ダンまち ロキ・ファミリアの放浪人   作:テガミバチ

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5話 方々の夜会

 燈火が捕まり、そのころには食堂にはほとんど人は残っていなかった。

 食堂にもっどて来るとロキが思い出したかのように叫んだ。

 

「あ! 今日のステイタス更新は先着十名までなー」

 

「もうほとんどいないよ、ロキ」

 

 フィンが苦笑いする。

 

「どうや? 燈火もそろそろ更新せえへん? もうどれくらい背中見てないと思っとるん?」

 

「おい、なんか目的が違うぞ。それにもう少し溜めようと思う。その方が区切りもいいしな」

 

 燈火がガレスに担がれながら抗議する。

 

「えーそんなー」

 

 ロキがとても残念そうに肩を落とした。

 しかし、瞬時に切り替えアイズの方を見やった。

 

「アイズたんはするやろ?」

 

「うん」

 

 ロキの目線に首肯する。

 

「ほな少したったらうちの部屋来てなー」

 

 そう残すとロキは自室へと戻っていった。

 

「我々もそろそろ戻るとしよう」

 

「そうだね、じゃみんなもしっかり休むようにね」

 

「はーい」

 

「はいっ!」

 

「わかりました」

 

 フィンの言葉に皆がそれぞれ反応する。

 

「じゃあ俺もそろそろお暇させて頂こうかしらん?」

 

「まあ固いことを言うな。少し付き合え」

 

 この機に逃げ出そうとした燈火をリヴェリアが留めさせる。

 

「え⋯⋯付き合うって何に? 痛いのとか大変なのとかごめんよ?」

 

「安心しろ、そのような事は無い。頭も大して使わない」

 

 リヴェリアの説明に納得はしてはいないものの、まあどうせ暇だしと大人しくガレスに担がれていた。

 

 ***

 

 アイズがロキの部屋に着きノックをすると中から「入ってええーよー」と声が掛かる。

 アイズが入るとロキがまだ部屋の片付けをしていた。

 

「もう少し待っててなー」

 

「はい」

 

 アイズはロキから渡された丸椅子に腰掛け待っていると、よしとロキがベッドに座った。

 

「そんじゃ始めよか、ほな、服脱いで」

 

 アイズは言われた通りに上着を脱ぎ、背中を露にした。

 

「フヒヒッ。あかん、うちちょっと酔ってるから、手を滑らせる可能性も無きにしも非ずや⋯⋯!」

 

 アイズの柔肌を蹂躙せんと手をわきわきさせていると、アイズが拝借していた短剣を鞘から半身抜き、キンッと鳴らした。

 

「あ、もう酔い醒めました、大丈夫です」

 

「早くしてください」

 

「あ、はい」

 

 冷や汗を流しロキが作業に取り掛かった。

 ロキが自分の指を針で指すと、そこから赤い血が浮かび上がってきた。

 その指をアイズの背中に走らせると、鍵が開けられたかのようにアイズの背中から碑文を彷彿とさせる朱色の文字群が浮かび上がってきた。

 

「うちの方でロック掛けとるけど、神以外にも神血(イコル)使って解錠できる連中もおるみたいやから、むやみに背中許したらあかんよ?」

 

「はい」

 

「まあアイズたんの場合は心配するだけ無駄やけどな」

 

 背中の刻印が眷属に刻まれた神々の『恩恵』――【ステイタス】だ。

 神血(イコル)を媒介にして【神聖文字】(ヒエログリフ)を刻むことで様々な能力を発言させる。

 背中のそれは眷属の能力を表す生命線なので、【ファミリア】の主神達はその情報秘匿に余念が無い。

 

「下界来たばっかの奴らは、そもそも鍵のかけ方すら知らん奴がおるからなー。背中みられたら一発って、子供も気の毒やと思わへん?」

 

【神聖文字】(ヒエログリフ)を読める人は、少ない少ないんじゃあ⋯⋯」

 

 アイズの言う通り、【神聖文字】(ヒエログリフ)は通常は読めない。だが、博識なエルフなど解読できない者がいない訳では無い。アイズも多少なら読めるらしい。それに――

 

