戦姫絶唱シンフォギア -俺を誰だと思っていやがる!!!-   作:GanJin

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はいどうもです。
九月に入り、暑さも少しずつ和らいできました。
気温が変化してくると体調が悪くなりやすいので気を付けたいです。
ではお楽しみください。


そしてライブへ

「あー、疲れたー」

 

 カミナは疲れ果てた状態でメガネの部屋に戻ってきた。メガネが通っている高校の寮は今回の目的地の隣街である為、拠点にするにはもってこいの場所であった。

 

「お疲れ様、何か情報でもあったかい?」

 

「初日と同じだ。不審者だと勘違いされた」

 

 その答えにメガネは苦笑いを浮かべる。

 

「君のやり方にも問題があるのでは?」

 

「警察の奴もまたかよって顔してやがった」

 

 奏の捜索を始めた初日、カミナを不審者と思ったここの住人が警察に通報したのである。どうにか誤解は解けたものの、やはり人探しをしていると怪しまれるのか、今日も通報されてしまった。

 

「似ているとはいえ、ツヴァイウィングの天羽奏を探している追っかけかもしれないと疑った人もいたのでは?」

 

「俺は犯罪者になるつもりなんてねぇぞ。それよりそっちは何か見つかったか?」

 

「一応ですが。公式サイトを見てみましたが、彼女の経歴に関しては大雑把なことしか書いていませんでした。後は口コミもありますが、上がっても直ぐに削除されたものもあるようですね」

 

「ふーん。難しいことはよく分からねぇがつまりどういう事なんだ?」

 

「どうも彼女の情報はあまり拡散されたくないようです。しかし、彼女をプロデュースしている芸能事務所一つでこんなことが出来るとは思えませんが……。これはどういうことでしょう?」

 

「だから、どう言う事なんだよ。俺にも分かり易く教えてくれよ」

 

 芸能界についてあまり興味がないカミナには少々難しい話だったようだと、メガネは勝手に思い込み、自分の意見を彼に聞かせることにした。

 

「彼女の背後にかなり大きな組織が関わっているのではないか、と言う事ですよ」

 

「まさか……ヤクザか?」

 

「いえ、この手際の良さならもっと大きな組織それも政府機関クラスじゃない限り難しいのでは?」

 

「おいおい、どうもきな臭い話になってきたな」

 

 カミナは帰りに勝ってきた飲み物をグイっと飲み干す。

 

「これはあくまで可能性の話です。僕もそれほど芸能界に精通してるわけではありません。ただ単に有名になって日が浅いから、情報が少なくて対処がしやすいのかもしれません」

 

「ま、分からねぇことを考えても仕方ねぇか。数日は探してみたがあんまし情報もねぇようだし、ライブまでのんびりするか」

 

「ええ、そうした方が良いでしょうね」

 

「ちょいと昼寝するわ。飯の時間になったら起こしてくれ」

 

 ゴロンと横になるとカミナは速攻でいびきをかいて眠った。

 

「横になって直ぐに眠りますか。随分とお疲れのようですね」

 

 ここ数日、カミナはいつも街で奏の情報を集めては戻ってきて休むことを何日も続けている。カミナは長い休みに日本中を廻り、時には野宿、下宿、ネットカフェなどの様々な方法で拠点を作って奏を探してきた。それを二年も続けているのなら、その執念はすさまじいものだ。

 口にしてはいないが、ここ最近のカミナの行動が普段以上に活発であるとメガネはうっすら感じていた。ようやく見つけた手掛かりに、奏の捜索に力が入っているのだと簡単に予想出来た。だが、気になるとすれば、なぜそこまで彼女に拘るのかと言う事だ。

 カミナはグレン団を結成した日からメンバーに対して兄貴分として接してきた。悩みや辛いことがあった時には積極的に励ましたり、何気ない言葉で道を開いてくれる男であり、その性格は今も変わっていない。しかし突如として姿を消してしまった奏にそこまで躍起になれる理由が思い付かなかった。彼女はグレン団の副団長のような立ち位置であったが、他のメンバーより仲が良かったのはただ単に家が近くで、父親同士が知り合いだったからと記憶している。それがあったとしても、二年もどこにいるかも分からない奏を探せるのか、メガネには理解できなかった。

 そしてカミナには口にしていないことで気になることが一つあった。それは彼が躍起になって探しているにも拘らず、天羽奏と言う名が一度も世間に出たことが無かったことだ。彼女が家族で長野県皆神山に行った時、ノイズに襲撃されたことで妹を含め家族を全員失ったことは知っていた。だが、ニュースでもそこまで騒がれることは無く、一度も天羽と言う名前が上がってくることは無かった。

 それから二年後、突如としてツインボーカルユニットでデビューした同姓同名の少女が現れたことが気にかかった。

 

「さて、僕の考えがただの中二病を拗らせた妄想であったら良いのですが……」

 

 どうにも胸騒ぎがするメガネは机の上に置いてあるコーヒーを飲み、一息つくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして時間はあっという間に過ぎ去り、ライブ当日。今回のライブがあるコンサート会場にカミナ達は来ていた。

