鈴木悟がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:ピュアウォーター

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タイトルはそのまんまの意味です。(直球


今回、どうしても主人公と貧乳キャラと絡ませたかったので鈴木悟の性癖を変更、強化しました。

嫌な方はプラウザバッ(ry


ヘスティアちゃん!家族が増えるね!

「はっ!」

 

 

鈴木悟が目を覚ますと周りはレンガだらけだった。

 

「ここは・・・?」

 

まるでユグドラシルの街中に出てくるような場所。そのユグドラシルが作るにあたって参考にしただろう、小学校の歴史の授業で見た中世ヨーロッパの街並みみたいだった。

 

そしてここは家々が立ち並ぶ路地のようだ。

 

「俺はさっきまであの霧の中にいたのに・・・」

 

彼の心の中は疑問だらけだった。ここはもしかしてユグドラシルの中なのか?死の間際に見せる走馬灯のようなものなのか?

 

「匂いも感じるし、足も手もちゃんとある・・・」

 

匂いを感じるということは電脳法よって嗅覚が規制されたVR空間でない証拠であり、見慣れた手足はアバターであるモモンガの、骨の手足ではない。つまりここはユグドラシルでないと言える。

 

 

 

そして彼は首元を触ってみた。そこには神経に直接繋がっている体内蔵型のデバイスジャックがあった。

 

ニューロン・ナノ・インターフェイス。ナノマシーンを利用し、脳に埋め込まれた演算器の機能を増幅しスーパーコンピューターとして使える機材。現代社会では全ての企業が利用し仕事の効率化を図っている。仮想現実も簡単に計算できるこれはユグドラシルの世界を表現するのにも使われている。

 

その機械に繋ぐために肉体に埋め込めれた端子は近未来における日本の労働者の証だ。

 

つまりここは現実。

 

「俺は死んでないのか」

 

それは安堵とも無感情とも取れる声だった。

 

 

 

鈴木悟は街中を歩く。

 

ここはさすがに日本ではないらしい。しかし飛び交う言葉は日本語のように聞こえる。

 

一番驚いたことは空が青く空気がとても澄んでいることだ。ガスマスクをしないで歩けるなんて夢のようだ。

 

 

周りを見渡す。

 

そこにはまるでユグドラシルのようなファンタジーな世界が広がっていた。

 

 

さも当然のように剣や槍、そして重厚な鎧を着た人々が歩いていた。店の軒先には干し肉や葡萄などが吊らされており、林檎などの果実も売られていた。

 

例えば林檎。鈴木悟はこの果実をイラストやゲームで登場するアイテム、画像データなどので知っていたが、実際に本物を見るのは初めてである。彼にとって林檎とは合成着色料によって黄色く、それまた合成甘味料で味付けされた甘い味の四角い棒だ。あんまり美味しくはなかった。

 

本物の林檎は富裕層でないと食べられない。動画投稿サイトで林檎を食べるだけの動画が10億回再生されることから貴重性が窺えるだろう。

 

 

そして飲食店のような場所では今まで日本では感じたことのない食欲を刺激する匂いがする。これも初めての感覚だった。

 

ちなみに彼が日本で主に食べていた合成食料の放つ匂いは消毒用アルコールそのものである。

 

 

 

この街は活気で溢れている。あそことは違う。皆が富裕層の顔を伺い、生きるために取り入る。弱者は奪われ続け、強者は捕食者で居続ける。そんな世界では庶民が生気が満ち足りてるなんてありえない。

 

 

 

ファンタジーを舞台としたゲームにどっぷりと浸かっていた鈴木悟が興味を引かれることがあった。

 

エルフだ。エルフがそこにいた。

 

人間ではありない長い耳に美しい凛とした美貌。それはエルフを表す特徴だ。

 

ユグドラシルにもいたがやはりというべきか品が違う。まるで森の妖精のようだ。

 

ゲームでのエルフの中身は人間。演じているだけで生まれ持った品性まで表現できる者は生粋のロールプレイヤーぐらいだ。実際ナザリックを攻めてきた中にエルフがいたが異形種狩りが大好きな汚物だった。たしかあいつは2ちゃん連合の連中の1人だったか。

 

