戦姫絶唱シンフォギア -俺を誰だと思っていやがる!!!- 作:GanJin
遂に、XDにセレナがっ!!
いつ出るのかと首を長ーくして待っておりました。
それではお楽しみください!
あの騒動から二週間ほどの時間が経った。ノイズによる被害だけでなく、あの爆発の後、ネフシュタンの鎧が強奪されており、その行方も分かっていない為に二課の職員はその後処理と捜索で大忙しであり、何処も人手が足りてない状況になっていた。
カミナが退院した後、予定通り身柄を二課で預かることになり、事情聴取などが行われた。加えて、会場で見せたあの力、螺旋力が何なのかを調べるためにカミナは了子と共に解析をする日々を送っている。
翼と奏はツヴァイウィングの活動がしばらくの間制限されることになっており、かなり暇を持て余していた。
「あー、暇だーっ」
二科本部の廊下のソファーでゴロンとしている奏に翼は呆れていた。
「奏、おじさんみたいだよ」
「だってさぁ、しばらく外に出れないとなると暇なんだよ」
「それは分かるけど」
「結局、アレからあいつらとも会ってないし、電話も出来ないし、カミナはずっと了子さんところだし、翼をからかうネタも尽きたし、暇で死にそうだよぅ」
最後に何故か妙なワードが混ざっていたような気がするが、その直後、司令室に来るよう翼と奏を呼ぶアナウンスが聞こえたため、翼はそれにツッコめなかった。
司令室に辿り着くとそこには怪我が完治しているカミナがソファーに座って二人を待っていた
結局、螺旋力の解析の為にカミナには二課に所属してもらうことになった。弦十郎も奏の気持ちを汲んでやりたかったが、ノイズの脅威から人々を守る手段を上から求められている以上、カミナをただの一般人に戻すことが出来なくなってしまった為に、その決定を出さざるを得なかった。
当の本人もそれで構わないと決断し、カミナは正式に二課の協力者となった。学校については今の所普段通りで構わないことになっている。少々手間がかかるが、なるべく普段通りの生活をさせてやりたいという弦十郎の思いで学校にいる間は数名の職員を近くで待機させるように働きかけた。
そして現在、了子の監修のもと螺旋力について様々な調査が行われている。今回の呼び出しはその調査結果についてらしい。
「よう、奏、暇そうな顔してるな」
「おう、やることが無さすぎて暇死しそうだ」
「大丈夫だ、その程度でお前がくたばるかよ。どうせ、面白いネタなら勝手に見つけるだろ。ついこの間まで翼を弄るネタを考えてたじゃねぇか」
「まぁな、カミナがいると悪戯のバリエーションが増えるから大助かりだ」
「奏……」
そんなことをカミナとやっていたのかと翼は呆れていた。奏は翼を揶揄うことが多かったが、恐らくその元凶はこの男だと翼は考えている。カミナと再会してから少しずつ奏は昔話をするようになり、何かしら悪戯をすることにおいて必ずこの男が出てくるのだ。つまり、カミナが二課に入ったことで、今まで以上に揶揄われるのだと思うと翼も気が重くなった。
実際、この後、翼は二人の悪戯に翻弄される日々を送ることになるのだが、それはまた別の機会に話すこととしよう。
「皆揃ってるな」
そんな話をしていると弦十郎と了子がやって来たので、調査報告を始めることとなった。
始まったのだが……。
「数日程調べてみたんだけど、なーんにも分かりませんでしたー」
最初に了子から聞かされたお手上げ宣言に誰もが呆気にとられた。全員がそんな馬鹿なと言いたい顔をしている。
「……了子君、それは本当なのか?」
「こんな忙しい時に冗談が言える余裕があると思う?」
「ああ、そうだな。すまない」
「まず、何を切っ掛けにあの力が発揮されたのかが分からないのよ。映像はかろうじてあったけど、でも詳しいことは彼がその力を使えたくらいしか分からなかったわ。それに……」
「何度かやってみたが、アレが全く発動できねぇんだよな、これが」
アレから力が使えないことをあっけらかんと言うカミナ。
「何度も体を調べてみたけど、聖遺物の反応も一切なかったし、エネルギー反応が微弱に観測できるくらいで、肉体的に本当にただの人間なのよ。でも、あれ程のエネルギーをただの人間がコントロール出来るとは思えないし……。あの小さなドリル、アレをコアドリルと名付けるとして、恐らく螺旋力の発動の鍵を握っている気がするけど、これも検査しても碌な反応がないし」
「了子君、彼からエネルギー反応が出たと言っていたが」
