実力至上主義の学校に数人追加したらどうなるのか。※1年生編完結   作:2100

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話数の割に全然進まねえ……というわけで今回は多めです。ただ、今回は原作とほぼ変わりません。


ep.7

 

 

 授業中には怠惰、放課後や休日には浪費を繰り返したDクラス。

 そんな生活を続けて、1ヶ月が経過した。

 5月1日、今日はポイントの支給日。多くの生徒は、またあの夢のような生活を送れるのだ、と信じて止まなかった。

 しかしこの教室内には、浮かれるとか、ワクワクするとか、そんなものとは全く違う雰囲気が立ち込めている。

 そんな異様な空気の中、教室のドアを開けて、茶柱先生が入ってきた。

 そして茶柱先生が持つ雰囲気も、いつもとは違っているような気がする。

 

「せんせーどうしたんすか? 閉経しちゃったとか?」

「これより朝のホームルームを始める。その前に何か質問のある者はいるか? もしいるなら、今聞いておいた方がいいぞ」

 

 池のアホ発言をガン無視し、茶柱先生は冷たい声で言った。

 質問を促され、クラスの何人かが手を挙げる。その中の1人、本堂が口を開いた。

 

「あのー、今朝見たらポイントが振り込まれてなかったんですけど。ポイントって毎月の1日に振り込まれるって話じゃなかったんですか?」

「以前説明したことを忘れた訳ではなかろう? お前の言う通り、そういうシステムになっている。そして今月分のポイントは、既に問題なく振り込まれている」

「え、でも……」

 

 Dクラスにあった異様な雰囲気の正体はこれだ。俺も朝、残りポイントを確認して少し驚いた。

 4月30日時点と、5月1日時点。その間のポイント残高の変動が全くない。

 

「……本当に愚かだな、お前らは。座れ本堂」

「お、愚か……? え、さ、佐枝ちゃんせんせー?」

「座れと言ったはずだ。次はないぞ」

 

 ただでさえ変だった茶柱先生先生の雰囲気が、さらに異様なものに変わっていく。

 質問した本堂は、見たことも聞いたこともない茶柱先生の雰囲気と口調に戸惑い、或いは気圧され、席に座りこんだ。

 それを確認してから、茶柱先生は再び話を始める。

 

「間違いなく、ポイントは振り込まれた。学校側のミスでもなければ、ましてやお前達だけ忘れられたなんて幻想もあるはずがない。分かったか?」

「い、いや分かったかって言われても……事実振り込まれてない訳だし……」

 

 本堂は未だに分かっていないようだ。茶柱先生が何を言いたいか。

 いや、学校側が何を言いたいか。

 

「はは、分かったよティーチャー。このなぞなぞのようなくだらない話の真相が」

 

 足を机にあげながら、高円寺が笑って言った。

 

「要は、今月私たちに振り込まれたポイントはゼロポイントだった。そういうことだろう?」

「は?何言ってんだよ。毎月10万ポイント振り込まれるって言ってただろ?」

「私はそんな説明を受けた覚えはない。どこか間違っているかい、ティーチャー?」

「ふむ。態度には問題ありだが、その通りだ高円寺。全く、これだけのヒントをやっておきながら、気づいたのが数人とはな」

 

 先生はあっけなく、1つの衝撃的な事実を告げた。その言葉が浸透していくと同時に、教室内はどんどん騒がしくなっていく。

 

「……あの、先生。質問いいでしょうか。腑に落ちない点があります。どうしてポイントがゼロだったんでしょうか」

 

 騒然とした教室の中、そう主張したのはクラスのリーダー、平田だ。

 その平田の質問にも、先生は冷たく答える。

 

「遅刻欠席、合計98回。授業中の私語や携帯を使用した回数、391回。一月でよくもまあこれほど怠惰を続けられたものだな。以前も説明しただろう。実力で生徒を測る、と。この学校は、クラスの成績がそのままポイントに影響する。この1ヶ月間のお前らDクラスの厳正な査定を行なった結果、お前らに対する評価は、『ゼロ』だ」

 

