ダンまち ロキ・ファミリアの放浪人   作:テガミバチ

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お久しぶりです。
どうもテガミバチです。
前回投稿から三か月近く経ち、寒くなりましたね。寒くなってくると自分の持ち服の少なさが顕著に感じられるようになってきました。大学に行く服装も、ジーパンとパーカーのローテで流石に寂しいと感じています。全部、自己完結する悩みですね。

閑話休題。
前話投稿時に長くなったため切りましたと言いましたが、想像以上に伸びに伸びて、三話構成に、下手をすれば四話構成になりそうであります。今回の二話も「あれ?一話いらなくね?」となりそうな内容になってしまいました。なので、この話からでも十分に楽しめるのではないかと思います。

それではどうぞ



遊戯大会 そのⅡ

『王様ゲーム』開催当日

 

談話室には燈火をはじめ、ロキ、アイズ、レフィーヤ、ティオネ、ティオナ、フィン、リヴェリアが集まっていた。

 

ここにはいないガレスは専属鍛冶に用があり出かけており、ベートは先日の酔った時の失態の事について未だに自室で凹んでいた。

しかし、燈火たちにとってこのことは想定済み、というより想定通りの事だった。

燈火たちの目的は、事前になるべく人数を減らすことだった。なので、ガレスについては事前に予定を調べ、その日に合わせて事を起こしたのでやや申し訳なく思っていた。

しかし、元々このようなことに興味がなさそうというか、「若いもんで楽しむといい、ガッハハハ」なんて事を言うかもしれないという希望的観測もあった。

 

ベートの事については誤算だったが、本来の目的からしたらいい事だったと言える。嬉しい誤算。

人が凹んで引きこもっている時に、嬉しい誤算などというのは些か酷い扱いな気がするが、しかし、ベートについてはあまり申し訳ないという感情がわかなかった事が申し訳なく思っていた。別に嫌いというわけではないが、一々突っかかってきたりめんどくさいところがあると言うか、こういう時は居ないほうが穏便に物事が進行しやすくなる。

大事なのでもう一度言うが、決して嫌いというわけではない。

 

その他の団員達も、燈火たちのかなり個人的な思惑のため声をかけられてはいなかった。そもそも、幹部クラスの人物ばかりの遊戯大会に参加したがるもの好きもあまりいるとも思えないし、そんなものに誘うのも断わりずらくなってしまうという一応のちゃんとした配慮のもとの判断だ。

 

燈火とロキはこの日のために、周りからすればかなり馬鹿げたことかもしれないが、本気で準備してきた。罰ゲーム用の備品や今回のイベントの鍵を握るくじの棒。

正真正銘のタネも仕掛けも無いただの棒。棒切れ。目印も無ければ、特徴的な形をしているわけでもない。

しかし燈火たちにとっては、その棒こそがタネであり仕掛けであった。

この仕掛けについては燈火から提案されたもので、最初はロキも無茶だとは思っていたのだが、見返りの大きさに目がくらんでしまった。見る人によっては金銀財宝よりも遥かに価値のあるその報酬に。

 

こうして、燈火・ロキ両名による計略と自己満足にまみれた『王様ゲーム』の火ぶたが切って落とされた。

 

