戦姫絶唱シンフォギア -俺を誰だと思っていやがる!!!-   作:GanJin

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どうもです。
前話を更新して一日置いてみれば、お気に入りが一気に百人以上増えていたことに驚愕しました。
さて、今回はついにあの話に入ります。
それではお楽しみください。


歓声は悲鳴へと変わる

 あれからまた月日が経ち、カミナを含めグレン団一同はとあるライブ会場に来ていた。

 

「ほー、でっけーな」

 

「以前、僕達が行ったものよりずっと大規模なライブですからね。人気上昇中の彼女達にはピッタリの会場ですよ」

 

 彼らは奏からツヴァイウィングのライブに誘われた。全員行くと伝えると本ライブのチケットを渡され、全員が驚愕し、奏が本物のアーティストなんだと実感させられた。

 

「人が多いな」

 

「それだけ人気なんだね。やっぱすごいなー、奏ちゃん」

 

 周りをキョロキョロしているジョーとあっちゃんは素直な感想を口にする。

 

「そう言えばテッド君、鉄平君とファット君がいないけどどうしたのかな?」

 

「あいつらライブ始まる前に腹ごしらえしとくってよ」

 

「あの二人はまた勝手に……」

 

 困った顔をするメガネにあっちゃんがまぁまぁと宥める。

 

「まだライブ開始まで時間があるから、折角だしもう少し自由行動してみない?」

 

 あっちゃんの提案に全員が賛同し、後でまたここで落ち合うことにした。

 皆と別れたカミナとメガネは一緒に売店を巡ることにした。

 

「改めて見ると、あいつ等って本当に人気者なんだな」

 

「それはそうでしょう。あの歌声でも充分素晴らしいのに、あの容姿ですから幅広く人気が出てもおかしくはありません」

 

「そうか? 翼の嬢ちゃんは兎も角、奏は普通だろ。まぁ、胸がでけぇのは確かだが」

 

「む、胸って……まったく君と言う人は」

 

 未だにそこらへんが初心なメガネは顔を赤くしてメガネをかけ直すポーズをとった。

 

「だけどさ、やっぱ有名になってもあいつはあいつなんだなって思うよ。俺達のよく知る天羽奏だって」

 

「……ええ、そうですね。昔から意地っ張りで、負けず嫌いで、男勝りで、何事も一生懸命でしたから。このまま、遠くに飛んでいってもそれは変わらないでしょうね」

 

「そうだろうな」

 

「うわっ!」

 

 ふと上を見上げてしまったカミナは誤って一人の少女とぶつかってしまった。

 それに気付いた時には少女は既にしりもちをついていた。

 

「大丈夫か、嬢ちゃん?」

 

 ぶつかった少女が少々小柄だったのともともと体格の大きいカミナがぶつかれば、少女が倒れるのは当然である。

 

「す、すみません。私が余所見をしてて。本当にごめんなさい!」

 

「いえ、僕の友人が余所見をしてた所為ですから」

 

「私、こういう所に来るの初めてで……本当にごめんなさい!」

 

 ぶつかってしまったのが年上の所為であろうか、少女はてんぱって何度も頭を下げる。

 周りから不審な目で見られ始めたことに気付いたメガネは彼女を早く落ち着かせようと思ったが、一体どうすれば良いのかと頭を悩ませるが良い案が浮かばない。メガネはグレン団のメンバー意外の異性と碌に話したことが無く、以前ラーメン屋で出会った美女に動揺するくらい初心なヘタレに浮かぶ筈が無かった。

 しかし、頭で考えるよりも先に動く男が彼の隣にいた。

 

「嬢ちゃん!」

 

「は、はい!」

 

 幸か不幸か、カミナの大声に少女はびっくりして謝るのを止めた。

 

「良いか、自分が悪くないのに悪いなんて言うんじゃねぇ! 嬢ちゃんがぶつかったのは俺が余所見をしていたからだ! 自分に非がない事を自分の所為にするな! 相手が悪いなら堂々と悪いと言え!」

 

「え、えっと……」

 

「……君は年下の女の子に何を言ってるんですか」

 

 カミナの言葉に少女はどう反応すれば良いのか分からない顔をしている。それを見ていたメガネは少女に同情した。流石にまだ中学生(メガネ推測)の少女にカミナのトンデモ理論を叩き込むのは如何なものか。

 

「じゃあ、メガネは俺じゃなくて嬢ちゃんが悪いって言うのかよ!」

 