異形種狩りとは、ヒューマンやドワーフ、エルフといった人間種以外のゴブリンやスライムといったプレイヤーが操れるモンスター的な種族を外見の違いだけで差別し、PK(プレイヤーを殺すこと)をすることである。

 

ユグドラシルでスケルトンを選んだ鈴木悟は異業種狩りによく出くわし被害にあっていた。死ぬとレベルダウンしてしまうため何回もデスペナルティを受けた時はユグドラシルをやめようと思ったほどだ。それも長年のプレイ経験のお陰でPKK、つまりプレイヤーを殺すプレイヤーを殺す達人になっていたが・・・

 

 

 

嫌なことを思い出し、気分を変えようと街中に視線を戻すと、驚くことに獣耳、尻尾が生えた人々が民衆の中に混じっていた。

 

獣人はナザリックのギルドメンバーにもいた。それはバードマンのペロロンチーノさんだ。彼は本当に面白い人だった。彼を端的に表すなら、

 

”エロゲーイズマイライフ!”

 

そう変態だ。

 

R18の規制が強かったユグドラシル中でもエロい格好をしたサキュバスが潜むダンジョンによく突撃しようとして姉のぶくぶく茶釜さんに怒られていた。

 

剣、鎧、エルフ、獣人。そして露天の並べられた果実。ユグドラシルでしか見たことないもの。それらはデータだったがここは違う。本物だ。

 

 

特にケモ耳娘はもし”ガチケモナーでもある”ペロロンチーノさんがいたらすごい喜ぶだろうなぁ。と思っていると。

 

「うお!」

 

褐色の扇情的な服?を着た少女が前からやってきた。胸は小さいが彼にとっては健康的でとても性的に見えた。特に目を引いたのは・・・

 

生ヘソだ!生ヘソ!ペロロンチーノさぁん!

 

 

 

 

生ヘソ!あ^〜

 

 

 

 

彼女のボディラインはとても綺麗に感じた。

 

あのキュッとしたくびれ。それを魅せるしなやかな腹筋。指でなぞりたくなるようなおヘソ。それが健康的で笑顔がとっても似合う可愛い少女に詰まっている。

 

それはもうたまらなかった。どストライクだ。

 

アルベドがタイプとは何だったのか。それは筆者にもわからない。確かに顔の造形からしたらナザリックのアルベドなどのNPCたちの方が綺麗だが、所詮外装データに過ぎず現実味がない。彼らは実物の魅力に勝てなかった・・・アルベドかわいそう・・・

 

 

なぜアルベドかわいそう?と思う方はぜひ書籍版かアニメのオーバーロードを買おう。とても面白いのでおすすめします。(ダイマ

 

 

 

 

彼はヘソフェチであった。しかも少しロリコンが入っている。だが胸の大きいお姉さんも大好きである。彼は夢みる童貞。守備範囲が広いのだ。やったね!アルベド!

 

<よっしゅあああ!by違う世界線のアルベド。

 

 

鈴木悟の性癖はエロの権化によって多くのジャンルにイケるように開発されていた。その中でもヘソは光る何かがあった。

 

エロの権化とはもちろんペロロンチーノである。よくエロゲーのおすすめを教えてもらい、感想を言い合うそんな仲だったからしょうがない。男?の友情である。そんな彼も最後は会えなかったが。

 

 

 

しかし目の前に魅力の塊というべきものがあるのにも関わらず、鈴木悟は目のやり場に困っていた。

 

ゲームならいざ知らず、現実で女性の肌を見るのは童貞の鈴木悟にはいささか刺激が強かった。

 

日本では、人々は毒の霧のためか極力肌を出さない。夏ももちろん長袖だ。しかも皆ネットを使う仕事の関係か、猫背が多く、肉体労働もパワードスーツやロボットのナノマシーン遠隔操作が主流だ。運動するための体育館は富裕層しか使えず、もっぱら娯楽は室内でしかできないものに限る。ユグドラシルもその一つだ。そのため運動不足になりやすい。健康であることもさえも難しく、珍しいのだ。

 

 

つまりだ、健康的な女性であるだけで魅力的に見えるのだ。(プラス要素

 

 

それにアーコロジーに住んでいる富裕層や結婚か恋人を作らない限りは滅多に生ヘソは見られないだろう。

 

