いい加減にしてオーナー!   作:きんにく同盟

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日常脱却

第一話 沙綾の野球観戦

 

 彼女、山吹沙綾の趣味の一つは野球観戦である。 

 

 

 

 いつも、事務所のテレビは有咲が独占してるんだけど、ナイターがある時は沙綾が陣取る。

 

「よし!!そこ打て!!のびろのびろ・・・!!」

 

 その時だけ、人格が変わる。

 

 ハッキリ言うと・・・怖い。

 

 

 巨人が負けると、機嫌が悪くなる。

 

「オーナー、私・・・家の都合で帰るから」

 

「ふざけんな!!毎回、巨人が負けると帰りやがって!!」

 

「・・・・・」

 

「何だ!!パンに毒でも仕込むのか?ええ!!」

 

 

「・・・シャーラップ!!!!」

 

 沙綾の裏拳がオーナーの顔にめり込む。

 

 

 

 吹っ飛んで壁に体を打ち付け、ピクピクと痙攣するオーナー。

 

 

「・・・ファッキン」

 

 事務所から出て行く。

 

 

 沙綾・・・・人は何かを常に背負ってるのね。

 

 

 

 

 

 第ニ話 みんな大好きアフターグロウ

 

 俺と巴の交流は未だに続いている。

 

 主に友人としてだが。男と女の友情は成立しないという俺の持論はあやふやと言ったハッキリしない感情で霞になった。

 

 あの爆弾発言は聞かなかったことにしよう。

 

 

 

 その巴が幼馴染とバンドをやっているという話を聞き、何とSPACEでも演奏したことがあるというではないか。

 

「じゃあウチでやってみりゃいいだろ?」

 

「だけど良いのか?あのロゼリアとポピパも居んだろう?」

 

「あ?平気だろ。ゴリヶ谷と根暗湊に気を付ければ、中々活動しやすいと思うぜ」

 

 

 俺って友人に甘いんだな。

 

 居たこともなかったから分かんなかったけど。

 

 

 と言う経緯でアフターグロウが所属した。審査はあったが、メンバー曰く実力は高いという。

 

 まあ、どうでもいいがな。

 

 

 

 俺の日常は変わらない。

 

 

「おい!いつまでゲームしてんだ。早く仕事しろ!」

 

 仮眠室の外から声が掛かる。

 

 巴?

 

「なんだ。俺はゲームするから仕事は花園とかいう女にやらせとけよ」

 

「ダメだ、早くしろ」

 

 と仮眠室から強制的に連れ出される。

 

 

「あら?珍しいわね。昼夜問わずにゲームしてるのに」

 

「ああ?無理矢理来させられたんだ」

 

 

 トモはキッチンで何かしている。

 

「ほら!!肉焼いたから食べておけ」

 

 と野菜炒めの上に肉がのったおかずとご飯が出される。

 

 

「俺、朝食わねえんだ」

 

 今日は休日、メンバーがライブをするのに集まっている。

 

「男だろ!しっかり食べて元気つけろ」

 

「勘弁してくれ。寝てねえんだよ」

 

 

 自分が可哀想で涙が出てしまう。

 

 

 

「しっかりとした生活習慣を・・・」

 

 

「トモ、俺の体は一日に25時間のゲームプレイという矛盾の上に成り立ってるんだ」

 

 

「いいか!アタシが来たからには、ちゃんと一日三食、遅刻なしの登校を心がけてもらうからな!」

 

 

 それを聞いた湊が口をはさむ。

 

 

「この人、高卒よ。まだ16歳だから手持無沙汰なのよ」

 

 

 そうだったのかと巴が頭を抱える。

 

「そういうこと。だから俺は俺の好きな事をやるから・・・それじゃ」

 

 と仮眠室に行こうとすると、巴が襟をつかんで引き留める。

 

 

「でも明日は我慢してくれ・・・メンバーに挨拶してもらうからな」

 

