「さて、そろそろ二時間目も始まるし教室に戻る?」
時計は現在九時五十分を指している。十時からが二時間目だからまだ余裕だがそろそろ教室へと向かった方がいいだろう。
「え? 俺一時間サボるなら一日丸々休む派なんだけど」
「相楽君ふっきれたわね……。いや私がそうさせたんだけど」
とは言っても流石に一日目からズル休みをするわけにはいかない。ぶつくさ言いながらも俺たちは教室へと向かった。
……が。
「あれ? あれって確か……」
「どうした?」
更識が突然立ち止まって窓にへばりついた。俺は窓を覗くために数歩下がって更識の視線の先にあるものを見た。
「男……?」
金髪の少年が歩いていた。あの身長からすると一年生だろう。
「確かあれって今日から転校してきた三人目の男の子のシャルル君ね」
「まだもう一人いたのか?」
「そ。今日転校してきたのは相楽を含めて四人。そしてそのうち男子が三人よ」
「でもあいつ日本人じゃないよな?」
「確かフランスの代表候補生だったはずよ。 ……へー、シャルル君か。結構イケメンね」
「一目惚れでもしたか?」
「しないわよっ。本当教室とはキャラ違うわね……」
更識は辟易したような表情でそう言った。
「ま、もうぶれるつもりはないけどな。サンキュー更識」
「……。堅い」
「は?」
「私その苗字あまり好きじゃないのよね」
「いや俺お前の名前知らないし……たっしー?」
「たっしー言うな! まあいいわ。とりあえず急ぎましょ」
「……さっき時計見たけど余裕だっただろ? つーか名前くらい教えてくれてもいいだろーが」
固いというわりに自分の名前を言わないとかかなり意味不明だ。
慌てて俺はたっしー(更識)を追いかけた。いや、一人で教室戻りたくないし。
@
「相楽!」
走っていた俺を後ろから呼び止める声が聞こえたので俺は立ち止まって声のしたほうを見た。するとそこには秋葉が立っていた。どうやら先を行っていた更識も興味があったようで立ち止まってこちらへ近づいてきた。
「なんだいたのか秋葉」
「いやひどくね!?」
「いや何か普通に女子と同化してて気づかなかったわ」
秋葉はなんと女子二人と一緒にいたのだ。遠目から見ると完璧に楽しそうに話す美少女三人組にしか見えない。道理で普通にスルーしてしまったわけだ。
「相楽だって女子と一緒にいるじゃねえか!」
「この学園で女子といないのはぼっちということになるだろ」
「いやまあそうだけどよ。ってそういえば相楽は転校初日から学校をサボった超アウトロー男って噂がこっちのクラスまで来てたけど大丈夫なのか?」
噂の回る速さが異常な気がする。
「なるほど、道理でお前のツレの女子は俺を警戒してるのか……。軽く傷つくな……」
「西家、東。ほら、言っただろ。相楽はむしろチキンだって」
「おいこらテメエ秋葉」
「すまんすまん冗談だ。でもまあ思ってたより元気そうで安心したぜ。こっちのクラスの誤解は解いといたからまあ頑張れよ」
「え? 解いたって……」
俺が呆けた声でそういうと秋葉と一緒にいた女の子たちがクスクス笑いだした。
「あはは、ゴメンね」
「結構面白い人だったって噂流しとくよ」
「秋葉お前……」
俺は秋葉の方を見た。しかし既に秋葉は背をむけてクラスへと帰っていく途中だった。
女の子たちは俺に手を振ると秋葉についていった。
「いい友達じゃん秋葉君」
「更識……」
「さ、そろそろ授業も始まるし行こっか」
既に教室は目の前だった。
更識の声が聞こえたのか、教室から猫又さんがひょこっと顔を出した。
「おーい! 二人共早く! 後ろから先生来てるよ」
「げっ、マジだ。急ぐぞ更識」
「はいはい。まあ最終的に私のISの部分展開使えば楽勝なんだけど……。はっ! なんか思いついたら試したくなってきた……!」
目を閉じニヒルな笑顔を浮かべながら更識はそう言った。
「アホか」
俺はそう言って更識の袖を掴み走り出した。
「え、ちょっ」
朝の仕返しだ。
……いや、変な噂立てられたくないから扉の前で手放したけど。