「……やっと出来た」
俺は何とか一時間をフルに使い簡単なISの動きをマスターした。
一時間何もすることがなかった秋葉は憤っていたが、その時間を使ってようやく俺は秋葉のレベルに追いつくレベルなのだから仕方がない。
そして現在は十分の休憩時間中だ。
肩身のせまい身分の俺達は腰を下ろしてスク水姿で騒ぐ女子を観察している。
「どうだ? 秋葉。そっちのクラスには好みの女子がいたか?」
特に話す話題もないのでとりあえず俺達はお互いのクラスの女子について語らうことにした。
「まだよく分からねえな。女子のレベルが高いってことは確実だけどな。……まあでも一日目だしなんとも言えねえわ。相楽はどうだ?」
そう言われてクラスメイトの顔を思い出す。が、三人しか思い出せなかった。
「……そうだな。俺もまだ少ししか把握できてない。まあレベルは高いな。……何やってんだ更識?」
俺達が話す後ろで更識達が聞き耳を立てていた。他の女子達も何となく聞き耳を立てているように感じる。
「いやー、相楽君達が女の子を怪しげな眼差しで見てるからおねーさんもしやって思っちゃったのよ」
そう言う更識の後ろで御陵や猫又が苦笑いしている。というかそんなに真剣な目で見ていたのか俺ら。少し自重する。
「秋葉、紹介するぜ。こいつは更識楯無だ。……はい名前を復唱!」
「はあ!? さらし……たて?」
秋葉は俺の突然な無茶振りに挑戦するもあえなく失敗する。
「愛称はたっしーだ」
「おう、分かった。よろしくなたっしー」
「だからたっしー言うな!」
更識が豪快に突っ込みを入れる。
「んで、その後ろにいる身長が高い人が御陵さんだ。隣の小さい子が猫又さん」
「よろしくな。御陵さん、猫又さん。俺は秋葉だ」
今度はスラスラと名前を言う秋葉。
「よろしくね」
「よろー」
御陵と猫又はそれに笑顔で返した。
「むきゃー!」
隣で更識が憤慨していた。
猿か。
更識は数秒憤ると今度は何か思いついたような表情になった。
「そうだ。いいこと教えてあげる。これを知ったら相楽君のあたしの見方が三百六十度変わるわよ?」
「それ変わってねえだろ」
更識は咳払いをし、少し溜めた。
「あたし、更識楯無は生徒会長なのよ」
そして語尾にハートマークがつきそうな猫なで声でそう言った。
「……はあ?」
「……絶対嘘だろ」
違うということでスルーして話を終了させようとしたが、俺達の話を耳ざとく聞きつけた猫又が会話に参加してきた。
「岸和田君、秋葉君、たっしーは本当に生徒会長だよ?」
猫又から放たれる驚愕の事実。よくこれでIS学園成りたってるな。
「えええええー」
「マジか……」
「まじまじ。それにロシアの代表操縦者なんだよ? すごいよねー。IS学園最強だし」
続いて御陵がそう言う。更識は口をVの字にして『たたえよ!』と書かれた扇子を広げていた。あれ? 文字変わってね? 朝は確か『任せなさい』って書かれてた気がするけど。
「ロシアの代表ってことは確か国のISの操縦者の代表ってことか?」
俺はポカンとした表情で更識を見つめた。
「……何よ?」
「天才ってどこかおかしいって言われてるのって本当だったんだな」
俺がそう言うと更識はにこやかな笑顔を浮かべたまま持っていた扇子で俺の頭をしばいた。
「ちょ、痛え! ちゃんと本来の使い方をしろよ!」
「うっさい!」
結局俺は休み時間いっぱいまで更識に追いかけ回された。
「……相楽君たっしーいじるの好きだねえ」
猫又は遠目でその光景を見ながら呟いた。
「俺てっきり更識さんはいじる側だと思ってたんだけど……」
すっかり御陵と猫又と打ち解けた秋葉がそう言う。
「……たっしーをいじれるのは私達二人がかりか相楽君だけだと思うよ」
御陵はそう言って後ろのクラスメイト達を見た。
「一組の彼、凄いね……。更識さんを手玉に取ってる」
「ていうか二組の秋葉君って本当に男の子なの!? めっちゃ可愛いんだけど!」
「秋葉君の目の前でそれ言ったら駄目だよ? あたしそれ言って最初の休み時間口聞いくれなかったんだから……」
「えぇ~」
「そういやうちのクラスの岸和田君は一時間目から更識さんと授業サボってたよ」
「え? もしかしてあの二人付き合ってんの?」
「さあ……」
「いや実は岸和田君と秋葉君が付き合ってたりして!」
「あたしそれ言ったせいで朝からずっと口聞いてくれないの……」
「アンタ地雷踏みすぎ!」
……噂が噂を呼んで拍車が止まらなくなっていた。