このぞんぞんな世界に救済を!   作:ちょむすけ

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なかなか筆…スマホだから指か。が進まず早数ヶ月ようやく更新できたが…いかんせん前半と後半で一月ほど開けたから違和感があるかもしれないです。


このぞんぞんな世界で日常を!

こっちに来てから一ヶ月くらいたったある日

 

「珍しいわね、佐藤くんがこんな朝早くから起きてるなんて」

 

俺が食堂に行くと若狭が声をかけてきた。

 

「今までずっと徹夜してただけだよ。今日みたいな暑い日はキンキンに冷やした部屋で惰眠を貪るに限る」

 

「また徹夜でゲームしてたのね。これだからヒキニートは」

 

校舎内に『自由な』ゾンビが完全にいなくなって、学校周りをバカでかい城壁でアクアが囲んで安全になってからずっと昼間から飲んだくれてるこいつにだけは言われたくない。

 

「夜更かしはダメよカズマくん。と言うかあなたはゲームのやり過ぎです。夜更かしは身体に悪いのよ。そうだ、ここはみんなと一緒に勉強でもすれば夜も眠たくなるしいいことづくめ…」

 

めぐねえがなんか言ってるが俺は気にしない。

俺は佐藤和真。親から何を言われても動じずに居続けた男。たかが教師の戯言に流されて辛い道を行くなどという愚行は犯さない。

 

ちなみに佐倉さんの呼び名は今度はめぐねえに変わることになった。なんかみんなそう呼んでたし俺もそう呼ぶようにしたのだ。

 

「というかお前は最近武器の整備すらしてないじゃないか。帰ってから困るぞ」

 

「俺もう冒険者は引退してこれからは堅実に生きていこうと思うんだよ。ほらもう一生遊んで暮らせるだけの金稼いでるわけだし」

 

「またいつかみたくトチ狂ったこと言い出しましたよこの男」

 

「お兄様は冒険者を辞めてしまうのですか?」

 

アイリスの悲しそうな眼を見ると言ったことを捻じ曲げそうになるが、そもそも俺は魔王を倒した勇者だぞ。

そういうのって冒険終わったらちやほやされながら遊んで暮らすって相場が決まってるもんだろ。俺はちやほやされた覚えはほとんどない。だから遊んで暮らすくらいはやらないと割に合わない。

 

「ねーカズマがニートなのは今更だし、今はそんなこといいじゃない。遊んで暮らせるならそれはいいことだと私も思うの。それはそうと今日の夜も暑いらしいからあとで氷作ってくれる?」

 

「まあそれくらいはいいけど、そう言えばお前こそ今日早いじゃないか」

 

「なんかゼル帝にごはんあげないとって思ったら早く起きちゃったのよ。ああ、あの腐れ悪魔のところにいるゼル帝が心配だわ」

 

そういやこっち来てからもうかなり経ってるな。

ゼル帝もそろそろこいつの顔を完全に忘れてるんじゃないか?

まあ、元々突かれたりとかはしてたけど。

 

「ねーアクアちゃん、そのゼル帝?って誰?」

 

「ゼル帝はね、この私が卵の時から魔力を与えつつ育てて来たドラゴンなのよ!まだ子供なんだけど、すっごい魔力を持ってるんだから」

 

「本当に!?すごいねー!」

 

そんな話を横目に席に着くと、恵飛須沢がこっちに寄って来た。

 

「なあ、ドラゴン飼ってるとか言ったけど…マジで?ていうかそっちの世界にはドラゴンとかいんのかよ」

 

「ドラゴンはいることにはいるし、実際アイリスとかマジでドラゴンを倒したからドラゴンスレイヤーなんて呼び方されたりしてる」

 

「マジでか…ってことはそのゼル帝ってのはマジでドラゴンなのか!?」

 

期待してるとこ悪いがゼル帝は断じてドラゴンなんて高尚なものなんかじゃない。

 

「いや、ゼル帝はただのニワトリだ。アクアの奴がこれはドラゴンの卵だって言われて大金叩いて買ったらしい」

 

「つまり詐欺にあったと…言ってやれよ…流石にずっと知らないってのは可哀想だろ」

 

「言ったぞ。でもあいつはゼル帝がニワトリだってことを頑なに認めようとしないんだよ」

 

まあ、最近のゼル帝の鳴き声は朝には欠かせないものになって来てるし、全く役に立たないってわけでもない。

あとゼル帝がいるとアクアがあんまりアホな行動しなくなるから助かるしな。

 

と、そんなことを考えてたらアクアがこっちを見て反論してきた。

 

