松風天馬君に恋する私   作:伊つき

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「お、久しぶりだな。どうだ?調子は?」

「……!アリア……」

 

ヴァルキリアへと戻る道中、アリアとミクが合流した。

ご機嫌にサインボールを抱え、話しかけるアリア。

対するミクは……なんだか暗い顔をしていた。

 

「なんだよ。やけにテンション低いな。どうした」

「……無理やり特訓させられて高い方がおかしいでしょ。そっちこそなんでそんな高いの」

「さぁ、なんでだろうな」

 

ミクに尋ねられてアリアはボールを人差し指の先で回転させる。

いかにもご機嫌だ。

嫌になる。

今、そんな気分じゃない。

 

「ま、ただでさえ強い私がさらに無敵になって帰ってきたんだ。朗報だろ。お前も喜べよ」

「うん。それはそうだね。成果、あったんだ?」

「まあな。お前はどうだ。奴になんかされたのか」

「……っ!いや、何もされてはないけど」

 

さすがのアリア。

浮き足立っていても洞察力は素晴らしい。

ミクの様子がおかしいことを即座に見抜いた。

けど、本人ははぐらかす。

アリアも深くは追求しない。

 

「ふーん。話したくなったら話せよ」

「……ありがとう。そういうところ好きだよ」

「だろ?分かってんじゃねえか。私も私のそういうところが好きだ」

「自分で言う?」

 

ミクがようやく笑った。

そんな彼女の表情を見てアリアもフッと口元を緩める。

これなら普段の調子に戻りそうだ。

安心だ。

そうでなくっちゃな。

 

「さて、戻ってめちゃレベルアップした私達を皆に見せてやろうぜ」

「……私はいいかな」

「なんでだよ。まあいい。戻ればシズクが試合に向けた練習もある。まだやる事山積みだな」

「そうだね。頑張ろう」

 

2人は拳を合わせた。

薄暗い廊下を歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「修也。君に問いたい。このゴッドエデンという施設は本当に必要だったのか?」

「……実態を知り、子供に絆されたか」

 

戻ってきたロココに開口一番問われ、豪炎寺は察した。

彼の疑問は至極真っ当だ。

なぜなら彼は革命の内情も、豪炎寺の計画も知っている。

だからこそ、その中に組み込まれたゴッドエデンプロジェクトは、毛色が異なり目的に沿っていないことも気付かれた。

ロココの指摘は正しく、言う通りだ。

 

「君の考えは合っている。ゴッドエデンは、革命にも"管理サッカーにも"必要ない」

「なっ……!?そうじゃないかとは思ってたけど、まさか認めるのかい?」

「あぁ。この施設だけはフィフスセクターの意志とは関係がない」

「じゃあ一体誰の思惑でこんな地獄は生み出されたって言うんだ」

「支援者Xだ」

「支援者X……?」

 

ロココが困惑する。

ふざけてるのか?と思ったが、彼は至って真剣だ。

豪炎寺としても、聖帝としてもそこに嘘偽りないことはロココのレベルなら洞察できる。

だからこそ、さらに混乱する。

 

「支援者……つまりフィフスセクターに資金援助をしている事業者がいるのか?」

「金銭だけではない。彼は超次元サッカーにおいて、我々を遥かに凌駕する知識を有している。その提供も契約に含まれているんだ」

「……!なぜそんな知識をそいつは持ってるんだ?」

「わからない。追求しないことを引き換えに、という条件でそれも契約に含まれている」

「そうか……」

 

ロココは飲み込む。

しかし、納得した訳では無い。

彼曰く、管理サッカーに対する莫大な支援を得る代わりに支援者の望みを叶える仕組みらしい。

 

それが―――"セカンドステージチルドレン"の誕生。

 

豪炎寺は、それがなにかは具体的には分からないと正直に告げた。

それでも契約は契約。

生み出さなければならない。

故に支援者の望み通り、彼の要求を全て飲んだ育成施設を作った。

主導はイシドシュウジ名義。

それが。

 

ゴッドエデン。

 

管理サッカーとは別に、支援者Xの願いを叶えるために子供達を地獄に閉じこめる悪魔の施設。

死の恐怖を与え、追い込み、無理やり進化を促す。

凄まじい数の子供たちが捕えられ、その中で至れるのは今の段階で可能性はほんのひと握り。

ハッキリ言って効率が悪い。

だが、フィフスセクターは支援者Xの奴隷だ。

彼以上の知識を有していない以上、彼がそれが最適だと言うのならこちらは否定材料を持ち得ず、肯定するしかない。

そうしてこの暴挙が許され、野放しにされている。

 

―――ふざけるなよ。

 

「豪炎寺 修也……!!」

「……」

 

ロココが豪炎寺を睨む。

ロココとて彼にはどうしようもないことはわかっている。

それでも。

アリアがサッカーを楽しむ心を失っている。

腹が立つのは、豪炎寺が仕方ないと諦めている事だ。

姿勢すら捨てている事だ!!

 

「くらえっ!」

「……!」

 

ロココがスターティングポーズをとるために屈む。

ボールと共に飛び上がり、そして。

 

「Xブラスト!!∞!!」

 

赤いビームが豪炎寺に迫る。

それは彼の頬を掠め、背後の奥にある壁に大きな穴を作った。

着地したロココは一瞬不敵に笑って、すぐに睨む。

 

「さすがだ。当てらないってわかってたのか」

「あぁ。大人だな」

「君も嫌な大人になった」

「"私"もそう思う」

「……!」

 

ロココが顔を顰める。

本当に嫌な大人になった。

 

「僕は君を許さない。必ずアリアを解放してみせるよ」

「ならば私はそれを全力で阻止する。彼女はゴッドエデンに必要だ」

「……!君は彼女がセカンドステージチルドレンに至れると思っているのか?」

「……」

 

豪炎寺は天井を見上げ、少し考える。

そして。

 

「まだ分からない。だが、可能性は秘めている。少しでも可能性のある者は誰一人としてこの施設から逃がす訳にはいかない」

「君は……悪魔だ。極悪人だ」

「なんとでも言うといい。私は、私の愛するサッカーを守るため―――どんな犠牲も厭わない!」

 

強い意志を示すイシドシュウジ。

ロココも決意を固めた。

 

「わかった。なら僕は君の野望を徹底的に阻止する!」

「やれるものならやってみろ」

 

聖帝イシドシュウジは鼻で笑い、足を組み、余裕を見せる。

対峙するロココは真剣な眼差しで彼に対抗する。

臨時コーチ、ロココ・ウルパがフィフスセクターから離反した。

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