戦姫絶唱シンフォギア -俺を誰だと思っていやがる!!!-   作:GanJin

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今更ですが、あけましておめでとうございます!
今年もマイペースに更新していきます。
XDの新イベの未来が凄いことになってますけど、切ちゃんの姿が完全にクシャト〇ヤになってて……。
新年一発目は少し長めになってます。


螺旋力の脅威

 時は少し遡り、未確認飛行物体を撃破し、それを構成したブロックが浮遊していた時のことだ。

 翼の叫び声が響く前に、カミナは行動していた。

 理由はほぼ直感と呼べるものだった。ただ未確認飛行物体を貫いた瞬間、脳裏にノイズが走っただけだった。このままでは危険だと警告している気がしたのだ。

だからこそ、カミナは敵を撃破した直後,残る力の全てを使って二人を守ることにした.

 だが、自分の余力を考えると二人同時に助けることは困難だと直感で理解する。一人だけこのブロックの範囲外に飛ばせるが、あとは自力で耐えるしかない。

螺旋力を使って右腕を伸ばし、直ぐに掴める位置にいた奏をブロックの範囲外に投げ飛ばした。それは翼が叫んだ直後の事だった。

 飛ばされた奏は目を丸くするが、カミナはそんなことに構ってられる暇はなく、直ぐに翼を伸ばした右腕で掴む。もう飛ばして逃がすのは難しいと直感したカミナは彼女を自身の方に引っ張る。

 

(一か八かだっ!)

 

 翼がカミナの元に辿り着いた瞬間、カミナは自分と翼を包むように螺旋力を展開して盾を作った。

 その直後、未確認飛行物体のブロックが爆発した。

 最初の爆風はどうにか防ぐことが出来たが、ブロックは無数にあり立て続けに起こる爆発がカミナ達を襲った。

 

(マズい……!)

 

 かなり危険な状態だとカミナは自覚する。立て続けの戦闘で余力がもうないのだ。

 

「カミナさん!」

 

「良いから黙ってろっ!!」

 

 カミナの背後にいる翼が悲痛な声を上げるが、彼はそれを一喝で黙らせた。

すぐ後ろに仲間がいる。奏の友であり、彼女をずっと支え続けてきた彼女を守らねば、男が廃るとカミナは己を鼓舞する。

 

(やらせて……やらせてたまるかよぉぉぉぉっ!!!)

 

「うおぉぉぉぉぉぉあああああああっ!!」

 

 獣の咆哮の様に声を上げ、カミナは全身全霊を駆けて螺旋力を絞り出す。

 その時、僅かに彼の体に纏う螺旋力に変化が起きていた。

 すぐそばにいた翼はその変化を目にして驚愕する。

 

「これは……」

 

 先程までカミナの体表を覆うように展開していた螺旋力が別の形に変化していたのだ。まるで戦国時代の武将が身に着けていた甲冑の様な形になり、エネルギー体だった螺旋力が紅蓮を纏った鎧を実体化されていく。

 

『ふむ、やはり保険はかけておいて良かったか』

 

「えっ……」

 

 唐突に見知らぬ声を翼は耳にする。

 その直後、いつの間にか刀でカミナを背後から刺していた。

 刀はカミナの体を貫き、傷口から血が滴り、刀を伝って翼の手を赤く染めていく。

 

「なに、これ……」

 

 その一方で彼女の頭は真っ白になり、地震にあったように視界が大きく揺れる。まったく状況が理解できず、彼女の脳は視覚から伝わる情報を拒んでいた。

 だが、彼女の手に流れる血は少しずつ冷えていき、翼の意識を無理矢理現実に戻していく。

 自分がカミナを刺したという実感が彼女の意識を犯していく。

 そして、また無意識にカミナを貫いた刀を引き抜いており、傷口から噴き出した血が彼女の顔を赤く染め上げる。

 

(わた、しは……)

 

 血を吐き出しながら倒れていくカミナを見て翼は気が狂い、喉がはち切れるほどに叫びそうになる。

しかし、そうなる直前、彼女の意識はプツリと切れ、視界が真っ黒になった。

 

 

 

 

 

 

 