「それもそうやけど⋯⋯ほら、うちにも一人おるやないか。暇だからっちゅう理由で、本気で【神聖文字】(ヒエログリフ)勉強する酔狂な奴が」

 

「燈火ですか?」

 

「そうや」

 

 燈火はリヴェリアに頼み込み【神聖文字】(ヒエログリフ)の勉強をしている。現段階ではアイズより多少の解読が可能らしい。

 

「でも、そんな人他にいないと思います」

 

「まあそうやろうけどな」

 

 ロキがアイズを飽きさせないように口を動かしながら作業を進める。

【ステイタス】の更新が終わると、内容を紙に書き写しアイズへと渡した。

 アイズは自分の【ステイタス】に視線を走ら、黙考する。

 ――低過ぎる。

 遠征で多くのモンスターを葬ったのにも関わらずだ。

 アイズは現段階に見切りをつけ、次なるステージへの移行を検討し始める。

 器の昇華。さらなる力を得るために。

 ――悲願を叶えるために。

 

 表情を消したアイズは強烈な意志を心の奥に秘めた。

 

「アイズ⋯⋯」

 

 振り向くと彼女は静かに告げた。

 

「つんのめりながら走りまくってたら、いつか必ずコケる。いつも言っとるな? これからも何度も言おう。だから忘れんようにな」

 

「⋯⋯」

 

「行ってええよ。お休みぃ」

 

 アイズは何も言わず背を向けるが、部屋を出る間際少し考えたあとお休みなさいとそれだけ返事をし、自室へと向かった。

 

 ***

 

 ガレスに担がれたままの燈火は暴れることなくじっと前を歩くフィンとリヴェリアを眺めていた。

 

「どうした? やけに大人しいじゃないか」

 

 妙に静かな燈火を怪訝に思ったのかリヴェリアが燈火に振り向く。

 

「どうもこうも抵抗するだけ無駄だと、もはや悟りの境地に至った」

 

 燈火はややけだるげに顔を上げながら答える。

 

「安心しろ、苦痛は感じない」

 

「当たり前だろうが!」

 

 かなり物騒な物言いだが、実際燈火もこの時間からそんなハードなことはないと考えている。

 そもそもこの三人から痛いことなど特訓以外でされたことなどないのだ。

 

「少し話をしようと思ってね」

 

 フィンが燈火に連れられている理由を説明した。

 フィンの説明が終わらないうちに塔のやや高いところに位置している談話室のようなところに入る。

 ベランダにはちょうど三人ほどが囲んで酒盛りをするのにちょうどいい大きさの丸テーブルがあった。

 部屋に入るとガレスは燈火を下ろした。

 長いこと担がれていたので燈火は伸びをするようにしながら部屋の中を見回した。

 

「えー、ボク必要なくないですか?」

 

 そのセットを見た燈火はこれから行う事を察し遠慮した。遠回しに逃げようとしたのだ。

 しかし、その程度の思惑などたやすく見抜かれてしまい、リヴェリアが位置に着くように促す。

 

「固いことを言うな、少し付き合え」

 

「マジでか……」

 

 燈火はまだ渋々と言った様子だが、近くにあった椅子に着物を引っ掛けベランダへと出た。

 

「ウォーカーにも聞いてほしいことがるしね」

 

「なんだ? なんか面白い事でもあったか?」

 

 全員がテーブルの周りに着くとそれぞれが自分の好きな飲み物を準備し始めた。

 燈火は度数の弱いものを用意した。

 一口、口内を湿らす程度に含み内容について尋ねた。

 

「んで、話って?」

 

 燈火の問いにフィンが答えた。

 

「今回の遠征の事なんだが、中々興味深いことがあったんだよ」

 

「へー、そりゃどんな?」

 

「五十階層の安全階層(セーフティーポイント)で一時休息をとった後、受けていた冒険者依頼(クエスト)をこなすために人選を絞って、二つの班で五十一階層の泉水を取りに行ったんだよ」

 

 依頼内容と班分けを聞くと燈火が顔をしかめた。

 

「何とも面倒なものを、泉水って言ったら『カドモスの泉』か? あとその一班は……不安だな」

 

 燈火が苦笑いを浮かべると、倣うようにフィンも苦笑いを浮かべた。

 

