「ま、負けた……聖堂山が……」
整列しながら愕然とする黒裂くん。
この様子、まさか初めての敗北じゃないわよね?
私は聖帝イシドシュウジを見る。
彼は真顔で聖堂山を見ている。
あぁ、そのまさかね。
負け無しの彼らにお勉強させたのね。
やられたわ。
しれっともう1つ仕事やらされたわね。
利用されて、最悪。
「最後まで全力で戦ってくれたことを、感謝する。我々も全力を出し切った。悔いは無い」
「……まるで今から死ぬみたいな言い方ね。別に負けたら死ぬのは私達だけよ」
「なっ……!?」
握手をした黒裂くんが顔を上げて瞠目する。
聖帝を見る。
信じられないという目で。
あぁ……もう貴方がすごく誠実なのはわかったわ。
さすがミクの幼なじみにして、聖堂山のキャプテン。
本当に潔癖。
良い人ね。
私達が命をかけるなら、自分達も。
じゃないと平等じゃないと思ったのでしょうね。
お気遣い、有難いわ。
現実は惨いけれど。
「別に貴方は何も気にしなくていいわ。これは、そういうものなの。それがここのルールなの。ここで普通なのよ」
「君達は……それでいいのか」
「良くないから、戦ってるのよ。だから、抗ってるのよ。生き残る為に」
「そうか。すまない、何もできることは……」
「わかってるわ。別に頼むつもりもないから安心しなさい。責任も何も感じなくていい」
と、言ってもどうせ俯いてるこの人は後で聖帝の進言くらいはするんでしょうね。
無意味だけれど。
これは諦めじゃない。
こうやって少しでも楽な道に期待して縋らないように気を引き締めて生きていかなければならない。
でないと簡単に足元をすくわれる。
私達は、強く、自分の力で打破していくことを基本としなければならない。
他人によって救われるとしても、それは突然起きた奇跡でなければならないのよ。
意識を低くしない。
それがこの地獄で生き延びていく為の鉄則。
「貴方を見て、この試合を通してフィフスセクターの、彼のサッカーはよく分かったわ。貴方のミッションは完了。これでお別れ。私達は次の試合があるから行くわ」
「えっ、ちょっと……!」
私は黒裂くんに背を向ける。
みんなも私に続く。
私達は、聖帝の前に並んだ。
「この試合の目的は果たされたと、判断してもよろしくて?」
「あぁ」
彼は頷いた。
一体なんのためにこんな試合を仕組んだのか。
本当の所はわからないわね。
管理サッカーを理解させるだの聖帝サッカーを教えるだの漠然としてるのは気付いていた。
きっと本当の目的は他にある、か、もしくは何かを誤魔化すために大掛かりなゲームを組み込んだってとこかしらね。
まあ私達はドラゴンリンク相手に好き勝手したし、ドラゴンリンクの立ち位置を考えればゴッドエデンの責任者である彼は何かしら口酸っぱく言われたでしょうし。
ま、それもどうでもいいわ。
私達は退散指示を受け入れ、戻る。