「いえ、十中八九、君の余所見が原因ですが……」

 

 それを聞いたカミナは納得したように頷いて少女を見る。

 

「そういうこった。自分が悪くないのに下手(したて)に出ると相手はつけあがるんだ。だから相手が年上だろうが年下だろうが関係ねぇ、自分が正しいって思ったら最後までその思いを貫き続けろ!」

 

「は、はぁ」

 

 そんなことを大声で話すカミナが別の意味で目立ち始めていることに気付いたメガネは、さっさとここから離れる為に強硬策に出ることにした。

 

「そろそろ集合時間ですから行きますよ」

 

「ちょっと待て、まだ話は終わってねぇ!」

 

「はいはい、遅れるとあっちゃんのフライパンで顔面叩かれますよ」

 

 それを聞いたカミナは少しだけ大人しくなった。今のグレン団にとってあっちゃんは陰の団長となりつつある。今では彼女の機嫌を損ねることだけは絶対にしてはならないというのが、彼女を除く全メンバーの暗黙の了解なのだ。

 

「お嬢さん、この人の言ったことは全部鵜呑みにすると痛い目を見ますから忘れてください。それと初めてのライブ楽しんでください。彼女もそれを望んでますから」

 

 それを言うとメガネは無理矢理カミナを引き摺るようにここから立ち去っていった。

 

「凄い……凄い変な人達だ」

 

 少女は素直な感想を口にする。

 正直、先程まで自分に向けて話していた人の内容の意味を半分も理解出来なかった。なんだかとっても凄いことを言っている気がするが、目の前にいる人達の存在感で話を聞く余裕はなかった。

 それでも、印象に残ったものがあった。

 一つは、その少年が着ていた上着の後ろに描かれていたサングラスを掛けた髑髏を象る炎。

 もう一つは、彼が最後に口にしたあの言葉。

 

―――――自分が正しいって思ったら最後までその思いを貫き続けろ!

 

 その言葉を覚えていたことで少女の運命は少しだけ変わることになるのだが、あの少年達はそのことを知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 合流したカミナ達が会場に入る同時刻、奏と翼はライブが始まるのを待っていた。

 

「そろそろあいつ等が着いてる頃かな」

 

 時計を見て奏は呟いた。

 

「奏の友達のこと?」

 

「ああ。今頃、楽しみにしてんだろうなって思うとさ、あいつ等の度肝を抜いてやりてぇって心が昂るんだ」

 

「……奏、少し変わったよね」

 

「ん?」

 

 翼の言葉に奏はキョトンと首を傾げる。

 

「前は間が持たないから早く始まらないかなって言ってたのに、あの人達に会ってから、私と一緒に歌い始めた頃よりも心に余裕が出てる気がするの」

 

「そうかぁ? そんなことな……いや、きっと翼の言う通りなんだろうな」

 

 上を見上げて奏は自分が少しだけ変わったのだと気付いた。 

 

「本当はさ、あいつ等に会うまであたしは歌ってて良いのかなって思うことがあったんだ。子供の頃にとっても大切だったあいつ等との思い出を全部捨てたあたしが誰かの為に歌って良いのかって罪悪感に襲われて、もう辞めようかなって思うことがあったりしてさ」

 

 初めて聞かされる奏の思いに翼は驚いた。彼女はそんな素振りを一度も見せたことは無かった。いつも明るくお節介で意地悪な奏しか、翼は知らなかった。

 

「実際、歌を思いっきし歌ってる時ぐらいしか、そんなこと忘れることが出来なかった」

 

 どうして相談してくれなかったのだろうかと言おうとしたが、その答えは奏での言葉で遮られた。

 

「でも翼がいてくれたから、あたしは歌い続けることが出来た。あたしの隣で一生懸命に練習して、上手くなって笑っていてくれたから歌い続けられた」

 

 それを言われて翼は少しだけ照れくさくなって顔を赤らめた。

 

「でも時間が経つにつれて少しずつあの罪悪感が募っていった。もう限界かなって思ったそんな時にあいつがあたしを見つけてくれた」

 

 あいつとは誰なのか翼は直ぐに頭に浮かんだ。

 

「昔っからあいつはあたし等が困ってると、勝手に首突っ込んできては、口にしてもねぇのにやって欲しいことをやっちまう。だからさ、あの時もあたしの事を心配してるって、待ってるって言ってくれた時は一気に憑き物が落ちた気分だった。そんなあいつ等が応援してるから、もうあたしは後ろを見なくて良いんだって、全力で飛んでいいんだって思うようになった。だからなんだろうな、翼が変わったって思ったのは」

