭のときの周りと清隆ぐらいの差はない。
俺は経験者だから、早く滑れるコツを知ってるだけ。
そして速いスピードに恐怖を感じないだけ。
委縮せず、ストックを思いっきり振れるだけ。
ただそれだけのこと。
経験者の中では、俺は速くないどころか、かなり遅い方だ。
だが、例えば球技大会では、その球技の部活に入っている生徒は、たとえ控え選手でも活躍する。
それと同じことが、いまスキーで起こっているだけだ。
最後にもう一人追い抜いて、俺は順位を3位まで上げた。
待機スペースが見えてきたので、スキー板を八の字にしてスピードを緩め、次にスキー板を進行方向に向かって直角にして急停止させる。
「は、速野!? ちょ、おま、速すぎないか!?」
「次は頼んだぞ」
「え!? あ、お、おう!」
宮平は驚きを見せながらも、遅れまいとすぐにスタートした。
滑り終わった生徒は、邪魔にならないようにすぐにどかなければならない。
外したスキー板を持って、整列場所に戻る。
「……きっつ」
やっぱり、全力で800メートル滑るのはかなり疲れるな……特に腕の疲労が半端じゃない。
「お、おい、どうなってるんだ速野?」
「なんでそんなに速く滑れるのに、今までそうしなかったんだ?」
「ていうか、もしかしてお前、スキー経験者なのか?」
俺が戻ってくると、当然ながらグループのメンバーから質問攻めを受ける。
メンバー以外からも奇異の視線をたくさん浴びた。
多分こうなるだろうなーとは初日のバス車内でも思ってたけど、やっぱこんだけ注目されるの慣れてないんだよな。だからそんなにたくさん視線送ってくんなよ。溶けちゃうだろ。俺が。
体育祭のときの清隆の気持ちが少しわかった。
「あー……そこらへんは後で話すから、とりあえず今はレース見ようぜ」
「ま、まあそうだな……お、宮平が3位で戻ってきたぞ!」
「ほんとだ!頑張れー!」
その後、俺たちのグループはそのまま順位をキープし、3位でゴールした。
しかし、レースが終わってからも俺は視線を浴び続け、正直居心地はめちゃくちゃ悪かった。
だが、やるべきことは全力でやった。
高円寺の言う通り、最初は全力で初心者のフリをし、そして最後は全力で滑った。
あとは、もう運を天に任せることしかできない。
読者の皆様の中には、主人公がスキー経験者だと勘付かれていた方もいらっしゃったかもしれませんね……
文中でも言及している通り、体育祭の綾小路とほぼ同じような展開になりましたが、綾小路が純粋に堀北兄と対決したかっただけ(多分)なのに対し、この作品の主人公は、それとは全然違う理由でこんなことをしました。
では、また次話もお楽しみに!
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