 ネフシュタンの鎧を纏った少女はカミナを刺した翼を目にして困惑していた。

 

「ふむ……やはり能力に縛りを掛けると上手く事が進まないものだ」

 

 喋っているのは間違いなく翼だというのに、感情が消えた抑揚のない口調と先程まで彼女から感じられなかった人ならざる気配に少女は息を呑む。

 

「まぁいい」

 

 翼(?)が少女に興味を失い、倒れているカミナに目を向ける。そのまま手にした刀を高々に振り上げる。

 

「さらばだ、螺旋の男」

 

 振り下ろされた刀がカミナに斬りかかる。

 しかし、カミナに刃が当たる少し手前でクリスタルで繋がれた蔦が割って入り、刀を弾き返した。

 

「……何のつもりかね?」

 

 翼(?)はネフシュタンの鎧を纏った少女に目を向ける。

 

「何のつもりだと? テメェ、勝手にあたしの獲物を横取りしてんじゃねぇよ!!」

 

 激昂する少女に翼(?)は首を傾げる。

 

「ふむ……。彼と君に接点はないはずだが?」

 

 それを聞いた少女は気持ちが昂りギリッと歯軋りして、思わず伸ばした蔦を横に払った。払った蔦は翼(?)に襲い掛かり、彼女は後方へと飛んで回避した。

 

「接点だと? あるに決まってんだろうがっ! 八年前にあたしの両親を殺した奴がそいつなんだよ!! その理由を聞くまでテメェなんぞにそいつのタマをやれるかってんだ!!」

 

「八年前?」

 

 翼(?)は首を傾げ、考える仕草を取る。

 

「……成程、これも因果か。やはり螺旋の力は互いに引き合う運命にあると言う事か」

 

 何かに納得するように頷く翼に少女は苛立ちを覚えた。

 

「残念だが、あの爆発はその男のものではない」

 

 翼(?)の言葉に少女は目を丸くする。

 

「……今、何て言った?」

 

「聞こえなかったのか? その男は君と何の関係もないと言っているんだ。哀れだな。復讐する相手をその程度の共通点だけで決めつけるとは……」

 

「待てよ! だったら、あたしが探してる奴は……」

 

「それをお前に教える義理はない。螺旋の力を持つ者にこれ以上関わるな」

 

「ふざけんなっ! そんなの納得できるわけ……っ!」

 

 かなり距離が離れていたはずなのに瞬きした直後、翼(?)は少女に肉薄し、刀を喉元に付きつけていた。

 

「これは最終通告だ。これ以上関われば、お前を処分する」

 

(いつの間に……!)

 

 少女は身動きが取れなかった。少しでも動けば首が飛ぶと本能で理解したからだ。

 

「それでは納得いかないというのならどうだろう? この男の処分さえ邪魔しなければ、お前の目的を手伝ってやってもいい。先程、ここから去って言った少女が狙いなのだろう?」

 

 何故そこまで知っているのかと少女は驚いたが、表情に出さないようにポーカーフェイスを決める。

 その上で翼(?)の提案に、少女は首を縦に振らなかった。翼の姿をした正体不明の人物を簡単に信じられるほど、お気楽な考え方はしていないのである。

 さらにタイミングが良いのか悪いのか、ここから離脱するよう少女に連絡が入る。

 

(ちっ、一旦出直しか)

 

 少々面倒なことになるが、これ以上自体がややこしくなると、収拾がつかなくなりそうだと思い、一旦退却することを決める。

 

「お望み通り退いてやるよ。だがな、あたしの邪魔をするなら次は必ず潰す!」

 

 そんな捨て台詞を吐いて、少女は踵を返してビル街を飛んでいった。

 残された翼(?)は彼女に対して興味を失い、本来の目的であるカミナに目を向ける。

 カミナは意識はあるらしく、音を立てて呼吸をしていた。

 

「ほう、それほど血を流してまだ息があるとはな。残った螺旋力でギリギリ生命を維持していたか」

 

 刀の切先をカミナに向けた直後、彼女の背には槍を構えた奏が立っていた。

 

「話は全部聞いていた。お前は一体ナニモンだ? それに翼の体に何をした。答えろ!」

 