 

「駄目だ、経営者たるもの顔を多く晒してはいけない。わかってくれ巴」

 

 

 湊が溜め息交じりに言う。

 

 

「随分な帝王学ね・・・」

 

「うるせえぞ湊、ぶっ殺されたいの・・・グア!!」

 

 

 話してる途中で巴に頭を叩かれる。

 

「年上になんて口の利き方だ!!謝れ」

 

「ふざけんな俺はオーナーだ!!ここのトップだ!!」

 

 巴が俺にズイと近づく

 

「謝るんだ」

 

 

「・・・俺を困らせる奴が悪だ」

 

 

「アタシの言う事が聞けないの!!!」

 

 

「ヒィィィ!!ご、ごめんなさい」

 

 

 そういう訳で・・・俺は明日来るアフターグロウのメンバーに自己紹介しなければならないのだが、このまま巴が余計な邪魔をしてくるようでは、俺のカリスマ性が損なわれる。

 

 

 そこで俺は良きイエスマンを集めて計画を練った。

 

 

「ふええ・・・・そんな事しちゃ・・・だめですよ・・・」

 

 

「おい牛込!!お前、俺が居ない所で普通にしゃべってんの知ってんだからな!!」

 

 

「オーナーさん・・・協力したくないんですけど」

 

「白金・・・お前のテント、今俺が預かってんだぞ」

 

 

 そう、この牛込と白金だ。 

 

 

 計画はいたって簡単、サクラを演じてくれればいい。

 

「台本配っておくからな。くれぐれも成功させろよ」

 

 

 

 

 翌日

 

 

 

「今日は、あのSPACEに挨拶しに行くんだよね。緊張するなぁ」

 

 薄いピンクの髪を揺らしながら、喜びをかみしめる女の子。

 

「大丈夫だよ~巴が話は付けてるって言ってたから~」

 

 こう楽観的な事を言うのはアッシュグレイの髪の色をした子。

 

「モカ・・・それフラグだよ」

 

 黒髪ながら、一部赤く色を付けた髪の毛が印象的な子はクールに言い放つ。

 

 

「とにかく!!頑張ろう!!」

 

 見るからに普通な感じな子が皆を励ます。

 

 

 

 

 

「あいつらがアフターグロウだ。よし行け」

 

 俺は合図を出す。

 

 

 

「ふええ・・・遅刻する。オーナーさんに怒られるよぉ!」

 

「どうしよう。噂によるとオーナーさん・・・喧嘩無敗の伝説級の不良だったんだって・・・」

 

 

「「こわいよぉ~」」

 

 

 アフターグロウの面々を急ぎながら、通り過ぎる二人の女の子。

 

 その子たちは、彼女らがこれから行く、SPACEの中へ入って行った。

 

 

「やばいよぉ・・・怖そうだよ・・・」

 

「ひまり落ち着いて」

 

 

 

 

 

 

 

 SPACE

 

 

 アフターグロウは事務所に通される。そこにはロゼリア、ポピパは愚か、仲介人の巴すらいなかった。

 

 

 居たのは・・・スーツをピシッと決めた一浪のみ。

 

 椅子に座って、足を組んでいた。

 

 

「君たちがアフターグロウかね。俺は都築一浪・・・自己紹介をしたまえ」

 

 

 先にするのは先ほどまでおろおろしていたピンク

 

 

「は、はい!私は上原ひまりです。テニスをやってます・・よ、よろしくお願いします!!」

 

「うん。よろしく上原」

 

 

「私は羽沢つぐみと言います!生徒会に所属しています!!」

 

「生徒会か・・・失礼!俺の天敵だったもので」

 

 

「美竹蘭・・・よろしく」

 

「君はムカデみたいな頭をしてるな」

 

 

「青葉モカです~ああ、今井先輩からお話はうかがってますよ~」

 

「そうか・・・・今井?」

 