もちろん風俗を利用する手もあるがお金は全部生活費以外全部を課金につぎ込んでしまう方が大事だった彼は生ヘソには無縁だ。

 

だから声を出して驚いてしまうのもしょうがないのである。

 

「あんた。今私を見てうお!って言わなかった?」

 

なんと魅惑のおヘソを持った少女から彼は声をかけられてしまった。

 

「す、すみません。とても魅力的だったもので」

 

緊張した鈴木悟はつい本音を言ってしまった。そのせいか、目の前の少女の顔が少し赤い。

 

「ふ、ふーん!ところであなた珍しい服を着てるね。冒険者?」

 

仕事から帰ってきてすぐゲームをプレイしたためスーツのままだった。どうやら周りを見渡してもサラリーマンの戦闘服を着ているものはいないらしい。彼の格好はこの世界ではちょっと浮いていた。

 

そして聞きなれない言葉があった。

 

「冒険者?何ですかそれ?」

 

まるでRPGに出てくるような言葉だ。

 

褐色の女性の顔は驚愕の色に染まった。

 

「冒険者も知らないなんてオラリオに何しにきたの?」

 

オラリオ・・・。この街の名前のようだ。

 

「俺は・・・」

 

 

 

鈴木悟はユグドラシルで最後のに使ったあの指輪を思い出す。

 

流れ星の指輪。シューティングスターと呼ばれるアイテムは3回だけ使用者の願いを叶える。

 

願ったことは・・・

 

「ティオナ〜どこ〜?」

「あーティオネーそっち今行くー」

 

目の前の褐色美少女はどうやら人と待ち合わせしてたみたいだ。彼女の名前はティオナと言うらしい。覚えとこう。

 

「じゃあねぇ〜極東のおにーちゃんー」

 

彼女は人混みに去っていった。

 

 

 

 

さっき彼女が言った極東。それは日本を表す言葉。

 

この世界には日本はあるのか。否。ないだろう。あるとしても俺がいたあの場所ではないはずだ。

 

空を見上げる。そこには絵の具で塗られたような彩度の高い青だった。

 

ここは空気が汚染されていない。もしここがあの世界にあるのならばすぐに戦争となり植民地になるだろう。

 

鈴木悟がいた星。地球は度重なる環境汚染で致死性のガスが漂う惑星になってしまった。そのガスは人間の肺ではいくら良いガスマスクをしようとも3秒も耐えられるものではない。

 

そのため人類は人工肺を移植し呼吸の強化を図った。定期メンテナンスが必要で、日々の生活費が費用で圧迫される。だが富裕層はアーコロジーと呼ばれる汚染を撤廃した地域を作りそこで生活しているので移植せずとも暮らせる。

 

貧富の差はとても激しく、弱者は一生奴隷だ。

 

22世紀の日本はまさに地獄と呼ぶにふさわしい場所だった。

 

 

 

 

確信した。ここは異世界だ。あの指輪で願った一つ。俺が連れてってくれと願った世界。それがここ。オラリオ。

 

俺はここへ連れてきてくれた神に感謝した。あの願いが叶うかもしれない。

 

 

 

家族を得ること。それが俺がオラリオに来た理由。

 

 

なぜここに来てしまったのか。霧ので死んだはずではなかったのか。そんな疑問は何10000倍も素晴らしいこの世界では些細の問題でしかなかった。

 

己は天涯孤独。あの地獄には何も未練もない。これから鈴木悟の素晴らしい人生が始まるのだ。

 

そのためには情報が必要だ。この世界で生きるため。この世界で愛を得るために。

 

彼はオラリオ中を駆け巡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ〜よし!これで大まかなとこは完成だ!」

 

細かいところは今度だな!っと鈴木悟の顔は仕事やりきった職人のような爽やかなであった。

 

彼の手にはオラリオの簡単な地図があった。

 

彼が半日以上かけてやっていたのはマッピング。ちょうど胸ポケットに入っていた手帳とペンでオラリオの地図を作っていたのである。

 

ユグドラシルにおいてまず未知の場所で行うのはマッピングだ。自由が売りのあの世界では、運営は既存の地図すら用意しない。プレイヤーが作らなければならないのである。そのためか、未知の場所では手書きの汚い地図すら価値があった。