 さらに槍を突きつけ翼の首筋を槍の切先がかすめる。

 奏は爆発から免れた後、ネフシュタンの鎧を纏った少女と翼(?)のやり取りをすべて聞いていたのだ。そして本物の彼女ならするはずのない行動を取ったことで、目の前にいる翼が本物ではないと断定したのである。

 

「良いのか? これはお前の友の体だぞ」

 

「はっ、少しくらい痛めつける程度で翼が死ぬタマかよ」

 

「……その返答は予想外だな。ならば、こうするだけだ」

 

 そう言うと翼に乗り移った何者かが翼の体を操り、彼女の喉元に剣を突きつけた。

 

「私の邪魔をすれば、この少女の命はない」

 

「テメェっ!」

 

 奏が怒りに満ちた目で翼を睨みつける。

 しかし、それで自体が改善される訳もなく、奏は悔しさのあまり歯軋りする。

 

「や、めて……」

 

 すると掠れるような声が奏の耳に届く。

 

「翼?」

 

 奏にはそれが本物の翼の声がした。それを証明するかのように翼の左手が刀を持った右手を抑えつけていた。

 

「ほう、まだ意識が残っていたか。完全に支配していたつもりだったが、これは予想外だ」

 

「これ、以上……私の中に、入って……来ないで。こんなこと……」

 

「何を言うかと思えば、これはお前の望みだろう」

 

 翼にとりついた何者かの声を聞き、奏は信じられないという顔をする。カミナを傷つけることが翼の望みであるはずがないのだ。

 

「違う……。私は、そんなことを望んでなんかない!」

 

 悲痛な声で否定する翼は今にも泣きそうな顔をしていた。

 だが、彼女を操っている者はそれを嘲笑う。

 

「いや、思っていたはずだ。心の奥底で、この男が邪魔だったと!」

 

「っ!」

 

 奏は目を丸くし、彼女が驚くさまを見た翼は首を我武者羅に横に振り続けた。

 

「違う、違う違う違うっ!! 私は……ただ。うっ……」

 

 呻き声をあげた後、翼の意志が宿っていた左手はだらりと下がった。

 

「ショックで意識が飛んだか。だが、おかげでこの体を十二分に使えるようになった」

 

 左手を何度も握っては開いて、翼に乗り移った者は彼女の体を使ってニヤリと笑みを浮かべる。

 

「シンフォギアと言ったか……。この世界の人間は面白いものを作ったものだ。折角だ、その性能、試させてもらおうか」

 

 すると翼のシンフォギアが光を放ち、その形状を変えていく。シンプルだった装甲は厚みを増し、より禍々しい形状となり、色も白と青を基調としたものから黒とオレンジへと変貌していく。更に本来シンフォギアに無かったフェイスパーツが形成され、目を覆うゴーグルパーツが禍々しい赤色の光を放っていた。

 

「何だよ、それは……」

 

 距離を取っていた奏の問いかけに翼に乗り移った者は答えることもせず、形状変化したシンフォギアの調子を確認する。

 

「ロックを完全に解除するにはもう少し時間が要るか。だが五百万のロックを解除するだけでもこれほどとは……なっ!」

 

 翼は一瞬で奏に迫る。

 

「くっ!」

 

 横からの一振りに奏はとっさに槍で防御するが、先程の戦闘のダメージが大きすぎて踏ん張りがきかず、そのまま吹き飛ばされた。

 

「がっ!」

 

「ほう、アレを防ぐか。この世界の戦士も存外にやるようだな」

 

 そんな感想を言われても、奏の耳には届かなかった。受けたダメージが大きすぎて体中が悲鳴を上げ、それどころではなかった。

 奏が邪魔をすることが出来ないと分かり、翼はカミナの元へと足を向ける。

 

「行かせる、ぐっ……」

 

 奏がそれを阻もうとするが、体中から走る痛みに耐えきれずその場から動けない。

 

「心配するな。要件が済めばこの女は返してやる」

 

 そう言って、翼はカミナの前に立ち、刀を高々に振り上げる。

 

「さらばだ、螺旋族」

 