「微弱だけどね。でも聖遺物特有のエネルギーではないのは間違いないわ。エネルギー波形が螺旋を描いていたからね」
「ふむ、謎が深まるばかりだな……」
「エネルギーの源と発動条件も知っておきたいところだけど、これは気長にやるしかないわね。そもそも、戦闘技能も無かったのにどうやって戦えたのって聞いたら……」
「そんなもん、気合でやればなんとかなるっ!!」
これよ、と言いたげに了子は困った顔をする。なんとも非論理的である。
「成程、気合か。確かに男の最後の武器は拳と気合だと相場が決まっているからな」
「流石おっさん、話が分かるぜっ!」
だがそんな自信満々に答えるカミナに弦十郎は納得するように頷き、了子はガックリと項垂れる。
「なんだか弦十郎君が二人に増えた気がするわ」
奏や司令室にいた職員達も揃って首を縦に振って同意する。根本的な所はこの二人同じものがあると誰もが考えていた。
「カミナさんが大人になったら司令のようになるのかしら?」
「いや、カミナの成績は赤点まみれだっていうからそれはない」
「あら、分からないわよ? 案外、弦十郎君もそこまで成績は良くなかったかもしれないわ」
「いやー、でもカミナより悪いってことはないだろ」
男性陣が熱い語らいをしている中、女性陣は熱血漢共を肴にある事ない事話し合うのだった。
ずっと研究室で調査三昧であった為、カミナは久方ぶりに外を散策する許可をもらった。折角だからリディアンの周りを案内すると奏が提案し、翼もついてくることにした。当然、それなりの変装をしてだ。二週間とはいえ、しばらく活動休止状態のツヴァイウィングが揃って外に出ていることが知られれば、かなり騒ぎになる為の配慮だ。
「へぇー、ここが奏が通ってる学校か」
まず最初に案内されたのが、奏と翼が通う学校だった。二課の基地の丁度真上にあるのが小中高一貫の私立リディアン音楽院だ。
「音楽に力を入れてる学校ってのも珍しいな」
「まぁな、しかも学費も安いから、結構応募者が多いんだよな」
「なぁ、ここに居る生徒って、二人がアーティストって知ってるんだよな」
「まぁな。あたし等が有名になってから応募者が一気に増えたらしいぞ」
「それって、お前らに会いたいからか?」
「らしいぜ」
実際、二人がアーティストととして活動した次の年から入学希望者が更に後を絶たなくなっており、弦十郎からもその話を聞かされていた。
「動機が少し不純な気がしますけどね」
「良いじゃんか、あたし等に影響を受けて歌が好きになってくれるなら」
「それはそうだけど」
肩を組んでじゃれつく二人にカミナはふと笑みを浮かべた。
「さっ、次に行こうぜ」
それからカミナは奏に連れられて、彼女が今まで訪れた場所に足を運んだ。暇を見つけた時に向かう行きつけのゲーセン、偶に食べたくなるお好み焼き屋、スーパーや公園など、彼女がいた世界をカミナは目にした。
歩き回った三人は少し公園で休むことにした。翼は自販機で飲み物を買ってきてもらっており、今は二人だけでベンチに座っている。
「なかなかいい街だな」
「まぁな」
「お前がちゃんとここで生きていたってのがよく分かったぜ」
「まるであたしが碌な生き方してねぇみたいな言い方じゃねぇか」
「当然だろ、あの時のお前は何時死んでも構わねぇって面だったからな」
「えっ……」
「ノイズに復讐できれば、自分の命なんてどうだっていいって思ってる面だった」
あの時、カミナと別れを告げた時の自分の顔がそんなに酷かったとは思いもよらなかった。
「お前が居なくなってからずっと復讐する為だけに生きてるんじゃねぇかって思ってよ。そんなお前を見捨てられなかったから、俺は探し続けてきたんだ。正直、ノイズと戦ってるとは思わなかったが、お前は一度やるって言ったことは何が何でもやろうとするから、そこまで驚きはしなかったけどな」
「……悪い」
「別に良いさ、再開した時のお前の顔を見たら俺も怒る気も失せた。というか安心したんだ。いつ死んでも良いって顔じゃねぇ、今を全力で楽しむ生き方をしてた昔のお前と同じ顔だったからな」
「……そうかよ」
カミナが平然と恥ずかしい言葉を口にするのに奏はほんのり顔を赤くする。いつ死んでも良いと思っていた当時の自分のことを思ってずっと探していたのかと思うと、嬉しいような恥ずかしいような気分になる。カミナが恋愛感情で動いてるとは思わないが、それでもグレン団の絆だからと言ってここまでする人間は他にいないだろう。いや、むしろこの男しかいないとさえ思っている。
(ああ、もう。だからこいつは面倒なんだよ、昔からっ!)