 

それに廃課金プレイヤーである彼はマップの重要性を知っていた。どこから攻撃を仕掛けると有利になるのか。壁は壊せるのか。隠し通路はあるのか。雪崩や溶岩などの自然罠がある場所では知っていると知らないでは天と地の差がある。それこそ生死を分けるほどに。

 

しかしそれはユグドラシルでのお話だ。それよりも現実の世界なのだからやるべきことがあっただろうに。

 

楽しくなっちゃったのか。そうかそれはしょうがない。

 

 

ネトゲ廃人である鈴木悟はちょっとズレていた。

 

 

 

 

 

彼がここに来て半日が過ぎ、時刻は夕暮れを指していた。

 

地図作りにハマっていた鈴木悟はもちろん今日泊まる宿も探していない。それどころか、

 

グゥ〜

 

お腹の音だ。つまり今日ありつく食事もないのである。

 

「しまった・・・お金もないじゃないか」

 

グゥ〜〜〜〜

 

まずい。店先を覗いただけだったが、体格のいいおばさんが営んでる食事処の胃を狂乱させるような匂いを思い出してしまう。やばい、ますますお腹が空いてきた。

 

日が暮れてきたし、本当にどうしようかと思っていると、揚げ油の良い匂いが漂ってきた。

 

「そこの君!お腹が減っているのかい?これあげるよ!」

 

雰囲気が他の住民と少し変わった少女からジャガ丸君と呼ばれる熱々のコロッケのようなものが入った紙袋を受け取る。

 

・・・女神だ!

 

現実で女性にほとんど優しくされたことがなく、飢えの影響もあってか鈴木悟に目の前にいる年の割にはおっぱいが大きい女の子はもはや神格化されていた。

 

「女神様ぁ〜っ!ありがとうございます!」

 

鈴木悟は喜びあまり泣きじゃくっていた。大人泣きだ。

 

「うぅ〜そこまで喜ばなくてもいいよ。お店で作りすぎちゃってベル君とじゃ食べきれないやつだったし。」

 

女の子はニカッと笑う。

 

「やっぱり君は良い子だ!こんなに良い神様扱いされたのはベル君以外で久しぶりだ!」

 

ホクホク顔で上機嫌な女神様がはしゃいでる。

 

神?

 

 

 

「神様何ですか?あなたは?」

「え?知らないで君は女神って言ってたの?」

 

ちょっと神様は、はぁっと落ち込んだが、すぐに笑って、

 

「僕の名前はヘスティア。ヘスティアファミリアの主神さ」

 

ヘスティア。それは鈴木悟の世界でも知られる処女神の名前だった。続いて女神は問う。

 

「君の名前は?」

 

それが鈴木悟と神、ヘスティアとの出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君に話しかけたのは、お腹の音もそうなんだけどなんか危なっかしいっていうか不安定というか。とりあえず気になったんだ」

 

食べ終わったジャガ丸君の袋を片手にベンチに座りながら鈴木悟とヘスティアは会話をしていた。

 

 

 

「お昼頃、君はこの辺を歩いていただろう?その時の君はまるで死んじゃいそうなすごく酷い顔をしてたよ。」

 

ヘスティアはとて心配そうな顔で言う。

 

「サトル君。君に何かあったのかい?」

 

鈴木悟は本当のことを喋るのかを迷った。彼自身も荒唐無稽な話だと思うからだ。だからとっさに嘘をついてしまった。

 

「この街に冒険者に憧れて隣の村から来たんです。ですがこの通りお金をスられまして、途方に暮れていたー「嘘だね」え?」

 

ヘスティアは真剣な顔をしていた。

 

「神には嘘はつけないんだよ」

 

彼女の目はとても美しく、どこまでも透き通っていて少し怖かった。そして俺を受け入れてくれるそんな優しい瞳だった。

 

鈴木悟はその瞳に母性のような愛を感じた。その眼を俺を小学校に通わせるため働きすぎて死んでしまって、物心ついてからはあまり覚えてない母親に重ねながら、

 

 

 

 

「願ったんです。あの指輪で3つのことを」

 

 

 

 

彼はヘスティアに全てを喋った。

 

 

己がいかに愚かであることを。

 

己が守ってきたものを。

 

