戦姫絶唱シンフォギア -俺を誰だと思っていやがる!!!-   作:GanJin

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どうもです。

いやー、XVの三話、良かったですねー(特に何がとは言いませんが、考えてることは皆同じと信じています)。

話を分けるのが難しかったので、今回は少々長くなっています。


絶対の絶対です!!

 奏とカミナが揃って廊下で騒いで少し経った後、ノイズの出現を伝えるアラームが鳴り響いた。

 カミナ達は弦十郎達と合流してすぐさま司令室へと向かう。

扉を開けると二課の職員が既に対処に入っていた。

 

「おいおい、これで三日連続だぞ。ノイズのバーゲンセールなんざお断りだぜ」

 

「嫌な表現するな、バカミナ」

 

「確かに不謹慎……と言いたいけど、確かにここまで連続で出てくると……」

 

 カミナの不適切発言に溜息をつきたくなるが、翼の言う通りここまで連続で出てくるのは珍しい事であるのも事実である。

 そんな彼等の反応を横目に、弦十郎が今回の件を二課で預かることを通達するよう指示を飛ばす。

 

「出現地特定、座標出……えっ、そんなっ!?」

 

 先に戻っていた友里がノイズの出現地を特定し、モニターに出そうとしたが、その結果に思わず目を丸くした。しかし、すぐさま平静を保ち、座標をモニターに表示する。

 

「リディアンより距離二百、そして距離千です!」

 

「二か所同時だとっ!」

 

 弦十郎も驚く一方で、カミナ達は即座に行動を開始する。

 

「奏、免許は取れてる?」

 

「あるが、そもそも運転出来る車がねぇな」

 

 翼は奏がバイクに乗らず、自動車免許を取ろうとしているのを知っていたが、あいにくと奏はまだ自身の車を持っていない。

 

「司令、私とカミナさんで遠方に向かいます。奏は近場をお願い」

 

 一方、カミナはバイトの都合上バイクの免許を取得している為、移動するのにバイクを使うことが多い為、二課には専用のバイクを置いていた。

 状況確認を行ったことで複数個所への対策方針が決まった。機動力のあるカミナと翼が遠方に向かい、奏が近場のノイズを対処する。これが最も適切な判断だろう。

 

「了解だ」

 

「おう! じゃあ行くぞ!」

 

「三人共、頼んだぞ!」

 

 翼の提案を呑んだ弦十郎は三人の出撃を許可する。

 三人が指令室を出た直後、残された響はあることを決意して、彼等の後を追いかけようとする。それはほぼ衝動的と言っても過言ではないものだった。

 

「待つんだ! 君はまだ……」

 

 弦十郎が制止しようとする。

 しかしこの時、その場に留まるという選択は彼女には無かった。誰かを助けることが出来るのなら動くべきだという気持ちが心の底から湧き続けていた。

 

「私の力が誰かの助けになるんですよね! シンフォギアの力でないとノイズと戦うことが出来ないんですよね! だから行きます!」

 

 響はそう言って、カミナ達の後を追った。

 響の言葉に圧倒され、弦十郎は彼女を見送ることしか出来なかった。

 

「危険を承知で誰かの為になんて、あの子、良い子ですね」

 

「果たしてそうなのだろうか?」

 

 それを見ていた藤尭が彼女の在り方を称賛するが、一方で弦十郎の考えは違った。

 

「翼のように幼い頃から戦士としての鍛錬を積んできたわけではない。奏のようにノイズに家族を奪われ、その復讐心によって一心不乱に研鑽を重ねたわけではない。そしてカミナのように友の為に立ち上がり、仲間の為に努力を続けてきたわけではない」

 

 彼は戦場を駆ける三人の少年少女をその目で見てきたからこそ、響と彼等の違いをはっきりと認識できていた。

 

「ついこの間まで日常の中に身を置いていた少女が『誰かの助けになる』と言うだけで命を懸けた戦いに赴けるというのは、それは……歪なことではないだろうか」

 

 いつも人助けをするカミナでさえ、戦いに身を置こうとした切欠は友、すなわち奏を助けたいという思いからだった。技術も知識もないのは承知の上であっても、目の前で大切な仲間が傷を負い、戦っているのをただ黙って見ていることは彼には出来なかった。それ故に彼は二課へと入ったのだ。

