戦姫絶唱シンフォギア -俺を誰だと思っていやがる!!!- 作:GanJin
四か月近くも放置していましたが、戻ってきました!
響のアームドギアの件から数日が経った日の夕方、カミナ達はミーティングをする為に集まっていた。
議題はここ最近のノイズの出現頻度の異常性についてだ。
モニターにはここ一か月のノイズの発生地点が表示され、響の為にノイズについて一旦復習してから本題に入った。
「それにしても増えたよなぁ。一年くらい前はここまで酷かなかったぞ」
カミナの感想に奏と翼は揃って頷き、響は首を傾げた。
「そうなんですか?」
「そうそう。響と会うまでは一か月に数回、無い月もあったしな」
奏の言う通り、ノイズがここまで高い頻度で出現したことはここ数年一度もない。まったく平穏である時は良くグレン団と集まれるくらいには余裕があったのだ。
「ええ。ノイズの発生率は決して高くないの。この発生率は誰の目から見ても明らかに異常事態。だとすると、そこに何らかの作為が働いていると考えるべきね」
「作為……ってことは誰かの手によるものだと言うんですか?」
「中心点はここ、私立リディアン音楽院高等科、我々の真上です。『サクリストD』デュランダルを狙って何らかの意思がこの地に向けられている証左となります」
翼の説明を聞くと、カミナが右拳で左の掌を荒々しく殴った。
「一番怪しいのはアメリカだな。前々から色々といちゃもん言ってきやがるからよ。デュランダルは自分達の方が上手く使えるから寄越せってさ。ったく、どの面下げて言ってやがんだ。自分達の方が上だっていうあの態度が気に入らねぇ!」
物凄く不機嫌な顔でカミナは悪態をついた。
まだそれほど時間は経っていないものの彼がそんな態度を取ることに響は内心驚いていた。
目を白黒させていると響は側にいた奏に目が合った。
「あのー、奏さん、カミナさんはどうしてあんな態度なんですか?」
カミナに聞こえないようにひそひそ声で質問すると奏はバツが悪そうな顔を浮かべた。
「響が来る前に色々あったんだ。十中八九米国政府が絡んでるんだが、証拠不十分で有耶無耶にされちまってからカミナの奴ずっと根に持ってるんだ。それにあいつ昔から相手に舐められっぱなしでいられるのが嫌いでさ、いつかぜってぇブッ飛ばすって聞かねぇんだ」
「な、成程」
最後の方は明らかに子供っぽい理由である為に、苦笑を浮かべる響だったが、カミナらしいと思った。響もそこそこにカミナの色に染まってきたようである。
「あの……それでデュランダルって何ですか?」
先程の会話にあったワードで知らない単語が出たので、今度は全員に質問した。
「デュランダルってのはこの下にあるほぼ完全状態の聖遺物のことだ。聖剣エクスカリバーとか魔剣グラムみたいな神話とか御伽噺に出てくる伝説の剣さ」
「フランスの叙事詩ローランの歌に登場する英雄ローランが持つ聖剣です。岩に叩きつけても折れずにそのまま斬ってしまうほど強固な剣と言われています」
「伝説の剣っつうと翼の天羽々斬も八岐大蛇を斬ったことで有名だよな」
「へー、皆さん、物知りなんですね」
因みに奏のその知識はメガネによるものだ。神話や伝説に出てくる武器はサブカルチャーではお馴染みであり、彼のお陰と言うべきか彼の所為と言うべきか少々神話について詳しくなっていた。
「後は天叢雲剣、カラドボルグ、アスカロン……ゼッ〇ソード?」
「いや、そいつは違うから。老人封印してるヤツ。しかも大した力はないし」
だが、残念なことにその中には当然余計な知識も入っていた。
カミナがいくつか神話の剣を挙げるがその中には明らかに関係ないものまで入っており、奏がツッコんだ。
「斬〇剣は?」
「薄い鉄板であればギアを纏わずとも出来なくもないですが……」
「「マジかっ!?」」
翼の才覚にカミナと奏は揃って目を丸くする。
「こらこら三人共話が脱線しちゃってるわよー。斬〇剣は個人的に見てみたいけど」
完全聖遺物の剣から空想の剣に話題がシフトしているので、この先のコントも見てみたかったが了子は話を元に戻すことにした。
デュランダルもとい完全聖遺物と響達のシンフォギアに使用されている聖遺物との違いを友里と藤尭がざっくりと説明する。