己が本当に欲しかったものを。

 

 

鈴木悟はダムが決壊したかのように心の内側をさらけ出した。普段の社会人である彼なら理路整然に順序をたてて会話をするが、この時ばかしはまるで子供が母親にその日の出来事を思いつくように喋った。

 

 

彼の話はとても抽象的で起承転結がなく、彼女にはSFチックな近未来じみた日本のお話とファンタジー世界のユグドラシルで出来事が混ざり合っておおよそ理解できるものではだったが、神である彼女は彼が本当のことを喋っていて嘘をついてないことはわかった。それに詳しいことはいずれまた落ち着いたときにも聞けば良いと思った。

 

「君は偉い。君は強い。君は優しいよ。サトル君。」

 

ヘスティアは膝枕したサトルの頭をまるで母親が子供をあやすように撫でていた。

 

「サトル君。僕のファミリアに入らないか?」

 

この子は愛を知らない。だからせめて・・・

 

「家族になろう。サトル。」

 

 

 

母親の代わりになろう。もし、なれなくても彼の傍にいよう。彼にはそれが必要だ。

 

 

「・・・はい。こちらこそお願いします。ヘスティア様。」

 

彼は彼女の慈愛に包まれながら答えを言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっちだ!」

 

ヘスティアに手を繋がれて向かったのは、北西と西のメインストリートに挟まれ場所だ。

 

先程マッピングでも歩いた折れた石柱などの瓦礫の多い地域だった。

 

そして歩き着いたのは、寂れた教会のような建物だった。

 

「ここがベルくんとの愛の・・・ってこれからはそうじゃなくて、君も所属するヘスティアファミリアのホームさ!」

 

ぱーっと腕広げはしゃぎながら言う神ヘスティア。・・・ホームと呼ばれるものは廃墟に近かった。

 

「はは。ちょっと汚いけど落ち着くとこだよ」

 

苦笑いしながら耳打ちするヘスティア。

 

ちょっとどころではない。窓ガラスは割れているし、壁が崩れかかっているとこもある。

 

通常の感覚ならあまりの酷さに顔が引きつるところだが、鈴木悟はと言うと、

 

「風情があって、広くていいですね!好きですこういう建物!」

 

満面の笑みを浮かべていた。気を使ったわけではない。本心からそう思った。

 

そもそも外を霧のせいでガスマスクなしでは自由に歩けなかった彼は野宿すら素晴らしいのだ。

 

もはやちょっとした屋根があれば最高だった彼にこの教会は至福の家だった。

 

「で、でしょう?さぁ入ろう!」

 

まさかそう返してくるとは思ってなかったヘスティアはちょっと驚いた。しかも嘘をついていない。本心だ。

 

さぞかし彼は悲惨な生活を送っていたんだろうかと思いながら彼女は教会の扉を開けた。

 

「あ!おかえりなさい!神様!今日は遅かったんですね」

 

白髪の少年がお出迎えしてくれた。

 

「ベル君ただいま!」

 

彼が神様が言っていたベル君か。兎みたいだ。・・・っとこちらに気づいたようだ。

 

「えーと、後ろにいる方はお客さんですか?」

 

「聞いてくれベル君」

 

ヘスティアは腕を組みながら得意げな顔で言う。

 

「彼はなんと!入団希望者のスズキ・サトル君だ!」

 

「えーー!!!神様!二人目ですよ!!やりましたね!」

 

「「わーい!!」」

 

兎のような少年と神様ははしゃぎにはしゃいでいる。

 

二人目?とりあえずご挨拶せねば。

 

「鈴木悟と言います。よろしくお願いします」

 

社会人らしく礼儀正しい自己紹介した。営業マンであった鈴木悟の所作は他人に不快感を与えないような綺麗なものだった。

 

「ヘスティアファミリア団長のベル・クラネルって言います。団長といってもサトルさんが来るまで1人だったんですけどね」

 

こちらこそよろしくお願いしますね。ベルは笑みを浮かべながらそう言った。

 

 

 

 

鈴木悟は団長のベルにこれからここで生活するためにトイレがどこにあるのか。木でできた歯ブラシの使い方などの必要なことを教えてもらったりした。

 

案内を終わったあとベルト交流を深めようと雑談していたところ、

 