 

「本当に凄い人なんだね、あの人。ちょっと非常識だけど」

 

「初めて会った翼にとっては衝撃的だっただろ?」

 

「うん」

 

「奏、翼、ここに居たか」

 

 そんなことを話していると弦十郎がやって来た。

 

「司令」

 

「こりゃまた弦十郎の旦那」

 

 珍しくスーツをしっかりと着ていることに奏は内心驚いていた。だが、彼がそんな姿でいると言う事はこのライブで秘密裏に行われることがそれほど重要なのだと改めて感じさせられる。

 

「分かってると思うが、今日は」

 

「大事だって言いたいんだろ。分かってるからダイジョブだって」

 

「ふっ。分かっているならそれでいい。今日のライブの結果が人類の未来を懸けてるってことをな」

 

 それから奏と翼は自分達の向かうステージへと足を運んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 ツヴァイウィングのライブは時間通り始まった。最初の曲はもちろん『逆光のフリューゲル』だ。

 

「ねぇねぇ、奏ちゃん来たよ!」

 

 テンションが上がったあっちゃんは隣に座っているジョーの背中をたたく。

 

「あっちゃん、分かるから叩くな、地味にいてぇ!」

 

「やっぱ、可愛いなぁ翼ちゃん。言っちゃ悪いが、奏がグレン団にいてくれて良かったわ」

 

「現金な奴だな」

 

「そうだね」

 

 鉄平はニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべており、テッドとのっぽがそれを見て呆れていた。ファットは相変わらずマイペースにソフトドリンクを飲みつつライブを楽しんでいる。

 奏はグレン団のメンバーに気付いたのか、ステージを移動している途中で少しだけニッっと笑って見せた。

 

「どうやら気付いたようですね」

 

「みたいだな」

 

 それに気付いたカミナとメガネもあっちゃん達に混ざってライブを満喫していた。

 最初の曲が終わった後も、熱狂は冷めることなくライブは更に盛り上がる。ライブ会場にいる誰もが最高の気持ちになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、多くの歓声が一瞬にして悲鳴へと変貌した。

 

 

 

 

 

 

 

 突然の爆発にカミナ達は揃って何事かと辺りを見渡す。

 

「なんだ、何が起こった?」

 

「分かりません。ですが、ここから避難した方が良いでしょう。幸い非常口に近いですからすぐに非難を」

 

 メガネの冷静な判断に従い、カミナ達は周りの客に呼びかけながら非常口を目指した。

 

「ノイズだー!!!」

 

 その声の言う通り、床から大量のノイズが出現していた。加えて空からも飛行型のノイズが現れる。

 

「なんだこのタイミングの悪さはよ!」

 

「鉄平、愚痴なんて言ってないで逃げるの!」

 

 少々離れていても何時こちらに飛んでくるか分からない以上、急いで逃げることを優先する。

 加えて、爆発とノイズによる混乱の中で統率の取れる動きなど出来る筈もなく、非常口に入った後も人が溢れておりその中を彼らは進んでいく。

 恐怖による悲鳴が、我先に生き残りたいが故に漏れる怒声が、助けを呼ぶ声が響き渡る。

 

「おい、奏達はどうすんだ」

 

 そんな中でカミナは大切な事を思い出す。ステージの上に立っていた奏と翼が無事に逃げ切れたのか分からない。

 

「おそらくスタッフの方が……」

 

「この混乱にそんな余裕ある訳ねぇだろ!」

 

 カミナはすぐさま元来た道を戻り始めた。

 

「あー、もう君と言う人は!」

 

 考えなしですか、と口ずさみながらメガネはカミナの後を追う。

 

「メガネ!」

 

 突然二人が離れたことに皆は驚くが、流れに呑まれて二人から徐々に引き離されていく。

 

「ジョー、皆さんをお願いします!」

 

 それだけ言い残して二人は人ごみの中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 同じルートでなければ、ステージに行くのは簡単だった。人ごみの少ない所を通り、ステージの全体を眺められる場所にカミナ達は急いで向かう。

 カミナの後に続いて外に出たメガネはその光景に目を疑った。

 

「なん……ですか、アレは……」

 

 先程までライブをしていたステージはボロボロになっており、ノイズの被害による炭素の塵が散乱している中、ノイズを倒す二人の少女を目にする。

 歌を歌いながら、刀と槍でノイズを倒してる少女達は翼と奏だった。身に纏っている物がライブの時と違っていてもあの顔だけは絶対見間違えるはずがなかった。

 