 突如として明らかにされる、ポイントの支給制度、「Sシステム」の裏側。

 なんと、俺が入学初日の夕食時に立てた仮説は、なんだかんだで当たっていたのだ。

 貰えるポイントは増減する。

 そして俺たちは今月、0ポイントを獲得した。

 後ろでは、堀北がシャーペンを走らせるサラサラという音が聞こえてくる。

 メモしているのは恐らく、先ほどの遅刻欠席などの回数や、先生の発言。事態の把握を狙っているんだろう。

 

「ですが先生、僕らはそんな説明は……」

「受けた覚えはない、か?」

「はい。もし説明を受けていれば、誰も私語や欠席なんてしなかったはずです」

「それはおかしな話だな。お前らは小、中学校で授業中の私語や遅刻はしてはいけないことだと習わなかったのか? そんなわけがないだろう。その程度のことを説明しないと分からないのか。お前らが当たり前のことを当たり前にこなしていれば、こんな結果にはならなかった。全てお前らの自業自得ということだ」

 

 それは絶対的な正論だった。出来て当たり前のことを、俺らは出来ていなかった。それだけのことだ。

 反論しようと思えば出来ないこともないが、この場で発言が必要なほど意味のある反論の内容ではなかった。

 恐らく平田は今になって、授業をちゃんと受けようと、これまで注意してこなかったことを後悔しているだろう。

 

「大体、高校に上がったばかりのお前らが、なんの制約もなく1ヶ月に10万もの大金を使わせてもらえると思ってたのか?優秀な人材を育成することが目的のこの学校で?あり得ないだろう。常識を少しは身につけたらどうだ。なぜ疑問を疑問のまま放置しておく?」

 

 確かに、それは俺の落ち度だ。質問して情報に確実性を持たせるべきだったのに、立てた仮説を仮説のまま放置していたのは悪手だった。

 先生の言葉に悔しそうな表情を見せる平田だが、また新たな可能性を模索し、先生に言う。

 

「では……せめてポイント増減の詳細を教えてください。今後の参考にします」

「それは出来ない相談だ。人事考課、という言葉は知っているだろう。ポイントの増減は、この学校の決まりで公開出来ないことになっている。……しかし、そうだな。私も一応お前らの担任だ。一ついいことを教えてやろう」

 

 そう言うと、茶柱先生に一気にみんなの視線が集まる。

 

「お前らが今後、私語や遅刻を完全に無くし、マイナスをゼロにしても、プラスになることはない。来月も、その次も0ポイントだ。つまり、お前らが今までやってきた私語も遅刻も、授業中の携帯使用もし放題というわけだ。どうだ、覚えておいて損はないだろう?」

 

 皮肉たっぷりの先生の言葉に、平田の表情が沈む。俺も少し気分が悪くなり、先生を睨んだ。

 ……いや、或いはここでキレさせることが目的か。

 そんな時、ホームルームの終わりを告げるチャイムが鳴った。

 

「どうやら、少し無駄話をしすぎたようだ。本題に移るぞ」

 

 そう言うと、先生は持ってきていた大きな白い紙を黒板に張り出す。

 そこには、A〜Dクラスの名前が表示されており、その横には数字が書かれていた。

 Aクラスが940。Bクラスが680。Cクラスが490、そして俺らのDクラスが0。

 Dクラスの数字から、これはポイントに関連することだろうと推測できる。

 クラスごとに支給される額がこの数字に比例していると考えると、相場は、この表の1の値が100プライベートポイント、といったところだろうか。

 にしても、AからDにかけて、随分と綺麗に数字が下がっている。

 それを奇妙に感じたのは堀北と綾小路も同じらしく、後ろで何事か話しているのが聞こえてきた。

 

「お前らは入学してから昨日まで、贅沢三昧をした。もちろん、それを糾弾する気も否定する気もない。ただの自己責任だからな。事実、学校側はポイントの使い道に関しては制限をかけなかっただろう」

 

 確かに、そのようなことも言っていた。「このポイントは振り込まれた時点でお前らのものだ。遠慮なく使え」と。

 その説明は、俺らにポイント使用の権利を付与したとともに、ポイントに関しての無限責任を課すことにも繋がっていたということだ。

 

「そ、そんなのあんまりっすよ! こんなんじゃ生活できませんって!」

「バカが、よく見てみろ。お前ら以外のクラスには1ヶ月生活するには十分すぎるほどのポイントが支給されているだろう。言っておくが、一切不正は行われていない。査定は全クラス同じ基準で、厳正に行われた。段々分かってきたんじゃないか? お前らがどうしてDクラスに選ばれたのか」