「はい~今日は私たちをビビらせるだろうから注意してっていわれてました~」

 

 

「・・・・」

 

 一浪はうつむく。買い物を頼んで出かけた連中も帰って来るだろう。

 

 

「普段はゲームばっかりしてる姑息な人だとも聞いてます~」

 

「あ、あいつは虚言癖があ・・・」

 

「あのお二人さんは仕組んだんですね~見事でしたよ~」

 

 

「ち、ちょっと青葉くん!それ以上言うと・・・顔があげられないじゃないか・・」

 

「それはすいませんでした~」

 

 

「じ、じゃあ暫くそこで待っててくれ。皆が歓迎会を開くそうだ」

 

 席を立つ一浪。

 

「どこにいくので~?」

 

「お前には関係ない」

 

 青葉モカ・・・こいつは俺の恨みノートに名前を付けておこう。

 

 

 

 

 

 ともかく今は・・・

 

「おい白金ぇ!!てめえチクりやがったな!!」

 

「ちがいますよぉ・・・・」

 

「許さん。お前のテントを燃やして、人ごみに放り投げてやるぜ!!」

 

 

「ごめんなさいぃ」

 

「駄目だ!さあ、来い。俺を敵に回すとどうなるか教えてやる」

 

 

 

 

「一体、どうなるのかしら」

 

「簡単だ!一生部屋から出られなくなるように精神的・・・・・湊?」

 

 

 よく見ると・・・買い物に行っていた全員が居た。

 

 帰って来てた様だ。

 

 

「一浪!!弱い女の子に何てことやってるんだ!!」

 

 巴も居た・・・。

 

 

「りみ!!てめえ、覚悟はできてんだろうな」

 

 市ヶ谷が骨を鳴らす。

 

 

「お前らが俺を追い詰めるから、こうなったんだ!!俺は被害者・・・ぐああああ!!」

 

 

 一斉に飛び掛かられて、俺は倒れた。

 

 

「このクソカスどもがぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当かよ!!あいつダセェ!!」

 

「なんか~無敗の不良とか~」

 

「モカ、笑っちゃ可哀想・・・ブフッ!!」

 

 

 

 

 

 

 仮眠室

 

 

「ほらお前も歓迎会に来い」

 

「巴!!お前も俺を嗤いに来たのか!!さあやれ!!ただし今日だけだ!こんな屈辱」

 

 

「フフフ、それでこそ一浪だ」

 

 

「なんだよ!!馬鹿にしやがってぇぇ!!」

 

 

 

 暫く、自分が可哀想すぎて眠れなくなるのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 第三話 遺恨

 

 

 都築詩船は経営を孫に任せた。

 

 理由はそれこそあっただろう。だが、まだ子供に任せる事は無かっただろうと思っていた。

 

 高卒資格を取ったとはいえ、まだ16歳だ。

 

 

 だけど、物事には理由がある。

 例え、物理現象を無視した現象が起ころうとも、それには理由がある。

 なぜなら理由は作られるからだ。

 

 

 

 

 

 彼女は一人、夜空を見上げて呟く。

 

 音楽から一線引いていても酒は呑んでいない。酒で喉がやけて掠れるから。

 

 でも今日は・・・と酒を煽る。

 

 

「本当の戦争になりそうだね。出来れば私の代で止めればよかったよ・・・派閥争いなんて」

 

 

 

 何故、ライブハウスを立ち上げて、若い子を育てて来たか・・・

 

 

 ライブハウスが怖いなんて思いを払拭させたい。

 

 

 違う。私は止めたかったんだ・・・音楽に憑りつかれたあの人を・・・・

 

 

「一浪。しっかりしな・・・アンタ全部取られるよ」

 

 

 その手にはある大会のポスターが握られていた。

 

 

 

 

「そうさ・・・物事には理由があるのさ。なければ作ればいい。こいつの様に・・・」

 

 都築詩船はポスターを握りつぶす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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