 そして彼が努力を続けたことで仲間だけでなく後々多くの人々を救うことになった。

 他の二人もそうだ。

 チームグレンの三人は始めから見ず知らずの者を含めた誰かを助けるためにその力を振るおうとしたわけではない。翼も風鳴の家に生まれ、シンフォギア装者としての資質があるから鍛錬してきた。奏も己の復讐を果たすために血を吐く思いをしてきた。

 彼等は得た力を振るってから紆余曲折を経て『誰かを助けたい』と思うようになっただけなのだ。

 

「つまり……あの子もまた私達と同じ『こっち側』ということね」

 

 弦十郎と了子の会話から彼女のあり方を素直に褒めることは出来る者はいなかった。

 

「藤尭、カミナに連絡を入れてくれ」

 

 弦十郎はカミナに無線を繋ぐよう藤尭に指示した。

 

「どうした、おっさん。帰りにDVDでも借りて来いってか? 最近、アクション映画がいくつか入ったって聞いたぜ」

 

 すぐにカミナが出ると、何時もの軽口を叩いた。それには思わず弦十郎も口元を緩ませかけたが、平静を保って要件を伝えることにした。

 

「それは魅力的な提案なんだが、また今度にしてくれ。……実は先程響君が君達の後を追っていってな」

 

「おいおい、何やってんだよ」

 

 カミナは、弦十郎らしくないと言いたげな声で口にする。

 

「彼女は誰かの助けになるならと言って飛び出してしまってな」

 

「いや止めろよ」

 

「分かっている。だが、彼女の決意を無理に止める気にはなれなくてな」

 

 弦十郎が彼女を止めきれなかった理由をカミナは何となく理解てきた。

 実際、ノイズに立ち向かおうと考える一般人はほぼいない。触れば死ぬし、真っ当な対処法は逃げるだけならば、立ち向かうことなど出来るはずがない。

 長年積み重ねてきた恐怖を知っている人々が勝てもしない存在に立ち向かうことなど出来るはずがないのだ。

 たとえそれが、ノイズを倒しうる手段を手に入れたばかりだとしてもだ。

 

「すまんが彼女のことを……」

 

 弦十郎が止めきれなかったことにカミナは呆れて溜息を吐いた。

 しかし、カミナは彼が何年もの間、少年少女にノイズと戦わせてきて何も感じない冷血漢ではないのを知っている。それほどまでに響と言う少女の決意が固かったというだけなのだ。

 

「了解了解、俺らでどうにかしとくよ」

 

「……頼む」

 

 弦十郎がそう言っうと、カミナは通信を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 現場に向けてカミナは廊下を走りながら、先程の弦十郎からの連絡内容を二人に伝えた

 

「緊急連絡だ。あの嬢ちゃんが俺達の後を追ってるんだと。丁度良いから奏、お前が一緒につれて行ってやれや」

 

「は……、いやいやいや待て待て待てっ!! お前何言ってやがんだ!? あの子は昨日今日ギアを纏った素人だろうが!」

 

「私も反対です! いくら何でも彼女には荷が重すぎます!」

 

 カミナの提案に翼と奏は当然ながら反対した。

 

「そんなこと言ったって、俺だって最初は素人だったじゃねぇか」

 

「あの時とは状況が違いすぎるだろうが! お前、あの子を殺す気か!」

 

 奏の言う通り確かに二年前と状況が違いすぎる。響は命を懸ける場所にいたわけでもないし、カミナの様に少しばかり喧嘩慣れしているわけでもない。

 

「どの道、あの子も俺らに協力するんだろ? ギアを纏っていればノイズに向き合っても死ぬこたぁねぇんだ。後にやるはずの実践訓練が早くなっただけであんまし変わんねぇよ」

 

「そう言う問題ではありません。彼女は本当にただの一般人なんですよ!」

 

 あまりにも軽く言うカミナに流石の翼も怒りを露わにした。しかし、それぐらいカミナも理解していた。

 

「嬢ちゃんが無理矢理行かされたってなら話は俺だって止めるさ。だがな、覚悟を決めた奴の意志を俺達が勝手に圧し折って良い訳じゃねぇだろ?」

 

「なっ……」

 

「それは……そうですが」

 

 その言葉に反論しようとした奏と翼が口をつぐんだ。

 カミナの言葉に一理あると思ってしまったからだ。

 響が自分の意志で戦場に立とうとしているとすれば、その思いを自分達が勝手に捻じ曲げて良いはずがないのだ。

 

「ですが、私達が行こうとしている戦場は彼女の想像を絶するものです」

 

 カミナの言葉に奏は黙ったが、それでも翼は食い下がった。

 