「え? 理由なんて適当じゃないのか?」

「普通そうだよね」

「この学校では、優秀な生徒たちとそうでない生徒たちのクラスを順に分けて編成することになっている。優秀な人間はA、ダメな人間はD、とな。つまりお前らはこの学校では最下位。最悪の『不良品』というわけだ」

 

 茶柱先生から、聞き覚えのあるフレーズが耳に聞こえてくる。

 入学初日、コンビニで上級生に言われた「不良品」という単語。

 この学校ではこの「不良品」という言葉が浸透しているらしい。

 

「私は逆に感心しているんだ。歴代Dクラスでも、1ヶ月で全てのポイントを吐き出したのはお前らが初めてだ。立派だよ」

 

 再び皮肉のこもった言い方で、今度はぱちぱちと拍手まで加えてきた。

 

「このポイントが0である限り、僕らはずっと0ポイントということですか?」

「そうだ。だが安心しろ。お前らはこの敷地内で、無料のものを幾度となく目にしているだろう? ポイントがなくても死にはしない」

 

 恐らく、俺が利用しているスーパーや自販機のミネラルウォーター、食堂の無料の定食なんかを指しているんだろう。先日堀北も言っていたように、無料でも生活できないことはない。

 そこで、ガンッ、と音が聞こえてくる。

 

「……俺たちは卒業までずっとバカにされ続けるってことか」

「なんだ、お前にも人の評価を気にする気があったんだな。なら、上のクラスに上がれるように頑張ることだ」

「あ?」

 

 上のクラスに上がる、とはどういうことだろうか。

 

「クラスのポイントは、個人の支給ポイントを示すだけではない。クラスのランクに反映される。つまり現時点でお前らが490より上のポイントを保有していたら、お前らはCクラスに昇格していたということだ」

 

 上のクラスに上がる。それはDクラスにとって、文字通りゼロからのスタートだ。至難の道であることは火を見るより明らかだった。

 

「さて、もう1つお前らにお知らせがある」

 

そう言うと、先生はもう一枚の大きな紙を再び黒板に張り出した。

 

「いくら馬鹿でも、これが何のことかくらいわかるだろう」

 

 その紙には、Dクラス全員の氏名、そしてその右には先ほどと同じく数字が書かれていた。

 

「先日行った小テストの結果だ。不良品にふさわしい結果だな。お前たちは一体中学で何を勉強してきたんだ?」

 

 俺も点数の一覧を見てみると、少し驚いた。あのテストの問題は最後の三問を除いて解けて当たり前の問題が並んでいた。そのため平均点は8割近く、少なくとも7割はあるだろうと踏んでいたのに、実際には60点台が多くを占めていたからだ。

 

「これが本番でなくてよかったな。もし本番だったら、下位7人はすぐに退学になっていたところだ」

「は!? た、退学!?」

「この学校は、赤点を取ったら即退学だ。説明してなかったか?」

「お、おいふざけろよ!退学なんて冗談じゃねえよ!」

「私に喚かれてもどうしようもない。これは学校の制度だ」

 

 それは初耳だ。

 てか、そのルール厳しすぎね?確かに赤点を取るなんて論外だが、一発レッドカードなんて制度、聞いたことがない。

 

「ふっ、ティーチャーの言うように、このクラスには愚か者が多いようだね」

 

 相変わらず机に脚を乗っけたまま、上から目線で言う高円寺。

 

「は!?お前もどうせアホみたいな点数なんだろ!見栄張るなよ」

「やれやれ、どこに目が付いているのか、甚だ疑問だねえ」

 

 言われて、高円寺の名前を探して見る。

 下から上へと視線が動いていき、高円寺六助の名前があったのは、上位中の上位。点数は90点だ。つまり、あの3問のうち少なくとも1問を解き明かしたことになる。

 

「そんな、須藤と同じくらい馬鹿だと思ってたのに……」

 

 そんな声が聞こえてくる。

 俺やクラスの奴らは、プールの件で高円寺の身体能力が驚異的だというのは知っていたが、ペーパーテストについてもここまで優秀とは、正直俺も驚いた。

 