 

~~~~~

 

 

『王様ゲーム』を始めるにあったて、燈火が立ち上がり最初に始まりのあいさつとルール説明が行われた。

 

「え~、本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。特にフィン様とリヴェリア様につきましては本当にありがとうございます」

 

燈火のわざとらしいあいさつに、フィンはやや苦笑いを浮かべ、リヴェリアもそれに倣うように応えた。

 

「ウォーカーに様付けされるのは何だか落ち着かないよ」

 

「同感だな」

 

そしてフィンはティオネに向き直り、

 

「まあ、ティオネにあそこまで必死に頼まれたら無碍にもできないしね」

 

「ありがとうございます、団長!」

 

リヴェリアもレフィーヤに対し少し口角を上げ揶揄うな声音で、

 

「レフィーヤもあんな風におねだりするのも珍しいしな。貴重なものが見られた」

 

「うぅぅ……すみません」

 

「いや、別に怒ってるわけではない。たまにはこうやって休日を過ごすのものも悪くない」

 

すると、燈火が『おねだり』のワードに反応した。

 

「え? レフィーヤ、お願いじゃなくておねだりしたの? どんな感じだった?」

 

「ああ、私の目の前で涙目になりながらの上目遣いといった乙女を全面に押し出し「イヤャャャ! やめて下さい!」・・・…ふふ、しかしあれはお願いには見えなかったな。おねだりが適切な表現だと思うが?」

 

自分の黒歴史を暴露されていることに気づいたレフィーヤが顔を真っ赤にしながら絶叫した。

 

「あれはロキがやれって! やれば誰もがOKしてくれる秘技だって! お願いの究極系だって!」

 

「確かにウチが教えたけど、まさかホンマにやるとは思わんもん。そうやったら? って背中押してあげただけやん」

 

ニヤニヤしながらロキがレフィーヤに対して自分の無実を主張する。

 

「まぁロキの言う事を鵜呑みにしてしまうのがレフィーヤの悪いところだな」

 

「うぅっ、反省します……」

 

「今回はいいものが、可愛いものが見れたからな、そこまで反省する必要は無い。寧ろしなくてもいいな」

 

リヴェリアが笑いながらそんなことを言ってくる。

 

「いえ……今後の自分のためにも、反省しなければなりません」

 

そう、恥しそうに顔を紅くしたまま俯き呟いた。

 

 

フィンとリヴェリアの言うように、今回の『王様ゲーム』に二人を誘ったのはティオネとレフィーヤだ。というより、燈火があえてこの二人に誘わせたのだ。ほかのメンバーは燈火から誘いを受けこの場にいるが、この二人だけは燈火とロキが協力を持ち掛けた二人によって誘われたのだ。

 

 

~~~~~

 

 

二人は最初に燈火から、フィンとリヴェリアを誘うように指示を受けていた。

最初と言っても、後にも先にもこの指示だけだったのだが。

 

以前にも言った通り、燈火やロキが声をかけるとどうも怪しさが念頭に来てしまい、誘いに乗ってくれるかが不安だったからだ。

その点フィンはティオネから、リヴェリアはレフィーヤから誘われれば、あまり余計な裏を考えることなく誘いに乗ってくれる可能性が高い。

そのために燈火は二人に頼んだ。そしてその思惑は燈火の理想の結果になった。燈火たちにとって最初の、そして同時に究極的の目標がフィンとリヴェリアをこの遊戯大会の場に参加させることだった。

遊戯大会の場にさえ二人を引っ張てこれれば、あとは燈火とロキの計略通りに事が進むと確信が、そしてその自信があったからだ。そしてティオネとレフィーヤの役目もフィンとリヴェリアを誘えた時点で終わっていた。

それを聞いたティオネはやや訝しんでいた。

 

「お疲れさん二人とも。協力感謝するよ」

 

「これで終わりなの?」

 

「ああ、十分だ。結局あまり協力らしい協力はしてもらはなかったな。ただのお使いみたいなもんだ。まぁその方が下手な罪悪感とかなくていいだろ。あとは大会当日を楽しみにしていてくれ。報酬もその日に見せられるよ」

 

「他に変な事やらされるよりはいいけど……何企んでるの?あんたの言う通り報酬貰う程の事をやったつもりないんだけど」

 

そしてホントお使い並みだったわよと付け足した。

 

「それは当日のお楽しみさ。気楽に期待してくれていいぜ!」

 

「団長に変なことしたら、どうなるか分かってるでしょうね?」

 

自分から協力してしまった手前あまり強く言わないが、やはりフィンのことが心配なのか、ティオネはやや目付きを鋭くし燈火に釘を刺した。

 

「当然だろ、俺はまだ死にたくない」

 

「ならいいけど」

 

元々燈火はフィン達に酷いをするつもりは無いのだ。ティオネに釘を刺された燈火は、キリッと効果音が付きそうなほど大真面目な顔で、ともすれば逆にふざけている様な雰囲気を感じさせるようにティオネに応えた。

 

また、その心配はレフィーヤにもあるらしく、不安そうな顔でたずねてきた。

 

「あの……リヴェリア様にも変な事しませんよね?」

 

「ああ、そこも心配いらない。もし仮に変な事するったって、まずは『王様』を引かなきゃならないんだ。そう簡単な話ではないさね」

 

「それなら……良かったです」

 

そこまで言うと、燈火が思い出したかのように二人に声をかけた。

 

「あっ、じゃあ、あと一つだけいいか?」

 

「何?」

 