「ベートも言ってたよ」

 

「まあそうだろうな」

 

 燈火はあまりにも容易にその光景が想像できるらしく、ため息をついた。

 フィンが表情を真剣なものに戻し、説明を続けた。

 

「だがそこでティオネたちが妙な光景を目にしたらしくてね」

 

「妙な光景?」

 

「ああ、泉にいるはずのカドモスが全滅していたらしんだ」

 

 フィンの告げた事実に燈火はやや目を見張った。

 しかしすぐに表情を戻すと、考えるようにこめかみに中指を突き立てるように添えた。

 燈火の癖で、考え事をするときなどはよくこのようにしている。

 

「全滅って……強竜(カドモス)を倒せるほどのモンスターがそこにいたってのか?」

 

 燈火の質問に感心するようにフィンが笑った。

 

「冒険者とは考えないんだね」

 

「当たり前だろうが。階層も階層だし、うちと遠征かぶせてくるような酔狂なやつらはいないだろうよ」

 

「そうだな」

 

 リヴェリアも頷きながら肯定する。

 

「そんで、なにがいたんだ?」

 

 この質問にはリヴェリアがやや考えるそぶりを見せながら答えた。

 

「新種……だろうな」

 

「下から上がってきたか、ダンジョンが産んだ新種か、じゃな」

 

 ガレスも嘆息交じりに答える。

 それぞれが考えを巡らせていると、フィンが木片と魔石をテーブルの上に置いた。

 

「これは?」

 

 燈火が尋ねるとフィンは色の変わったその木片を手に取り説明した。

 

「これはティオネたちが『カドモスの泉』から持ち帰ったものだよ」

 

 フィンに木片を手渡されよく観察する。

 木片には割れたり切られた様な跡はなく、まるで腐敗したような跡が残っていた。

 

「その新種の仕業でね、そいつは腐食液を体内から吐き出すんだよ」

 

「うえ、気持ち悪っ」

 

 燈火が自分の身を抱くように引いた。

 

「武器なんかで切り付けても溶かされて攻撃が割に合えわなくてね」

 

「なるほど、そんでこっちは? 魔石亜種みたいなの」

 

 今度は魔石を手に取り説明を続けた。

 

「これはそのモンスターの魔石なんだ」

 

 その魔石は、中心が極彩色で、残る部分は紫紺色と見たことのない輝きを放っている。

 

「魔石までキモいのか」

 

「これはティオネが直接抜き取ったんだ」

 

 フィンが言うと燈火が溜息をついた。

 

「キレたのか……」

 

「まあね」

 

 フィンも苦笑いを浮かべている。

 

「その不快要素満点のモンスターはどんな見た目なんだ?」

 

 燈火が尋ねるとリヴェリアが悪戯な笑みを浮かべ答えた。

 

「芋虫だ」

 

 それに続くようにフィンとガレスも答えた。

 

「芋虫だね」

 

「芋虫じゃな」

 

「最悪だ……」

 

 三人の答えに顔を青くし頭を抱えた。

 

「今、心底今回の遠征ぶっちしてよかったと思ったわ」

 

 フィンが苦笑いを浮かべている。

 

「まあそうかもしれないね」

 

 燈火は芋虫やミミズなどうねうねした虫が嫌いなのだ。

 それらに限らず虫全般苦手なのだが、それらはかなり群を抜いて上位に来ている。

 燈火の中で一番ムリなのは蜘蛛らしいが、幸い現在蜘蛛型のモンスターには遭遇してはいないため安心してダンジョンに潜っている。

 

「芋虫で腐食液吐いてウニョウニョ蠢くとか、想像しただけでバケツ三杯はいける」

 

「ここにバケツはないから勘弁してくれ」

 

「燈火は新種だと思うかい?」

 

 口元を覆っている燈火がノロノロと姿勢を戻し、しばし考えると一応の結論は出たらしい。

 果実酒でのどを濡らし口を開く。

 

「まあな、話を聞いた感じじゃ断定はできないけど、今のところは新種とみていいんじゃないか」

 

「ふむ、根拠は?」

 

 リヴェリアがフィンの質問に重ねる。

 

