『これより、Cブロックの勝利グループである秋葉、黛ペアとDブロックの勝利グループである岸和田、更識ペアの試合を開始します』
その言葉に俺と更識は一瞬で気を引き締める。
そして眼の前で輝かしいばかりに煌めく機体が俺たちの視界を奪った。
「これが俺と対を成す機体か……」
「ああ、こいつは『白鶴(びゃっこう)』だ」
――白鶴。
俺の黒雛が全てを破壊する機体だとすれば、
秋葉の白鶴は全てを無に帰す機体である。
これまでも何度か秋葉の試合を観戦してきた。
その中でも秋葉は全ての機体の攻撃を無力化していた。
『……更識、俺の機体で秋葉を抜けると思うか?』
『……さあね、やってみるしかないんじゃない? 最強の矛と盾って感じで』
プライベートチャネルの窓口を開いて更識と会話していたのだが、俺はその中でとある違和感を感じた。
『……なんか、たっしー怒ってる?』
『たっしーいうなし! ほらもう始まるわよ』
……やっぱり怒ってるよな。
何かしたか、俺?
「――ああ、そうか」
俺は考え始めた瞬間、とある理由を推測するに至った。
ようは、そういうことか。
『試合開始!』
開幕早々、俺は黒雛を起動させる。
「鬼火!」
黒雛の全砲台を展開させて目の前の全てに火の雨を降らせる。
『更識、サポート頼む! あれくらいじゃ多分無効化されてる!』
『分かってるわよっ!』
「無無明亦無」
秋葉がそう呟いた瞬間、目の前の弾丸が全て消え去った。
それと全くの同時に更識が突っ込んで行く。
――蒼流旋。
見た目麗しい、水で出来ている武器。
それを用いて戦う更識の姿はとても美しく見えた。
「させないっ!」
しかし、それを受け止める黛の姿があった。
「へーえ、あなたが来るっていうことはあの技はそれなりにシールドエネルギーを消費するようね。お互いにパートナーにはほとほと困らされるわね」
「くっ!」
無言は肯定、そう判断した更識は打鉄を投げ飛ばす。
「私もそろそろ活躍しないとやってられないのよ!」
そして秋葉へと向き直り、弾丸を撃ち始めた。
案の定、無力化の技は使わない。
無力化するほどでもない、と思われたことはないだろう。
しかし、相楽ほどの一撃必殺でもない。それほどシールドエネルギーを消費するということだ。
黛はテクニックタイプであるが、自分ほどではない。
今回の展開の差は紛れもなくパートナーとの差だ。
もし相良と秋葉がISについてもっと造詣が深く、お互いがお互いをカバーしあえるような間柄であったら。
更識はぶるりと震えた。それはもしかしたら今のIS世代で一番強いことになるのかもしれない。
「……あれ? 完璧すぎない?」
聞けば、二人のIS製造業者は同じだ。
一つ一つの機体では勝利はあり得ない。相楽のISも燃費が悪いため、単体ではあまり機転が効くとは言えないのだ。
最初から、二人が協力することを前提にして作られた機体のような、そんな言い知れぬ不安感を更識は抱いた。
「だけど今は、勝たせてもらう」
瞬間、白鶴の機体が爆発した。
『勝者、岸和田、更識ペア。これによって準決勝を終了します』
観客の誰もが激しい試合展開にほっと一息ついた瞬間、
遥か上空で大きな爆発が起きたことに気が付いた。
「――え?」
『……悪い、更識。ミスって変なボタン押しちまった』
ひゅるるるる、なんて間抜けな音と同時に地面に黒雛が突っ込んだ。
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目が覚める。
「知らない天井だ……」
「何馬鹿なこと言ってるのよ、あんたの部屋でしょ」
「保健室ですらないのかよ」
俺はゆっくりと起き上って部屋を見渡した。
「絶対防御があるんだから自分の機体の攻撃で傷を負うわけないでしょ、ゆっくり休みなさいな」
「……試合結果は?」
更識は俺の目の前にピースサインを浮かべた。
「私一人でも余裕よ、伊達に学園最強じゃないもの」
「……そっか、おめでとう」
俺はその言葉と同時に更識の背中へと手を伸ばす。
そして背中を何度か叩いた。
……本当は頭を叩いてやろうとしたのだが、腕が思ってたより短かったなんてことは内緒だ。
「あ、ありがとう……」
「お、おう……」
おかしい、今日は更識の態度がやけに素直だ。
これは俗にいうチャンスってやつじゃないのか?
いやいやいや、何を言ってるんだ俺は。
これはあくまで学年対抗タッグマッチという一つのお祭りが終わったことに対する一種の相乗効果というものに過ぎない。
後で思い返せば滅茶苦茶恥ずかしかったなんてことに過ぎない。
俺はもう一度、瞼を閉じた。
まだ学園生活は始まったばかりだ。
これからもっと仲良くなっていけばいいんだ。