戦姫絶唱シンフォギア -俺を誰だと思っていやがる!!!-   作:GanJin

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どうもです。
時間が出来て、サクサク書けたので投稿しました。
12月24日にも更新してますので、読んでない方はそちらからご覧ください。


一秒前の俺よりも強く

「……は?」

 

 突如現れたネフシュタンの鎧を纏った少女の言葉を聞いて、カミナは首を傾げた。

 

「いやいや待て待て、一体全体何のことだよ?」

 

 カミナには全く身に覚えのないことだった。

 

「とぼけんな! テメェ以外に螺旋力纏ってる野郎なんているわきゃねぇだろうがっ!!」

 

「バカ言ってんじゃねぇよ! カミナの野郎が人殺しなんてするはずがない!!」

 

 この時、少女がシンフォギアと同等の機密レベルである螺旋力を口にしたのであるが、奏は大切な人が人殺しの汚名を着せられたことに激昂してしまい気付けなかった。

 

「そうです! カミナさんがそんなことをするはずがありません!」

 

「ええ。普段は不真面目な態度であっても、彼が人類守護の役目を忘れたことはないのは私も知っている」

 

 響も翼もカミナが誰かを傷つけることを積極的にするような男ではないと確信しており、少女の言葉を信じなかった。

 カミナを擁護する三人を目の当たりにした少女は忌々しく舌打ちする。

 

「テメェら、そんな聖遺物でも何でもない出自不明の力を纏った奴を信じるってか? おめでたい頭してるじゃねぇかよっ!!」

 

 何の前ぶりも無しに少女は腕から延びる蔦状のクリスタルを展開して、鞭のように振るってカミナ達に攻撃する。

 

「散会しろっ!」

 

 奏の指示と共に四人は少女の攻撃から逃れた。

 蔦を境に翼と奏、カミナと響に分けられた。

 

「お高く留まった人気者共はこいつらの相手でもしてなっ!!」

 

 すると少女は背中から一本の杖を取り出して、銃の様に奏達に向ける。

 杖が変形して紫色のクリスタルが剥き出しになり、そこが光ったと思ったら大量のノイズが出現した。

 

「なっ!?」

 

「嘘だろっ!?」

 

 それには奏と翼は驚愕し、揃って目を丸くする。当然、カミナと響も同じ気持ちだった。

 ノイズは自然災害と同じであり、出現するタイミングは一切不明とされていた。だというのに、この少女はノイズを生み出し、操ってみせたのだ。

 少女は尋常ではない数のノイズを生み出すと、奏達の興味が失せたようにカミナ達に目をやった。

 

「さて、じゃあ、テメェをぶっ殺すついでに仕事も済ませるか」

 

少女がそう言うと、カミナは構えた。

 

「下がってろ、嬢ちゃん」

 

「でも……相手は私達と同じ人間ですよ」

 

 戦うつもりであるカミナを見て、響は戸惑った。

 彼女と共に過ごして、カミナは響が超が付くほどお人よしなのだと理解した。人を傷つけることを躊躇っているし、恐らく翼や奏とは違って戦う意味を持ち合わせていない。

 

「ああ、分かってる。だがな、俺は俺の仲間(ダチ)に手を出す奴は許せねぇ。ましてや、アイツの家族を殺したノイズを操ってる奴なら猶更だ」

 

「はっ! テメェも人殺しだろうがよっ!!」

 

 少女が右手のクリスタルの蔦を展開して、カミナに襲い掛かる。

 上空から襲い掛かる蔦をカミナは左手に展開したドリルで横に払った。

 

「ちょせぇっ!!」

 

 立て続けに横から迫る攻撃をカミナはジャンプで躱す。

 地面に着地する直前、少女は一気にカミナに詰め寄って右拳を腹に叩き込む。

 もろに入ったと少女は思ったが、僅かの所でカミナの右手がそれを遮った。

 

「良いパンチじゃねぇか。おっさんほどじゃねぇけどなっ!!」

 

 カミナの左拳が少女の顔面に襲い掛かり、とっさに少女は横に躱す。

 

「オラオラオラぁぁぁっ!!」

 

 更にカミナの猛攻が少女に襲い掛かる。

 そのすべてを少女は躱し、クリスタルの蔦を使って防御していく。

 

「調子に乗るな、この脳筋野郎っ!!」

 