「それともう1つ。この学校は高い進学率と就職率を誇っているが、その恩恵にあやかることが出来るのは上位のクラスだけだ。お前らは全員がこの特権の対象だと思っていたかもしれないが、お前らみたいな低レベルの人間が、自由に好きな大学、好きな就職先に行けるなんて上手い話が世の中で通るわけがないだろう」

「つまりその特権を得るためには、Cクラス以上に上がらないといけないということですか?」

「いや、少し違うな。CクラスでもBクラスでもだめだ。この特権を手にできるのは、卒業時にAクラスに所属していた生徒のみだ」

「え、Aクラスに!?」

「ああ。それ以外の生徒については、学校側は一切の保証をしないだろう」

 

 Aクラスだけの特権、か……。てことは、藤野ってすげえやつなんだな。薄々感じてはいたが。

 

「そ、そんな!聞いてないですよ!あんまりだ!」

 

 話を聞いてそう叫んだのは、幸村という男子。

 小テストの結果は高円寺と同じく90点を獲得している。高得点だ。

 

「みっともないねえ。男が慌てふためく姿は」

 

 そんな幸村に、高円寺の呆れたような声が降りかかる。

 

「お前……不服じゃないのかよ。Dクラスに配属されて、『不良品』なんて言われて! おまけに進学も就職も保障されないなんて!」

「不服? なぜ不服に思う必要があるのか、私には理解できないねえ。それは学校側が私のポテンシャルを測れなかっただけのこと。私は自分を誰よりも素晴らしい人間であると自負し、そう確信している。それに学校側がどんな評価を下そうと、私には何の関係もないということさ」

 

 なんというか……言葉も出ないな。

 高円寺はいま「学校側はポテンシャルを測れなかった」といったが、恐らく学校側は個人のポテンシャルのみを見て評価を下しているわけではない。

 高円寺の他にも、学力の高い生徒はDクラスにいる。幸村もそうだし、堀北もそうだ。2人とも小テストの点数は90点と高得点だ。

 それに、高円寺は水泳のときに見せた圧倒的な身体能力も備わっている。このことから、生徒の評価のパラメータは学力、身体能力以外にも存在することが分かる。

 

「それに、私は進学や就職を学校側に頼ろうなんて微塵も考えていないのでね。私は高円寺コンツェルンの後を継ぐことが決まっている。保障があろうとなかろうと、微塵も関係ないのだよ」

 

 完全に別次元の世界からの言葉に、幸村も口を噤むしかないようだった。

 

「どうやら、自分たちがいかに愚かで、悲惨な状況に立たされているかは理解が及んだようだな。中間テストまで残り3週間。精々頑張って退学を回避してくれ。私はお前ら全員が赤点を回避して、退学を免れる方法があると確信している。それまでじっくり考えて、出来ることなら、実力者にふさわしい振る舞いを持って挑むことを期待している」

 

 そう言い残すと、扉をピシャリと閉め、茶柱先生は教室を出て行った。

 

 実力者にふさわしい振る舞い、とは何だろうか。さっきまで「不良品」と馬鹿にしていたのに。

 この中に実力者と呼べるものがいる、と先生は考えているのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、少しトラブルが起こったが、櫛田の力によってそれは解決した。

 櫛田のマンパワーはとてつもない。この1ヶ月で、クラス全体を平田が引っ張って、櫛田が支える、という構図が出来上がっている。そこに付け加えるとしたら、軽井沢という女子生徒も、女子を率いるリーダー的な存在だ。

 

「みんな、少し話を聞いてほしい。特に須藤くん」

「あ?」

「僕らは今月、ポイントを獲得できなかった。これはとても大きな問題だ。まさか、このまま卒業までポイントなしで生活なんてわけにもいかないだろう?」

「そ、そんなの無理!」

「分かってる。だから、みんなで協力して、力を合わせて解決していかないといけない。出来ることから始めてみたいんだ。授業中の私語をお互いに注意し合うとか、遅刻をゼロにする、とかね」

「は? なんでお前に指示されてそんなことしなきゃいけないんだ。それやってもポイントは増えないって言ってたじゃねえか」

「でも、そこから直していかない限り、僕らのポイントはずっとゼロのままだ。今はとにかく、マイナス要素を削らないといけない」

「チッ、納得行かねーな。真面目に授業受けてもポイントもらえないなんてよ」

 