「五十一階層で『怪物の宴』(モンスター・パーティー)に出くわしたってんならそこが発生源なんだろ。ただその魔石を見た感じ自然発生は考えにくいな。ダンジョンが変質したっていうならわかるけど、そんなこと考えだしたら結論なんか出ない。襲うのも見境が無いようだしな。そうするとやっぱり人為的か、あるいは――神為的かだな」

 

「あまり滅多なことを言うもんじゃないぞ」

 

 リヴェリアが燈火の考えを窘めるが、その表情は否定ともつかない曖昧なものだった。

 

「まあ今度潜ったときにでも見てみるよ」

 

「まさか一人で行くのかい?」

 

「それは……分からん」

 

 答えを濁しているとリヴェリアが先ほどよりも強い口調で燈火に注意をする。

 

「ダメだ。まだそいつの危険度がはっきりしないうちはフラフラと下層に潜るんじゃない」

 

 リヴェリアの気に当てられ燈火が肩をすくめ怯みながらも了承する。

 

「わ、分かりました」

 

 了承したのだが、リヴェリアも言いたいことが溜まっていたらしく先ほどの注意を皮切りにお説教が始まった。

 燈火は元気なく「はい」と答えるばかりだ。

 そんな光景をガレスとフィンは懐かしい気持ちになりながら眺めていた。

 

「燈火はでかくなったと思ったらまだまだじゃのう」

 

「そうだね、まだ冒険者としても人間としても成長途中だからね。それでもあのころと比べれば見違えるほど大きくなったよ」

 

 心身共にねと最後は独白のようにフォンが呟いた。

 

 燈火は幼少時よりこの三人とロキによって育てられてきた。

 燈火が悪戯や危険なことをするといつもリヴェリアが叱り、ガレスとフィンが慰める。

 ここに大体ロキが叱られる側として一緒にいることが多い。

 そしていつも二人でリヴェリアに謝りに行き、またリヴェリアやロキの後ろを引っ付きまわる。

 こんな日常が毎日続き、気づけば十五年が経っていた。今では立派な青年になった燈火を懐かしく眺めている。

 背中について回っていたのに、いつの間にか背中を預ける存在になっていたのだ。それほどまでに燈火は成長した。危なっかしさは増えた気がするが、それでも当時よりは安心してみていられる。

 ガレスとフィンはそう思っているのだが、リヴェリアは些か違うらしい。

 やはり同じファミリアの仲間と言うより、一人の少年として心配なのだろう。

 親心のようなものだろうと周りも燈火が叱られている光景を見るたびに思っている。ロキが「ママ」と呼ぶのも無理はない。

 

 燈火のお説教が終わるとリヴェリアがアイズについて話を切り替えた。

 

「そういえば燈火、最近のアイズについて何か思うところはないか?」

 

「思うところってかなり曖昧だな」

 

「いいんだ、その曖昧さが。何かないか」

 

 うーんと頭をひねる燈火を見てフィンが遠征での様子を説明した。

 燈火はその話を受け視線を落とした。

 

「そうか……まあ分からんではないかな」

 

「お前は強さに焦りを感じないが。むしろもっと積極的になってもいいくらいだ」

 

「まあ俺の場合は状況が違うからさ。焦っても結果は出ない。この点はアイズも一緒だろうけど、俺とアイズとじゃ目指しているものや志が違うから。アイズはちゃんと目的がある。強さを求める目的が」

 

「その目的が無用な焦り繋がっているのだがな」

 

「そいつはしょうがない、誰だって焦るさ。最近はそれが顕著だと思うよ。今日帰ってきた時も元気なさそうだったしな」

 

 燈火がアイズの様子について述べるとフィンがふと表情を崩した。

 

「よく見てるね。流石は一緒に歩んできただけあるよ」

 

「まあ一応な」

 

 燈火は少し目を逸らす。

 

「そろそろ現状での限界なんだろうさ。その点は御三方の方が分かるんじゃないか?」

 

 逸らした視線を三人の第一級冒険者へと向けた。

 

「だいぶ焦っているようだな、アイズは。レベル5(ファイブ)になってもう三年かのう。そろそろステータスも頭打ちになるころじゃ」

 