「そん時はそん時で考えるさ。嬢ちゃんの覚悟を見てから決断しても遅くねぇよ。そんでやるっていうのなら俺等で導いてやればいい。無理なら何時ものように嬢ちゃんを俺等で守ってやればいい。ただそれだけの話だろ?」

 

 そうこう話している内に、それぞれのノイズの出現地に向かう為の分かれ道に差し掛かった。

 

「悪いが奏、あの嬢ちゃんのことよろしく頼むわ。俺と翼でさっさと終わらせて、後で援護に行ってやるからよ」

 

 遠回しにもう考えを変える気はないとカミナは主張していた。最早何を言っても曲げる気はないのだと理解した奏は諦めることにした。

 

「はぁー……はいはい分かったよ。仕方ないから今回はカミナの提案に乗ってやる。ま、二人が来る前にあたしが全部殲滅しておいてやるからゆっくり来な」

 

 笑みを浮かべて言うとカミナはニヤリと笑い返した。

 

「じゃ、頼んだぜ。行くぞ、翼!」

 

 そう言ってカミナは現場に向けて走り出す。

 

「奏、あまり無理はしないでね」

 

「心配すんな、翼。あたしを誰だと思ってやがる?」

 

 カミナの真似をする奏に翼は思わず笑ってしまう。

 彼がそう言うと決まって色々と無茶をやり遂げるのだ。恐らくそれにあやかったものだろう。

 

「うん、でも気を付けてね」

 

「はいはい、分かってる分かってるって」

 

 心配した顔を浮かべる翼だったが、早く現場に向かわなければならない為、カミナの後を追った。

 一人残った奏は後ろから駆け足でこちらに向かってくる人物がいることに気付く。

 

(本当に来たんだな)

 

「か、奏さん……」

 

 後ろを振り向くと少し息の上がった響がそこにいた。

 

(さて、どうしたもんかねぇ?)

 

 つれて行くと決めてしまった以上、それに従う気でいたが、彼女にどう言えば良いのか悩んでいた。正直、時間も惜しいので手早く済ませたいのだが、さてどうしたものか。

 

「奏さん、私も行きます!」

 

「お、おう?」

 

 しかし奏の悩みは響の所為で完全に無駄となった。

 

(まぁ、良いか)

 

 本来なら自分から言うべきだったのだが、手間が省けたので良しとすることにした。

 

「時間がねぇ。ついてこい!」

 

「は、はい!」

 

 もっとかける言葉があるのだが、それだけ言って奏は現場へと向かい、響はその後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 バイクで移動したカミナと翼は出現したノイズを目視で確認すると、バイクから降りてノイズと対峙する。

 カエル型、人型のノイズがうじゃうじゃとしていた。

 この地域の避難はほぼほぼ完了しており、後はノイズを倒すだけである。

 

「しつこいと思いますけど、本当に二人にして大丈夫だったんでしょうか?」

 

「問題ねぇだろ。ど素人の俺がいてもどうにかなってんだからな」

 

 カミナは例外だと言いたげに翼は溜息をついた。

 

「気合と根性でどうにかし続けるのはあなたくらいですよ」

 

「そんなもんか? ま、いいさ。さっさと片付けるか」

 

 そう言うとカミナは腰にあるホルダーからナックルダスターを取り出した。人差し指で引っかけて西部劇のガンマンのように何度か回転させ、親指以外のすべての指にはめ込んで構える。

 彼が手にしているのは通常のナックルダスターではなく、丁度中指と薬指の間に黄色いドリルが付随していた。それは紛れもなくコアドリルであり、カミナが二課の工房に頼んで勝手に改造したものであった。当初は首にかけていたのだが、ナックルダスターの方が漢心をくすぐるという理由で作ったのだ。

 カミナが戦闘準備に入ると同時に翼もシンフォギアのペンダントを取り出した。

 

「Imyuteus amenohabakiri tron」

 

起動聖詠を口ずさみ、翼は天羽々斬をその身に纏ってノイズに刀の切先を向ける。

 そして、カミナもコアドリルを光らせ、その身に螺旋力を纏う。余談だが、いつかカッコいい変身ポーズを決めたいと思っているのだが、今回は省略することにした。

 

「さぁさぁ! 今宵見せるは戦姫と漢の刀拳乱舞!! 死にてぇヤツから掛かってきやがれ!!」

 