 刀が振り下ろされ、冷徹無慈悲な刃がカミナを襲う。

 奏がとっさに手を伸ばすが、その手は届かない。

 希望が見えない。

 絶望に染まった世界が奏の目に映る。

 まだやりたいことが、伝えていないことがあるのにその手は何も掴めない。

 絶望から目を背けるように奏は目を瞑る。

 そうしたのはこの先に希望が見えないなら、いっそ見えない方が良いと思ったからだろうか。

 それは奏にも分からなかった。

 だが、この時、奏は不思議な体験をした。

目を瞑った直後、奏の伸ばした手を誰かが掴んで諦めるなと喝を入れた気がしたのだ。

 

「それ以上好きにはさせんっ!」

 

 その声に奏は驚いて閉じていた目を開く。

 奏の目にはこちらに向かって飛んでくる弦十郎の姿が映っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻、カミナ達のいる公園から百メートル以上離れた場所では口をポカーンと開けて驚いている響がいた。

 

「凄い……本当に飛んで行っちゃった」

 

「まったくもう……。弦十郎君ったら無茶するんだから」

 

 驚く響の隣には呆れてた顔をしている了子の姿があった。

 

「あんなことが出来るなんて……。二課って凄い人が多いんですね」

 

「あんなことが出来るのは弦十郎君とカミナ君ぐらいよ。他は常人並みの体力しかないからね。まぁ、緒川君は別方向で凄いことが出来るけど」

 

 響が間違った認識をしそうになっているので了子はそれを正した。

 

「それにしても、響ちゃん、よくあんな無茶な案に乗ったわね? 現場に向かって弦十郎君を全力で吹っ飛ばすなんて普通は考えないと思うわよ」

 

 それを聞いた響は苦笑いを浮かべつつ、頭の後ろを掻いた。

 

「あー、やっぱりそうですよね。でも、カミナさんに勝ってますし、弦十郎さんも着地は気合で何とかするって言ってたから問題ないかなぁって」

 

「マズいわね。この子も少しずつカミナ君化してる気がするわ」

 

 気合でやれば何とかなる、と言う根性論の塊と呼べる弦十郎とカミナの波長に響が上手い具合に噛み合っていると了子は薄々感じていたが、この会話で確信に変わった。

 

「えへへ……」

 

 カミナに似ていると言われて、響は満更でもないように嬉しそうに笑う。

 

「響ちゃん、全然褒めてないわよ?」

 

 そう言いつつ、了子の中にある乙女センサーがアラートを放っていた。

 彼女を観察して、響がカミナに気があるのではないかと疑っていたが、間違いなさそうである。

 突如として舞い降りた話題で盛り上がりたいのだが、残念ながら今はやるべきことが満載である為、了子はこの話題を後の楽しみにとっておきつつ、車に響を乗せて弦十郎の後を追うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「はああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 響の協力によって超高速で飛んできた弦十郎は刀を振り下ろそうとしている翼に向けて拳を振り上げた。

 

「くっ!」

 

 それに驚いた翼はとっさに回避行動を取る。

 その直後、弦十郎の拳は地面に叩きつけられ、地面を陥没させ、衝撃で地面に無数の亀裂が生まれる。

 

「貴様、風鳴弦十郎か」

 

 ゆっくりと立ち上がる弦十郎はちらりとカミナを見て、その傷が刀傷であることを理解する。状況はよく分からないが、目の前にいる翼が斬ったのは間違いないようだ。

 

「翼、仲間に手を上げるとはどういうつもりだ! それにその姿は……」

 

「ダンナ、そいつは翼じゃない! 誰かが翼に憑りついてんだ!」

 

「何だとっ!?」

 

 奏の言葉を聞き、弦十郎は目を丸くする。

 

「彼女の言う通りだ。しばらくの間、この少女の体を借りさせてもらう。心配せずともそこにいる男を含め、残りの螺旋族を滅ぼせば無事に返してやろう」

 

「それを信じられると思うか?」

 

「私とは本意ではない。本来ならアレでその男を倒したかったが、彼の進化は私の想像を超えていた。もはや、この世界の異端技術を使うほかない。これは世界を守るために必要な事なのだ」

 