シンフォギアは装者が歌うことでその力を発揮し、完全聖遺物は一度起動すれば、装者以外でも使用できるということなのだが、残念ながら響には難しすぎて完全に理解することは出来なかった。
「今の二人の歌であれば、起動できるかもしれんが……」
「でも政府から起動実験の許可が下りねぇんじゃねぇか?」
カミナの言う通りだと友里と藤尭が頷く。
「カミナ君の言う通りね」
「それ以前に、安保を楯に米国がデュランダル引き渡しを要求しているんだ。扱いは慎重にならざるを得ないだろうね」
今回の件を含め、様々な出来事が一度に起こっていることから、全てが米国が関わっているのではないかと大人達は憶測を立てるが、残念ながら確固たる証拠が無い以上、断定することは出来なかった。
その後、奏と翼はアーティストとしての仕事が入っている為、今回のミーティングはこれで終了となった。
「私達を取り囲む脅威はノイズばかりではないんですね」
二人と緒川を見送り、響がこのミーティングを聞いて思ったことを口にすると、弦十郎達は揃って曇った顔を見せた。
「何処かの誰かがここを狙ってるなんて、あまり考えたくありません」
「そればっかりは仕方ねぇさ。世界にはいろんな奴らがいるんだ。その中には自分の欲望の為にどんな手を使ってでも叶えようとする奴だっている。皆が同じじゃないから争ったり、互いの主張をぶつけたりするんだ。それが今回は悪い方向にいっただけだ」
「カミナさん……」
「ま、心配すんな。天才考古学者様が設計したここがそう簡単に落とされる訳がないからな! 期待してるぜ、姐さん!」
カミナが了子にサムズアップすると、彼女もサムズアップで返した。
「もちのろーん! この櫻井了子に任せなさい!」
あの会議からしばらくしてカミナは今日の二課の仕事を終わらせて二課に配備されているジムでトレーニングに入っていた。
比較的仕事が早く終わった弦十郎も一緒である。
「それにしても大丈夫かねぇ、あの嬢ちゃん」
「響君がどうかしたのか?」
ランニングマシーンで走りながら、ぽつりと呟くカミナに弦十郎は問いかけた。
「いやさ、アレから一か月以上たったのに未だにアームドギアは展開できないこととか、妙に翼と関係が上手くいってないこととか、いろんなことに悩んでる所為で普段の生活に支障が出てきてるんじゃねぇかなーって」
「彼女から聞いたのか?」
「いや、何となくそんな気がしただけだ。翼に関しては表面上は上手くやってるんだが、何か思う所があるんだろうな。時々、あいつの目が嬢ちゃんを睨んでるように見えんだ。何度か聞いても大丈夫ってしか言わねぇし」
「まさか、そんなことがあったとは……」
この一か月の間、そんな素振りがあったことに弦十郎は気付かなかった。
彼女達の身を案じることが出来ない自分を弦十郎は恥じ、眉間に皺を寄せる。
「気にすんなよ。おっさんはおっさんにしか出来ないことをやってんだ。それにこういうのは、先輩でありチームグレンのリーダーである俺の役目だ。おっさん一人で全部背負わねぇで、信頼出来る奴に仕事を任せてドーンと構えてりゃいいんだよ。俺等で無理なら、力を貸してもらうからよ」
そんなことを言うカミナを見て、弦十郎は笑みを浮かべた。
「君のそう言う所は、親父さんに似ているな」
「親父?」
カミナの父、
弦十郎と丈の付き合いは長く、学生時代からの友人だった。そんな彼は弦十郎の推薦で二課の技術部門として働いており、二課の施設の製造に殆ど関わっていた。了子の無茶な要求をクリアしてきたのも彼の実力あってのモノであり、カミナとは似ても似つかぬほどの天才であった。
「猪突猛進な所と、一度決めたことは絶対に曲げないその強い意志。君と出会うまであいつ以上の不屈の魂を持った男を俺は会ったことが無かった」
弦十郎にそこまで高く評価されていることにカミナは内心驚いた。カミナ自身も父親のことは尊敬しているし、今でも目標としているが、弦十郎ほどの男に認められているとは思いもしなかったからだ。
「司令に就任すると決まった後、あいつは言っていた。『組織の長ってのは相手になめられないようにドーンと構えてなきゃいけねぇ。お前はお前の仲間を信じて、大局を見据えろ。細かいことは俺達、下に就いている奴等がカバーしてやる』とな」
「へぇ、あの親父がねぇ」