「ま、僕らも通ってきた道だからね。いくら戦っても数値が伸びない。つい先走る気持ちも理解はしているつもりだよ」

 

「最近は特に悩んでいるようだ。閉塞感とでも言うのか……高みに至りたい、強くなりたいと思う気持ちは人一倍だからな」

 

 困ったようにリヴェリアが笑う。

 

「となれば次に考えるのは……」

 

「ランクアップ……だろうな」

 

 ガレスが自分の髭を触りながら告げる。

 

「次なる偉業の達成という訳か」

 

「あの子の事だ、立ち止まりたくはないじゃろう」

 

「状況次第だが、その時が来たら認めざる負えないだろうね」

 

 ガレスたちの話を受けリヴェリアが今度は溜め息交じりにこぼす。

 

「しかし……あの頑なさと言うか、思いつめすぎる性格はどうにかならないものだろうか」

 

「はっはっはっ、今それを言うか」

 

 ガレスが豪快に笑うと、フィンがグラスを揺らしながら告げる。

 

「ボクは、アイズは少しづつ変わってきてると思うけどね。彼女にとってレフィーヤが居るのは大きいよ。ティオネ、ティオナとは、また別の何かをもたらしているはずだ」

 

「うむ……先輩の自覚と言うやつか」

 

「自分の事ばかり考えているわけにもいかない……か」

 

「時にありがたいものだからね、追いかけてきてくれる存在と言うのは」

 

 そう言うと今度は燈火へと向き直り、キミもだよと続けた。

 

「燈火の存在もアイズにとっては大きいよ。キミにその自覚はないだろうけどね」

 

「よくお分かりで、そんな自覚はない。むしろ邪魔なんじゃないかとすら思ってるくらいだからな」

 

「いつでも隣にいてくれるのは時に疎ましく思う時もあるだろうが、総じてとても心強いものだ」

 

「そんな事面と向かって言われる身にもなろうね? すごい居ずらいからね?」

 

 瞳がやや朱をを帯びてきた燈火を見て再びガレスが豪快に笑う。

 

「なに、お主と共にいれば迷うことはあっても踏み外すことはないじゃろうて。アイズにとってお主は道標であり、共に迷ってくれる仲間でもあるのだからな」

 

「何なの、今日は俺の事恥ずか死させるつもりで呼んだの?」

 

「本人に言われるよりいいだろう」

 

「アイズはそんなこと言いません!」

 

 燈火が言い返すとリヴェリアが悪戯な笑みを浮かべた。

 

「だが最近寂しい思いをしているとも言っていたぞ?」

 

「うぐ……それは……致し方ない事、()むに()まれぬ事情が……」

 

「アイズを思っての行動だろうが、自己満足にならないようにな」

 

「……」

 

 リヴェリアの口撃に完全に沈黙し、テーブルに突っ伏した。

 

「まあこれからも支えてあげてくれ」

 

 フィンが燈火の肩を叩きながら声を掛ける。

 

 そこからしばらく燈火とアイズの事やファミリアの事、自分らの最近のことなどを酒の肴にささやかな宴会となった。

 お開きになるころには、再び燈火はガレスに担がれていた。

 恥ずかしエピソードを聞かされていたためベランダから逃亡を図ろうとしたところ捕まったのだ。

 もうヤダ……と顔を抑えながら部屋へと運ばれている光景にフィンとリヴェリア笑みを浮かべていた。

 

 ***

 

 自室へと向かう途中リヴェリアがフィンに疑問に思っていたことを告げる。

 

「フィン、燈火に人型の事は伝えなくていいのか?」

 

 リヴェリアの質問に、ああと困り顔を浮かべた。

 

「伝えてもよかったんだけど、散策へと駆り立ててしまうんじゃないかとね」

 

「賢明な判断じゃろう」

 

 それにと続ける。

 

「今回のことで終わりじゃないような気がするんだよ」

 

「いずれ否応なしに巻き込まれる……か」

 

「それまでは極力想定外の危険は避けたいからね」

 

 リヴェリアは答えを聞くと自室へと足を向けた。

 フィンとガレスもリヴェリアと別れた後自室に向かった。

 リヴェリアだけではない、一人の少年を思うものとして。何かの前兆を感じ取りながら。

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