IS -意味不明・支離滅裂-   作:麻倉

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IS学園生活一日目 放課後②

 

 

 「ハニートラップ」というものをご存知だろうか?

 

 主に女性が男性を誘惑して弱みを握ったり罠に嵌めたりするもので、実は社会に出ると実際に行われることも多いと聞く。ちなみに本当かは知らない。

 少し、ほんの少しだけ俺は大人になったらそういうことも起きるのかと少し夢を持っていた。

 

 それをまさか学生のうちに体験するとは思っていなかった。

 

 

 

「おかえりなさい。わたしにします? わたしにします? それとも、わ・た・し?」

 

 俺は開けた扉をそっと閉じ、隣の部屋に逃げ込んだ。

 

 ちなみに、俺の部屋は当然のように女子寮の一角に存在している。隣の部屋にはもちろん女子が住んでいる。

 

 部屋番号二百一。猫又ニコ、御陵凌華。

 ……なぜか俺の隣の部屋はクラスメイトの二人だ。

 しかし今はなりふり構っていられない。

 

「御陵、猫又! 助けてくれ、俺の部屋に更識がいた!」

「うわ、ちょっとどうしたの? ていうかせめてノックくらいしてよねー」

 

 猫又がぶかぶかのジャージでソファに寝転がったまま顔面蒼白の俺の言葉に対応する。

 

「それにねー、さがらっち。部屋に戻ったら生徒会長がいたなんて話はよくあることだよ。この前なんかあたしのゼリー勝手に食べられてたし!」

「よくあることなのかよ……」

 

 俺は猫又に断りを入れず入ったことを謝ると、踵を返して再度自分の部屋へと戻った。

 

 

 俺は自分の部屋の前に立ち、自分の渡された部屋の鍵の番号を確認する。

 

 二百二。

 

 そして部屋の番号を確認する。

 

 二百二。

 

「やっぱここで合ってるんだよな……」

 

 そして最後にネームプレートを確認する。

 

 岸和田相楽、

 更識楯無。

 

 当然のように並び立つその二つの名前。

 

 俺は意を決しゆっくりとボタンを押し始めた。

 

 そして発信。

 

「もしもし、織斑先生ですか?」

 

 そして最終手段(ちくり)を施行した。

 

「ちょ、駄目ぇぇえ!」

 

 扉が豪快に開き、エプロン姿の更識が現れる。そのまま相楽に向かってダイブした。そして更識はギリギリの所で携帯を叩き落とすことに成功する。

 

『ぉい! どうした岸和田! 悪戯電話ならブチ殺すぞ!』

 

 落ちた携帯からは物騒な言葉が聞こえてくる。

 俺は俺に覆いかぶさっている更識を見て呆れを隠すことなく言った。

 

「……お前何やってんだ?」

 

 更識はオヨヨと身体をくねらせて上目遣いで相楽を見た。

 

「実はわたし……家出をしてきたの……」

 

 明らかに嘘だ。

 

「ぐっ……」

 

 しかし可愛い。可愛いが……。

 

「却下」

 

 俺は更識をつまんで放り投げた。ちなみにIS学園の寮にはカーペットが敷かれているので痛みはない。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいってばー! 酷くない!?」

「たっしー、うるさい」

「猫又? え、部屋隣だったの? もしかしてさっきの会話も……」

「もち聞こえてたよ。りょーか帰ってきたらこってり話を聞かせてもらうからねー!」

「ちょ、猫又。目が恐い……」

 

 

 

 

 俺は落とした携帯を拾って部屋の中へ入り、扉を閉めた。

 

 ドアの向こうで更識達の騒ぐ声が聞こえてきたが、俺は深く考えずにゆっくりとリビングまで移動した。

 

『おい……』

 

 携帯からの唸り声に急いで反応する。

 

「すいません、ちょっとパニックに陥ってました」

 

『そうか、一体何があったんだ?』

 

「寮の中に猫が侵入していた時にはどう対応したらいいですかね?」

 

『育てるか捨ててこい』

 

 電話が切れた。

 俺は一息ついてソファに腰を下ろした。

 

「ふー、流石に疲れた……」

 

 思わずため息が漏れてしまった。

 

「つーかまだ一日しか経ってないのかよ……」

 

 それに、今日はまだ月曜日だ。

 スケジュール表を確認したが今週末に学年対抗タッグマッチの日であり、三週間後には修学旅行が待ち受けている。

 

「……秋葉と班を組めるように織斑先生に掛合ってみるか。何かこの学校って大分あの人に都合の良いようになってる気がするしな。……そうだ」

 

 俺はあることを思い出した。

 急いでダンボールの山をかき分け始める。

 

 ……。

 ……。

 ……。

 

「……あった」

 

 二十分後、相楽が取り出したのはある一枚の写真だった。

 

「これは真剣に辛くなった時にしか見ないって決めてたんだけどな……」

 

 その写真には数人の男子が写っていた。

 それを見た瞬間、相楽の表情に変化が起きる。

 

「……よし、大丈夫だ。三人もまともに話せる女子の友達が出来た。秋葉もいる」

 

 相楽はそう呟くとソファにうつ伏せになり、ゆっくりと意識を落としていった。

 

 

 




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