「当日くじに棒を使うんだけど、その棒を引いたら数字だけ隠してあとは棒全体が見えるようにしておいてくれ。まぁ数字を隠すのは当たり前の事なんだけど、棒全体は見せて欲しい。」

 

「持ち方の指示ですか?」

 

「そう……かな? 指示ってよりはお願いかな。当日ルール説明でも言うけど。でも、これだけで成功確率がグンと上がるからな。あと、引いた棒はなるべく動かさないようにしてくれ。フリフリされると全体を見せてもらってる意味がなくなる。」

 

そう言われてティオネは少し考えたが、なにか仕掛けがあるのか、何がどうなるか検討はつかず、燈火の指示に従うことにした。

 

「……わかった、それだけでいいのね?」

 

「ああ、ホントにそれだけでいい」

 

「私も大丈夫です」

 

「では、当日存分に楽しんでくれたまえ!」

 

「ええ、そうさせてもらう」

 

「はい、楽しみにしてます」

 

二人は返事をすると、燈火の元から立ち去った。

燈火はその二人の背中を眺めながら、計略の成功を確信し、微笑みを浮かべていた。

 

 

〜〜〜

 

 

今回、燈火が協力を得るにあたってティオネとレフィーヤに提示した報酬は当日に払うということになっている。そう、あくまでも払うのであって二人にとっては受け身でしかない。しかし、ティオネとレフィーヤに協力を求めた時の燈火の口ぶりからすると、報酬までの道のり示すかのような、自分たちで報酬までたどり着くように仕向けるような雰囲気だった。自分で『王様』を引いて命令ではなく、お願いをする。そんな雰囲気を漂わせていた。

しかし、肝心の道のりを燈火は伝えていない。しかもこれは伝え忘れているのではなく、意図的に伝えていない。

 

結論から述べると、今回の燈火たちの目的は、フィンとリヴェリアの普段は見れない貴重な姿を目に焼き付けること。目に焼き付け、いつか酒の肴にする事だ。そのために燈火たちは策をめぐらせ、行動を起こしてきた。そして、たどり着いた一つの答えを実現するために。

その答えとは、それは『王様ゲーム』中において、どうにかして人数を減らすことだった。遊戯大会の前に削るもの、そして開催中に削られるもの。事前に削るのは造作もない。では。ゲーム中にどうやって削るか。燈火たちは熟考の末、ティオネとレフィーヤに協力をしてもらうことにした。

 

こういう場合、燈火サイドの人間が増えるのは、計画成功を第一に考えた時にあまりよろしくはない。だが、それでも、協力者をゲーム中に亡き者にできるのなら話は別だ。そもそも最初からそのつもりで協力してもらっている。

しかし、本当に葬るわけではない。ゲームから、あくまでも自然にリタイアしてもらう。そう考えた時、抹殺リスト(リタイア候補)に名前が上がったのがティオネとレフィーヤだった。この二人が選ばれた理由は至極簡単なもので、ゲーム中に自然にリタイアさせることができる可能性が一番高いというものだった。そしてそれは、二人に払う報酬につながってくる。

 

報酬は燈火たちが払う。いや、実際には燈火が払う訳では無くあくまで燈火側が払う。ゲーム中に。そもそも「払う」という動詞では違う気がするが、それでも、協力の礼として払う。だから勧誘時は、ティオネとレフィーヤにクジの細工を教えそうな雰囲気を醸していた。しかし実際は違った。そもそもクジに細工はしていない。

燈火たちはティオネたちに『王様』を引かせる気はない。もちろん、実力で引くことはあるだろう。だが報酬として『王様』を引かせる気は毛頭ない。なぜ報酬として『王様』を引かせないのか。

ティオネたちに自ら引かせてしまうと報酬としての感動、あるいは衝撃が、本来燈火たちが考えている威力の半分ほどになってしまうからだ。燈火たちの思惑を成功させようとしたら、唐突に、意図せず起きた、ある種ハプニング的な要素が必要になってくるのだ。しかし、何も告げずにいきなりサプライズを行うと、逆に衝撃のあまり状況を処理しきれなくなる可能性があった。だから燈火はあらかじめ報酬となる何かがあると匂わせる必要があった。そのための協力要請だった。その加減が今回の一番の心配だった。

しかし、心配は杞憂に終わり、事は燈火たちの思惑通り進んだ。

 

そして、それらと、燈火たちの個人的な事前準備を終え、万全の状態で遊戯大会を迎えていた。

 

