「チェンナイ。ゴールはいいから攻撃に混じってちょうだい。人手が足りないわ」
「了解。ヴァルキリー・アタック用意?」
「そうね。使うわ。私がもう個人技は無理だから私とチェンファとチェンナイで撃ちましょう」
「合点承知」
「これで手数が増える。助かるぜ」
「けど、ゴールはどうすんの?がら空きのゴールなら向こうは必殺技使わないでしょ」
「そうじゃねえか。相手を消耗させなくていいのかよ」
「どうせ向こうは全員必殺シュートを撃てる集団よ。数人消耗させても大して変わらないでしょう」
「やばい失点は私が戻って防ぐよ。多分いける」
「マジか……」
話し合いの結果、後半の方針が決まりつつフィールドに入るが、ミクの申し出に全員が驚く。
というかちょっと引いた。
フィールド全体をシャトルラン宣言したのだから当然。
この子、本当に体力が底なし沼ね。
「じゃあ打ち合わせ通りにいきましょう」
私が告げると全員が頷いて配置についた。
試合が再開したらチェンナイはゴールを放棄して上がってくる。
前半で思ったより点差を作れなかった。
後半は一気に突き放すわよ!
「ザ・セイレーンX!!」
ヴァルキリア 14 - 12 聖堂山
アリアが早速点をとった。
インターバルの間に回復して動けるようになったのね。
すぐに快速飛ばしてくれるのは助かるわ。
彼女が再びバテる前にアリア以外も機能するわよ!
「ゴールを空けるとは……愚かな!」
「させるか!」
「なっ……!?」
がら空きのゴールにノーマルシュートを放った恋崎くん。
それを突如視界にフェードインしてきたミクにスライディングカットされて驚愕した。
なるほど。
ミクはいい働きをするわね。
この最初のノーマルシュートを止めたのは偉い。
ミクの妨害があるため、ゴールは無法地帯ではないということを一発目で相手に認識させたことになる。
これで多少は必殺技を使ってくるでしょう。
試合中のミクの頭の回転にはいつも助けられるわね。
有難いわ。
「ミク!ロングパスだ!前線へ繋ぐ!」
「アリア……!了解!」
ミクの次に機動力のアリアもゴールへ戻ろうとしていたが、ミクの方が先に到着した。
アリアはセンターラインで折り返して、カウンターに備えていた。
その関係で中軸にいたアリアに、ミクはロングパスを出す。
「よし……!デビューだ、お前ら。ぶちかませ!」
「来た!」
「緊張。動機。それでもしかし」
「やるしかないわ。気張るわよ!」
アリアが受け取ったボールをワントラップですぐに前線に運んだ。
相手ディフェンスを綺麗に割ってセンタリングラインにワンバウンドするボール。
その先の到達点に私とチェンファとチェンナイが駆けつけ合流する。
私が蹴り上げる!
そして、私を中心に3人全員が跳躍する!
これが……!
『ヴァルキリー・アタック……!!』
「3人技だと!?」
驚く黒裂くんの声を背中に受け、私達は3人同時に放ったシュートを置き去りに着地する。
シュートはゴールへ向かい、征木くんが立ちはだかる。
「シュートブレイク!ぐああ!?」
一瞬で破った。
これで。
ヴァルキリア 15 - 12 聖堂山
また突き放した!