 須藤は悪態をつき、乱暴に舌打ちをする。

 真面目に授業を受けてもプラス査定にならないのは、学校としてはそれはできて当たり前のことだと捉えられているからだ。

 しかし、俺らはその当たり前のこともできず、このような結果が生まれた。そんなことは自明のはずだが、須藤は認めようとしなかった。

 この教室に須藤の味方は元々多くない。ましてや、対立しているのは平田。どちらが支持を受けるか、それは言うまでもないことだ。

 段々と、須藤に非難のこもった視線が向けられるようになる。

 それで居心地を悪くした須藤は、もう一度露骨な舌打ちをしながら、教室を出て行った。

 

「須藤くんほんと空気読めないよね。ていうか、生活態度一番悪いの須藤くんだし」

「あいつがいなければ、ポイントだって少しは残ってたんじゃないか?」

 

 鬼の居ぬ間に洗濯、というか、不在裁判、というか。本人がいなくなった瞬間、須藤への批判が集まり始める。

 そしてその様子を見ていると、これ来月もポイント入るのか……?と不安になってしまった。

 

「速野くん」

 

 そんなことを考えていると、後ろから堀北に呼ばれた。

 

「参考までに、あなたは先月何ポイント使ったの?」

「えーっと……確か5000……いや、6000くらいだ」

「随分と切り詰めたのね。あなた自炊でしょう?」

「あれは全部スーパーにある無料の材料で作ってるものだ」

「そういうことだったのね……以前もそうだったけれど、あなたはこのポイントの件について知ってたの?」

「あり得ない話ではない、とは思ってた。でもそれ以上に、金銭感覚狂うのが怖かったってのもある。まあかわいそうではあるが、ポイント使い切ったやつは自業自得だな」

「概ね同意ね。ところで」

 

 と、堀北が言いかけたところで、平田がこちらに歩いてきた。

 

「堀北さん、綾小路くん、それに速野くんも、少しいいかな。実は放課後、ポイントを獲得していくために、Dクラスがどうしたらいいか、話し合いを持とうと思ってる。そこに参加してほいんだ」

「何で俺たちなんだ?」

「全員に声をかけるつもりだ。でも、全体の場で言っても、真剣には耳を傾けてくれない人がいるかもしれない」

 

 平田はそう言うが、俺ら3人に始めに声をかけたのは、参加する確率が低いと踏んだからだろう。事実、俺は乗り気ではなかった。

 

「申し訳ないけれど、遠慮させてもらうわ。他を当たってくれる? 話し合いは得意ではないの」

「無理に発言しなくてもいいんだ。参加してくれないかな」

「私は意味のないことに関わりたくないの」

「でも、これはDクラスの今後に関わることだと思うんだ。だから……」

「私は参加しない、と言ったはずよ」

「……そ、そっか、ごめん。でも、気が変わったら、いつでも待ってるから」

 

 平田はそう言うが、堀北はすでにこちらに興味を示していなかった。

 

「綾小路くんと速野くんは、どうかな?」

「あー……悪いな」

「俺もパスだ。すまない」

「……ううん、こっちこそ急にすまなかった。でも堀北さん同様、気が変わったらいつでも言ってほしい」

 

 そう言うと、それ以上強く誘ってくることはなかった。

 平田が立ち去ってから、俺は堀北に聞く。

 

「……で、堀北、お前何か言いかけなかったか?」

「いえ、何でもないわ。気にしないで」

「ん、そうか」

「にしても、平田はああやって行動を起こせるところがすごいよな」

 

 他のメンバーにも声をかけている平田を見て、綾小路が感心するように言った。

 

「それはどうかしらね。そもそも話し合って解決できる問題ではないわ。能力のない人間が集まって話し合っても、まともな結論が出るとは思えないもの。迷走して終わるのが関の山。それに私には、今のこの状況を受け入れることなんて、到底できない」

 

 最後に付け足すように言った堀北の一言の意味を、俺は汲み取ることができなかった。




日常、終わっちゃいましたね。
これから主人公が少しずつですが動いていきます。皆様、これからもよろしくお願い致します。
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