松風天馬君に恋する私   作:伊つき

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アリアが強い。

強すぎる。

元から強かったけど、有り得ないくらい成長している。

 

「聖帝との特訓で一体何があったというの……」

「……!」

 

ミクが反応して暗い顔で俯く。

彼女も黒裂くんと会うまでは様子がおかしかった。

けれど、今はアリアね。

彼女のインパクトを優先せざるおえない。

ちょっとレベル感がおかしすぎるわ。

さっきのシュート。

威力だけなら聖帝の元に行く前にアリアに見せて貰ったアイリーンの限定版サラマンディーネ・ドロップ程はある。

ただあのサラマンディーネ・ドロップは威力だけでそれ以外の能力は著しく低かった。

けど今のザ・セイレーンXは他も捨ててない。

完全にサラマンディーネ・ドロップの上位互換。

そして、アイリーンの下位互換だ。

 

「アリア、今のが特訓の成果なのね」

「そうだ。あと1本止めたら私も前線に上がる。いいな?」

「わかったわ。2点先制したのはデカイわね。貴女が上がる前にもう1点取りたいわ」

「了解」

 

アリアが頷く。

私たちのやり取りを見て、アスカが尋ねる。

 

「ねえ。このままアリアにこの2点守ってもらって勝つのじゃダメなの?」

「確かに。その方がリスクなくねえか?」

「いえ。それはダメよ。キーパーのアリアの弱点は多勢に無勢だもの」

 

実際、アリアからすればかなり格下の海王学園にすら大人数で攻められたら振り回されていた。

あの時は実力が違いすぎてそれでも抑えていたけれど、フィフスセクタートップ5のチームにそれは通用しない。

アヴァロン・ウォールを習得して多少は解決したと言っても、それも聖堂山レベルの全員攻撃サッカー相手では厳しい。

基本キーパーのアリアは1対1に強い。

それは相手が白竜くんでも千宮司くんでも強い個に対しては対応できる。

けど、大人数相手で左右に振られるとそうはならない。

確かにアリアをキーパーに固定しておけば失点は抑えられるかもしれない。

それでも4~5点は計算上取られる想定。

取られてから終盤に慌ててアリアを前線に移しても、防御が手薄になりさらに失点する分も合わせれば取り返しがつかない。

対聖堂山は時間が経過すればするほどビハインドから覆すのが難しくなるのよ。

ならばこっちも最初から大量得点を狙いにいって常に優勢になる他ない。

これは、その全てを予測して綿密に立てた計画よ。

 

「なるほどね。理解」

「攻撃一点集中するってのはわかったが、奴らのあの集団ディフェンスを突破する方法あんのか?」

「ミクは向こうのキャプテンにメタられるからな。どうする?シズク」

「考えはあるわ」

 

説明して納得して貰えたけど新たな疑問。

ただその回答は持ち合わせている。

今回、アリアとミクが特訓にいって作戦の伝達が充分ではないけれど。

私の頭の中にはあるから大丈夫。

例のごとくあとは実行するだけ。

 

「このまま終われるものか。我々はフィフスセクターのトップ、聖堂山だ!」

「……っ!」

 

再開直後、黒裂くんの中央突破。

私が抜かれてその後は巧みなパス回しでセンタリングしていく。

さすがは聖堂山。

連携が完璧。

完全に統率の取れたまるで精密機械のような正確さでパスが通り、ミクもアスカもサエも躱される。

あとはチェンファとチェンナイだけ。

 

「ラウンドスパーク!」

「アクロバットキープ!」

 

チェンファとチェンナイが抜かれた。

個人技も全員高い水準にある……!

 

「黒裂……!」

 

ゴール前。

最後は当然エースストライカーへと渡る。

このチームではエースはキャプテン。

 

「今度はさっきのようにはいかないぞ」

「ふん。やっと本気を出すか。待ちくたびれたぜ」

 

対峙する黒裂くんとアリア。

真剣な表情で彼女を睨む黒裂くんに対して、アリアは構えながら鼻で笑い飛ばす。

けど、本気の待機体勢ね。

今度は口先とは裏腹に警戒している。

黒裂くんの本気をこの段階まで来て彼女はようやく汲み取れたから。

 

「いくぞ!」

「化身か」

 

黒裂くんの背中からオーラが伸びる。

アリアはそれを見上げ、真剣な眼差しで淡々と目の前の事象を口にした。

彼女も化身を出す。

 

「炎魔 ガザード……!!」

「魔神 アガレス……!!」

 

同時に出現する2体の化身。

相手も同じ土俵に上がってきたのを見て、黒裂くんはフッと一瞬口角を上げた。

彼は、ボールを蹴り上げ化身の手のひらに飛び乗る。

そして、化身によって宙に投げられた。

回転。

からのシュート!

 

「爆熱!ストォォォーーーーーム!!」

「あれは……!」

「なんて威力……!」

 

目撃した私とミクが衝撃を受ける。

爆炎に包まれたシュート。

私もミクと同じように想起した。

かつて、【炎のストライカー】と呼ばれ名高い最強のフォワードが放つ必殺技を。

 

「なんでまこっちゃんがあのシュートを……」

「なんだ。面白いもん持ってるじゃねえか。最初からそれを見せろよ」

 

ミクの動揺を他所にアリアが迫り来るシュートの威力を確認して直立不動から笑みを浮かべる。

何故か彼女は余裕。

まさか、あれを止められるというの……!?

 

「アリア……!」

「焦るな。私の新しい化身の方が上だ」

 

は?

新しい化身……ですって?

聞き間違いかしら。

 

「さぁ、アガレス。燻ってるお前の真価を発揮する時が来た。いくぜ!」

 

アリアが力むと、アガレスが形を保てなくなり、紫のオーラとなった。

しかしそれはすぐにまた新たな姿を形成し、出現する。

 

―――これが、アリアの化身進化。

 

「空間の覇者 ダンダリオン……!!」

「何!?化身が進化しただと!?」

 

重力に引かれる黒裂くんもその最中、目の前の光景を目に焼き付けて驚愕する。

アリアは新たな化身、ダンダリオンを従えキャッチング。

爆熱ストームに少し圧され後退りはしたもののラインは超えず。

完璧にセーブした。

彼女は不敵に笑う。

 

「良いシュートだったが、私のシュートに比べりゃイマイチだな。もうどんなシュートも大したモノに感じないぜ」

 

そう言って、アリアはボールを足元に落として踏んづける。

空間の覇者ダンダリオン。

あの化身はただアガレスが進化しただけじゃない。

キーパー用にチューニングされた化身。

アガレスはフォワードの化身だった。

つまり、アリアは必殺技に化身まで身につけキーパーとして完全に完成した。

彼女にはもう、死角がない。

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