 カミナが啖呵を切ると、ノイズは一斉にカミナと翼に襲い掛かる。

 しかし、この程度の敵にカミナと翼には全く脅威にはならなかった。

 いくつもの刀が舞い、螺旋を纏った拳が旋風を巻き起こす。二人の攻撃はまさしく一騎当千の武将の如くノイズを次々と殲滅していく。

 共に戦い、共に成長してきたカミナと奏、翼の三人にはもはやノイズに遅れることはなかった。

 

「こいつでぇぇ、ラストっ!!」

 

 最後のノイズを殴り倒し、カミナは辺りを見渡した。

 

「これで終わりですね」

 

 翼も辺りを見渡し、二課と連絡を取って周囲にノイズの反応がないか確認を取っていた。

 

「奏の方もほぼ終わりかかっているそうです」

 

「な、言っただろ。あいつなら大丈夫だって」

 

 確かにどうにかなったのは良いが、その根拠のない自信は何処から出てくるのだろうかと翼は常々疑問に感じる。常に気合でどうにかなるわけではない。彼にはもう少し考えて欲しいものだと何度も思っていた。

 

「カミナさんはもう少し先を見据えて慎重に動くことを覚えるべきだと思います」

 

「おい、そいつは俺が考えなしの無鉄砲だって言いてぇのか?」

 

「はい」

 

「即答かよ!」

 

「日頃の行いを顧みれば当然ですから」

 

「これでも俺なりに考えてるんだがなー」

 

 不貞腐れるカミナの顔が少し面白くて、クスリと笑みを浮かべた。

 

「まぁ、その件は後日話すとして、まずは奏達と合流しましょう」

 

「了解了か……ん?」

 

 バイクの方へと向かう翼の後を追いかけようとした直後、カミナは視界の端に何かが映り、直ぐにそちらに目を向けた。

 

「どうかしましたか?」

 

 カミナが来ないことを気付いた翼が呼びかける。

 

「いや、さっき人影が見えた気がしてな」

 

 そう答えるカミナに翼は怪訝な顔を浮かべる。

 

「すでに避難は完了しています。人がいるとは思えませんが?」

 

 翼も念のために辺りを見渡し、二課に連絡を入れるが、それらしい反応はないようだ。

 カミナも先程と同じ場所を凝視するが、そこには何の変哲もない風景だけが映っていた。

 

「だよなー」

 

「ここは街灯も少ないので辺りも暗いですから、何かが人の形に見えたのかもしれません」

 

「そうだな。悪いな、足止めしちまって」

 

「気にしてませんよ、カミナさんの勘が役立つ所は稀にありますから」

 

「そうかいそうかい。じゃ、行くか」

 

 それから二人は奏と響の元へとバイクを走らせ、ここを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 二人がノイズを倒して離れた後の事だ。すでにカミナ達は遠く離れ、そこに誰かがいても気付くことは出来ない距離にいた。

 

「それなりに存在を希釈していたのだが、まさか見つかるとは思わなかった。成程、僅か二年でそこまで進化していたか、螺旋の男よ」

 

 二人が去った後、現場に人影が現れていた。いや、正確には人の形をした影そのものと呼べた。人の形をしているが性別を判断することは出来ず、声だけが男のモノだと言える。

 人の影とも言える存在、アンチ=スパイラルは先程の戦闘を最初から見ていたのだ。

 カミナが二年でどれだけ変化していたのか、それを観察し、優先度を決めていたのである。

 

「準備に時間が掛かってしまったが、やはりあの男から処理した方が効率は良さそうだ。残りの二人は後から処理しても問題はないだろう」

 

 二課の職員を乗せた車両が此方に来るのに気付き、アンチ=スパイラルはここから立ち去ろうとする。

 

「さて、螺旋の男よ。君にはその力に絶望しながら消えてもらおうか」

 

 アンチ=スパイラルはニヤリと笑みを浮かべ、その場から消え去るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 翼とカミナがバイクで移動中の頃、ノイズを倒し切った奏は響の様子を見ていた。

 少々息が上がっており、額に汗も浮かべていた。

 

(まぁ、最初は大体あんなもんか。良く出来た方……なのか?)