「あの未確認飛行物体はお前が!? それに世界を守るだと? 何故彼を滅ぼすことが世界を守ることに繋がる!」

 

 憤る弦十郎に翼は刀を降ろして、カミナを一瞥する。

 

「ならば問うが、貴様等は螺旋力の恐ろしさを知っているのか?」

 

「螺旋力の恐ろしさ、だと?」

 

 カミナの持つ螺旋力について翼に乗り移った者が知っていることに驚きだが、弦十郎は螺旋力が恐ろしい力だと思っていない。

 彼のお陰で乗り切った危機は多々あり、シンフォギアと同じ人類守護の希望だと信じていた。

 

「螺旋力は人間の意志で引き出された銀河のエネルギーだ。その力は進化すればやがて銀河を生み出す程になるだろう」

 

「銀河そのものを……」

 

「そうだ。貴様等はこの少女が扱うシンフォギアと同様に扱っているが、こんなものが可愛く見えるほどの脅威を螺旋力は内包している。そのことを貴様等は全く理解していない」

 

「確かに俺達は彼の力の全てを知っているわけではない。だが、彼のお陰で多くの人命を救ってきた。螺旋力は可能性を生み出す力だと俺達はそう信じてこれまで共に戦ってきた!」

 

「可能性を生み出す……。成程、見方を変えればそう言えるだろうが、それは螺旋力の本質を見誤っただけにすぎん。永遠に進化する力はやがて滅びの道を歩み、必ず世界の敵となる」

 

「世界の敵だと? ふざけるな! 彼はそんなことをする男ではない!」

 

「本人の意思など関係ない。例え今は問題なくとも、進化し続けた螺旋エネルギーはその男の体を食い破り、最終的には宇宙の全てを喰らい尽くすブラックホールへと成り果て、その男は世界に牙を剥く存在になる。これは確定事項なのだ」

 

 つい先程まで感情がないような口調であったはずなのに、徐々に怒りを込めた声色へと変貌していた。

 

「ブラック、ホールだと……そんな馬鹿な話が」

 

 いくら異端技術でもブラックホールを作れるような力はない。しかし、カミナが内包している力はそれが可能だという奴の言葉に弦十郎は信じられないという顔をする。

 

「あるのだよ。言ったはずだ、螺旋力はシンフォギアが可愛く見えるほどの脅威を孕んでいると。君達はそれを既に体感している」

 

「何だって?」

 

 翼の言葉に奏は思い当たる節はなかった。カミナの力は確かに未知数だが、それでも共にノイズと戦い犠牲はあっても多くの命を救ってきた。

 そんな脅威はないと奏は信じていた。

 

「螺旋力はその気になれば生命すら生み出し、肉体や精神にも干渉することさえ出来る。二年前、相打ち覚悟だった彼女が本来死ぬはずだったのに今でも生きているのは、その男が螺旋力を使って君の体を再生させたからだ」

 

「なんだとっ!!」

 

 その言葉に奏と弦十郎は揃って目を見開き、息を呑んだ。奏に関しては一瞬、呼吸を忘れるほどの衝撃的な事実だった。

 

「あたしが生きてるのは、カミナのお陰……? 体を再生したって……じゃあ、あたしは」

 

「そうだ! 本来ならば死んでいるはずだった! だが、彼は崩壊しかけた君の体を強制的に活性化させて超速再生させて生き永らえさせた! つまり、君はこの世界で唯一の螺旋力によって生まれ変わった人類なのだ!」

 

 狼狽する奏だったが、何度か考えたことがあった。絶唱を歌ったのに生きているのは、カミナのお陰ではないかと。そうでなければ説明がつかないことがいくつもあるのだ。本来リンカーを使わなければ耐え切れないバックファイアが来るはずなのに、その兆候すら見られなかった。無理をしてシンフォギアを使った程度の負荷しか当時は掛かっていなかったのだ。

 

「じゃあ、あたしは……」

 

「いや、君は百パーセント人間だ。だが、一歩間違えれば君は人間ではなくなっていたのは間違いない」

 

