スティックを尋常じゃない速度で操作し続ける音が部屋の中で鳴り響く。
それに呼応して画面の中のキャラクターたちが殴り合いを行っていた。
「お前、それは卑怯だろ!」
「相変わらず弱いな相楽は」
俺たちが今プレイしているのはスマ○ラだ。
ようやく俺の家から届いたらしく、昨日の夜から秋葉が俺の部屋に泊まり込みでプレイしている。
「それで、いつ来るんだよそのワンサマー君は?」
「んー、多分もう直ぐじゃねえか? とりあえず楯無を叩き起こしてくる」
あいよー、と軽い返事が返ってくる。
「おい楯無そろそろ起きろ、ここからは女子禁制だ」
いつの間にか俺のベッドで寝ている楯無を揺さぶる。
「んー……、どうゆうことよ……?」
「男子会をやるんだよ、ホラ生徒会室にでも行ってこい」
適当に私服をほっぽりだして楯無を部屋から追い出す。
ようやく眠気から覚醒した楯無の怒りの罵声が聞こえてきたが気にしない。
どうせ直ぐに御陵たちの部屋へと向かうだろう。
俺は適当に朝食を作り、秋葉にパンを投げる。
「それにしても、IS学園で男子会をやるなんて俺たちが実質初めてみたいなもんだよな」
「……まず俺たちがここにいる時点でおかしいんだけどな」
――そう、今日俺たちは男子会を行うのだ。
俺は一カ月ほど前にワンサマ―と交わした会話を思い出し始める。
『よかったら来週の月曜辺りに男だけで昼飯でも食べないか? 一年生のシャルル君だったか? と二年のもう一人の男の秋葉も誘ってさ』
『は、はい! ぜひお願いします!』
俺はその事をぶっちゃけ忘れていた。
そして何事もなく毎日を過ごしていたら教室にワンサマ―がやって来たのだ。
そして今に至る。
「四人から三人になっちまったからあんまり『会』って感じはしないけどな~」
「いいからさっさと食べちまえ。もうすぐ来るってメールが来たぜ」
メールの通り、丁度十分後に扉がノックされる音が響いた。
「すいませんお邪魔します!」
「おー、昨日ぶり。悪いなすっかり忘れてた」
「いえいえ、色々あったし仕方ないですって」
そのわりにワンサマ―は随分嬉しそうだ。
やはりかなり楽しみにしていたらしい。罪悪感が天元突破だ。
「やっほー、確か織斑一夏君だっけ。秋葉嘉奈だよよろしくなー」
地べたに寝っ転がりながらスマ○ラを続けている顔面だけは美少女の秋葉がワンサマーに挨拶する。
というかこいつらファーストコンタクトだったのか。
意外に会わないものなんだな。
「はいよろしくお願いします! 大丈夫ですよ合ってます!」
「そんな改めなくて大丈夫なんだぜー。同じ数少ない男子同士仲よくしよーな」
そう言って秋葉はワンサマーにスティックを手渡す。
それにしてもこいつ人の部屋で寛ぎすぎだろ……。
「は、はい!」
俺もようやく朝食を食べ終えたためスティックを手に取る。
「でもやっぱ三人集まったら四人で乱闘したいよな、本来ならシャルル君が来る予定だったし……」
君じゃなくてちゃんだったからなあ……。
こればっかりはどうしようもない。
しかし三人だと何かと中途半端である。
「だったら女子呼びますか?」
「ばっか一年坊主、だったらゲスな会話が出来ないだろ? ここは女子禁制の男子会だぜ?」
秋葉の理不尽な面倒な絡みがワンサマ―を襲い始める。
とりあえずご愁傷さまという所だろう。
「それにしても織斑ってイケメンだよな。既に結構な回数告白されてるんじゃないのか?」
「え!? いや俺なんて全然ですよ!」
いやいやそれはないだろーに……。
「ばっか、そいつはアレだ。織斑の周りが代表候補生で囲まれてるからだろ。お前が更識会長の懐刀ポジに収まっているからいまいち絡み辛いのと同じようなものだ」
「あー、あいつらか。そういえば凄い派手な外人に囲まれてたな。全員彼女?」
「いやいやいやいや、違いますって! みんな大切な仲間ですよ!」
模範解答頂きました。
なるほど、ワンサマーがワンサマ―たる所以が分かった気がする……。
しかしこれじゃ下品な下ネタとかゲストークにワンサマ―が付いてこれるか不安になるな……。
「だったらこうしよーぜ」
依然寝転がったままの秋葉がやる気ゼロの姿勢を見せつけながら提案する。
「スマ○ラで敗北した奴がメアドの中からランダムで告白って設定で呼び出ししよう」
緊張感のある一戦が開始された。
「うおっ、織斑の携帯女子のメアドばっかじゃねえか!」
「さーて誰にしようかね~」
「先輩たち強すぎですよ……」
まあ、ハメ技まで全て知り尽くしている俺たちが負けるわけがなかった。
しかも抗議が出ないように俺たちがわざと手加減して白熱の闘いを醸し出しているあたり、性格の悪さが滲み出ている気がする。
ま、年功序列ってことで今回はワンサマ―には苦しんでもらおう。
「で、どいつにする?」
「こいつでいいんじゃねえか? しののの?って奴。外国人とかで面倒な展開になるのも嫌だしな」
「ちょ、ちょっと待ってください箒は……!」
数分後、血に塗れた織斑の姿が俺の部屋の前で発見された。
犯人は五人。なんでも女子会を行っていたらしく、なんやかんやでボロボロになるまで攻撃されたようだ。女子ってコワい。