 カミナの攻撃を見切った少女は、カウンターで腹部に蹴りを叩き込んだ。

 

「がっ!」

 

 後方に吹き飛ばされつつ、態勢を立て直そうとするカミナだったが、少女はそれを許しはしなかった。蔦による猛攻がカミナを襲いかかる。

 何度か攻撃を受けるが、即座に螺旋力を使ってドリルを薄く広く伸ばして盾にして態勢を立て直していく。

 

「隙だらけだぜ」

 

「しまっ……」

 

 しかし、僅かな隙間を狙った蔦はカミナの胴体に巻き付き、少女は水風船で遊ぶ子供の様にカミナを振り回す。

 

「そらそらそらぁぁぁぁっ!!」

 

 勢いが付き、そのままカミナを地面に叩きつけた。

 

「だぁっ!」

 

「カミナさん!!」

 

 それを見ていた響が彼を助けようとする。

 

「お呼びじゃないんだよ、こいつらでも相手してな」

 

 それを邪魔するように、少女は再度杖を操作してダチョウ型のノイズを呼び出した。

 

「そんな……」

 

 ブドウ型ノイズに苦戦する響にとって、大型のノイズは厄介な相手であり、一旦距離を取らざるを得なかった。

 

「逃がさねぇよ」

 

 するとダチョウ型のノイズは口から粘液を響に向けて吐き出した。

 とっさに動くことが出来ずに、響は粘液を浴びる。粘液が響に触れると、体から離れず、そのまま彼女の身動きを取れなくした。

 

「しまっ……!」

 

「大変だなぁ、足を引っ張る奴がいてよ。満足にギアを使いこなせねぇのくせに戦場に出て、こいつらと一緒に戦った気でいるんだからさ」

 

(そんなこと……)

 

 彼女に言われずとも響には分かっていた。自分がまだ全然カミナ達の役に立っていないことを。

 この時、響は自分の不甲斐なさを呪った。奏の様にアームドギアを展開すればこんなことになるはずがないのに……。

 

「余所見してんじゃねぇぞ、下乳女!!」

 

 響に意識を向けていたのは数秒だったはずなのに、その僅かな時間でカミナは少女に肉薄し、拳を振り上げていた。

 

「おらっ!」

 

 カミナの一発が頬を掠ると、少女は忌々しく舌打ちする。だが、明らかにダメージがあるのに気付くと直ぐに余裕の笑みへと変わった。

 

「へぇ、結構タフじゃねぇか? まぁ、あんなことをしてくれたんだ。簡単に倒れちまったらつまらねぇよな!!」

 

「だから知らねぇって言ってんだろうがっ!!」

 

 カミナが拳を振りかざすと少女はそれを片手で受け止める。その直後にカウンターでカミナにパンチを喰らわせようとするが、カミナの手に止められ、取っ組み合いの状態に陥った。

 

「見てくれの割に良いパワーしてんじゃねぇか」

 

 体格差があるにもかかわらず、カミナと拮抗するパワーで押してくる少女にカミナは思わず賞賛の声を上げる。

 

「はっ。あたしのテッペンはまだまだこんなもんじゃねぇんだよ!」

 

 少女の前蹴りがカミナの鳩尾に叩き込まれる。

 かなりの威力だが、カミナはそれを何とか耐えきり、その場に踏みとどまる。

 

「んぐぐぐぐ……。嘗めんじゃあ、ねぇぇっ!!」

 

 少女の足を掴み、ハンマー投げの様にカミナは体を回転させる。

 

「お返しだぁぁぁぁっ!!」

 

 手を放して少女を勢い任せにぶん投げた。

 

「こんのぉぉぉ、調子に乗んなぁぁぁっ!!」

 

 しかし、少女はやられっぱなしではいられないのか、足を放される直前、悪あがきに蔦をカミナの体に巻き付ける。

 そのまま道連れにしようと思った矢先、カミナの体が唐突に更なる輝きを放った。

 

「ギガァァァァ、ドリルゥゥゥゥ、マキシマム!!」

 

 カミナの叫び声と共に体全体から無数のドリルが形成され、蔦を一瞬でズタズタに引き裂いた。

 

「はぁっ!?」

 

 驚愕したまま少女の目論見は頓挫し、そのまま吹き飛ばされた。

 空中で態勢を整えつつ、少女は杖を使ってノイズを出し、カミナに仕向けた。

 

