「喜べ、お前達。最強無敵のアリア様が帰ってきてやったぜ」
「この態度で本当にありがたいことがあんのかよ」
「本当によく戻ったわ。ごめんなさい、危険な特訓に行かせてしまって」
「命令されたら仕方ないよ。シズクは悪くない」
「だな。まあパワーアップして損することはない。これからもっと役に立つぜ」
「心強いわ」
私が口元を緩めると、アリアとミクも笑みを返した。
向こうの思惑は知らないけれど2人が強化されて帰ってきたのは本当に有難いわね。
これで彼女達がいない間の収穫も合わせると、かなりの戦力増強になる。
「聞いてよ、ミク。私とサエとチェンナイとチェンファでヴァルキリー・アタック使えるようになったんだよ」
「本当に!?凄い!」
「チェンファもか」
「う、うん。私も……強くなろうと思って。ごめん、やる気なくて」
「仕方ないよ。この地獄で向上心を持つのって勇気いるし。だから前向きになってくれてありがとう、チェンファ」
「ミク……ごめん。ごめんね」
チェンファが泣いてしまって、ミクが抱き締める。
皆、見守って穏やかな時間が流れた。
子供たちも挙手する。
「はいはい!私達もヴぁるきりーあたっくの練習始めたよ!」
「まだできてないけど……」
「あれ難しいよー!」
「でも、絶対覚えてアリアの役に立つんだ!」
「お前ら……」
アリアが驚いた顔で瞠目している。
少し眼球が赤くなっているからきっと目頭が熱くなっているんだろう。
そして、彼女は握り拳を作る。
より一層彼女たちを守るために。
「さて、再会の余韻もここまでにして次の試合に向けて練習しましょうか」
「そうだな。で、どんな練習をするんだ?」
「前に作戦があるっていってたよね。なんだっけ」
「向こうの攻撃力に対して、殴り合うってやつか」
「そうよ。そのことでアリアとミクに1つ相談があるのだけれど」
「相談?」
「なんだ?」
アリアとミクが顔を見合せたあと、不思議そうに私に視線を戻す。
私は勿体ぶらずに教える。
「ドラゴンリンクとの試合この3人でヴァルキリー・アタックを撃ったでしょう」
「あぁ。想定より威力が出たやつか」
「そう。あれの再現性を高めたいの。厳密に言えば専用にチューニングして、新しく進化した技に昇華させたいわ」
言っても2人はキョトンとしている。
そんな顔しなくても説明するわよ。
もう概要も技名も全部決めてあるもの。
「名は"ジ・エレメンタル"。私達の理論値に再現性を齎し安定して尚且つ正確に試合で使えるレベルに落とし込む技よ」
私は片手でピストルを作る。
手順は2工程。
まずは親指を折る。
「やる事は単純よ。ヴァルキリー・アタックの前に私達3人がそれぞれボールにエネルギーを込めるだけ」
「で、そのエネルギーを溜め込んだボールをヴァルキリー・アタックで放つってわけか」
「そういうことよ」
「膨大なエネルギーになるんじゃ。制御できるの?」
「微調整は私が担当するわ。ミクはパワーで負担を受け止めシュートを前に飛ばす役割。メインはアリア」
「なるほど。ヴァルキリー・アタックを放つ時には、私が主軸でお前達はサポートに回るってことか」
「えぇ」
ヴァルキリー・アタックは3人で同時に撃つシュート。
もちろん私とミクもシュートは放つ。
けど、私とミクはこの技が超威力で真っ直ぐに飛ぶように調整係というわけ。
だから、殆どはメインキッカーのアリアの技とも言える。
「それぞれの属性を重ね合わせて3人で協力して前に飛ばす。それがこの技よ」
「光属性の私と火属性のミク。雷属性のシズク。属性の違う3人がボールにエネルギーを共有する。だから、"ジ・エレメンタル"か」
「毎度よく考えるなぁ」
「物は試しよ。早速やってみましょう」
この3人なら概要を共有しただけでとりあえず形にはできるでしょう。
即実現を目指して配置につく。
みんなが見守る中、私達は同時に駆け出した。
そして。
「でや……!」
ミクが火属性を込める。
「ふん」
アリアが光属性を込める。
「ハッ……!」
私が雷属性を込める。
あらゆるエレメンタルを集約した超巨大エネルギー。
それを内包したボールが自然現象で浮遊する。
そして。
『ヴァルキリー・アタック!』
3人で同時に蹴り込む。
それは、ジ・エレメンタルとなり巨大なエネルギー球体がゴールへと突き刺さった。
着地した私達は瞠目する。
「なっ……マジか」
「嘘でしょ?この威力……」
「驚いたわね。想像以上よ」
私達は固まり、見学していたサエやアスカが目を疑っていた。
またしても想定の数値を大幅に超えた。
今度は3倍はあったかしら。
これにはアリア評も。
「このシュートはとんでもないな。パワーだけならアイリーンに匹敵する」
「でも、撃っても反動ないし。リスク少なめ。実践でも使える。これ……」
「"使える"、わね」
これはとんでもない切り札になる。
この3人の化学反応は侮れないわね。
「次の試合、点取り合戦になるなら決め手は多い方がいい。確実にゴールを決められるシュートが1つ増えた。これは素晴らしいことだ」
「……!」
アリアが汗を拭いながら力説した。
私とミクは目を見開く。
全てを正しく測れる彼女が確実に決まると言った。
ということはそれは事実だ。
彼女がそこまで言う威力がこのシュートにはある。
これは絶大なメリット。
これほどの化学反応を引き起こした原因は……おそらくアリアとミクがパワーアップしたから。
ジ・エレメンタル。
このシュートはアイリーンに次いでフィフスセクター最強の5つのチームにも有効な一手かもしれない。
「まだ完成じゃないわ。試合までに微調整を重ねて細かいところを直していきましょう」
「だな。んでこいつを引っ下げて聖堂山から大量得点するぞ」
私達は意気込み、頷きあった。
少なくともアリアが新しく覚えた技と今の3人技は確実にゴールを割れる。
相手のGKのスペック表を見ても間違いない。
あとはそれを何発撃ち込めるか。
私達は、技の精度を上げて試合まで鍛錬を重ねた。
そして、試合当日が訪れ、聖堂山と邂逅する。