「ふんっ。そんなこと言ってゼル帝のことバカにしてるといつか立派なシャギードラゴンになった時、食べられちゃっても知らないんだからね」

 

ダメだこいつはもう救いようがない。

 

見ると、ダクネスやめぐみん、だけじゃなくクリスやアイリスまで可哀想なものを見る目をしてる。

 

「あと、向こうの世界の俺たちの屋敷には力を封印された邪神とかもペットとしている」

 

「おいおいそれは流石に冗談だろ?」

 

「本当ですよ。今はちょむすけという名前になっていますがあの子は元々はウォルバクと言う名前で、私の故郷の紅魔の里に封印されてた邪神です」

 

「もうめぐみんのネーミングには突っ込まないけどさ、なんでそんなのがペットなんかになってるんだよ」

 

「昔私が封印を解いてしまいまして。まだ力が完全だったちょむすけに襲われたのですが、その時はとあるお姉さんに助けられ事なきを得ました。けどその後にこめっこ…私の妹が封印を解いてしまいまして…その後、なんやかんやあって家のペットになってます」

 

「ってちょっと待ってくださいめぐみんさん!ウォルバクって確か魔王軍幹部の…」

 

うちの羽が生えた謎猫…もといちょむすけの話をしていると、アイリスが話に入ってきた。

そういやその辺のことは言ってなかったか。

 

「魔王軍幹部の方のウォルバクはちょむすけの半身なんだよ。ちなみにまだ邪神としての力が封印されてなかった時のちょむすけがめぐみんを襲った時に助けたお姉さんってのがそいつらしい」

 

「ええ。そして彼女は我が爆裂道の原点と言うべき存在でもあるのです!」

 

「へえ〜」

 

「じゃあそのウォルバクさんって方がめぐみんさんの憧れの人なのね」

 

めぐねえも会話の中に入ってきた。

なんかこの人最近影薄くなってる気がするな。

 

「あれ…?でも、ウォルバクを討伐したのってめぐみんさんじゃ…」

 

「そこには一日では語れないことがあったのですよアイリス。止むに止まれぬ事情があったとはいえ、恩人をこの手にかけることになってショックを受けた私は少し自棄になってカズマと一線を越えようとしたりもしましたが」

 

「ちょっと待ってください!そこのところ詳しく!」

 

「まあ、結局何事もなかったのですが。けど、あの時一線を超えてれば良かったと思うことが最近多くなりましたね」

 

「そんなことは私がいるうちは絶対にさせませんよ!」

 

めぐみんとアイリスがまた騒がしく言い合いを始めていた。

うん、毎回思うけどなんかいいな、コレ。

そしてこの流れに恵飛須沢たちも慣れてきたのか二人の喧嘩を止めようとする人は誰もいない。

 

「あたしも聞きたい事あるんだけどいいか?」

 

「どうした恵飛須沢」

 

「ウォルバクって邪神の事とめぐみんの関係とかはよくわかったしいいけどさ、そもそもなんでめぐみんの故郷にそんなのが封印されてんのさ」

 

「それはですね、我々の御先祖様が邪神との激戦をくり…ひろ…げ…」

 

「おいどうしたよ。邪魔しないからその先を言ってみろって」

 

そう言いながら俺はめぐみんの顔を至近距離でじっと見つめる。

そしてアクアとダクネスも。

嘘を吐くとチンチン鳴る魔道具があったら鳴っていただろう。

つーか真実を知ってる奴が三人もいるのによく嘘つく気になったな。

 

「………。『邪神が封印されてる地って何だか格好いいよな』と誰かが言い出し、どこかの誰かが封印した邪神を勝手に拉致し、里の隅っこに再封印して観光名所にしたのです」

 

「お前らの先祖何やってんの!?」

 

他にもマイナーな女神を封印したり、魔王の娘の部屋を覗ける望遠鏡を観光名所にしたりとやりたい放題な奴らだったりする。

 

「なあ、めぐみんたちの一族ってみんなあんななのか?」

 

「ああ。流石に紅魔族の中でも爆裂魔法はネタ扱いらしいが、それ以外の感性はめぐみんとそんな変わらない」

 

「なんか思ってたのと違うな…」

 

恵飛須沢は邪神の封印とかもさっきめぐみんが吐こうとした嘘みたいなのを想像してたんだろう。

事実はこの上なく下らないけど。

その気持ちはよくわかる。

 

「みんな、朝ごはんできたから話は終わりにしてそろそろ食べましょう」

 

そしてみんなして飯を食って、その後俺は当初の予定通り惰眠を貪った。

 

 

 

「『エクスプロージョン』ッッ!」

 