「サトルさんって29歳なんですか!?」

 

20代前半に見えた鈴木悟はアラサーには見えなかった。

 

「29歳と言ったけれども、実は年齢を覚えていないんです。もしかすると25歳かもしれないし35歳かもしれない。」

 

そのことに関しては興味がなさそうに無味乾燥と言った感じで答えた。自分のことであるのに。

 

鈴木悟は誕生日など興味がなかった。ギルドメンバーがいたときはバースデーパーティをして祝ってくれたが、そのメンバーが離れてからは祝い事はなかった。リアルでも交流は少なく孤独だった彼は自身の年齢など気にかけるべき事柄ではなかった。それよりも狩場に行き、お金を稼ぐことが優先事項だった。

 

それに鈴木悟を示す身分証明書は日本の自室に置いてきた。故に彼の情報はこのオラリオでは正確にはわからない。

 

彼はユグドラシルのアバター。モモンガが使える魔法や持っていたアイテムなどは全て暗記していたが、現実のことは自分自身をも含めどうでもよかったのである。

 

彼に大事にしていたのはナザリックにあった仲間との絆であった。

 

 

 

時刻は就寝の時間。ヘスティアは教会の地下室に鈴木悟はいた。ベルも一緒だ。

 

「サトル君!【神の恩恵】を刻もう!」

 

ヘスティアはソファに座りながら鈴木悟を手招きする。

 

神の恩恵。通称”ファルナ”と呼ばれ自身の器を昇華し強くなっていくのに必要なそれは、冒険者にとってなくてはならないものであった。ダンジョンに恩恵を持たないで挑むのは愚行であるとオラリオ中の誰もが知っている。

 

それに神のファミリアである眷属の証。家族を表すものでもある。

 

「サトル君!上着脱いで!そんでソファ背中見せて仰向けに寝転んでね!」

 

「服脱ぐんですか!?」

 

少し面を食らってしまったが、恥ずかしながらも彼は服を脱いだ。

 

彼の体はとても細かった。運動不足と必要最低限しか栄養を取れなかった結果である。それに・・・

 

「!?」

 

ベルは驚いた。彼の体には金属できた何かが体の腕や胸、首筋などの数カ所に埋め込めていたのである

 

「なんですかそれ?」

 

「このパーツのことかい?首筋のはナノマシンを注入するプラグ。胸のは肺をメンテナンスするための制御装置。腕のはデバイスを高速利用するのによく使っているよ」

 

ベルにはさっぱりわからなかった。

 

「神様ぁ・・・」

 

「大丈夫、僕もよくわからない。サトル君はちょっと特殊なだけだ。危ない人じゃないよ。・・・たぶん」

 

断言してくれよと鈴木悟は心の中で思った。

 

「さ、さぁこっちにきたまえ!」

 

気まずそうな空気を変えようとしてヘスティアは本題である、【神の恩恵】を刻むため鈴木悟をソファに寝転がらせた。

 

 

 

うつ伏せになっている鈴木悟にまたがったヘスティアはあらかじめ用意した針を指に刺した。その指に滴る血で彼の背中に一本の線を書いた。

 

彼の背中は光り、竈のシンボルが現れる。そしてヒエログリフが浮かびだした。その光景はとても美しくベルは魅了された。

 

 

鈴木悟は【神の恩恵】を授かったのである。

 

 

 

 

 

「!?」

 

ヘスティアは驚愕した。鈴木悟にスキルが発現していたのである。

 

ありふれたスキルならば彼女はただ喜ぶだけだっただろう。しかしそれはユグドラシルに関連するものであった。彼が守っていた場所。ニホンではない大切なモノがあった場所。

 

 

その名前を冠したそれは類まれな”レアスキル”だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スズキ・サトル

 

Lv1

 

力 :I 0

耐久:I 0

器用:I 0

敏捷:I 0

魔力:I 0

 

《魔法》

 

《スキル》

 

【ユグドラシルの住人】

 

・自身のアバターに近づく。

・その姿を求めるたび効果上昇。

・基礎アビリティに補正。

 

 

 

 

 

【ユグドラシルの住人】。その説明文はヘスティアにとって理解不能であった。

 

基礎アビリティに補正という文はわかる。成長関連だろう。

 

アバターとはなんだ?その姿を求めるたびに近づく?姿ということはこの彼とは違う彼がいるのか?ユグドラシルで彼は何をしてきたのか?