「馬鹿な……!」
「よし!」
愕然とする黒裂くんとガッツポーズを作るアリア。
私はシュートコースの補正をしただけだから殆ど消耗してないし、このシュートは使えるわね。
「そちらが3人技で来るのならば……!」
「……っ。来るわよ!」
相手ボールから始まって黒裂くんが飛び出してくる。
私が反応して迎え撃つと早いパス回しで私を始めとしたヴァルキリア中枢を掻い潜っていく。
ディフェンスラインまで侵入されて、そこには戻ってきたミクとアリアが。
「行かせるか!」
「ミク、右はお前に任せる。私は向こうの大将を抑える!」
「了解!」
「無駄さ!」
2人のマークも無為に終わる。
黒裂くんは正面の困難なアリアを放棄してミクの方にパスを出した。
受け取ったのは日向くん。
ミクと対峙した彼は必殺技を繰り出す。
「ラウンドスパーク!」
「うわああ!?」
「ミク……!」
ミクが突破されて、慌てて進行したドリブラーに目を向けるアリア。
彼女はその行く手を阻もうと地を蹴った時、目の前に人影がフェードインしてきて急ブレーキをかけざるおえない。
「お前……!」
「君の相手は僕だ」
「じゃあラストはお前じゃないのか!?」
アリアのディフェンスを妨害したのは黒裂くん。
彼はゴールに背を向けている。
つまりフィニッシャーは彼ではない。
「行くぞ!恋崎、堤美!」
『おう!』
一気に集結する3人のストライカー!
まさか……!
『グランドファイア!G5』
「させないわ!」
3人技のシュートがゴールへ向かい、その間に私が介入する。
相手の新しいやり口をここで止める。
そうすれば向こうは手数を失う。
大事な場面よ!
成功体験はやらない!
「……っ!ぁぁぁぁ……っ!!」
私は腰を落とし、力む。
周囲が放電し、引きずり出すように足元から化身が現れる。
「雷魔神バアル……!」
この高威力のシュートを止める手段は、私にはこの化身しかない!
「雷斬り!」
シュートブロック。
しかし、圧される。
「うっ……ぐっ……!チェンナイ!」
「おかのした」
私は叫んで、頷いた彼女を確認してアイコンタクトをする。
その瞬間、破られる。
「きゃあっ!?」
「……っ!」
私を押しのけて突破したシュートの威力はノーマルまで落ちている。
それをチェンナイが咄嗟に反応してパンチングで弾く。
ペナルティエリアの外へ転々と転がるボール。
その先に相手のミッドフィールダー!
「魅惑のダラマンローズ!!」
「化身……!」
「私は無理だ。お前がいけ!ミク!」
「了解!」
もうミッドフィールダーの天瀬くんはシュート体勢に入っている。
そこに介入する足。
「魔狼アモン!でぇぇや!」
「ぐあっ!?」
撃たれる前にミクがクリアした!
ナイスよ!
「炎魔ガザード!」
「空間の覇者ダンダリオン!」
零れ球に足を伸ばしてアリアと黒裂くんが爪先でワンタッチする。
足元に手繰り寄せ持ち込んだのは黒裂くん。
対峙する2人。
彼は笑う。
「君が化身を進化させたのはミスだ」
「なんだと!」
「進化した君の化身はキーパー用。最初からフィールドプレーヤーに戻る予定なら進化させるべきではなかった」
「……!」
アリアが左右へ動き競り合いながら瞠目する。
彼の指摘は正しい。
相手が、規格外のアリア・オイゲンでなければ。
「そうか。アドバイスありがとな。じゃあ、"戻す"ぜ」
「えっ」
目を丸くする黒裂くん。
まさか、と可能性が脳裏を過ぎった。
しかし、すぐに目を瞑って首を横に振るう。
そんな彼がその瞬きの間に目撃なかった光景。
目を開けて驚き、見上げる景色。
アリアは、力を抑えこむ。
「化身退化!魔神アガレス!」
「馬鹿な……!?」
驚愕する黒裂くん。
化身バトルの雲行きが変わる。
「もらった!」
「ぐあっ!?」
アリアが黒裂くんのキープしていたボールをカット。
ボールはまたフリー。
そこに駆け込むは日向くん。
「光速のマキシム!」
「また化身使い……!」
「何!?」
「……っ!」
ミクとアリアと私か表情を歪ませる。
黒裂くんがほくそ笑む。
もう守りきれない。
どフリー!
「はぁぁー!」
「……っ!」
チェンナイが頑張って跳ぶも無力。
ゴールに突き刺さる。
ヴァルキリア 15 - 13 聖堂山