 

 奏はノイズとの戦いの中、響の動きを見てそんな感想を抱いた。

 はっきり言えば、素人丸出しの動きだった。やはり何か格闘技をやっていた訳でもなく、覚束ない足取りでノイズの攻撃を躱したり、アームドギアを出せなかったりと内心ハラハラしていた。

 正直に言えば、戦うことに向いているようには見えなかった。

 

(まぁ、今はあいつらはいないし聞いてみるか)

 

 意を決して奏は響の方へと足を運んだ。彼女に『あのこと』を聞くために。

 

「か、奏さん……」

 

「えーっと、立花響で良いんだよな?」

 

「は、はいっ! 立花響、好きなものはごはん&ごはんです!」

 

 炭水化物オンリーなのか?と奏は思わず笑みをこぼした。

 

「で、初めてそいつで戦ってみてどうだった? ノイズと戦うのは怖くなかったか?」

 

「……ノイズと戦うのはやっぱり怖いです。それに昨日も必死にノイズから逃げ続けてましたし、二年前のあの時も死ぬんじゃないかって凄く怖い思いをしました」

 

 先程まで明るい顔をしていたのが一変して、彼女は神妙な顔で当時の出来事を口にした。

 

「でも、そんな時に奏さん達が私を助けてくれたんです。怪我をして意識を失いかけてる間も、奏さん達が私を助けようとしてくれました。そんな皆さんの姿を見たのが切欠で、私も人助けをしようって思ったんです。だから、この力で誰かを助けることが出来るなら、私はこの力を誰かの為に使ってあげたいんです」

 

「……それがお前の戦う理由なのか?」

 

 奏が響に対して抱いた印象はその歪さだった。ノイズが怖くとも誰かの為に戦おうとする。それは自身の危険を顧みず、誰かの為に命を懸ける歪んだ自己犠牲精神ではないか。

 あの時助けた少女がこんなことになっているなんて思ってもみなかった。

 止めるべきだと思った。このままでは彼女が死ぬことさえも恐れずにノイズと戦おうとする。

 

(いや、そう言ったらあたしも似たようなもんだったな……)

 

 しかし、ふと嘗ての自分を思い出せば、経緯は異なれど自身を顧みずに行動していたことを思い出す。

家族を失い、全てを捨てたあの頃はノイズを倒す為なら命なんて惜しくなかった。ノイズを全滅させる為なら痛みにいくらでも耐えてきた。だが、それでどれだけ周りに迷惑をかけたのかを知り、自分が愚かだったことに気付かされた。それからは自身を無碍に扱うことはしなくなった。

 

「戦う理由って程でもないですけど、もともと人助けが趣味なものですから」

 

「……そうか」

 

 しかし、そんな奏から見てもやはり彼女はかなり歪だ。

 戦うなと言ってもすでにその力を持っており、自分や翼のようにペンダントを所持しているわけではない為に力を取り上げることも出来ない。別のことで人助けをすればいいだろうが、間違いなく現代において人々の最大の脅威はノイズだ。故に彼女はノイズと戦おうとするだろう。

 だから、奏に出来ることは一つだった。

 この子が道を踏み外さないように、戦う者として導くことが奏にとって唯一出来ることなのだと。

 

(ま、やってみるか)

 

 彼女を育てることを決めた奏は、最後に一番聞きたかったことを口にした。

 

「なぁ、私のことを恨んでないのか?」

 

「えっ……?」

 

 その問い掛けに響は目を丸くする。

 

「二年前、あたしが不甲斐なかったから怪我を追っちまった。その所為でシンフォギアなんて物騒な力を手に入れて、ノイズと戦うことになっちまったのに恨んでねぇのかなってさ」

 

「そんな! 私が奏さんを恨むなんてありえませんよ! 感謝こそすれど恨むなんて絶対にありえません!! 絶対にです!!」

 

「そ、そうなのか?」

 

「はい! 絶対の絶対です!!!」

 

「お、おう?」

 

 先程の神妙な雰囲気とは打って変わって、いつもの明るい性格に戻りぐいぐいと顔を近づけて迫る響に奏は思わず素っ頓狂な声を上げる。

 

「それに奏さんがあの時私に言ってくれたんです。『生きるのを諦めるな』って。その言葉に私は何度も救われたんです。リハビリで苦しくなった時も、奏さんの言葉のお陰で頑張って日常に戻ることが出来たんです。奏さんは覚えてないかもしれませんけど」

 

「いや、あたしもあの時のことは覚えてるよ。忘れてるのはカミナのバカだけだ。あいつ、トリ頭だから」

 

 かなり酷く言われていることに響は苦笑を浮かべた。

 

「でもカミナさんにも助けられたんですよ。ノイズに襲われる前にカミナさんに偶々会って言われたんです。『自分が正しいって思ったら最後までその思いを貫き続けろ』って。あの言葉があったから、自分に少しだけ自信を持てるようになれたんです」

 