昔からこうだった。大バカ野郎のくせに、意外な所で優しくて、面倒見が良くて周りから慕われてる。だが慕っている者の一部には異性として好意を持つ者がいることに気付いていなかった。朴念仁にもほどがあった。と言っても、告白する勇気がある奴が一人も居なかったのが幸いしたのだが、こいつの行動と言動は時々勘違いさせられて、こっちとしてははた迷惑な事だった。
(あー、何でこいつのこと好きになっちゃたんだろ……)
初めて会った頃に自分の見る景色を変えてくれたカミナに、何時からか奏は憧れとは別の感情を抱いていることに気が付いた。それに最初に気付いたのはあっちゃんであり、奏は初めて勉強以外で彼女に相談したほど動揺していた。
因みに初めての恋愛感情にどうすれば良いのか分からず、あたふたしていた奏の姿は未だにあっちゃんの奏との思い出ランキングの中で不動の一位となっている。
奏から今度、両親と一緒に皆神山に行くことを知ったあっちゃんはならそこでカミナを誘って二人っきりになって告白しちゃえと提案した。最初は渋ったが、今後、彼に告白する人がいないとも限らないと思った奏は人生最大の決断をすることにしたのである。
結果はご存知の通りであったが、再開して未だにその恋心が涸れていなかったこと自分自身に驚かされた。昔のように慌てふためくことは無かったが、今でもカミナに対しドキリとすることは少なくなかった。
例として挙げるなら、カミナの二課への歓迎会を開いた時に、了子が冗談で『服を脱ぎましょうか』と言ったら、『分かった、これで良いか?』と恥ずかしがることなく上着を脱いだのである。それには女性職員から悲鳴が上がったが、どちらかと言うとアレは黄色い声に近い。バイト三昧の生活を送っていたカミナの肉体にはがっちりと鍛えられた筋肉が浮かび上がっており、あの弦十郎をうならせたほどだ。最後にカミナの裸を見たのは学校のプールぐらいで、アレから数年が経ち、別人のように鍛えあげられたカミナの肉体に心臓がドキドキしたのである。
「そう言えば、翼、おっそいな」
「お、おう……。そうだな」
ふとカミナが口にするまで、奏も気付かなかった。少々変な声が出たがカミナは気付かなかったのは幸いだった。
飲み物を買いに行ってるにしてはあまりにも時間が掛かり過ぎている。流石に攫われた可能性は低いが、ここまで時間が掛かっているのは奇妙だった。
「ファンに追われてるとか?」
「そうなったらもう少し騒ぎになってんだろ。それなりに変装はしてるんだし」
「メガネかけたくらいじゃねぇか。……まさか、飛び蹴りかましてねぇよな?」
「そんなことしたのはカミナくらいだよ。あの時はあたしもびっくりしたわ」
そんなことを話していると突然、カミナと奏の端末に弦十郎から連絡が入った。
それと同時に、二人の後ろの木陰から同じアラームが聞こえてくる。
「えっ?」
「あん?」
二人揃って背後を見ると、物陰に隠れていた翼が慌てふためいている姿が確認できた。
「何やってんだ、お前?」
「えっと、それは……その……」
歯切れの悪い返答をするが、間違いなく盗み聞きしていたと思われる。しかし、今はそのことに議論している場合ではなかった。
ノイズが現れたと二課から連絡が来たのである。
いかがでしたか?
今回は少し日常的な話にさせていただきました。
次回、カミナが大暴れ……出来るのか?
それでは今回はこれにて。