「雑魚は引っ込んでろ!」

 

 カミナは即座にグレンブーメランを取り出して、ノイズに投げつけた。カミナの攻撃にノイズはなす術もなく即座に塵へと帰っていった。

 

「ノイズなんざ俺の敵じゃねぇんだよ!」

 

「なら、こいつはどうだっ!!」

 

 態勢を立て直した少女は蔦を先を回して特大のエネルギー弾を作り、それをカミナに投げつけた。

 カミナは即座に横に逃げようとする。

 

「良いのか? お仲間が吹き飛んじまうぜ?」

 

 少女の言葉を耳にして、カミナは直ぐに後ろに目を向ける。

 そこにはノイズの攻撃で身動きが取れなくなった響がいた。

 

「どうすんだぁ、ドリル野郎?」

 

「しゃらくせぇぇっ!!」

 

 カミナは避けることを止め、右手にドリルを生み出してそのままエネルギー弾へ思いっきり殴り掛かった。

 エネルギー弾とカミナのドリルがぶつかり合う。衝撃の余波が地面をえぐり、吹き飛ばしていく。

 最初は拮抗しているかに見えたが、直ぐにエネルギー弾が押し返していく。

 

「はっ、完全聖遺物に勝てるわけねぇだろうが。そんなお荷物なんざ見捨てて良ければよかったのによ」

 

 なんとか耐えきろうとするカミナを見て少女は鼻で笑った。

 

「んぎぎぎぎぎ……」

 

「カミナさん、私のことは良いですから逃げてください!」

 

「ふざけ、んなよ。そんなこと出来るわけねぇだろうが」

 

 背後にいる響が悲痛な声で叫ぶが、カミナは聞く耳を持たず、その場から動こうとしなかった。

 徐々に押されていき、そのままエネルギー弾が押し勝つかと思った矢先、カミナが一歩踏み出した。

 

「おい、下乳女、テメェ、仲間がお荷物だって言ったな。バカ言ってんじゃねぇよ」

 

「はぁ?」

 

「俺は仲間を誰一人邪魔だなんて思ったことはねぇ。良いところも悪い所も含めて俺はあいつらが好きなんだ。だから大切にするし、どんな時でも守ってやるんだよ」

 

「……カミナさん」

 

 それを聞いた少女は失笑する。

 

「はっ、泣かせるじゃねぇか。そこの足手まといの所為で今にも潰されそうになってるのに、よくそんなことが言えるな。まさか、この状況をひっくり返せるとでも思ってんのか? 随分とおめでたい頭してるじゃねぇか」

 

「嘗めんじゃねぇ。今の俺が勝てねぇからなんだ?」

 

「はぁっ?」

 

 何を言ってるんだと言いたげに少女は首を傾げる。

 

「俺は一秒前の俺より前に進んでる。このドリルみたいにな。一回転じゃ大して進まねぇかもしれねぇが確実に前に進んでんだ」

 

「だから何言ってんだよ、お前?」

 

 眉間に皺を寄せる少女を見て、カミナは不敵に笑う。

 

「分かんねぇか?」

 

 カミナはまた一歩踏み出した。

 

「今の俺は……一秒前の俺よりも強いんだよぉぉぉっ!!」

 

 すると、ドリルが押し勝ち始め、エネルギー弾が徐々に押され始めている。

 

「はぁっ!? こっちは完全聖遺物なんだぞ。そこの人気者共と実力が変わらねぇテメェが勝てる訳ねぇだろうが!!」

 

「だから言ってんだろ! 俺は少し前の俺より強くなってんだ! その鎧より強くなれば良いだけの話だぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 理屈でも何でもない、滅茶苦茶なカミナ流の根性論だ。普通ならそんなことはあるはずがない。しかし、彼の気合は常識の範疇を超えていた。

 カミナのドリルがエネルギー弾を押している。少しずつ足を前に出している。

 

「でぇぇぇぇりゃぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 そして、均衡は崩壊し、カミナのドリルはエネルギー弾を完全に跳ね除け、風穴を開けた。

 それを見た少女は目を丸くする。

 

(嘘……だろ。こんなことあるはずが……)

 