 

「へぇー、こいつがライブ会場か。随分賑やかなんだな」

 

 カミナが面白そうにあたりを見渡しているのを見てメガネは友人に申し訳なさそうな顔をしていた。

 

「すみません、僕の友人の無理を聞いてくれて」

 

「気にしなくってええよ。本当は今日来る奴が来れなくなっちまったから、頑張って手に入れた一枚が無駄にならなくなってこっちは大助かりだ。それにしても本当なんか? あの天羽奏がオメェの知り合いかもしれないって」

 

 メガネは友人に今回の件を頼んだ理由について話しており、彼はそれを快く引き受けてくれたのである。

 

「数年前に消息を絶った友人が彼女に似ているんですよ。年も僕たちと近いようですから、もしかしたらと」

 

「別に疑っとらんよ、見せてもらった卒業アルバムに同じ名前のそっくりさんがおるなら納得じゃ。それにしてもいなくなった一人の女を二年間も探し続けるたぁ、お前さんの友人、見た目のわりに一途じゃねぇか。もしかして、あいつその子に惚れてたんか?」

 

「さぁ、どうでしょう。ただ単にグレン団の団長だからなのかもしれませんが、あの執着具合からして、彼にも僕らに言えない事情を抱えているのかもしれません」

 

「ふーん。ま、面倒な話は無しにして、今はライブを楽しもうや!」

 

「ええ、そうですね」

 

「あれ? そう言えば友人はどこ行ったんや?」

 

「……カミナ、君と言う人は」

 

 辺りを見渡してもカミナが見当たらなかった。少し目を離した隙に、姿を消していたことにメガネは少々頭が痛くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「しまった。完全に迷っちまった」

 

 メガネとはぐれたカミナは頭を掻いて、どうしようかと悩んだ。地図を見てもここが何処だかさっぱり分からず、右を見ても左を見ても同じ道が続いている。

 

「あの……ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ」

 

「あん?」

 

 背後から話しかけられ、カミナは後ろを振り向いた。

 そこにいたのは如何にも怪しげな人物だった。声からして女性なのは分かる。しかし、身に付けているものをカミナは異様だと感じた。

 白のローブのようなものを纏い、カミナからして少々小柄な人物がそこに立っていた。顔はフードを深くかぶっている所為かよく見えず、それを目にしたカミナは首を傾げた。

 

「それ、何かのコスプレか?」

 

「ち、違います! これは必要だから着てるんです!」

 

 声からして同年代の少女だとカミナは直感した。 

 

「そうか。なぁあんた、ここが何処だか分かるか? ダチとはぐれちまって地図見ても自分の居場所が分からねぇんだ」

 

 目の前の少女は一瞬だけ警戒するが、カミナが嘘をついているように見えなかった為、直ぐに警戒を解いた。

 

「ここは関係者スタッフ以外立ち入り禁止区域です。早く出て行かないと警備の人に捕まりますよ」

 

「じゃあ、あんたはどうなんだよ?」

 

 そう尋ねると少女は何故かあたふたし始め、カミナは怪訝な顔をする。

 

「わ、私は、その……ア、アルバイトのスタッフです!」

 

「スタッフってそんな格好するのか?」

 

「アルバイトです」

 

「いや、でもよ……」

 

「アルバイトです!!」

 

 彼女は声を張り上げて主張するのでカミナは一応そう言うことにしてあげた。嘘であるのは当然理解しているのだが、彼女も色々とあるのだろうと不快詮索はしないで挙げることにした、

 

「分かった分かった。そんで、ここからツヴァイウィングのライブ会場までどう行けばいいか知ってるか?」

 

「それなら、この道を真っ直ぐ行って突き当りを右に行けば、会場入り口に辿り着けます」

 

「サンキュー、嬢ちゃん。助かったぜ」

 

「いえ。それより早く行った方が良いですよ」

 

「そうするよ、じゃあな!」

 

 そう言うとカミナはここから去っていった。

 

「……変な人」

 

 フードを外して、翼はそう呟いた。噂に聞く追っかけや少々過激なファンと言う訳でもなく、興味本位で来たと思われる人に会ったのは初めてであった。だが、何故か嫌悪感は抱かなかった。彼の雰囲気が誰かに似ていると感じたからだ。

 

「翼さん、ここに居ましたか。もう少しで始まりますよ」

 

 すると翼を探しに来た緒川が現れた。

 

「すみません。忘れ物をしたので部屋に戻っていました」

 

「言ってくれれば、僕が取りに戻りましたよ」

 

「いえ、自分で探した方が早いと思ったので」

 

「そう、ですか」

 

 翼は整理整頓があまり得意ではない。その為、今頃控室では折角片付けた荷物がぐちゃぐちゃになっているのだろうと思うと緒川は少々気が重くなった。

 

「それより先程誰かと言い合っているように聞こえたのですが……」

 

 どうやら緒川に先ほどの会話が聞かれていたようで、恥ずかしさのあまり翼は少々顔を赤らめる。

 

「大丈夫です、迷子になった人に道を聞かれただけなので」

 

「ここで、ですか?」

 