 

~~~~~

 

 

始まりのあいさつの後、燈火によって『王様ゲーム』のルール説明が行われた。

 

「それでは『王様ゲーム』のルールを説明します。まぁそれほど難しくないから聞き流す程度でいいよ」

 

「そうはいかないよ。ウォーカーたちが何を仕掛けてくるかわからないからね」

 

微笑みを浮かべながらフィンがそんなことを言ってくる。燈火がこの遊戯大会で何もしてこない方が可笑しいと、フィンの中では結論が出ているらしい。

 

「いやいや、流石にルールはいじらんよ?そこは公平にいかにいとね」

 

「ふむ、つまりルールではない、別のところですでに公平ではないのか?」

 

フィンの発言にリヴェリアも便乗してそんなことを言ってくる。

 

「い、いや? ほらこの遊びは運とかがかなり関係してるからさ。そこはさすがに公平とはいかにだろ?」

 

フィンとリヴェリアの口撃にやや怯みはしたが、なんとか平静を保つ。しかし、内心そんなに信用ないかね……と少し凹んでいた。

 

(危ないよ、この人たち!? 下手なこと言ったら、計画がいきなり頓挫しかねないよ! ルール説明だけでネタバレとか最悪じゃねえか! ってかまだルール一言もしゃべってないのにそこまで疑うかね・・・泣くよ?)

 

気を取り直し説明を続けようとしたが、しかし、さっきの発言の中にどうもひっかる文言があった。

 

「あの~一応聞きたいんだけどぉ『たち』ってだ~れ?」

 

燈火が猫なで声になりながら聞いた。先ほどフィンは会話の中で『燈火たち』と表現していた。つまり、この時点で燈火が何か仕掛けてくること、そして、それが複数犯である事が決定していた。

 

「自分で一応って言ってるじゃないか」

 

「自分の隣に座っている人物を見てみなよ」

 

リヴェリアとフィンに促され横を見ると、そこにはアイズが首をコテンらと傾げながら燈火を見上げていた。

そんな燈火のわざとらしさにフィンが苦笑いを浮かべながら訂正してくる。

 

「そっちじゃないよ。反対側さ」

 

燈火は、やや諦め気味に反対側を向いた。すると目のまえに真っ赤なポニテが現れた。何を隠そう今回の主犯、燈火の共犯者ロキである。二人は目が合うとえへへと照れ笑いを浮かべた。しかし、すぐに笑みを引っ込め、燈火から向き直ったロキが不満そうに、やや口元を尖らせながら、

 

「何や? うちももう疑われてるんか?早いな~、まだなんにも始まってへんのに。失礼しちゃうな~、な~トーカ」

 

と心外そうに文句をつけた。

 

「だよな~、ただみんなで楽しみたいだけなのにな~」

 

「当たり前と言ったら些か失礼かもしれんが、しかし、不気味なのは正直なところだな。特にお前ら二人の組み合はな。警戒して損はないだろう」

 

リヴェリアが言うように、そしてティオネとレフィーヤが感じたように、やはり燈火とロキという組み合わせは、ロクなイメージができないらしい。以前も言ったが、これといって前科があるわけではない。ただ、何となく、そこはかとなく、そんな気がするのだ。

リヴェリアたちも今回の遊戯大会、というより『王様ゲーム』が自分たちのために用意された物ではないかと疑っていた。一見、自意識過剰に、被害妄想も甚だしいと見えるかもしれない。しかし、日ごろのロキの行い、そして今回の遊戯大会が開かれるにあたって、誘いに来たのがロキたち本人ではなくティオネたちだったこと。そして高い可能性で燈火が関わっていることから、やはりこの遊戯大会は裏があると感じざる負えなかった。

 

「まあとりあえず、説明続けるぞ。そろそろ前振りが長いってキレられる」

 

「……誰に?」

 

「多くに皆さんに」

 

「??」

 

燈火の言葉にアイズは疑問を抱いたが、その返答もいまいち理解はできなかった。

 

「えーと、それじゃ説明するぞ。『王様ゲーム』ルール

其の一 王様の言う事は絶対順守

其の二 過激な命令は禁止。倫理観に則り、適度な命令を行うように

其の三 王様は命令の際、クジの番号を指定して行うこと

其の四 王様を決める際、くじを使いますが、引いたクジは隠さずにみなに見えるように持ちましょう

其の五 不正行為は証明され次第、強制罰ゲーム

其の六 最後にはみんなで楽しく終われるようにしましょう

以上六つのルールを守って遊びましょう」

 

「あの~、『其の六』ってどういうことですか?」

 

燈火の説明にレフィーヤが質問する。

 

「ん? ああ、これはまぁみんなで盛り上げて楽しみましょうってだけ。特に深い意味はないよ」

 

ルールを聞いて腑に落ちないのか、フィンをはじめみな難しい表情を浮かべていた。

 

「あんたが考えたにしては、随分と無難ね」

 

「だからお前も俺を何だと思ってるんだよ……」

 

「燈火さんならもっと、こう、含みのある危険なルールを設けてきそうで……」

 

「ねぇ俺もう泣いてもいいよね? 結構我慢したよね?」

 

ティオネとレフィーヤによる口撃には耐えられなかったらしく、よよよと泣き崩れるように腰を下ろした。

 

「燈火が説明したんは別に全部が燈火オリジナルとちゃうんや。ちゃんと原本があるから安心してええよ」

 

ロキが泣き崩れた燈火に代わり弁解する。

 

「最後のとかは燈火のオリジナルやけどな」

 

そう言うとロキは、燈火にゲームを始めるように促した。言われた燈火は、懐からクジの棒を取り出した。

 

「ゲームにはこのクジを使う。一応変な細工がないか確認してみてくれ」

 

そう言って燈火はクジを横にいるアイズに手渡した。

 

「……うん、大丈夫。特に細工があるようには……見えない。変なマークとかもないし」

 

「そうか、ありがとう」

 

アイズによる検査を終えると燈火が、それではと音頭を取った。

 

「皆さんお待ちかね『王様ゲーム』を始めよう」

 

 

 

 

「あ、間違えた。

 

 

        ――――――さあ、ゲームを始め「もうええからそれは」・・・ええぇぇ」

 

 