 そんな馬鹿なと弦十郎は思いたかったが、二年前に浮上した謎が言う通りならば、合点がいくのだ。

 当時、身体検査をしていた了子から弦十郎にだけ伝えていたことがある。それは、あの惨劇の後、奏の体に掛かっていたこれまでの疲労やダメージが綺麗さっぱりなくなっていたと言う事だ。日常生活で掛かる疲労や、軽いケガ、ダメージと定義できるものの全てが綺麗さっぱりなくなっていた。了子が言うにはシンフォギアを纏えるようにリンカーで薬物投与する前並みに奏の体は全快になっていたのである。

 

「これで分かったか? 本来消える命ですら蘇らせる。万物を創造し、この世の全てを破壊する。それが螺旋力だ」

 

 奏と弦十郎が黙ってしまい、翼に憑りついた者は止めを刺すことにした。

 

「螺旋力は終わりのない進化をし続け、やがて自ら滅びの道を歩むことになる。それを阻止するためにもその男は消えねばならん。私が見てきた螺旋族の中でも奴の特性は最も危険だ。だからこそ、力が枯渇した今がチャンスなのだ。分かったならば、そこを退け。螺旋力によって無残に滅ぼされる無辜の命を救うことになるのであれば、人類守護を志す貴様等にとって私の邪魔は出来ないはずだ」

 

 翼にとりついた者の言葉に間違いはないだろう。九十九の命の為に一つの命を捨てる。必要最低悪の犠牲を人類はこれまで数えきれないほど強いてきた。

 この国だってそうだ。もし、あの男がここにいたら、それを是としてカミナを切り捨てるだろう。

 

「成程、確かにお前の言い分は間違っていないだろう」

 

 弦十郎は拳を力強く握りしめ、拳を前にして構える。

 

「だがな、子供の命を捨てて得た平和な世界で生きるなど俺には出来ん!」

 

 だが、弦十郎は犠牲を強いて得た平和など良しとしなかった。

現実的に考えれば間違っていないことなのは頭でも理解している。だが、弦十郎の心が、魂が損得勘定だけで生殺与奪の権利を行使していいはずがないと叫んでいるのだ。

 

「確かに、あんたの言っていることが本当だとしたら、確かにそいつは恐ろしいだろうな。そんな神様みたいな力があれば世界を破壊するのも納得さ」

 

 奏は槍を使ってゆっくりと立ち上がる。

 

「だとしてもよ、カミナは本当にあたしにとって命の恩人ってことになるぜ。カミナのお陰で今でもみんなと笑っていられるし、やりたいことが出来てる。だったら、次はあたしの番だ! 今度はあたしがカミナを救ってやる!!」

 

 フラフラの状態でありながらも、奏の心を表すように槍だけはまっすぐに構えた。

 

「……愚かな」

 

 失望に満ちた声で言うと翼は刀を再び構え、弦十郎と奏に相対する。

 

「奏、カミナ君を頼む」

 

「いや、あたしも」

 

「それ以上は無理をするな。後は俺に任せろ。心配するな、お前の思いも一緒に奴にぶつけてやる!」

 

 いくら槍を構えていたとしても、すでに戦える状態ではない。これ以上奏に無茶をさせれば、あとでカミナにどやされる。

 

「……分かったよ。じゃあ任せたぜ、ダンナ」

 

「ああ」

 

 そう言って奏はゆっくりとした足取りでカミナの元へと向かう。

 

「貴様に出来るのか? 私を倒すと言う事は彼女に手を掛けるということだぞ」

 

「……そうだな。その通りだ」

 

家族と戦うことに躊躇いがないと言えば、嘘になるが、今の弦十郎に迷いはなかった。

 

「だが翼とは何度も手合わせをしてきたのでな。まずは翼に憑りついたお前をブッ飛ばす! 面倒な話はそれからだ!!」

 




如何でしたか?
まさかの弦十郎が参戦です。
本編以上に暴れさせる気満々でやっていきますよ!
翼のギアが変貌しましたが、色合いとかデザインはグランゼボーマみたい禍々しくなってると思ってください。
イメージ図ぐらい載せたいんですけど、絵心がないので姿形はご想像にお任せします!

次回はOTONAが暴れる?かも……。

それでは今回はこれにて!
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