 

彼女の中では疑問をが渦巻いていた。

 

「ねぇ、サトル君」

 

鈴木悟に跨ったヘスティアはステータスを見ながら、先程の子供のようなテンションから打って変わって長い年月を生きてきた大人のように落ち着いて彼に尋ねた。

 

「アバターってなんだい?ユグドラシルで君はなんだったんだい?」

 

 

鈴木悟はかつての分身に思いを馳せる。

 

アバター。それはユグドラシルでプレイヤーが操る体のことである。キャラクターは1人につき一つまでしか作れず、作り直すには前のアバターを消さなければならない。

 

 

鈴木悟のアバターは100Levelのオーバーロード。名はモモンガだ。魔王ロールを重視したビルドのそれの強さはカンストプレイヤーの中では中の上〜上の下あたりだった。

 

死の支配者の雰囲気を大事にしてか、なんと総数718の魔法を使える。しかし専門の魔法職には火力で劣る中途半端なものだった。ギルドのメンバーであった最強の魔法詠唱者。ワールドディザスターのウルベルトさんにはかなわない。

 

それでもロマンを追求したアバターは最強で自慢のキャラクターだった。

 

理想の姿。それがアインズ・ウール・ゴウンのモモンガであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは突然のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

彼の背中が赤黒く光ったのである。その光は禍々しくおどろおどろしかった。

 

彼に跨っていた神。ヘスティアは恐怖した。

 

彼の【神の恩恵】が変化し始めたのだ。

 

ヒエログリフは荒ぶり、数字は目まぐるしく変わっていく。そして極めつけは竈のシンボルが崩れ、徐々に剣を逆さにした円状のシンボルが浮かび上がったのだ。

 

そのシンボルはユグドラシルを知る人が見ればわかるだろう。それはアインズ・ウール・ゴウンのギルドサインだった。

 

 

一方で鈴木悟は激痛に見舞われていた。痛みのせいで暴れまわり、親愛なるヘスティアを床に落としてしまうのを気づけないほどに。

 

鈴木悟は自分の体の中に無数の見えない手が入っていくのを感じる。

 

 

 

ーこれは俺の体にはいらない。

 

 

 

まるでそう聞こえたかのように、ブチブチと臓物を引きちぎっていく。人工肺を。張り巡りされたケーブルを。脳の奥に入った演算装置を無慈悲に、乱暴に外される。

 

「ゔああああああああああああああああ」

 

痛みに耐えきれなく声を荒げてしまう。

 

「神様!何が起こってるんです!?」

「僕にもわからない!」

 

彼らは鈴木悟の身に何が起きているのかわからずただ見守ることしかできなかった。

 

彼の体に埋め込まれた金属パーツが飛び出し、血まみれになった鈴木悟は強烈な吐き気を覚えた。

 

「おぇええええええ!」

 

吐き出されたのはオラリオでは見ることのできないプラスチック製の何かだった。

 

 

 

 

そして彼は床に糸が切れた人形のように倒れた。微動だにしない彼を見てヘスティアは、

 

「ベル君!ミアハを呼んできてくれ!はやく!」

 

「はい!」

 

ヘスティアに助けを求めるように支持をされたベルは教会を飛び出し、医神であるミアハのもとに向かった。

 

 

 

「君はいったい・・・。どうすれば良いんだ、僕は」

 

ヘスティアは涙を浮かべていた。

 

血しぶきが舞い、まるで殺人現場のような地下室で彼女は悲しみと疑問でいっぱいだった。

 

 

 

すすり泣く女性の鳴き声が聞こえる部屋の中で、意識が失いかけている鈴木悟は自分が吐き出したものを見た。

 

 

それは人工肺であった。

 

 

 

ーああ。俺は本当に解放されたのか。あの地獄から。

 

 

 

彼の顔は笑みが浮かび上がっていた。

 

彼を貫く楔や縛る鎖はもうない。彼は本当の意味で自由になったのだ。

 

 

 

 

 

 

鈴木悟の視界は暗転した。

 




彼はこのあと死にます(大嘘
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