「……っ」
海王ボールで始まるも最初のパス以外彼らは動かない。
完全に戦意を喪失している。
とはいえ、私達もミク以外はもう完全に体力が尽きてる。
アスカも体力は余ってるけどアリアのプレーを見てから萎縮して動けなくなってる。
こんな状況の中、ただ1人無抵抗な相手を蹂躙し続ける者あり。
「フェアリーショット」
「う、うわぁぁ!!」
迫り来る凄まじい必殺シュートからゴールを捨てて逃げる深淵くん。
ここまでノーマルシュートと化身だけで無双してきた彼女が、相手のメンタルを完全にノックアウトしてから必殺技を披露する。
再び息を吹き返さないように、浮き上がらないようにさらに絶望を与えていく。
レベルが遥かに違う凄まじい必殺技を温存していたいう事実が海王イレブンの胸を抉る。
強者だからこそ、徹底的にねじ伏せる。
彼女が強者であり続ける所以。
油断はせず、可能性を摘み、浮上を許さない。
これぞ、最強―――アリア・オイゲン。
「フェアリーショット!」
『これで20点目!!オイゲンが止まらない!!そして、これにて試合終了!!結果は20-0でヴァルキリアの勝利です!』
最後にホイッスルが鳴るその瞬間まで点を入れ続けたのはアリア。
彼女はフィールドに立ち、天井を見上げていた。
そこに仲間が集まる。
「お、おい。アリア大丈夫か……?」
「いや、大丈夫でしょ。なんの心配?試合観てなかった?この子1人で無双してたよ?」
「それは皆わかってるよ!そうじゃなくて、サエが言いたいのは……」
「同意。アリア、動かぬ。不動。どうした?」
チェンナイの説明に確かにと思い、皆の注目がアリアに集まった。
が、次の瞬間。
アリアはフラフラと揺れ始めたと思ったら倒れた。
『アリア!?』
慌てて全員が駆け寄る。
それを私は掻き分けて最初に彼女に触れる。
「危険だから触診できる私以外は触らないでちょうだい」
「お前、まじなんでも出来るな……」
「で、どうなの?アリア大丈夫なの!?」
「そうね……」
私はアリアに声をかけて意識を確認する。
これは……。
「おそらく脳震盪ね。出血も多いから貧血も起こしてるんじゃないかしら。しかもその後に極度の運動もしたから限界が来て気絶したのね……」
「の……っ!脳震盪……って」
『……!』
私が救急班を呼んでいる間に皆が顔を見合わせる。
救急を待ちながら私が皆を見ると……。
「……!どうしたの?貴女たち」
「えっ?あ、いや……」
「だ、だってよ……」
「……?」
尋ねても随分と煮え切らない言葉と複雑な表情しか出てこない。
でも、すぐに気づいた。
この子達、アリアに慄いた目線を送っている。
そういう目でアリアを見下ろしている。
心做しか物理的な距離も取られている。
つまり、彼女たちは……仲間でありながらアリアを恐れている。
「貴女たち……!」
『……っ』
私が見渡すと彼女達は目を逸らした。
アスカは自身の片腕を掴んで、サエは俯いたままボヤく。
「し、仕方ねえだろ……あんなの見たら、なぁ?」
「脳震盪ってゴールポストにぶつけた時でしょ?あそこから相手11人突破してゴール決めたってこと?ヤバ」
「しかもその後も点決めてたし……もう相手やる気なかったんじゃ?」
「脅威。まさしく怪物。この試合の中で1人だけ次元が違う」
各々好き勝手に言う。
アリアが誰を思って行動したのかも彼女達はしっかりと理解ができていない。
「……アリアは味方よ」
『……っ!』
私の目つきに捉えられた彼女達は息をのみ、背筋が凍る。
タンカーで運ばれるアリアに私はついていく。
「ま、待ってよ!キャプテンも副キャプテンも不在じゃ私達どうすれば……!」
「貴女たちは頭を冷やしなさい。貴女達が生き残るためには貴女たち自身の成長も必要。私とアリアがいなくても待ち時間くらいなんとかしなさい。臨時のリーダーはサエとアスカよ」
「……!シ、シズク……」
縋るようにアスカが私を見るけど無視する。
ミクが私の元に近づいてきた。
「大丈夫?私も行こうか?」
「いえ、いいわ。貴女はあの子たちについていてあげて」
「なんだ。やっぱり強く当たっても心の底じゃ皆のこと想ってるんだね」
「……!そりゃそうでしょう。私がチームに引き入れたんだもの。巻き込んだとも言える。だから、責任は最後まで持つわ」
「巻き込んだって……こんな試合をやる為のチームだなんて知らなかったし、負けたら処分なんてのも知らなかったじゃん」
「それでも、こうなったからには私が皆を守るしかないでしょう」
「そっか。でも、私も手伝うからね。忘れないでよ」
「……!えぇ。ありがとう」
「ううん。全然。それと、時に厳しいこと言うのも責任に含まれると思うから、シズクは気にしなくていいと思うよ」
「……」
「じゃ、皆のことは任せて!アリアのことよろしくね」
「えぇ。貴女も……ありがとう。頼むわね」
「うん!」
ミクは花開くように笑って戻って行った。
私はその背中を少しだけ眺めてから運ばれたアリアを追いかける。
こうして、海王学園との互いの存亡をかけた試合は終わった。
試合に負けた彼らがどのような最終処分を下されるのか私達にはわからない。
きっとゴッドエデンの教官たちは試合中に私やアリアが彼らをブレイクする展開を望んでいたでしょうけど、そんな余裕がなかったのはもうわかるでしょう。
それに。
おそらくこれからも今日みたいな試合が何度も組まれる。
その前にアリアにゴールキーパーの練習をさせないといけないし、みんなとの連携も使い物になるようにしなければならない。
今日みたいな個人技のゴリ押しでは限界がすぐにくる。
けれど。
それもまた明日以降に取り組むわ。
私もずっと脳みそを回転させられるわけじゃない。
身体の体力と比べれば思考は長く続けられるけれど、今日みたいな神経をすり減らす試合の後はさすがに……。
「……疲れわね」
私は、アリアの顔を見つめながら少し弱音を漏らした。