「正直、最初の頃は俺よりもあいつが二課の司令になるべきだと思っていた。誰よりも仲間を信頼し、二課の中心となっていた彼をな」
「そうか? 親父なら、『そんな面倒なことやりたくねぇ! お前がやれっ!!』とか言いそうだぜ」
カミナが首を傾げると、弦十郎は軽快に笑った。
「ハハハっ! あいつもまったく同じことを言って断っていたよ。それでも俺が司令に就任してからも、あいつは俺を陰ながら支えてくれた。奏の件もあいつがいてくれたから、上手くいったところが多いからな」
奏が二課に入った時には彼女とカミナを会わせないように裏で色々と動いていたが、いつか二人が向き合って話せるようにしようと画策しており、その役目を弦十郎が引き継いでいた。
二人は絶対に仲直りするから、絶対に何時か会わせてやってくれというのが丈の弦十郎への最後の頼みだった。だからこそ、彼はカミナがここに現れた時、必ず成し遂げようと本来の仕事を疎かにしてまで、二人を引き合わせたのである。
「知ってるか、昔、翼と奏は良く喧嘩していたんだぞ」
「マジでか?」
初めて翼に会った時には、奏にかなり懐いており、とても昔は仲が悪かったとは思えなかった。
「翼は今よりも内気でな。当時の奏と全く噛み合わなかったんだ。それが、奏の気に触れてな。何度もギアを纏ったまま喧嘩しては止めていたよ。丈の機転で今では二人でアーティスト活動をする仲にまでなったのさ」
「へぇ、そんなことがあったのか」
昔からシンフォギア装者と正面から戦えたのかと、カミナは弦十郎の実力に心底驚かされた。
「俺も大人としてやれることをやろうと奮闘したが、本職の父親には勝てなかったわけだ」
「ふーん。なぁ、おっさんは結婚しないのかよ?」
弦十郎の話を聞いてカミナはふと思ったことを問いかけた。
すると弦十郎は神妙な顔を浮かべる。
「一人の男として家庭を持ちたいと思わないわけではないが、仕事上なかなか難しくてな……」
弦十郎の仕事は重要機密に関わる案件ばかりであり、事件に巻き込まれてしまう危険性を考えると、一般女性と付き合うことに躊躇いがあるのだ。
「姐さんとかはどうだよ? 割と長い付き合いだろ」
「了子君か……。確かに、十年近くも一緒に仕事をしてはいるが……」
苦笑を浮かべる弦十郎を見て、その笑みに僅かな陰りが見えたが、カミナはそれに気付くことはなかった。
それからトレーニングを一通り終えて休憩に入っていると、ノイズの出現を検知したアラームが鳴り響いた。
ノイズが出現したという連絡を受けた時、響は内心憂鬱だった。
未来との約束を破るように学校から現場に向かっている中、響の心は曇っていた。
(見たかったのに……)
こんなことが無ければ、大切な人との約束を破ることなんてなかったのに。
(楽しみにしてたのに……)
地下に出現したノイズを倒しながら、響は心の底から苛立ちが込み上げていた。
それは倒したノイズが増えていくたびに増していった。
(約束したのに……。未来と一緒に)
「見たかった……」
ぽつりと響は呟いた。
その直後、出現したノイズの中にいたブドウ型が球体を放り投げて爆発させ、建物の瓦礫で響を生き埋めにしようとする。
無数の瓦礫が響に襲い掛かるが、シンフォギアを纏った彼女には全くダメージが入らなかった。
だが、それでも彼女の心の中にあるタガを外すには十分だった。
「見たかった……」
瓦礫を押しのけて、響は目の前のノイズを睨みつける。
「未来と一緒に、流れ星、見たかったぁぁぁぁっ!!」
約束を破った自分への苛立ちとその切欠を作ったノイズへの怒りを込めた拳がノイズに襲い掛かる。
「あんた達が……誰かの約束を犯し、嘘のない言葉を、争いのない世界を、何でもない日常を剥奪するというのならっ!!」
次々と怒りを込めた猛攻を繰り広げる響は、普段の彼女とはかけ離れ、修羅の如くその拳を振り続けた。ノイズの体を抉るように殴り、乱暴につかんで真っ二つに引きちぎる。
しかし、それも長くは続かず、響から逃げていたブドウ型が爆弾再度爆弾をけしかけ、それを直に受けたことで響は我に返った。
加えて、更に距離を取ったブドウ型は地上へ抜けようと天井に向けて球体上の爆弾を投げつけ、地上への脱出口を作ると、猿も驚くほどに瓦礫を伝って地上へと逃げていった。
「まずい……」
