IS学園生活二日目 朝の目覚め
目が覚める。
それを理解した瞬間、嫌な感覚が俺を襲った。
「ん・・・?」
何故か背中に重みを感じる。
背中にはなぜか更識が乗っかっていた。
「んぅ・・・」
更識は俺の背中の上で気持ちよさそうに眠っている。やけに色気のある吐息が俺の耳の近くに当たる。俺も更識も私服比較的ラフなものを着ており、密着している背中がかなりこそばゆい。
更識の両手は俺の背中に伸ばされており、ピッタリと身体全体が密着している形となっている。
俺はソファで下を向いており、今は無理に顔を上げている状態だ。そして背中には相変わらず更識の温もりがある。ていうかこいつ胸でかすぎだ。背中で潰れていてかなりエロい。更に足が俺の足に絡みついている。
俺は我慢が限界になり、更識の腰周りに手を伸ばし・・・、
扇子を奪って更識の頭を思いっきりしばいた。
「痛っ!」
「何やってんだ更識! つーか何でソファで寝てんだよ俺! つか身体の節々が痛い・・・」
少しずつ頭が覚醒し始める。
そうだ、確か俺は昨日更識を部屋から放り出した後にソファで眠たくなって・・・、
「今何時だ?」
慌てて携帯の時計を確認する。
「・・・六時!?」
俺の叫びを聞いた更識が眠たそうに目をこする。
「まだ六時じゃない。七時くらいに寮を出て朝ごはんを食べたら余裕で間に合うわよ?」
何て呑気なやつだと思ったが、その言葉に俺はああそうか、と納得した。
「仕方ないだろ、いっつもこのくらいに起きてたから週間がついてたんだよ。つーかその前にお前どうやってこの部屋に入ったんだ?」
「え、だって鍵空いてたわよ?」
更識は不思議なものを見るような目で俺を見る。
・・・そういえば鍵を閉めてなかった気もするな。
「だからって何で俺の部屋にいるんだよ・・・」
「だって言ったじゃない、家出してきたって」
更識は悪びれない顔そう言った。
「そういえばそんな設定あったな・・・、それはまあいいとしてせめてベッドに寝てろよ。よりにもよって俺の背中の上で寝なくてもいいだろ」
「人肌が恋しかったのよ」
更識はそう言うとパチリとウインクする。
「え、ちょ、無視!?」
俺は無言で脱衣所へと向かった。
@
「ったく何が狙いなんだよ、あいつは・・・」
俺は昨日の夜から更識にある妙な違和感を覚えていた。
何とかなく、やらされているような違和感。
それが俺の更識に持つ違和感の正体だ。
もし更識が俺のことを好きでああいうことをやっているのならば最初に告白をしてくるだろう。昨日一日で分かったが更識は回りくどいことをやるようなやつじゃないことは分かってるつもりだ。
「ま、エロゲでよくある朝勃ちは回避できたしさっき無視したのは成功だったな」
とにかく今は気にしないことにした。今は今週を乗り切ることのほうが重要だ。
酷くなるようならば猫目達に相談すればいいだろう。
俺は適当に携帯に目を通し、寝巻きに着替えた。
「ん・・・?」
今度は脱いだ私服に違和感が・・・?
服には少量の水滴の後があった。
「これって寝汗か? あいつのよだれ?」
俺は深く考えないことにして脱衣所を出た。
「こいつ本当に自由だな・・・」
俺は目の前の光景に思わず変な笑いがこぼれた。
「んぅ・・・」
そこではソファで更識が眠っていた。
「どうせだしベッドで寝かせてやるか」
俺は更識を横抱きしてベッドへと運ぶ。
「ん・・・」
丁寧に寝かせて掛け布団を軽くかけた。
「んじゃ俺はソファで一眠りするか・・・。なんつーか自分の部屋のベッドに最初に寝かせたのが女子って何かすげえな。明日は俺がそこで寝るのか? 最高だな」
俺は寝ぼけた頭でソファに寝転がった。先ほどまで寝ていたため、まだ温もりが残っている。
「寝るか・・・」
俺はもう一度眠りについていった。
@
「ん・・・?」
目が覚める。
俺はソファから起き上がってまず更識の眠るベッドを見た。
「あれ?」
そこには誰もいなかった。
「夢だったのか?」
気になってベッドまで脚を運ぶ。
「これって・・・」
そこには更識の扇子が落ちていた。
「ん?」
その扇子には自業自得と派手に書かれていた。
そこはいい。その下にある文字が問題だ。
『起こしても中々起きないから先に行ってるわね✩』
無言で携帯を確認する。
八時十九分。そこにはそうデカデカと書かれていた。
確か学校の始まる時間は八時二十分だったはずだ。
「・・・」
窓の向こうではカラスがカーカーと鳴いていた。
俺はそっと携帯を閉じ、青く染まる無限に続く空を仰いだ。