戦姫絶唱シンフォギア -俺を誰だと思っていやがる!!!-   作:GanJin

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はいどうもです。
色々と初めての試みが多いので、失敗することも多いと思いますが、楽しんでいただけたら幸いです。


そして時は流れ

 とある日の早朝、ある一人の少年が走っていた。改造した長ランを肩に羽織る姿は様になっており、長ランにはサングラスを掛けた髑髏を象る炎が描かれている。

 

「やっべー、遅刻だ! 遅刻だ!」

 

 その少年、カミナは全速力で学校に向かって走っていた。 

 

「あらカミナ君、おはよう。いつも元気ね」

 

「おう、おばちゃん、おはようさん」

 

「カミナ、おめぇまた遅刻すんじゃねぇか。送ってこうか?」

 

「大丈夫だって、おっちゃん。今からダッシュすれば間に合うって」

 

「そうかい、頑張れよー」

 

「おうっ!」

 

 いつも通る商店街で営んでいるおばさんやおじさんとはすっかり顔見知りだ。もうこの街にカミナを知らない人はいないほど、彼は有名となっていた。

 全速力で走っていると校門が見えてきた。

 

「よし、今日も間に合ったぜ」

 

「また貴様か、カミナ!!」

 

 遅刻せずに済んだと安堵していると、校門の前で竹刀をもって仁王立ちしている筋骨隆々の男がカミナを待ち構えていた。

 

「げっ、体育教師のハゲじゃねぇか」

 

「ハゲではない、スキンヘッドだ! 何度言ったら分かるんだ!」

 

「俺からすれば同じなんだよ! 良いからそこを退けーっ!」

 

 門が閉まるまであと十秒、なんとしても通り抜けなければならない。

 

「何度も校則違反を続ける貴様の行動は目に余る! そうやすやすとここを通すわけにはいかん!」

 

 傍から見れば、教師が生徒を遅刻させるというのは如何なものかと言いたい光景だが、ここではもう何度も起こっている出来事であり、生徒達は呆れていたり、面白がっていたりして教室から見ていた。

 

「そうそう捕まってたまるかよ!」

 

「その動きはとうに見きったわ!」

 

 カミナが自身の横を通り過ぎるのを予測した教師は即座に動く。

 

「悪いな、そう読んでくれると読んでたよ!」

 

「何っ!?」

 

 横を通り過ぎようとしたカミナが突然、空高く跳躍したのである。

 

「カミナ、貴様謀ったな!」

 

「ああ、はかったよ。俺の運と男の度胸をな!!」

 

 一気に跳躍したカミナは校門をやすやすと乗り越えて、下駄箱へと走っていく。

 

「じゃあな、ハゲ」

 

「カぁぁぁミぃぃぃナぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 一人残された教師は、悔しそうに彼の名前を叫ぶ。

 奏と出会って月日が経って、今のカミナは十六歳の高校一年生となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして奏が消息を絶ってから二年が経っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようカミナ、いつもバカやって懲りねぇな」

 

 カミナが教室に入るとジョーが可笑しそうに笑っている。グレン団のメンバーの殆どがカミナと同じ高校に通っており、ジョーとは同じクラスだ。他にはあっちゃんとのっぽがいる。テッドと鉄平、ファットは別のクラスだが、家が近いのもあり帰宅で一緒になることが多い。

 唯一違うメガネは都心の高校に進学している。向こうでも元気にやっているらしい。どうも何かがあったらしく、向こうに行ってからオタクになったと以前彼に会った鉄平が言っていた。

 

「うっせぇや。昨日もバイトだったんだよ」

 

「カミナ君はお母さんと二人で生活してるからね。本当に良く頑張るよ」

 

「おう、あっちゃん。おはようさん」

 

 あっちゃんは随分と明るくなった。自分に自信を持つようになってからやりたいことが見つかったらしく、今はその為に猛勉強中らしい。

 

「うん、おはよう。でも遅刻はしちゃダメだよ」

 

「そんなにしてないだろ?」 

 

「おいおい、遅刻常習犯が何言ってんだよ」

 

