プロローグ
「織斑一夏」という人間を知っているだろうか。
世界で初めてISを動かした男性の名前だ。
IS、正式名称「インフィニット。ストラトス」とは女性にしか使えない兵器の名前であり、現在の女尊男卑の風習が形作られつつある要因である。
流石に未成年のためか、大々的に名前を全国放送で言われたことはないためにその名前を知っている人間は少ないが、俺は同じ学校に中学にいたため知っている。というかこの地域に住んでいて知らない男子なんていないだろう。
なんせ織斑一夏は女子しかいないIS学園に入学したのだ。もはや伝説になっている。
……いや、悪い意味でな。主にモテない男性からの嫉妬による。
なにせ一度女の子を侍らせたり、二、三人の女子と会話しているだけで「おい、あいつ織斑一夏だぜ」とか日常表現に使われているレベルだ。
一時人権侵害の問題になりかけたたが、そのことによりワンサマーという隠語が作られたり、その問題は収まることはなくお手上げ状態である。
さらにネットで名前を晒した馬鹿もいたそうでこのワードは現在広範囲の地域に絶賛拡散中だ。
俺の北海道の友達がこの言葉を使ったとき俺はその織斑君のその後の身を案じた。
というより今年の流行語大賞にその名を連ねている。
頑張れ織斑一夏。負けるな織斑一夏。
IS学園なら女の子を食べ放題じゃないか。
しかし、織斑一夏のもたらしたのはこの流行語だけではなかった。他にISを使える男子がいるのではないかという話になり、全男子にISの適正があるかどうかを調べる実験が行われた。
全男子の心境を表すとすれば、ハーレム空間のIS学園には行きたいがワンサマーの二の轍は踏みたくない。といった感じだ。
期待を持ちつつも、そんなうまい話があるわけない。そう思っていた。
……俺が乗ったISが本当に動いてしまうまでは。
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「まさか本当に動いてしまうとはな……」
俺は現在IS学園の入学試験が行われる会場に来ていた。誰もいない教室でポツンと椅子に座っている。
「それにしても問答無用で編入はないだろ。俺今二年生でしかも二学期だぜ?」
そう。一年生ならいざ知らず、二年生はそろそろ進路を決めてその進路に向かって勉強を始める時期だ。
「まあ、進路なんて決まってなかったから別にいいんだけどな……」
「――あれ、誰かいるの?」
誰かこの教室に近づいてきていることは足音で分かっていた。大方試験官だと思ったから愚痴を言い続けようと思っていたがそれは教師ではなかった。
そいつは、男にも女にも見えるいわゆる男の娘という外見をしており、どっかで見たことがあるような……。
「――お前、秋葉?」
「……もしかしてお前、相楽か?」
その通り、俺の名前は岸和田相楽だ。そしてこいつの名前は秋葉嘉奈、北海道の友達だ。
先程も言った通り、女の子みたいな外見をしているが、性格はちょっとうざったい感じの普通の男子高校生なので色々と台無しの男だ。
「まさか……、お前もISを?」
「じゃなきゃ北海道からわざわざこんなところにまで来ねえって……」
「……長旅お疲れ様。それにしてもまさかお前もとはな。とりあえず正直不安だったから嬉しいわ。これからよろしくな」
「ああ。まあこれから約二年間よろしくな」
秋葉はそう言うとニカッと笑った。
「――まさか受験者二人が知り合いだったとはな。うちの一夏もよろしく頼むぞ」
いつの間にか教室の扉の前に知らない女性が立っていた。
「私は試験官の織斑千冬だ。ではこれから試験を始める」
どっかで聞いたことある名前だな……。って日本代表じゃねーか。
目の前にいる女性の名前は織斑千冬。ISでのプロだ。
「……俺、この人テレビで見たことあんだけど」
「相楽、色紙もってない?」
「後で買いにいこうぜ。そんなすぐには帰らないだろ試験官だし」
「あー、いいね」
「お前らさっさと来い!」
「お、照れてる」
……。
………。
…………。
初対面の高校生に鈍器(辞書)使うとか絶対頭おかしいだろ……。
何であの人お咎め無し? おかしくね? ああ、世界最強だからか。
………いやそれ意味不明で支離滅裂してやがるだろうが!