~~~~~

 

 

クジを持つ人は、燈火から順番に回している。初回燈火が持ち

 

「じゃあまずはお試しだな。俺がクジ持つから、皆引いてくれ」

 

燈火の合図に皆が手を伸ばした。

 

「皆引いたか? そんじゃ元気よく『王様だ~れだ』の掛け声とともに『王様』の人は申告してけれ」

 

「その掛け声は……必要なのか?」

 

リヴェリアが若干困ったように聞いてくる。

 

「勿論! このゲームの醍醐味じゃないかっ!」

 

「そ、そうなのか・・・まあいい。やろう」

 

やや諦め気味にリヴェリアが呟いた。

 

「それじゃいくぞ~」

 

『王様だ~れだ』

 

「おっ! うちやな!」

 

初回の『王様』はロキだった。

 

「最初だからホント軽いやつな」

 

「わかってるて。ほんじゃ~3番と7番が握手で」

 

「はい、3番は私です」

 

「……7番」

 

最初の指名は、レフィーヤとアイズだった。

 

「ア、アイズさんと、握手……!」

 

「? どうしたの?レフィーヤ」

 

「いえっ、何でもありません。じゃ、じゃあ手を」

 

「うん」

 

既に顔を赤くしたレフィーヤが、差し出されたアイズの手をそっと割れ物を扱うように握った。

 

(ふおおおぉぉおぉぉぉぉ、何ですか!この冒険者の物とは思えないようなスベスベモチモチの手は!ああ、幸せ!もう人生に後悔はありません!)

 

若干レフィーヤが天に召されかけたところで、命令は終わった。

 

「これで大体は分かってもらえたか?本当なら握手なんて初歩の初歩なんだけど、まぁ人によってはこうなるといういい例も見れたし」

 

「ああ、大丈夫だよ」

 

燈火の問いに、皆を代表してフィンが答えた。

 

「それじゃ、どんどんやっていこうか」

 