 シンフォギア相手なら余裕で勝てる力であるはずなのに、目の前にいるカミナは完全聖遺物と互角に渡り合い始めていた。

 最初は明らかにこちらが優勢だった。

 だというのに、このわずかな時間で状況は一変した。

 蔦で搦めとって地面に叩きつけようとも再び立ち上がる。

 エネルギーの塊を叩きつけてもドリルで突き破ってくる。

 本当に、僅かな時間で彼が完全聖遺物の力に対応できるよう成長したのである。

 

「何なんだよ……テメェはよ!」

 

 少女は歯がゆかった。

ようやくここまで来たというのに。復讐出来る力を得たと思っていたのに。

 蓋を開けてみれば、ワンサイドゲームにすらならなくなっている。

 

「……ふざけんな」

 

 呪詛の様に少女は呟いた。

 このままでは終われない。必ず果たすと誓ったことを出来ないのは絶対に許されない。

 

「ふざけんなぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 少女の叫びに呼応するかのように、唐突に空に罅が入る。

 そして文字通り、空が砕けた。

 

 

 

 

 

 

 

 ノイズを全て倒し切った奏は空に現れたモノを見て、驚愕していた。

 

「何だ、アレ……」

 

 そう問いかけても隣にいる翼も絶句しており返答がなかった。

 二人の反応は当然と言うべきものだった。

 ネフシュタンの鎧を纏った少女の叫びが辺り一面に響き渡った直後、突如として空が割れた。ガラスを叩いたように罅が入り、粉々に砕け散ったのだ。

 そして、そこから現れたのはソレはノイズではなかった。

 全体はブロック状パーツで構成され、縁は赤、それ以外は黒で彩られている。上は回転する円盤、下は出っ張っている部分を中心に左右対称の形状をしていた。それは生物とは異なる無機質な外観を持っていた。

 敢えて言うなら、それは未確認飛行物体と呼べるモノだった。

 空中を漂うソレはしばらく左右に揺れていたが、何かを感知したのか、ゆっくりとカミナ達の方へ先端を向ける。その直後、そこに光が収束してビームが放たれた。

 ビームが放たれた場所は、その直後に大爆発を起こした。

 カミナは即座に回避行動をとり、難を逃れたが爆風で吹き飛ばされた。

 

「カミナっ!!」

 

「カミナさん!!」

 

 それを見た二人はとっさに叫んだ。

 爆風で飛ばされたものの、カミナは直ぐに態勢を立て直して無事に地面に着地した。

 それを見て二人はほっとするが、攻撃してきた未確認飛行物体は再びカミナを狙うように先端を向ける。

 

「……翼」

 

 奏が槍を構えるのを見て、翼は何も言わずに刀を構える。

 正体は不明だが、カミナを狙っているアレは敵であるのは間違いない。

 ならば、二人が取る行動は一つだった。

 

「行くぞっ!!」

 

 奏と翼は未確認飛行物体に向けて駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻、二課の司令室では突如発生した未確認飛行物体に騒然としていた。

 

「何だ、アレは……」

 

「分かりません! 突然膨大なエネルギーを発生した直後に出現して……、一体何なんだコイツは!」

 

「反応はノイズのものではありません! これまで遭遇したことのない何かです!」

 

 藤尭がぼやき、友里が現在調べ上げた情報を提示する。しかし、それ以上のことが分からず、不確定要素が多すぎる為に誰もが動揺を抑えることが出来なかった。

 しかし、そんな緊急事態でも平静を保っている漢がいた。

 

「ノイズでないなら俺が出る!」

 

「待ってください! 未知の相手に生身で向かうなんて……」

 

「相手が未知である以上、あそこにいる彼等と変わらんだろう! ここは任せる。連絡を怠るなよ」

 

「「りょ、了解!」」

 

 これ以上彼等を危険に晒させるわけにはいかないという思いを抱いて、弦十郎は司令室を後にした。

 

「ネフシュタンの件もあるし、私も向かうわ」

 

 彼の後を追うように了子も部屋を後にする。

 残された職員は緊急事態ではあるものの、自身の為すべきことを思い出し、さっそく行動を開始した。




如何でしたか?
ついに彼女を出すことが出来ました。
カミナからの下乳女と呼ばれていますが、まぁ、彼ならそう言うかなと思いまして……。(ファンの皆さんすみません)
それと後半の最後の方に出てきた未確認飛行物体は言わずもがなアレ(名前伏せる意味はないけど……)です。

では今回はこれにて。
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