今の響にあそこまで素早く上ることが出来ない為に、どうするべきか苦悶の顔を浮かべた。
「ところがどっこいっ!!」
しかし、こんな危機的状況を待っていたかの如く現れる頼れる漢がいた。
「おりゃぁぁぁっ!!」
螺旋力を纏ったカミナの蹴りがブドウ型ノイズに風穴を開け、逃げたノイズは塵へと帰った。
カミナがノイズを倒した後、響は足場を確認しながら地上へと上がっていった。
地下から地上に出るとそこは公園であり、カミナだけでなく後からやってきた奏と翼もその場にいた。
もうすっかり日が沈み、夜になっていた。どんなに頑張っても未来と流れ星は見れないのだと響は内心沈んでいた。
「よっ、お疲れさん」
しかし、そんなことをカミナに悟らせないように響は普段通りの顔になるように努めた。
「皆さん、お疲れ様です」
辺りにはノイズの反応がないと連絡を受け、四人はもうすぐやってくるであろう奏と翼、そして二課の職員を待つことになった。
「それにしてもすげぇじゃねぇか、一人でここまでやれるようになるなんてな」
一人でノイズを最後の一体まで倒せるようになったことに奏は手放しで称賛した。
「皆さんが色々教えてくれたお陰ですから」
「そうか? これまで戦い方を人に教えたことなんてないから、正直上手くやれてんのか不安だったんだが、そう言ってくれるならこっちも頑張った甲斐があるな。なぁ、翼」
「ええ。でもカミナさんは気合とは根性しか叫んでいませんでしたが……」
そんなことを言う翼にカミナは不満そうな顔を浮かべた。
「ああ? 何が悪いってんだ。体一つで戦うんだから、最終的には気合でやることになるだろうが」
「毎回背水の陣で上手くいくわけがないと言ってるんです。しっかりと土台を作ることも大切です」
根が真面目な翼と動物的直感で行動するカミナとではその方向性がかなり異なっており、戦いにおける心構えに対して衝突することは時折あるのだ。
(でもなぁ、翼ってここまでカミナに文句言ってたか?)
しかし、それはカミナが二課として活動し始めた頃であり、ここ最近は翼もカミナの良さを理解して上手くやっていたはずだった。だというのに、ここ最近、翼はカミナに対して強く当たるようになり、奏は時折違和感を感じていた。
一方、当の本人は妹分のような翼が年頃の少女の様に突っかかってくるだけだと思っているらしい。
「まぁまぁ二人共、お互い言ってることは間違っちゃいねぇんだからさ」
「でも……」
何処か不満げな顔を浮かべる翼に、響は苦笑を浮かべるしかなかった。
そんな会話をしていると……。
「戦った後だってのに随分とおチャラけてるじゃねぇか? とんだ甘ちゃん連中だぜ」
「「「っ!?」」」」
突如として第三者の声を耳にして、四人は驚いて声のする方へと目を向けた。
公園にある林の中からゆっくりとこちらに向かってくる人影があった。だが、月が雲に隠れてその姿をはっきりと捉えることは出来なかった。
しかしそれも束の間だった。雲に隠れた月が顔を出し、突如現れた人物はその姿を現した。
そこにいたのは白銀の鎧を纏った少女だった。
「そんなっ!」
「嘘だろっ!?」
その姿を目にして翼と奏が驚愕する。
「奏?」
「翼さん?」
二人とは相反してカミナと響は怪訝な顔を浮かべた。
彼等と異なり、二人が過剰に反応は至極当然とも言えるだろう。何故ならば、突如として現れた少女がその身に纏っているモノを二人は見たことがあるからだ。
「何でテメェが、そいつを……ネフシュタンの鎧を纏ってやがんだ!」
声を荒げる奏を見て、少女は不敵に笑う。
「へぇ。ってことは、あんたはこいつの出自を知ってんだ。まぁ、そんなことはどうでもいいんだ」
激昂する奏をよそに、少女は奏の隣に立つ男を睨みつける。
「ああ、間違いねぇ。忘れるもんかよ、テメェのその姿をよ」
ぽつりと少女は呟き、腕部にある蔦状に繋がれたピンクのクリスタルで指をさすようにカミナに向ける。
「ようやく見つけたぜ。ずっと探してたんだ。パパとママを殺したテメェをよ!!」
如何でしたか?
ついに『彼女』が登場です!
四か月も放置してすみませんでした。
XVを見て、少々話の展開を再構成していたのと、リアルが忙しくて更新が出来ませんでした。
亀更新ですが、少しずつ更新出来たらいいなと思っています。
それでは今回はこれにて。