 

~~~

 

 

『王様だ~れだ』

 

最初の命令から幾つか周り、簡単な命令も出尽くしたころ、遂にあの二人が牙を剥いた。

 

「あ、俺だ」

 

「燈火か、じゃ何番にするんや?」

 

『王様』は燈火が引いた。ロキは残念そうに自分の引いた番号クジをコンコンと地面にぶつけていた。他のみんなも自分のクジを眺め、渋い顔をしていた。燈火はこの前にも何回か『王様』を引いていたが、その時は無難なもので済ませていた。そして今回は・・・

 

「そんじゃ~ね、ふっふっふ」

 

突然、燈火が不敵な笑い声をあげながら皆を見回した。ついに来たかと皆が構えた。そして燈火は一人祈るような格好をしている人のところで視線を止め、

 

「命令する、5番! 7番に……膝枕ぁぁ!」

 

「イェェーーーーイ!」

 

「おおお、急に大胆だね」

 

燈火が片腕を突き上げ、勝利を喜ぶような格好で叫び、それに便乗してロキも歓声を上げ、ティオナも感嘆の声を漏らした。

 

「…………!」

 

「…………本気かい?」

 

「本気も本気、超本気! やっぱり流れを変えるのは主催者の務めだろ!」

 

あるところでは、喜びを前面に表した表情を。またあるところでは、冷や汗を流し、苦笑いを浮かべていた。言わずもがな、ティオネとフィンである。

ティオネはピッと手をまっすぐ上げ、自分の番号を宣言した。

 

「5番ティオネです! 僭越ながら団長に膝枕をさせていただきます! さあ、団長!どうぞこちらに!」

 

「お、落ち着いて、ティオネ。今行くから、うん……」

 

フィンは燈火の命令に渋々従った。しかし、ティオネがとてもいい笑顔で迎えているため、あまり苦言を呈することはできなかった。

 

(確かに過激ではないが……これは大変なことになって来たな。これでも恐らく……心しないとね)

 

フィンが心の中で今後の展開について覚悟を決めていた。

 

「ああ、そうだティオネ」

 

「何?」

 

燈火は、喜色満面でフィンに膝枕をするティオネに命令の補足をした。

 

「膝枕と言っても定義はあいまいだからな。自分の思う膝枕をしてくれて構わないよ」

 

燈火の言い分に流石に思うところがあったのかフィンが言った。

 

「それはどうなんだい? それは命令の後付けじゃないか?」

 

「そんなことないさ。俺が命令したのはあくまで膝枕だからな。どんなオプションが付くかは、お前を嬉しそうに見下ろしてるやつに聞いてくれ」

 

そう言われ、フィンが目線を上にあげると

 

「ふふふふ」

 

ニッコニコのティオネの顔があった。視界にティオネの顔しか入らないくらい近い位置に。フィンは若干の不安を覚えながらティオネに質問を投げかけた。

 

「ティオネ……何かあるかい?」

 

「団長がしてもいいなら……やりたいことはあります! ……いいですか?」

 

ティオネが不安を滲ませながら聞いてきた。命令とは言え、一応の確認を取るあたりティオネがフィンをどれほど大事に思っているかが伝わって来る。

そんなティオネの様子に断ることはできずに、

 

「ああ、いいよ。好きにしてくれて構わない」

 

「……! ありがとうございます!それでは……失礼しますね」

 

そういうとティオネはフィンの頭に手を乗せ、ゆっくりと撫で始めた。

 

「どうですか団長?」

 

「う、うん。とても安らぐよ」

 

膝枕に頭を撫でられている状況での感想など恥ずかしくてあまり口にはしたくないのだが、ティオネの期待のまなざしを向けられ、どもりつつも答えた。目線の先には

 

(フワワァッァァァァァッァァ……死ねる! もう死ねる!幸せ死するぅぅぅぅ!)

 

先ほどのレフィーヤのように死にかけているティオネが居た。

 

(まぁここまで喜んでもらえるならよかった・・・のか?)

 

「よ~し。次行くか」

 

燈火の掛け声により、命令が終わった。ティオネは残念そうな顔をしていたが、それに勝るほどの笑みを浮かべ、心なしかお肌も艶々しているように見えた。それに変わってフィンは、生気を吸われやや疲れたような顔を浮かべていた。

 

(これは思っていたよりも手ごわいね……)

 

燈火の顔を見てみれば、こちらもこちらでとても満足そうな顔を浮かべていた。

 

(もし本当に何か細工をしているなら早めに証明しないと・・・持たない。主に心が……)

 

フィンの内心を察することなく、燈火は次のクジを準備していた。

 

「よし。いいものも見れたし、次、行こうか」

 