「そうだよ。カミナ君は今度のテストで赤点とったら留年しそうって噂が立ってるんだから、あんまり騒ぎを起こすと僕らが先輩になっちゃうよ」

 

 相変わらず背の高いのっぽは未だに成長期らしい。既に百八十センチを超えているのにまだ伸びるのかと誰もが驚愕していることだった。

 

「高校は卒業するって亡くなったお父さんと約束したんでしょ?」

 

 カミナの父親は去年他界している。今は母親と一緒に暮らしており、カミナも家計に負担を掛けないようにバイト三昧である。

 

「まぁな。そうでなきゃあ、今頃高校入ってねえで()()()探してるよ」

 

 あいつと言っただけで三人は直ぐに誰のことか理解出来た。

 のっぽとあっちゃんは気まずそうな顔をしている一方、ジョーは頬杖をついて溜息を吐いた。

 

「カミナ、春休みの殆どを使って日本全国廻っても見つからなかったんだろ。全国三周したんだからそろそろ諦めろって」

 

「ジョー君、そんな言い方はないよ」

 

「事実だ。昔何があったかは知らねぇが、もう過ぎた事だろ。お前もいい加減に大人になれよ。グレン団はもう終わったんだ。昔みたいにバカやれる年じゃ……」

 

「グレン団は終わってねぇ! 俺達の結束は未来永劫無くならねぇって約束だろうが!」

 

 カミナが声を張り上げる。確かにグレン団として活動することは無くなってしまった。だが、だからと言ってその結束を蔑ろにする気はカミナには無かった。

 

「そいつには同意するさ。だがな、奏はグレン団を抜けるって書置きがあっただろうが! いい加減に下らねぇ拘りは捨てろって言ってんだよ!」

 

「ちょっと二人共」

 

「まずは落ち着こうよ、ね?」

 

 二人の言い合いが始まり、のっぽとあっちゃんは抑えようとする。しかし我の強い二人がぶつかると止めるにはこの二人では力不足であるのは否めなかった。いつもなら奏が二人を止めるのだ。その彼女がいない今、二人の喧嘩を止めるには最後まで見届けるしかなかった。

 

「団長の許可がない限り脱退は認めねぇんだよ!」

 

「昔のことだろうが!」

 

 ついには取っ組み合いが始まるのではないかと言う空気なりつつあり、二人はどうすれば良いのか分からなかった。

 

「そもそもあいつがいなくなったのは、お前がヒデェことでも言ったからじゃねぇのか?」

 

 その瞬間、パシンっとあっちゃんがジョーの頬を叩く音が鳴り響き、周りは一瞬だけ静寂に包まれた。

 

「テメェ……」

 

 ジョーがあっちゃんを睨み付けるが、彼女は怯むことなく彼の眼を真っ直ぐ見ている。

 

「ジョー、それは言い過ぎよ。あの時何も出来なかった私達だって悪いの。それを全部カミナ君の所為にしちゃダメだよ」

 

 彼女の言葉に返す言葉がなく、ジョーは悔しそうに舌打ちをする。

 

「ちょっとカミナ君、どこ行くの」

 

 カミナは教室を出ようとしているのをのっぽが引き留める。

 

「少し頭冷やしてくる。先生には腹壊したとでも言っといてくれ」

 

「ええっ、もうそんな手使えないよ」

 

「じゃあ、頭壊したで」

 

 そう言ってカミナは教室から去っていった。

 

「カミナ君、それは人として終わってるよ」

 

 さらっと酷いことを口にするのっぽのツッコミは虚しく空振りとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一人になったカミナは屋上で横になって空を眺めていた。こうやってボーっとしたい時は空を見上げて、一人で色々考えることがここ数年で多くなっている気がする。

 

「ジョー、お前の言う通りだな」

 

 今でも思い出す二年前のあの日。奏の家族がノイズに襲われ、唯一生き残った彼女が病院から退院した直後の出来事。

 

―――――カミナに、あたしの何が分かるって言うんだ!!