 関係者以外立ち入り禁止であるはずの場所で道を聞く人物がいるとは思えなかった緒川はその人物が不審者ではないかと疑った。ツヴァイウィングのライブにおける警備はそれなりに自信があり、ここに足を運ぶ不埒者は一人も居なかった。

 

「翼さん、その人に何かされませんでしたか?」

 

 当然、翼は緒川の心を読めるはずもなく、唐突に彼が真剣な顔になる翼は何事かと驚いた。

 

「いきなりどうしたんですか? 別に何もありませんでしたけど」

 

「本当ですね?」

 

 じっと見つめる緒川に対し、翼は首をぶんぶんと縦に振った。

 

「ほ、本当です。嘘じゃありません」

 

 翼が嘘をついていない事を理解した緒川は安心した顔をする。

 

「なら良かったです」

 

「緒川さん、いくらなんでも心配し過ぎです」

 

「いえ、翼さんを守るのが僕の役目ですから。ですが、今後はもう少し警備を厳しくした方がよさそうですね。このライブが終わった後、風鳴司令に進言しておきましょう」

 

 少々過保護な緒川に対し、翼は苦笑いした。

 だがこの日の事により、ツヴァイウィングのライブにおける警備がさらに厳しくなったとかならなかったとか。

 

(でも、あの人何処かで見た気が……)

 

 何処で見たのか考えるがすぐに思い浮かばず、ライブ開始まであとわずかなこともあり、彼について考えるのを止めた。今はライブに集中する為、気を引き締めることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、どこ行ってたんや。探したんやで?」

 

「いやー、悪い悪い。道に迷っちまって関係者以外立ち入り禁止区域に行っちまった」

 

 そんなところまで行っていたのかとメガネは呆れた顔をする。

 

「まったく、君と言う人は……」

 

「なっ!? う、羨ましいぞ!」

 

「いえ、そうじゃありませんよ」

 

 羨ましそうにする友人にメガネはツッコむ。

 

「下手をすれば警備の人に捕まっていましたよ。そうしたら会うどころか見ることさえ出来なくなるかもしれないんですからもう少し慎重に動いてください。大体君は昔から……」

 

 メガネは容赦なく文句を言いまくる。挙句の果てに昔のことまで蒸し返し始める。

 

「分かった分かった、俺が悪かったよ」

 

「まぁ、良いじゃねぇか。それより、全員が揃ったところで俺がライブの楽しみ方ってヤツをレクチャーしてやるぜ!」

 

 この中で一番張り切っているメガネの友人がライブが始まるまでその楽しみ方をガッツリとレクチャーしていると、ツヴァイウィングのライブが遂に始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、今日も暴れた暴れた。思いっきり歌ったから腹が減っちまった」

 

 ライブが終わり、翼と奏は緒川達が来るのを待っていた。

 

「奏はいつも飛ばし過ぎ。もう少しペース配分を考えた方が……」

 

「真面目だねぇ、翼は。楽しいことを思いっきりやるのが良いじゃんか」

 

「それはそうだけど……」

 

「だったらそれで良いいいじゃん。ほれほれー、そんな頭の堅い翼にはこうしてやるー」

 

「ちょっ、待って奏。そこは……やめっ……」

 

 いきなり体中をくすぐりだした奏に翼は抗おうとしたが体に力が入らず、大きな声をあげないよう必死に耐えることしか出来なかった。

 

「抵抗しても無駄だぞー。翼の弱い所は全部知ってるんだからなー」

 

 奏が翼と出会って既に二年も経っており、奏にとって翼の弱点を見つけるには十分な時間だ。その為、抵抗出来ないようにする方法も熟知している。

 

「本当に、ダメだって……」

 

 この時、二人は油断していた。ツヴァイウィングはある政府機関が背後にいる為、追っかけなどの過剰なファンに対する二人への安全対策は他のアーティストと比べてかなり厳重となっている。その為に今まで事件に巻き込まれずに済んでいる。今日あった件を除いて、関係者以外立ち入り禁止区域まで侵入を許したことは無かった。翼もそれは偶々だと思い込んでいた。

 

「奏?」

 

 唐突にじゃれるのを止めた奏に翼は怪訝な顔をする。ふと彼女の顔を見てみると、翼は奏が驚いた顔をしているのを目にした。二年も一緒にいて驚いた顔を何度も見てきたが、今の奏は今まで見たことがない顔をしていた。驚くべき真実を突きつけられたようなものでもない。誕生日パーティを開いて驚いたものでもない。それはまるで予期していなかったことを目にしたような顔だった。

 

「カ、ミナ……」

 

 そう呟く奏の視線の先を翼は見る。

 

「漸く……見つけたぞ」

 

 翼が目にしたのは両手を膝につけて、息を荒げて額に汗を浮かべる男の姿だった。そして、彼と出会うのは今日で二度目となった。

 

「元気そうだな、奏」

 

 二人の前に現れた男、カミナは不敵に笑みを浮かべてそう言った。




如何でしたか?
次回あたりに、カミナと奏の過去について触れる予定です。
それでは今回はこれにて。
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