燈火の合図に皆がクジに手を伸ばす。

 

『王様だ~れだ』

 

「あっ! うちや~!」

 

次の『王様』はロキだった。皆ごくりと唾を飲み込んだ。一人を除いて。

 

「マジか~、次も『王様』当てるつもりで行ったんだけどなぁ」

 

「そないにポンポン当てられてたまるかい」

 

「私も『王様』引ーきーたーい~」

 

現状、燈火とロキ、そして無邪気なティオナは心から楽しんでいるらしい。他の皆は、大きな不安を抱えているものと、どうなるのかなとワクワク胸を躍らせているもので分かれていた。主に2:3くらいの割合で。

 

「ほんじゃいくで! 命令、2番が6番に後ろから愛の言葉をささやく!」

 

ロキの命令の後、燈火が絶叫した。ティオナも興奮度合いが上がっているらしい。

 

「イッイェーーーーーーイ」

 

「おおおお! さっきよりも過激だぁ!? 精神的に!」

 

「…………!?」

 

「私……6番」

 

今回の被害者? はレフィーヤとアイズだった。

 

「ほな、アイズたん。レフィーヤの後ろから抱き着いて、耳元で愛の言葉をささやくんや!」

 

「愛の言葉? ……どんなの?」

 

アイズがロキの命令に詳細を求めた時、待ったがかかった。

 

「ちょっと待てロキ、その命令はいいのか。『其の二』に抵触しないか?」

 

愛の言葉をささやくというのは、些か倫理観に欠けるということだ。確かにルールではそのような縛りはあったが、

 

「問題あらへんよ、別にそこまでの過激表現をさせるわけやない。それに、これはあくまでもゲームやからな」

 

気楽に行こうやと、ロキは取り合うつもりはないらしい。リヴェリアも納得はしないものの、あまり個人の意見で流れを止めるのはよくないと反論はしなかった。

 

「それならアイズたん、うちの言うとおりに言うてみ」

 

「?」

 

そう言うとロキはアイズに近づき、耳元で内容を伝えた。

 

「………………………………わかったか?」

 

「うん……わかった」

 

返事をするとアイズは、レフィーヤを後ろからそっと抱き寄せ、耳元で、

 

「レフィーヤ、今すぐにでも君をボクの物にしたいくらい愛してる。もう君無しじゃ生きられないくらいにね。これからもボクの隣で、ボクだけを見ていておくれよ」

 

そして最後にレフィーヤの耳に向けてフゥーと優しく息を吹きかけた。

 

「――――ッ!」

 

「ブフッ……おい! レフィーヤが失神してるぞッ!」

 

燈火が爆笑を抑えながら叫んだ。アイズのささやきの時点では辛うじて繋ぎ止めていた精神も、耳フーで吹き飛んだらしく、とても幸せそうな表情で気絶していた。

 

「すごい破壊力ね、流石アイズ」

 

「破壊力もそうだけど、レフィーヤの防御力も紙みたいだったね~」

 

「これからは精神面の特訓もしなければいけないか」

 

「ははは、これは特訓でどうにかなるものなのかい?」

 

「……わからないな」

 

レフィーヤの惨状に皆がそれぞれ感想を述べた。アイズは気絶した、させてしまったレフィーヤを揺すりながら「大丈夫?」と声をかけていた。

 

「ロキ、アイズに何て言ったんだい?」

 

フィンが命令前にロキがアイズに言っていたことが気になり質問を投げかける。

 

「別に大した事は言ってへんよ。ありきたりな、使い古されたベタベタな内容と、囁く時少し声を低くして一人称を『ボク』にしてってくらいや。あと最後の耳フー」

 

ニコニコしながらロキが答えた。ロキにしても、この結果は十分以上に満足のいくものだったらしい。

 

「まぁ気絶しちまったもんはしょうがない。起きるまでは残りのみんなで続けるぞ」

 

燈火が現状を整理し、次を促した。

 

一人目の被害者?が出てしまった『王様ゲーム』。しかし、この程度では終わらない。これから待ち受ける艱難辛苦に、残りのメンバーは耐え抜くことができるのか!? 次回の活躍を待て!

 

何故か冒険物語風……一度やってみたかったんだ。




奇跡の一万字到達。この話を投稿する前は、分けてしまった三話と一緒に投稿するつもりだったので、執筆中で既に二万字超えていました。どれだけ無駄なことを書いているんだと思うのですが、お付き合いいただけるとありがたいです。

毎回書いている気がしますが、誤字、誤用、がありましたらご指摘のほど、よろしくお願いします。
内容についての批評も、絶賛お待ちしております。

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