読者の皆様お久しぶりでございます、蓮零でございます。
この度は一年も更新ができずに大変申し訳ありませんでした。身近な人が亡くなり、書く気力を失っていましたが、最近きたコメントに勇気を貰い、再び書くことにしました。
もう、読まれているかも分かりませんが、まだ見てくれている人のために頑張って書いていきますので、どうかお願いします。
それではどうぞ、お楽しみください。
「ううっ、僕はなんてバカなことを言ったんだ・・・。」
「いや、なに言ってんだよ雪音。そりゃお前があんなことを言って驚いたけど。お前、格好よかったぜ?」
「そのセリフ、まったく嬉しくないんだけど・・・、一夏」
雪音と一夏とオルコットの三人によるISの決闘が決まった日の放課後。雪音は先ほどまで自分がオルコットに対して挑戦するかのように言ってしまったことに、激しい後悔と嫌悪感を抱き、項垂れている状態なのであった。
そんな雪音とは対象的に、一夏は雪音に対して尊敬するような情念を向けて、雪音を励まし、現在のような状態に至ると言うわけなのである。
一夏からしたら、先程の雪音の言った言葉には悪いところなど一切無いと言える。むしろ雪音の言葉にクラスの大半の女子が彼のことを褒めていたくらいなのだから、しかし、当の雪音本人はと言うと_________
「いくら何でも、女の子に対してあの言い方は酷いよなぁ・・・。」
こういうありさまであった。根っからの紳士&お人好しが災いしているためとしか言いようがない。そこが雪音の良いところでもあり、損をしてしまうところなのだと、一夏は優しすぎる幼馴染を見て、思わず苦笑してしまう。
そんなこんなで雪音が負のループを淡々と繰り返して抜け出せずに悶々としている途中で_________
「あぁ、織斑君、堀内君。よかった、まだ教室にいたんですね」
「はい?」
「ふぁ?」
声の主の方を振り返ると、そこにいたのは柔らかな笑みを浮かべた山田先生だった。そんな山田先生の雰囲気から、まるで母親が自分の子供に優しく微笑みかけている図を雪音の中に沸騰させるには十分な物であり、雪音は机に頬杖したまま、山田先生の顔をじっと見つめた。
「どっ、どうしたんですか?堀内君、私の顔をじっと見てますけど・・・何かついてたりしますか?」
「あっ、いえっ・・・、山田先生の笑顔が綺麗だなあって、思ってつい・・・」
雪音はあっさりとそんなことを言い放った。
「…ッ!!?ふぇあ!?ほ、ほほほほ堀内君!?ききき急にそそそ、そんなこといわれたら・・・あっ、いえ、いやなわけじゃないんですよ!?嬉しいですし、むしろもっと聞きた…てっ、私は何を言って…!?」
「やっ、山田先生、なんでそんなに慌ててるんですか?」
「…雪音、お前わざとやってるのか?だとしたらタチが悪いと思うぞ。」
「なんで僕が責められてるの!?」
顔を赤くして、なぜかテンパっている山田先生を目の前にしていると、一夏から呆れたような目で批判されてしまう。失礼な、何も変なことなんて言ってないじゃないか!!
「…っと、そんなことよりも、山田先生も少し落ちついて下さい。俺と雪音に何か用事があるんですよね?」
「ふぇっ!?あっ、そ、そうですね。すみません、急に取り乱してしまって(ううっ…、生徒の前なのに私はなんてことを考えて…!!)」
そう言うと、山田先生はコホンと息を吐き、改めて僕と一夏を見て言葉を続けた。
「じっ、実はですね。お二人の寮のお部屋が決まりました。」
山田先生がそう言ったが、確か少しの間は自宅から通うって言われていたような…?
「でも、山田先生。俺たちの部屋はまだ決まってなかったんじゃないんですか?前に聞いた時は、一週間は自宅から通学してもらうって、言われたんですけど…?」
幸い、僕が疑問に思っていたことを一夏が代わりに山田先生に聞いてくれた。
「そうなんですが、今回はお二人の事情が特殊だったので、一時的な処置として、部屋割りの方を無理やり変更したらしいんですよ。」
山田先生は申し訳なさそうな顔をして、僕と一夏に事情を説明してくれた。逆にこちらの方こそ、なんだかIS学園の人には申し訳ないことをしてしまったなぁと思いながら、一夏とふたり、顔を見合わせて苦笑を漏らしてしまう。
「ですが、とにかく寮にいれることだけを最優先に考えていたらしくて、お二人は別々の部屋になってしまったんです」
山田先生がさらりと、とんでもないことをいった。
「え?ということは、僕と一夏のルームメイトは女の子なんですか?大丈夫なんですか…?」
「大丈夫ですよ。一ヶ月もすれば部屋割りの方も調整が出来ると思いますので」
山田先生はそういうが、僕には一つだけ心配な事があった。それは僕が『Ω』であるということ。
もし、相手の女の子が『α』だった場合が一番怖い。夜に寝ている間、僕にもし、ヒート(発情期)が来てしまったら、その子をきっと惑わしてしまうだろう。発情期が来ないとしても、僕が抑制剤を飲んでいたり、首輪を見られたりしたら、きっと相手の子は嫌がると思う。それにただでさえ、相手は男が同室となったら、やり辛いのではないか。そう思っていても今更、仕方ないのだが…。
僕は諦めて、山田先生の方に向き合い、返事を返す。
「分かりました。部屋は分かったのですが、荷物は一度、家に戻らなければ準備出来ないので、僕と一夏は今日は家に帰らせて貰ってもいいですか?」
「俺も一度、家に戻らなきゃないけないので。」
「あっ、いえ、荷物の方ならーー」
「私が手配しておいてやった。ありがたく思え、お前たち」
そう言いながら千冬さんが教室の中へと入って来た。あまりの颯爽とした登場に僕と一夏は驚きを隠せない。
「「あっ、ありがとうございます……」」
「まぁ、堀内の荷物は既に親御さんが用意しておいてくれてな。受け取って持ってきただけだし、織斑の方は生活必需品だけだがな。着替えと、携帯電話の充電器があれば充分だろう?」
「俺だけなんだか雑じゃないか!?」
それは僕も思ったが、口には出さないで置いた。一夏ドンマイだよ。
「煩いぞ、織斑。足りないものは休みの日にでも自分で取りに行け、私はこれ以上は受け付けないからな」
「それでは、織斑君、堀内君。時間を見て部屋の方へ行って下さいね。夕食の方は六時から七時までで、寮にある食堂を利用して下さい。ちなみに各部屋ごとにキッチンとシャワーがありますが、大浴場もあります。学年ごとに使える時間が違いますけど……えっと、残念ですが、お二人は今のところ、使えません。」
「えっ、何でですか?」
「馬鹿か貴様は!!」
「ぶへらっ!?」
あっ、また一夏の頭に出席簿が叩き込まれた。
「何で殴るんだよ、千冬姉⁉︎」
「貴様は同年代の女子と一緒に入りたいのか…?」
「あっ……」
どうやら一夏は自分の後頭部を撫でながらも、言葉の意味に気付いたようだった。
「えっ、織斑君、女の子と一緒にお風呂に入りたいんですか⁉︎だ、駄目ですよ!」
「えっ、い、いや、入りたくないです」
一夏は全力で首を振る。あっ、馬鹿!!そんな言い方しちゃったら…!!