 

 いつもは過ぎた事を振り返らないカミナだが、今でもあの日の出来事だけは引きずっている。

 

―――――誰も彼もがお前みたいに前向きに生きられるわけじゃないんだよ

 

 アレから直ぐに消息を絶った奏を探すことにカミナは躍起になった。この二年間、長い休みをフルで使って日本全国を巡って奏を探し続けた。少しでも有力な情報がないか手当たり次第に走り回った。

 だが結果はすべて空振りに終わった。日本中探しまわっても碌な情報が出てこなかった。

 

「ここまで出てこねぇとすれば、後はあそこだけか……」

 

 ある地域だけを除いて、この二年間カミナは日本中を探していた。そこは東京にある日本で最もノイズが頻繁に出現する地域。そもそも日本全国を廻ることを父親から許可してもらったのは、あそこに行かない事を条件にしていたからだ。当初は自分の身を案じてくれたからかと思ったが、どちらかと言えば、あの念の押し方は自身をそこに近づけさせない為の理由だったのではないかと考えられる。

 

「そう言えば、奏の親父さんとオヤジが昔一緒の仕事してたっけか」

 

 昔は奏の家族と家族ぐるみで遊びに行くことも多かったが、それは単に奏と仲が良かっただけでなく、二人の父親が昔一緒の職場で働いており、仕事終わりに何度も飲みに行っていたほど仲が良かったからだと一度だけ聞いたことがあった。

 豪快な男であったくせに隠し事が多い彼ならもしかしたら奏の居場所を知っていたのかもしれない。そうすれば、あの念の押し方にもいくらか得心がいく。

 

「よし、今度の休みに行く場所はあそこに決まりだ!」

 

 もう少しで夏休みに入る。補習があるだろうが知ったこっちゃない。可能性があるなら砂漠で金の粒を探すことだってやってみせるカミナは決意する。

 

「待ってろよ、奏。ぜってー見つけ出してやるぜ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって、都心にあるとある学生寮にて。

 

「まったく三次元の何が良いんだか。やはり女の子は二次元に限ります」

 

 すっかりオタクと化したメガネは一枚のCDを眺める。

 

「アイドルオタクの彼が珍しくアーティストのCDを勧めてきましたが、生憎僕はこういうものに興味はないのです。やはりCDはキャラソンやシチュエーションCD、ドラマCDが一番ですね」

 

 昔の知的な少年は完全に残念なインテリオタクと成り果てていた。部屋を見渡せば、参考書以上にアニメのヒロインのフィギュアがずっしりと並べられており、昔の彼とはかなり掛け離れている。

 

「ですが、笑顔で勧めてきた友人に罪はありません。折角ですから聞いてみましょうか」

 

 グレン団と離れてから独り言が多くなったのに気付かないまま、彼は曲を流す。曲名は『逆光のフリューゲル』だ。

 流し始めて少しして素直に良い曲だと思った。曲が終わるともう一回聞こう、また終わるともう一度といつの間にか夢中になり、ふと時計を見てみると十回以上も聴いていることに気付いた。

 

「そう言えば夏にライブがあると言ってましたね。……可能であれば一緒にチケットをとってもらえないか聞いてみましょうか」

 

 間違えない為にもメガネはこのアーティストの名前を確認した。

 

「アーティスト名は『ツヴァイウィング』、風鳴翼と天羽奏……?」

 

 その名前を呟いた瞬間、彼はローラー付きの椅子を倒すほど勢いよく立ち上がる。

 

「そんな、まさか……」

 

 メガネはすぐさまパソコンを開いてツヴァイウィングについて調べる。ここ最近有名の十代のアーティストユニットである二人の顔は直ぐに出てきた。その顔を見た瞬間、彼はすぐに机にある写真立てに目を向けた。

 

「どうして、彼女が……」

 

 彼の目に映っているのは、見た目は少々変わってはいるものの、数年前に消息を絶ったかつての仲間だった。




如何でしたか?
いきなり時間が跳びました。
設定では戦姫絶唱シンフォギアの三年前に出来事になっています。
ぼちぼち進めるような形ですが、頑張っていきます。
それでは今回はこれにて。
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