IS -意味不明・支離滅裂-   作:麻倉

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IS学園生活一日目 四時間目

「それじゃあ休憩時間は終わりでーす。四時間目の授業を始めますよー」

 

 おっとりした先生がそう言って四時間目開始の時間を告げた。

 あの先生は山田真耶という名前の先生らしい。少しだけ親に狙ってつけたんですか? と質問したくなる名前だ。今度話す機会があったら聞いてみよう。

 

 そして総勢六十名の女子がズラリと並んだ。俺達はその列の後ろにポツンと立っている。

 

「それでは織斑先生、よろしくお願いします」

 

 山田先生はそう言うと一歩下がった。代わりに織斑先生が一歩前へと出る。

 

「ああ、分かった」

 

 織斑先生はそう言うと俺達に視線を合わせた。

 

「合同で授業を始める前にお前ら男子に聞いておきたいんだが……。お前ら配布した参考書で予習はしたのか?」

「は? 参考書……?」

「……予習?」

 

 俺と秋葉はそれぞれ首を傾げた。

 

「そんなもんあったか……?」

 

「相楽君達、これよこれ」

 

 更識はそう言って隣に座っていた女子の一冊の本を取って俺達に見せた。

 

「げ、あれって教科書だったのかよ!? 俺あれぬか漬けの蓋にして北海道に置いてきちまった!」

「何やっての嘉奈ちゃん!」

 

 俺は溜め息を吐いて秋葉を見た。秋葉はそれに苛ついたようで皮肉げに俺に尋ねる。

 

「だったらお前はあるのかよ!」

「ああ、もちろんだ。俺はIS学園から送られてきたダンボールからまだ制服しか出してねえからな。ないほうがおかしいだろ」

「お前それ授業は……」

「更識にまだ教科書もらってないって言って見せてもらった」

 

 小声で秋葉にそう返す。

 

「……秋葉は至急北海道から送ってもらうか新しいのを買え。それと相楽は論外だ。昼休みに取りにいけ。飯よりも優先しろ」

 

 そんな俺たちに織斑先生は冷たくそう言った。

 

「うっす……」

「はい……」

 

「それでは授業を再開する。今日は飛行中の加速の練習だったな。更識、黛!」

 

「はい!」

「はーい!」

 

 二人の生徒が返事をする。更識とさっき更識が参考書を借りた相手のようだ。眼鏡をかけていて活発そうな女子だ。

 

「お前らは確か前回の時間に既にクリアしていたな。それぞれ岸和田と秋葉を指導してやれ。無理なようなら身体に叩き込んも構わん」

「分かりました」

「はい」

 

 一瞬織斑先生が不敵に微笑んだのも気になったが、俺は眼鏡の人がどういう人か気になり秋葉に尋ねた。

 

「秋葉、そっちのクラスの人はどういう人なんだ?」

「新聞部の黛さんだ。……まあ、新聞部って感じの人だな」

 

 秋葉はそう言って力なく笑った。

 そう言えば休み時間に地雷踏みまくったことを話してた女子の声と心なし似ていたような……。

 

「それでは簡単にもう一度説明しよう。飛行は全員完璧に出来ているものとして話すぞ。……ISには……」

 

 約五分間に及ぶ専門用語まみれの話を静かに聞く俺たち。

 

「なあ秋葉、絶対防御ってあれだよな守鶴の」

「馬鹿野郎、回転の方だろ」

「そこ! 静かに聞け! それにどちらかと言えば守鶴の方が近い。砂ではなく機体が守ってくれているからな」

「先生やけに詳しいですね……」

「お前たちと同じ質問をする馬鹿がたくさんいるからな……」

 

 お疲れ様です。

 

 そんな感じで説明は終わった。班に分かれて機体を使用するらしい。俺たちは更識と黛さんで一つの機体だ。

 

「で、相楽君達はどのくらい理解できたの?」

 

 更識は俺たちに笑いながらそう聞いてきた。

 

「絶対防御」

「絶対防御だな」

「そこだけ!? 他は!?」

 

「PIC……ピック? 豚か? そんなのは覚えてるな」

 

 俺は何とか聞き取れた言葉を言ってみる。

 

「パッシブ・イナーシャル・キャンセラーよ! ISの基本システムで、浮遊・加減速などを行えるの!」

 

「俺はスーパーセンサーだっけか? それは聞き取れたぜ」

 

 俺に対抗して秋葉が同じように聞きたての言葉を使う。

 

「ハイパーよハイパー! ランクダウンしてるじゃない! ISの操縦者の知覚を補佐する役目があるの!」

 

「……たっしー」

「だからたっしー言うな! って薫っち、 あなたまで!?」

 

 ずっと黙っていた黛さんが興奮した更識を宥める。

 

「習うより慣れろって言うじゃない?」

「……それもそうね」

 

 更識は黛さんの意味深な言葉に同意する。

 

「えっ」

「はあ?」

 

 

 

 

「何でこんなことに……」

 

 俺は打鉄を展開し、ゆっくりと浮上しながらそう呟いた。

 

「ほらー! さっさと加速しなさいよ!」

「どうやってんなことするんだよ!」

 

 試しに加速しそうな姿勢を取ってみるが全く変わりがない。

 

「あーもう、面倒くさいわね!」

 

 更識はそう言うと何か呟いた。

 

 その瞬間。

 更識の身体は水色の美しい機体によって覆われていた。

 

そして一瞬にして俺の真横に移動した。

 

「まずはここをこういう姿勢にして、加速したい! って気持ちになるの」

「あ、ああ」

 

 更識は機体の手で器用に俺の体制を変えた。

 

「更識、それは……?」

「え、ああこれ? これは私の専用機、ミステリアス・レイディよ」

「へえ……格好いいな」

「そーいうときは可愛いって言うものじゃない?」

「機体に可愛いはちょっと……」

「じゃあさっさと加速してきなさい!」

 

 そう言うと言うが早いが更識は俺の機体の足を掴んだ。

 

「おらあああああ!」

「おいいいいいい!」

 

 所謂、ジャイアントスイング。

 俺は砲丸投げの砲丸のように投げ飛ばされた。

 

 グングンと加速していく。

 

 突然機体に更識の顔が現れた。

 

「やっほー、ちょっとやりすぎたけどこれが織斑先生直伝、身体で覚える加速方法なのよん? 今の状態を身体にしっかり刻んでね?」

「な、何だこれ……」

「あ、これはコア・ネットワークのオープンチャネルって言ってISのコアに内臓された通信機能を使って会話してるの」

「そうか、じゃあもう一個聞きたいんだけど……」

「何?」

「どーやって止まるんだこれ?」

「……」

 

 更識は少し間を置いてから話を再開した。

 

「……かのIS世界チャンピオンは言いました」

「織斑先生が……?」

「身体で覚える加速方法は最後に激突する恐怖を体感してこそ身体で覚える加速方法なのだと……、ね」

「……」

 

 

 

 

「……」

「あら、秋葉君? 何を震えているの?」

 

 黛は眼鏡を輝かせて秋葉へと詰め寄った。

 

「黛さんはあんな乱暴なことしないっすよね……?」

「……未だ加速が出来ている二年生はたったの二人。そしてその二人は同時にアレを味わった二人でもある……」

「……」

「そして織斑先生は身体に叩き込んでも構わないと言った……」

「……」

「あなたの練習できる時間は恐らく岸和田君の回収時間を差し置いても十分程度……。五分でマスターできないようならアレよ?」

「……」

 

 そう言うと黛は妖しく微笑んだ。

 

 

 

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