「ええっ?織斑君、女の子に興味がないんですか!?そっ、それはそれで問題があるような……」
山田先生が言った言葉に、いつのまにか教室に集まっていた女の子達が目を光らせて、沸き立った。
「織斑君は男の子に興味があるの…!?」
「織斑×堀内…!!いや、逆に堀内×織斑も…どちらメチャクチャ滾るわね…!」
「織斑君は、もしかして堀内君のことを…?」
聞こえてきた女の子たちの声に、僕は思わず自分のお尻を隠しながら一夏からサッと距離を置き、千冬さんの背中へと隠れた。
「おい待て、雪音!!何で俺から離れるんだよ!?」
「いや、違うんだよ?一夏。僕は君がどんな性癖でも、親友だと思うし、引いたりはしないつもりだけど、さすがに君をそっちの方には考えられなくて……」
「一夏、貴様まさか雪音のことを狙って…!?いくら弟だとしても、それは許さんぞ!!」
「俺はノーマルだよ!!ふっ、二人のバカーーー!!」
そんな一夏の魂の叫びが、虚しく教室に響き渡るのだったーー。
♢♦︎♢
「えっと、確か僕の部屋は…」
一夏の魂の叫びから暫くして、僕は一夏と行動を別にして寮の自分の部屋へと向かっていた。
寮に向かう前に、千冬さんからはあることを言われた。
『大丈夫だ、堀内。お前の事に関しては私が信用できる奴と同じ部屋にしておいたから、心配するな』
千冬さんがそんなことを言っていたので、とりあえずは安心できるだろうと思いながら、僕は自分の部屋の前にと辿り着いた。
「1025室か…とりあえずノックだけでも…。」
コンコン。
しーーん
あれっ、反応がない…?まだ、来てないのかな…?
「失礼しまーす……」
ガチャリと鍵を差し込んで、ドアノブに手をかけて扉を開けたが、中には誰もいなかった。
中に入ってみると、その豪華さに思わず目を見開いてしまう。そこら辺のホテルよりも豪華な作りだった。部屋の中に入って最初に目に入ったのは調理するためのキッチンだ。綺麗にされており、冷蔵庫までもが付いている。それ以外に目に入ったのは、フカフカして柔らかそうな二つに並んだ大きなベッド。見ているだけで寝っ転がりたい気持ちに駆られた。
そのベッドの横に設置されている机の片方に僕の荷物が置かれていた。とりあえず荷物を整理する事にして、僕は自分のボストンバッグを手にかけた。
「あっ、父さん、ティーセットと紅茶の茶葉も入れといてくれたんだ、ありがたいなぁ」
実家がカフェである為か、幼い頃から紅茶をよく飲んでいた。父の淹れた紅茶はそこら辺の紅茶と比べられないくらい美味しく、香りもとても良い。その為か、僕は料理以外にも、紅茶の淹れ方を父に鍛えられたのだ。
思わず、笑みをこぼしながら思い出に浸っていると、後ろからガチャっと、ドアが開けられる音が響く。
僕は部屋のもう一人の住人が来たのだと思い、部屋の入り口へと振り向くが、ドアは開いていない。
あれ、開いてない…?じゃあさっきの音は一体…?辺りを見回していると……。
「ああ、もう一人の部屋の奴か、すまない。こんな格好だが、挨拶をさせてくれ。私は篠ノ之っ…!?」
思わず息が止まった。相手の女の子の言葉が途切れたのを気に、恐る恐る、後ろの方を振り返るとーー。
ーーそこにいたのは、タオルをその豊かな体に巻き付け、濡れた長い黒髪が部屋の光に反射して、美しく輝かせながらも、顔を真っ赤に紅潮させている箒ちゃんだった……。
僕はこの時ほど、ハプニングが不可抗力な物だと、言いたくなったことはないと思うのだった…。
久しぶりに書けました。良かった、本当に良かった×(2倍)
楽しみにしてくれている人は、本当にありがとうございます。感謝感激です。これからは必ず続きを書き続けます。
これからも、応援おねがいします。