松風天馬君に恋する私   作:伊つき

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「……相変わらずね」

 

攻めようとすると、向こうはボールを奪いに来るのではなく自陣に戻って陣形を組んだ。

聖堂山の戦術はいつも同じ。

最前列に4人並べて中軸との間にスペースを作る。

まるで隙だらけ。

けど、どう見ても罠ね。

そんなのに引っかかったりしない。

 

「ミク。作戦通りに行くわよ」

「了解」

 

ミクは頷いた。

アリアが攻撃に参加しない10分間ほど。

正直火力は足りないけど、考えはある。

それは既に共有済み。

あとは実行するだけ!

 

「いくぞ!」

 

私がミクの足元にボールを転がす。

ミクは足を振り上げた。

そして。

 

「アルティメット・ランチャー!」

「何!?いきなりシュートだと……!」

 

ミクによるセンターラインからのロングシュート!

フォワードの恋崎くんが驚く。

弾道は一気に聖堂山の中軸を抜けて、ディフェンスの頭上へ迫り上がる。

ゴール上で天高く最高到達点に浮遊したボールが重力に引かれる前に。

電光石火で駆け抜け、そこに跳躍する者あり。

まあ、私なのだけれど。

 

「ティアードロップ!」

 

私はシュートで叩き落とした。

ゴール前に滑り台のような起動を描いて向かっていく。

まるでミクと私の共同のWバナナシュート。

さらに私のシュートに駆け込み、チェインする者あり。

ミクよ。

 

「クイックトリガー!!」

「させるか!シュートブレイク!!」

 

ミクVS聖堂山GK征木くん。

結果は。

 

「何だこの威力は!?ぐあああ!!」

「なに!?」

 

ゴールを破った!

ネットに突き刺さる。

 

『よっしゃあ!』

 

 

ヴァルキリア 1 - 0 聖堂山

 

 

私とミクが同時にガッツポーズを胸の高さくらいに掲げ、ハイタッチしながら戻る。

聖堂山は愕然。

黒裂くんのクィックシュートのあとのクイックトリガーという皮肉。

まさかの先制を許し、これには遅れて自陣に戻ってきたキャプテン黒裂くんも。

 

「ば、馬鹿な……我々聖堂山が……一体何が起きたというんだ」

 

通りすがった私たちを一瞥したあと、破られたゴールを大きく目を見開いて呆然と眺め、現実を受け止めきれずにいる。

これぞ念入りに対策した成果。

実を言うと、聖堂山の戦術は殆どミクがメタになっている。

ミクを使えば全て打ち砕ける!

 

「ミク!」

「囲め!」

 

次のターン。

ヴァルキリアの攻撃から始まってすぐにミクにパスを出す。

彼らはすぐさま3人体制でミクの行く手を阻む。

 

「……っ!」

「今度はさっきのようにいかない」

 

聖堂山の包囲網にミクが顔を顰めて、その圧に少し後ずさりする。

相手が攻めればすぐに1対3に持っていく。

これが聖堂山の戦術。

3人に道を塞がれては前方にパスを出せない。

横のパスルートを塞がれ、後ろに出すしかない。

そうして後退を選び続けると、消極的な選択のワンパターンな連続の隙を突き、聖堂山はボールを奪ってくる。

確かに完璧で効率的な作戦。

ディフェンスが多少成ってなくてもこの戦術シフトならカバー出来る。

人数を割けば当然の結果。

物量は正義ね。

 

けど、ミクには通用しないのよ。

 

「ハイパワー・メガバズーカ!!」

「なっ!?」

「うわああああ!!」

「ひっ……!」

 

囲まれたミクは迷わず全力でシュートを撃った。

その弾丸のあまりの威力に、迫り来るボールから相手は回避を選択する。

逃げ惑う彼らによって包囲網も勝手に解ける。

あとは適当な方向に飛んだボールが失速したところで、このミクの行動を予測していた私達が先に動いて拾いに行くだけ。

転がっていたボールの元に最初に辿り着き拾ったのは俊足のアスカ。

彼女はボールをキープすると、顔を上げて周りに誰もいないことを確認する。

視界はクリア。

笑顔を浮べる。

 

「よっしゃ。貰い!」

「―――どうかな。それは」

「えっ!?」

 

突如、アスカの目の前に飛び込んでくる人影。

それは黒裂くん。

スピードで追いついたわけじゃない。

彼は、ミクの行動を予測し、私達と同じタイミングで動き出していた!

 

「ちょ、なんでここにいんの!?作戦読まれたの!?」

「いや。我々の戦術をこれほど早期に破るとは、そんなことは予想できなかった」

 

黒裂くんは模範的な教科書に出てくるような丁寧なディフェンスでアスカの進行を食い止める。

そうこうしているうちに周囲が状況に追いつく。

アスカの初速が無駄になる。

そこまで考えて彼女は気づく。

 

「私に追いついたの、あんただけ……!?」

「そうだ。悔しいが、出し抜かれることも作戦の内情も予測できなかった。けど、俺だけが驚かず対応できることがある」

「……!」

 

私とミクが目を見開く。

そう、そういうことだったのね……!

彼はミクを知っている。

だから、ミクを使った作戦はミクがしでかしそうなことは予測される!

 

「もう察したかな?なら解説は終わりだ。そろそろボールを貰おうか!」

「ちょ……!」

 

アスカがプレスされる。

マズイ!

 

「だったらプランBだ」

「なっ……!」

「え、アリア!?」

 

アリアがアスカと黒裂くんの間に割って入ってボールを掻っ攫う。

あの子、いつの間に……!

振り返ると確かにゴールは空っぽだった。

 

「決めるぜ!」

「調子に乗るな!」

 

アリアがディフェンスラインの外側からゴールを狙う。

キーパーの征木くんは構えて対峙する。

右サイド寄りからのアリアのシュートチャンス。

彼女は屈んでスターティングポーズをとる。

ティターニアじゃない!

 

「ザ・セイレーン……!!」

 

アリアはボールを足に挟んで身体を縦回転させながら跳躍。

天空に到達すると、足をクロスに解放してボールに赤いエネルギーが蓄積される。

そして、それを利き足で蹴り込む!!

 

これぞ―――Xブラスト × 流星ブレード。

 

「X……っ!!」

「シュートブレイク!!うわああ!?」

 

赤いビームと天体色の隕石。

この掛け算がキーパーの身体にぶち込まれる。

征木くんは必殺技を繰り出すが、勝負は一瞬。

一瞬でゴールネットに押し込まれる。

 

 

ヴァルキリア 2 - 0 聖堂山

 

 

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