「これは一体……」

 

 彼はシンフォギアと言う存在を知らない。認定特異災害ノイズに対抗しうる唯一の装備であるが、現行憲法に抵触しかねないため完全秘匿状態とされる。故に彼女達がノイズを倒している光景に驚きを隠せない。

 

「おい嬢ちゃん、何やってんだ! 早く逃げろ!!」

 

 カミナが唐突に誰かに向けて叫ぶ。メガネはカミナの見ている方へと目を向けるとそこには先程、カミナとぶつかった少女であった。何故この状況下で逃げていないのかと彼は内心悪態をつきながらも、カミナと一緒に彼女の元へと駆ける。

 だが、彼女の元に辿り着く直前、彼女の足元が一気に崩れ落ちる。幸い、少女は瓦礫に埋もれることは無かったが、彼女の存在に気付いた人型のノイズが襲い掛かる。

 

「んなろうっ!!」 

 

 彼女に襲い掛かる一歩手前で奏が助けに入る。すぐに逃げるよう少女に言うが、足を怪我した少女は思うように足が動かない。

 それからノイズは奏と少女に向けて何度も攻撃を仕掛ける。奏は手にした槍を振り回して少女を守り切ろうとする。

 纏っているシンフォギアに亀裂が入る。リンカーと呼ばれる薬を投薬することによって、シンフォギアを纏うに必要とする適合係数を強制的に引き上げることで戦える奏は今回のライブに限りそれを投薬していなかった。

 それが不幸を呼んだのか、奏のシンフォギアが砕けると、その破片が少女の胸に当たってしまった。

 

「っ!」

 

 それを目にした奏は息が止まる気分だった。目の前で守るべき少女に怪我をさせてしまったことに、思考が一瞬だけ止まってしまう。

 

「嬢ちゃん!!」

 

 だが、彼の声で奏は再び意識を取り戻す。

 胸から血を流す少女に、駆け寄ってきたのはカミナだった。後ろからメガネも追ってきている。何故ここに居るのかと疑問に思うのは二の次だった。奏は急いで少女の元へと駆けつける。

 

「おい嬢ちゃん、しっかりしろ! 目を開けろ!」

 

 ぐったりと倒れていた少女を起こし、カミナは呼びかける。

 

「死ぬな! 死んじゃダメだ! 生きるのを諦めるな!」

 

 奏も駆けつけ、瞼を閉じたままの少女に意識をしっかり持つよう呼びかける。それが届いたのか、少女はうっすらと瞼を開ける。

 

「二人共、手を放してください。とにかく止血します。このままでは彼女は助かりません!」

 

 二人の後から駆けつけたメガネはこの時混乱していた。目の前の状況に対し何ら呑み込めていない。奏の姿も、ノイズがいるのに少女を助けようとするカミナの行動にも全く理解が追いついていない。

 しかし、それでも分かっていることが一つだけある。それは彼らが彼女を助けようとしていることだ。ならば、その手助けを出来るのはここに自分しかいない。これでも医者の息子である彼は応急処置位が出来る程度の知識を叩き込んでいる。

 彼は混乱した頭を無理矢理リセットして、自分の作業に取り掛かる。

 

「助かる……のか?」

 

「助けて見せます! 二人の無茶に付き合ってあげます! だから、貴方は貴方のするべきことをしてください! その代わり絶対に助けて見せますから!」

 

 メガネの普段とは想像もつかない必死な言葉に奏は気付かされる。このままでいても自分が彼女にしてやれることは無い。ならば、自分に出来る事は何だろうか。

 

(ああ、そうだ……。あたしに出来る事はそれしかないじゃないか)

 

 少女をカミナ達に任せた奏は槍を再び携えて、カミナ達をノイズから守るように立った。

 目の前には未だに数多くのノイズが蔓延っている。このままでは生き残っている観客だけでなく自分の友達にも被害が出かねない。

 ならば、ここで奴らを一度に一掃すれば片が付く。

 

(いつか、心と体、全部空っぽにして歌いたかったんだよな……。そして全部終わったら、あいつに言いたかったな)

 

 故に奏はここで『最後の歌』を歌う覚悟を決めた。




如何でしたか?
原作一期の第一話の前半の話に到達です。
そして、次回、物語は新たな動きを見せる(予定だよ(笑))。
それでは今回はこれにて。
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