 それを聞いて奏は少し頭が痛くなった。彼女の歪な自己犠牲精神の原因に遠からずカミナが関わっているのではないかと思ったからだ。

 しかし、過ぎたことを悩んでも仕方ないので、そのことは一旦横に置いておくことにした。

 

「あー、あいつの言葉って滅茶苦茶なんだけど、何でか核心を突くんだよなぁ」

 

「はい! 私も会った時はそれ以外のことは殆ど何を言ってるのか全然わかりませんでした!」

 

 やっぱそうだよなと奏もうんうんと頷くと、聞き覚えのあるバイクのエンジン音が聞こえてきた。

 

「お、翼達が来たよう……」

 

「誰がトリ頭だ、奏テメェェェェェェっ!!!」

 

 奏の言葉は、バイクの爆音とカミナの怒号で掻き消された。バイクのエンジンに負けず劣らずバカでかい声である。

 カミナが怒号を発した経緯を奏は直ぐに理解した。

 

「げ、もしかしてさっきの話聞かれてたのかっ!?」

 

「ええっ! ここから結構離れてますよ!?」

 

 ここからバイクは見えるが、カミナの顔までは見えない距離であるにも拘わらず、先程の会話が聞かれていたようである。

 

「あいつにそんな常識が通じる訳ねぇだろ! このまま逃げるぞ!」

 

「えっ!?」

 

 まだギアを纏っている為、身体能力的にバイクに遅れは取らない。

 

「とにかくそいつの使い方に慣れとけ! まずは二課までカミナから逃げきる訓練だ!」

 

「えっ? ええっ!?」

 

 いきなりのことに響はよく分からず、流されるように奏の後を追う。

 

「待ちやがれっ! バカと言われ慣れてはいるが、トリ頭は流石に我慢ならねぇっ!! 今日と言う今日は許さねぇからなぁぁぁっ!!」

 

「奏さん、カミナさんを何とかしてください! アレ、本気で怒ってますよ!!」

 

「はははっ!! 気にすんな気にすんな。二課じゃあ、こういうのは日常茶飯事だ! 今のうちに慣れとけ!」

 

「そんなぁーっ!」

 

「待てやゴラァァァァっ!!」

 

 このまま行くとカミナのバイクが追い付いてきそうなので、とにかく響は急いで奏の後を追い続けた。

 だが、よくよく考えてみれば、追いかけられているのは奏だけなので、自分はその場に残っても良かったのではないかと、後で気付くことになる。

 これからの響の高校生活は色々な面で前途多難なようである。

 

 

 

 

 

 

 

 カミナのバイクから全速力で逃げている奏と響を翼は少し離れたところで眺めていた。

 

「何をやってるんだ、あいつら」

 

 防犯カメラからその様子を眺めていた弦十郎の呆れた声に翼は少々同情した。

 

「カミナさんと奏ですから仕方ありませんよ」

 

「いや、それを言えばすべてが解決するわけでもないんだがな」

 

 確かにその通りだと翼は笑みを浮かべた。

 

「それで、翼は大丈夫なのか?」

 

「大丈夫とは何がですか?」

 

 弦十郎の問いかけに、何のことだろうかと首を傾げるが、思い当たることは無かった。

 

「いや、問題ないなら別に良いが……」

 

「はぁ……」

 

 そんな会話をしていると、カミナ達が二課へと戻るルートに入った。カミナの怒号に対して、奏の笑い声と響の悲痛な叫びがここからでも聞こえてくる。

 

「では私も戻ります」

 

「ああ、後はこっちに任せてゆっくり休むと良い」

 

「はい。では後程」

 

 通信を切り、翼もカミナ達の後を追おうとする。

 

「イタっ」

 

 その直前、首筋にチクリと何かが刺さるような痛みを感じた。

 痛みを感じた場所を触るが、特に血が出ているわけでもなければ、虫に噛まれたわけでもなさそうだ。

 ただの錯覚だろうと翼は思い、バイクを走らせてカミナ達の後を追いかけるのであった。




如何でしたか?

今回の奏と響のくだりは前々から考えていました。

自分の所為で怪我を負わせた上に、事故とはいえシンフォギア装者にしてしまった響を目にした奏がどう思うのか、すごく悩みました。

XDで奏が弱音を吐くシーンがあったので、これをもとに私なりに考えてみました。

と言うわけで、これで原作だと三話の頭までの話が終了となりました。

あと少しで、『彼女』が出てくることになります。

そして……ついに『ヤツ』も動き出します。

では、今回はこれにて!
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