松風天馬君に恋する私   作:伊つき

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処刑係

 

「で、ゴッドエデンで作られたチームって具体的に何すんだ?」

「さぁ?私に聞かないでよ」

 

適当にボールを蹴り合い、パスをするサエとアスカ。

その2人のやり取りを前に私は腕を組み、自身の顎に触れて考えていた。

 

「……」

「どうした?何か気になることでもあるのか?」

「アリア……」

 

私の隣にアリアがやってきて訝しむ。

ミクもアリアの背中から顔を覗かせた。

 

「どうしたの?」

「いや、シズクが……」

「別になんでもないわ。気にしないでちょうだい」

 

アリアがミクに共有する前に、私は話を切った。

アリアは「お、おう……」と戸惑い気味。

仕方ないのよ。

まだ確信がある訳じゃないから。

ただ、さっきサエが口にしたこのチームの役割という視点は鋭い着眼点と思ってる。

教官がヴァリキリアを作ったことには必ず理由がある。

私達は何の為に作られたチームなのか、どこをめざして行くのか。

それを決めるのは結局私たちではない。

上の思惑を予測する必要がある。

先手を打たなければ。

私は上にチームを作れと言われたことを利用して弱いシードを保護した。

この目的を果たすために、上層部にヴァルキリアを自由に扱わせてはいけない。

 

「アリア、ちょっといいかしら?」

「なんだ。やっぱりなんかあるんじゃねえか。どうした」

 

アリアだけを呼び出して私は彼女に考えを共有する。

 

「この前処刑場にいたシードは外の世界から来たシードだったのよね?」

「あぁ、そうだがそれがどうした」

「不思議に思わないかしら。フィフスセクターの管理サッカーが機能してるならサッカー部で活動してるシードが処分されると思う?」

「……!それは……」

 

アリアもやっと気づいたわね。

そう、外で活動してるシードが処分されたということは管理サッカーが機能していないということ。

つまり。

 

「管理サッカーに反旗を翻してるサッカー部があるってことか?」

「確かなことは言えないけど、外にいるシードが起こす失態はそれしか考えられないのよね。反乱分子を止めようとして負けた……そうは思わないかしら?」

 

私が指摘してアリアが顎に手を当てる。

 

「隠密に失敗したシードも処分対象になる可能性はある。だから、早計ではあると思うが……私はお前の予測が正しいと思う。理由はわかるだろ」

「えぇ」

 

私は頷く。

アリアの言う理由。

それは、この前戦ったシードが化身使いだったということ。

化身を使えるほどの外のシードが処分されるとしたら、やはり私の考え以外は思いつかない。

今、中学サッカー界で起きていることは、ゴッドエデンに閉鎖されている私達には把握出来ないけれど。

もし……反乱、いえ"革命"というべきそんな現象を起こしている者たちがいるなら。

この間、サエとアリアが処刑役を押し付けられた罠を含めて考慮すると……おそらく私達ヴァルキリアには恐ろしい未来が待っている。

 

「……なんとなくわかってきたわ。上がヴァルキリアを作った理由。革命を起こしたサッカー部に敗北したシード達、その処分。アリアを切捨てたタイミングに合わせて作ったことも考えて辻褄も合う」

「いや、待て。その目的で作ったならブレイカーである私を処分するのは矛盾してるだろ。寧ろ、私を引き入れたからそうなったんじゃ……」

「いえ、多分違うわね」

「なんでそう言える」

 

アリアが訝しんだ表情で私を見て、私はそれを一瞥する。

そして、敢えて遠くを見て言った。

 

「私に、ブレイカーの素質があるからよ」

「は?」

 

アリアが2度見する。

やっぱり気づいてなかったのね。

 

「ブレイカーをやるには高いテクニックが必要でしょう。私はその数値が異常に高い。理由はそれだけじゃないけど、多分私にもあれはできるわ」

「ま、待て。えっ?は?」

「……ヴァルキリアはきっと、貴女の代わりにしてブレイカーをチーム単位で運用したかったのよ。そして、私が選ばれた」

 

アリアを一瞥しながら続ける。

 

「しかも人選を私に委ねることで弱いシードをわざと囲わせたわね。おそらくあの子たちの立場を何らかの方法で餌にして私にブレイカーとしての活動を強要しようとしてるんでしょう」

「……っ!」

 

やっと理解が追いついたのか、アリアが目を見開く。

問題はここからよ。

 

「もし外の世界で革命が起きていて、それを起こすサッカー部がこのままフィフスセクターに勝ち続けたら……負けたシード達は一体どこでどう責任を取るんでしょうね」

「ヴァルキリアがその処刑係で、ここにそいつらがなだれ込んでるって言うのか?しかも私達はあいつらを守りながらそいつらの相手をしなくちゃけない、そういうことか?」

「そういうことね」

 

私が頷いてアリアが瞠目する。

そして、遠くでじゃれ合ってる皆を見た。

その目は穏やかではなく、狼狽している。

 

「お前……まんまと手のひらで踊らされてるってことじゃないか。いいのか、これで」

「乗せられたものは仕方ないわね。次の一手はこっちが早く打つだけよ」

「奴らの言う通りに、素直にブレイカーに成り下がるのか?」

「……」

 

私は答えない。

どっちとも言えないから。

これから私が先手を打てればそんな事態には至らない。

でも、成功するとは限らない。

とにかく教官たちが動く前に考えを確立する必要がある。

そう、思っていた時―――。

 

『あー。聴こえるかね、ヴァルキリアの諸君』

「……!」

 

声が響く。

牙山教官の声。

 

「これって……!」

「しっ。聞きなさい!」

 

アスカが顔を顰め、私が制止する。

……っ。

先に動かれたわね!

 

『君たちには、フィフスセクターが完全管理しているとあるチームと対戦してもらう。彼らは許されざる失態を犯し、処分が決定しているのだ。その処刑人として……君たちを抜擢することにした』

「……!」

 

全員が瞠目する。

やはり、私の見たては正しかった……!

 

『これはフィフスセクターからの司令である。よって、失敗は許されない!もし失敗すれば陸奥、オイゲン、長門以外のヴァルキリアは処分とする……!』

「なっ……!」

 

拳を握りしめ、誇示する姿が目に映る。

指示通りに従えば私達は処刑人となり、失敗すれば仲間が死ぬ……!

 

『試合は明日の正午。対戦相手は―――"海王学園"だ』

 

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