いつものように爆裂魔法の轟音が鳴り響く。

ただ、最近はもうゾンビが寄ってこない。

多分近くのゾンビのほとんどが爆裂したんだろう。

 

「今日の爆裂は八十点な。衝撃のビリビリとした感覚がいつもより少なかった」

 

「くっ、確かに今日は少し調子が悪かったです」

 

「違いがわからねぇ」

 

「ふっ爆裂ソムリエとしてはまだまだだな恵飛須沢も」

 

「ええ、ですがクルミも私たちの爆裂散歩についてくる内に良し悪しがわかるようになるでしょう」

 

「そもそもそんなもん目指してないんだけど、毎回やってんだなそれ」

 

「それじゃあ今日の爆裂も終わったし、探索に行くか」

 

最近は潜伏スキルすら使わなくなった。

というかそもそも移動は車だ。めぐねえに教わってからはもう徒歩で行くことは殆どない。

 

「あ、そういえばりーさんが野菜の種探して持って帰ってきてくれってさ」

 

「了解。じゃあホームセンターも寄るってことでいいな」

 

ゾンビゲーなら外に出るだけで命がけだが、俺たちの場合はそうじゃない。

 

爆裂狂のめぐみんはともかくとして、俺にはクリエイトウォーターとフリーズのコンボで大抵どうにかなるし、ダクネスは筋肉が硬すぎてそもそもゾンビの歯が通らない。

アイリスは言わずもがなだし、そもそも感染してもアクアがいる限りどうとでもなる。

 

さらに拠点の学校では、元からある発電装置に加えて、俺が自動車のバッテリーを使って作った蓄電装置のおかげでゲームはやり放題だし、食料も集めれば豊富。

ぶっちゃけアクセルの街にある屋敷にいた頃よりも快適だ。

何よりモンスターもいなければクエストもない、ずっと引きこもってられる。

サキュバスのお店がアクセルになかったらきっと俺はここで年単位で暮らすことを選んだはずだ

 

「なんかあたしたちが毎日ビクビクして暮らしてたのが嘘みたいだ…」

 

「なんだよ藪から棒に」

 

「お前たちがこっちにくる前はさ、こんな風に外に出歩くなんて考えられなかったからさ」

 

確かに、来たばっかの時とかは学校内はゾンビが歩き回ってる上に所々血の跡がついた、見たままゾンビものの映画とかゲームとかの見た目だった。

そう考えると、パンデミックが起こる前に死んで、転生して、魔王の討伐金やらバニルに売った知識やらで楽に暮らせてる俺はマジで運が良かったのかもしれない。

 

「お前たちが来てからこうやって毎日笑いながら面白ろおかしく暮らしてる。なんか夢みたいだ…」

 

「私たちもこっちに来てから学校に着くまではギャーギャー言いながら必死に逃げましたけどね」

 

「そうなのか?」

 

「確かにアクアの浄化魔法が効かなかった時は結構焦った」

 

もしかしたらまた死んで今度はアクアの代わりに死者の案内やってる天使にあってたかもしれない。

 

「まあでもなんだかんだいつも通りな感じだったな」

 

向こうでも似たような感じだった。

厄介なことに巻き込まれてたまに死んで。

今回は死んではないけど、なんで俺はこう厄介な出来事に巻き込まれるのか。

 

「まあ、ダラダラ出来るうちはダラダラしとけばいいんだよ。向こうに帰ったら帰ったで、面倒臭いことになるのは分かり切ってるからな」

 

もし、国家反逆罪みたいなのにされそうになったら本格的に今は別荘となってる魔王城に引っ越すとしよう。

 

「おっ、この辺の道確か知ってるとこだ。この辺に酒屋があったはずだからいくつか拝借してこう」

 

この辺りは本当に俺の家に近かったはずだ。

寄ろうとは思わないが。

だからこの辺の店屋は割と知ってる。

 

「お前、まあアクアもだけどさ。今更飲むなとは言わないけど二日酔いになるまで飲むのはやめた方がいいんじゃないか?そろそろめぐねえが本気でキレそうだぞ」

 

「大丈夫だ。もし仮に酒を取り上げられても俺にはスティールがある」

 

敢えてスティールで何を奪るかまでは言わない。そもそもランダムだしな。

そしてめぐみんの俺の見る目がゴミを見る目になった。

 

「前に、お前がそのスキルを女に使うと99%パンツ奪るって言ってなかったか?」

 

俺は無言で恵飛須沢から目をそらした。

恵飛須沢の目もゴミを見る目だった。

 




次回、デパートに行きます。多分

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