そんなこんなで俺は苦労して探し出した教科書を使い、IS学園の初日の午後の授業へと臨んだ。
ぶっちゃけ何言っているかさっぱりだったので秋葉とずっとメールをしていたがそこは気にするところではないだろう。
授業の合間に隣の席から手紙とかコンパスとか飛んできたがそれも気にするところではない。ちなみにコンパスの針はちゃんと蓋がされていた。
「ん……」
気持ちの良い快適な温度によって目が覚める。流石IS学園。冷房完備とは素晴らしい。
「やべっ、何一つ聞いてなかった……!」
いつの間にやら放課後になってしまっていたようだ。
携帯を確認すると秋葉から新着メールが来ていた。
『俺、どっちかというと女装よりニューハーフの方が好きなんだ……。相楽はどう思う……?』
……俺達はどんな会話をしてたんだよ、中々支離滅裂しているな。
秋葉用のメール受信フォルダがいつの間にやら四桁を越えていた。
ゆっくりと顔を上げたまま周りを見渡す。
放課後だというのに誰一人教室から出ようとしない。皆一様に話している。
少し聞き耳を立てた所、学年対抗タッグマッチという言葉とペアという言葉が頻繁に聞こえるような気がした。
「学年対抗タッグマッチ」
とりあえず同じように声に出してみた。
これで俺も流行を追うものの仲間入り! やったね!
その瞬間、スパァンと小気味良い音と衝撃が俺の頭部を襲う。
「独り言とか寂しすぎるでしょーが! しかも学年対抗タッグマッチって一人で言うと何か恐ろしいしっ」
更識だった。
どうやら大分寝ぼけていたようだ。
「いやだって更識、授業にブラジャーの付け方を参考にさせる授業だぜ? 俺には無理だ」
ブラジャーという言葉を聞いた瞬間俺は授業を受けるのを放棄した。確かあの先生は上から読んでも下から読んでも同じ名前の先生だったが名前を思い出せない。
「まあそれはそうだけど……、男子のトランクスをはくときた似たようなもんじゃないの?」
「そんなわけあるか!」
俺のその言葉に当面の更識もかなり微妙な顔をする。
「……うん、今のはおねーさんも無理があると思う」
「……それで更識、学年対抗タッグマッチって何なんだ?」
更識は腕を組み唸ると簡単に説明してくれた。
「まあその名前の通りよ? 二人一組でトーナメントに出てISで戦うのよ」
「へぇー、ってそんなの聞いてねえんだけど」
「いやいやそりゃ岸和田君が寝てたからじゃん」
そう言って御陵と猫又が近付いてきた。
「それでペアの事なんだけど……」
更識が慌てたように話題を変える。
タッグマッチか。それなら……
俺は意を決して更識の方向を見る。
「な、何……?」
動揺する更識。
「秋葉を誘ってみるか」
俺は更識の立っている教室の扉の方向へと歩き出した。
後ろで絶叫が聞こえたがそれは気にしない方向で。
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「悪い。どうしても黛さんがペアを組んでくれって言うから組んじまった」
秋葉はかなり残念そうな表情で断りの言葉を言った。
「何……だと……」
予想外の出来事にしばし呆然とする。
唯一の知り合いである御陵と猫又はペアを組んでいるだろうし、学園最強と呼ばれる更識は既にペアが決まっているだろう。
秋葉は練習があると言われ黛に連れていかれたため、俺は行くあてもなく校内を徘徊し始めた。
「二年生の生徒の数が奇数だったら終わりだな……」
思わず口からそのような言葉がこぼれ落ちる。
「ん……?」
廊下の窓に変なものが映った。
ISだ。
恐らくあれは打鉄と……見たことのない機体が四機もある。
更識に教えてもらったのだが、この学園で操縦できる機体はあの打鉄くらいのもので、それ以外は基本専用機と呼ばれる特別な機体らしい。
俺は食い入るようにその戦いを見物し始めた。
「行きますわよ? 一夏さん!」
青い機体が上空へ移動し、ビームのようなものを放った。
「うおっと」
それを間一髪でかわす白い機体。
未だ見たことのないIS同士の戦いが俺の視界を覆いつくした。
「へえ……、すごいわね」
そして今日1日で聞き慣れた猫なで声が俺の耳を支配した。
「こんなところで油売ってていいのか? たっしー。もうISの自主トレしてるやつがいるぞ?」
俺は更識に声をかけた。
「うっさいわね。それに楯無よ。……わたしもまだパートナー募集中よ? それにあの子たちは一年生よ。まあ二年生のほうが先に試合を行うんだけどね」
「……へえ、あいつら一年生なのか」
あれで一年生とかこの学園のレベル高すぎじゃないのか?
「そうよ? それにあの黄色い機体の子は今朝見たシャルル君で、白い機体の子は織斑君」
「はあ? 織斑ってあのワンサ……織斑一夏ってやつか!? あの世界で一番最初にISの機体を動かしたっていう……」
「そうよ?」
へえ、あれが……。
「って更識。お前ペアがまだ決まってないのか?」
ワンサマーに気を取られすぎてスルーしていたが俺の耳はさっきの言葉を聞き逃さなかった。
「え? ああうん、そうだけど……」
「だったら俺と組んでくれないか? このままだと成績がえらいことになりそうだしな」
「ええ!? えっとうん、りょーかいよ?」
こうして俺は『学園最強』とペアを組むこととなった。
……絶対秋葉にチートだとか言われそうだな。
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「……もしもし?」
とある部屋で女性の声が響き渡る。
しかしそこには誰の目もない。
「私だ。引き続き彼の情報を引き出してくれ」
話す相手の口調は穏やかだが、どこか焦っているような感じもあった。
「……なんで急に織斑一夏から相楽……岸和田相楽に変更したんですか?」
「……彼が最重要だからだ。織斑一夏の方は変わりに布仏虚か本音が行う。……なんなら簪でもいいんだぞ?」
「……っ、分かった。やるわ。早速だけど寮の部屋の変更を頼むわね」
「ほう……、いいだろう」
更識は携帯の電源を切り、手に乗せて弄び始めた。